夜行列車ー冥土往還記

B.H アキ

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夜行列車ー冥土往還記(現世への帰還)

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第三章     現世への帰還

 ――ピッ……ピッ……。

どこかで規則的な音が聞こえた。
それが何の音なのか、最初はわからなかった。
けれど、しばらくして私は気づいた。
それは、心臓の鼓動を刻む音だった。
まぶたを開けると、白い光が視界いっぱいに広がった。
天井の蛍光灯がにじみ、誰かの声が遠くで響く。

 「……心拍が戻りました!」

その声が現実のものだと気づいた瞬間、
胸の奥が激しく痛んだ。
息を吸うたびに、肺が焼けるように苦しい。
 けれど、その痛みが――何よりも、
 “生きている”という証だった。

医師たちの慌ただしい動き、
看護師の震える声、
すべてが私の耳に温かく響いた。

私は、あの列車を思い出した。
 霧の駅。
 赤鬼と青鬼。
 そして、あの最後の言葉。

 「再び光を知るために――還れ。」

あれは夢ではなかった。
あの声が、私をこの世界へ引き戻したのだ。

涙が頬を伝い、枕を濡らした。
私は、何も言えずにただ空を見つめた。
その白い光の中に、
あの光の残滓がまだ微かに揺らめいているように思えた。
そして私は、静かに誓った。

―これからは、誰かのために生きよう。
――あの光に、恥じぬように。

その瞬間、私の心は穏やかだった。
死の国を越え、再び命を与えられた者の心は恐れではなく、ただ静かな感謝で満ちていた……
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