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【葉っぱの雨】
しおりを挟むその声がやむと同時に羽音が響いた。
二羽のカラスが、銀杏の枝から羽ばたいたのであろう。
優吾は、頭上からしきりに降ってきた二匹の声が、霧雨のように顔面に降り注いだ後、
それが羽毛のように柔らかくなり、顔面全体を包み込んでくる感覚を味わった。
頬も、ひたいも、あごも、鼻先も温かい。
そのうちに、顔全体が発光して、ぽっと明るみを帯びていく。
暗闇の中に優吾の顔が白く明るく浮かび上がり、やがてその明かりは身体全体を包み込みはじめる。
不思議な時間だった。
いま、何が起こっているのだろう。
夢を見ているのだろうか?
ふいに、優吾は目を開けた。
瞬間、頭上からおびただしい数の葉っぱが落ちてきた。
いつの間にか小屋の屋根はすっかり無くなっている。
その代わりに空を埋め尽くすような葉っぱの雨は、ますます盛んに降ってくる。
優吾は呆然とそれを見つめていた。
黄色い葉。……これは、もしかすると……
頭上に手をかざし、降ってきた葉っぱを確かめるように一枚つかんでみる。
やはり、そうだ。
確かに銀杏の葉だと優吾は思う。
それにしても何という季節はずれだろうか。
今はまぎれもなく桜の咲く春の季節だ。
それなのに今年の春は、銀杏が紅葉しているなんて。
葉っぱの雨は、やむ気配がない。
小屋の中へ、しきりに黄色い葉が降り積もり、優吾の身体は、もうすでに銀杏の葉に埋もれている。
ただ、かすかに顔の部分がまだ隠れていずに、目や鼻やひたいや口だけが、葉っぱの外に出ている。
音もなく、まんべんなく、頭上から、葉が落ちてくる。
優吾の口が埋もれていく。
葉は降りやまず、しだいに優吾のひたいが隠れていく。
やがて、空気に触れている部分は鼻と目だけになった。
そのうちに、頭上から降る葉の量がだんだんと少なくなってきた。
優吾は、視界が広がっていくのを感じた。
その時、葉の中に埋もれそうになった二つの目を大きく見開き、優吾は空を見上げた。
〈続く〉
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