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【忘れがたい日々 】
しおりを挟む夕方、三上さんの個部屋に三人が集まった。
「そうかあ、優吾さん、もう行っちゃうんだ」
ケイコが下を向いて呟いた。
「そうですよ。いつまでもここにお邪魔になるわけには、いかないですよ。いつまた、他のホームレスが運ばれてくるか分からないですし。こう言っては変ですけど、やはり人間が動物たちに養われているのには問題があります」
優吾が答えるわりに、横から三上さんが口をはさむ。
「あら、どうして? 」
ケイコが不思議そうな顔をして、三上さんを見る。
「だって、それじゃあ、まるで『猿の惑星』みたいじゃないですか。このままいくと、きっと最後には、すべての人間が動物たちに支配される結末になるんじゃないですかね」
三上さんは、優吾とケイコの顔を心配そうな顔をして、交互に見る。
かつてサラリーマンだった三上さんは、リストラされてからというもの、
極度に心配性になってしまい、困っているのだという。
「ほーら、また、三上さんの心配癖がでた」
ケイコは笑いながら、三上さんを鉄砲で撃つような真似をしてみせる。
その後、深いため息をつくと、
「結局はさあ、なるようにしか、ならないんじゃないかな。もし『猿の惑星』みたいに人間たちが動物たちに支配される世の中になったとしても、それはそれで自然な事なんじゃないかな? 優吾さんはどう思う」
ケイコが優吾の方を見た。
「そうだな。あながち動物たちも悪い奴らじゃないよな。こうして俺たちに食事を与えてくれているわけだし。それも自分たちの餌を減らして半分は俺たちみたいなホームレスに分け与えてるんだもんな。まるで神様だよ。『猿の惑星』の世界も実際にそうなったらそうなったで、ぜんぜん面白い世界かもよ」
自然に優吾の口もとから、笑い声があがった。
同時にケイコも三上さんも吹き出した。
「これはいい、傑作だ。それなら『猿の惑星』の世界が実現した時のために、今から動物たちに取り入って、家来にでもしておいてもらわなきゃあ、損だよね」
三上さんが笑いながら言う。ケイコもそれに応じて、
「あたしも、姫の座をこれから奪うために努力しなくちゃ! 」
二人の目に涙が浮かんでいる。
優吾も笑っているうちに目元がほころんだ。
どうしたのだろう。涙腺が弱くなったのだろうか。
涙が零(こぼ)れてくる。
〈続く〉
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