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【心から】
しおりを挟む通されたのは、奥の間だった。
玄関からせまい階段を上り、細い通路を通って座敷へと向かう。
案内してくれたのは、着物姿に気品が漂う、あの真由美が負けたと思った女性だった。
止まらない鼓動が、奥の間に入ると、さらに高鳴った。
一人の女性が背を向けて座り、お琴を弾いていた。
真由美は、案内してくれた女性の後について、座敷の隅まで歩いて行き、壁を背にして、一緒に正座した。
ちょうど、お琴を弾いている女性を真横から見ることができる位置だった。
思わず、真由美は、息を飲んだ。
まじまじと見ると、お琴を弾いている女性は、ご高齢のようだった。70歳は、とうに越えているだろうか。
黒髪を後ろで束ねた姿勢の良いその後ろ姿は、30代後半位の女盛りにしか思えなかったが。……
アメイジンググレイス
お琴でこの曲を聞くのは初めてだった。
、次第に聞き入っていく。
流れてくる音色には、ほどよく華と、色彩(いろ)と、香りが満ちている。
もしも目の前に完全な理想の女性がいたとしたら、こんな感じではないだろうか。
そして、音色は、お琴を弾いている女性そのものと重なり、この部屋全体を二重の美しさで満たしていく。
真由美は、つかの間我を忘れ、うっとりとした。
心から……
そう、真由美にとって、人生のうちで数えるほどしかない心から……
一人の女性の美しさの秘密を、知りたいと思った。
真由美は、曲が終わると、思わず立ち上がって、拍手していた。
〈続く〉
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