見た目金髪ヤンキーの聖者様、龍王様に溺愛されてます

神代天音

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1 魔法陣と誘拐

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「結城ー! 相変わらずちっちゃいな!」
「奏ちゃーん! 今日も可愛いよ!」

 大学に登校すると、毎日友達が囃し立てるようにかけてくるその言葉。
 心底むかつく。

 だって——。

「僕は、ちっちゃくないし可愛くなーい!」

 そう言い返したところで、誰も本気にしてくれないから。むしろ「怒ってる姿も可愛い」なんて言われるのがオチ。

 高校生の時からずっとそうだった。
 男子には弄りにじられ、女子には「弟みたい」と可愛がられる。全然、悪い人じゃないってことはわかってる。でも、「僕自身」を見て仲良くしてくれているわけじゃないって思っちゃうんだ。

 ——もし、僕の見た目がゴリマッチョのおじさんだったら?

 今の友達で話しかけてくれる人は、どれだけいるだろうか。
 そんなことを考えて、いつのまにか距離を取るようになった。友達ができても、「可愛い」の一言が怖くて、踏み込めなくなった。

 なんだかんだで今、僕には友達と呼べる人がいなくて、ひとりぼっちだ。






 大学に入ってから、僕は電車通学をするようになった。高校は徒歩圏だったから、初めての電車通学。
 でも、初めの一週間で人間不信になる羽目になった。
 立っているだけで、やたらぶつかられる。「僕の姿、見えてないの?」ってくらいにぶつかってくる人が多かった。
 それだけじゃない。後ろの人の手が、お尻のあたりや足の辺りによく触れることがあるんだ。怖くなって後ろを振り向いてみても、誰も目を合わせてくれない。やめてくださいって言えればよかったけど、恐怖で声が出なかった。

 みんな、見た目が子供みたいだから、やり返してこないって思ってるんだ……。


 その日、僕は鏡の前で決心した。
 もう可愛いと舐められるのは嫌だ、変わりたい、って。体を触られて、風呂場で泣きながら体をゴシゴシ洗うなんてもうしたくない。
 鏡の中の自分を上から下まで眺めて考える。
 目指すなら美人系? それは無理か。3秒で諦める。
 ワイルド系……は言わずもがな。無理だな。
 イケメン、というには身長が足りないか。せめて170センチ——あと15センチあれば!
 だったら量産型はどうだ? いや、逆に埋もれてどうする? 僕は今変わりたいんだ。もっと尖らないと。

 結果僕は金髪マッシュにして、ピアスを開けまくった。
 耳にひとつ、ふたつ……。一年経つうちに、両耳に二十箇所くらいピアスが開いていた。
 「なにこれ、こっわ」とも思ったけど、怖く見えるならそれでいいってその時は思ってた。
 服も黒系にして、チェーンとかぶら下げて。目立ちすぎるし、やりすぎたかなと思ったけど、効果はテキメン。
 ぶつかってくる人は圧倒的に減ったし、変なところを触られることも無くなった。多分ピアスが良かったんだと思う。もうピアスは手放せない。僕自信を守る防御みたいになっていて、ピアスがない僕は僕じゃない。
 それと、逆に席を譲られるようになった。……これはこれでなんかもやるんだけど。

 でも、話しかけてくれる人も、笑いかけてくれる人も、1人もいなくなっちゃった……。




「今日も、誰とも話せなかったな……」

 大学生なら講義の後、誰かと遊びに行ったり、課題をしたりするはず。でも、僕にはそんな友達はいないからとぼとぼ1人で帰る。
 帰り道はいつもの道。でも、なんだか虚しさが抜けない。信号待ちですら長く感じて、思わず俯いてしまう。
 そのとき——。

「え? なにこれ、ひかって、る……?」

 足元が、発光していた。しかも魔法陣のようなものまで見える。

「やばい、やばい」

 何もできずに立ち尽くしている間にどんどん光は強くなる。しかもなんだか、地面から光が迫り出してきているような?

「まって!」

 強い浮遊感。後、落ちていく感覚。

 僕の視界が、闇に染まった。




「……ん……」

 なんだか頭がずきずきする。しかも、なんだか下が硬い。
 違和感を感じて目を開けると、見知らぬ高い天井が。とりあえず起き上がる。

 すると——。

「成功ですっ! 聖者が……っ?」

 誰かの声が聞こえる。そちらを見ると、白衣の神官のような人たちが近づいてくるのが見えた。
 その人たちは僕に近づくと周りを囲み、口々に何かを喋り出す。

「これが、聖者?」
「聖者とは黒髪黒目ではなかったのか?」
「しかも小柄な男ではないか」
「いや、女性でも男性でもどちらでも良いのだ。しかし……」

 内容を聞いてみる限り、求められていたのは僕ではなかったことがわかる。だって僕は金髪でピアスまみれなんだもの。

 僕を上から下までじっくり見た神官たちは、困惑した表情をしている。いや、むしろ幻滅したような表情をしている。

「魔法陣の暴走、か……」
「これは求めていた聖者にあらず。失敗だったな」

 言葉の紡ぎを聞いた瞬間、背筋がゾッとした。

「え、あの……?」

 何か言おうとしたけれど、極度の緊張でのどが渇いてうまく声が出ない。まだ、現実を受け入れられなくて、頭が働かない。
 なのに、彼らは僕の方をまるで見ようとしない。僕の戸惑いなんてどうでもいいんだ。

「聖者ではないなら此奴は穢れそのもの。このままここに置いておくわけにはいかぬ」
「では、どうする?」
「そうだな……。どこかに捨ててしまおう。スラム街なんてどうだ? 幸いにも見目は良い。きっとどこかのゲテモノ好きが好きに使うだろう」

 言葉の意味を飲み込むのに時間がかかる。
 
(スラム? 僕、スラム街に捨てられるの?)

 スラム街。きっと治安は良くないだろう。自分の未来を想像して、体の震えが止まらなくなる。

「ちょっと待ってください! 僕、ここに呼ばれてきたんじゃ……」

 声を上げた。だけど、誰も返事をしてくれない。目も合わせてくれない。それどころかすでにこちらに背を向けて、歩き出している。ぼくを「見なかったこと」にするんだ。

 そのまま、僕は運ばれた。神官たちが呼んだ兵士に拘束されて、どんどん奥へ。
 床は柔らかい絨毯から、硬い石畳へ。さらに、少し湿った土に変わっていった。
 やがて湿気だらけの地下道のような場所を抜けた。そこにあった重たい扉を開けた先にあったのは、どこかの街の裏路地。酸っぱい匂い、腐ったような匂い、いろんな匂いが立ち込めている。

「ここでいいか」
「早く戻ろう。気分が悪いな」

 そう言って、兵士たちは僕を地面に下ろし、すぐに立ち去る。

「僕、これからどうすれば良いんだろう?」





 
 
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