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5 龍の国と王について
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しばらくあんぐりと口を開けて固まっていた僕。
「……ナデ様? カナデ様? そろそろ中に入りませんか?」
「あ、はい」
ルゼアさんに声をかけられてやっと正気に戻る。流石に図書塔は大きすぎた。
ルゼアさんは塔の足元の方にある入り口をくぐり、塔の中に入っていく。僕も慌ててついていく。
するとそこには——。
「うわあ、すごい……」
アンティーク調の本棚に整然と本が収まる、夢のような空間があった。
塔の壁に沿うように本棚が並び、その中に塔の中心を開けるように机が円形に並んでいる。
ライトは本が読みやすく明るく。自然光も取り入れられていて居心地が良さそう。
さらに、螺旋状の階段でどこの本も梯子を使うことなく取れるようになっている機能的な図書塔だ。
そして、最も気になるのは図書塔の中心の床に描かれている大きな魔法陣。あれは何に使うんだろう。
「これが、我が国の王城の図書塔です」
何だかルゼアさんも誇らしそうだ。そうなる気持ちもわかる図書塔。すごすぎる。
「ルゼアさん、真ん中の魔法陣は何ですか?」
「あれは本を探す魔法陣です。大昔の魔法使いが設置したもので、中心に立ってほしい本を思い浮かべるだけで、本が飛んでくるんです」
「凄いですね……!」
さすが異世界。蔵書検索の方法までファンタジーだ。
「じゃあ、僕読みたい本をあの魔法陣で探してきます」
「では、私はここで控えております。なにかありましたらお申し付けください」
「ありがとうございます」
僕は早速ルゼアさんから離れて、魔法陣の中心に立つ。
そして、ほしい本を思い浮かべる。
僕がほしいのは、「龍の国に関する本」。
「うわぁ、すごい……」
すると、塔の2階から一冊の本がゆっくりと飛んできた。これが僕の求めていた本なのだろう。
早速円形の机に座り、本の表紙を声に出して読む。
「『龍の国アークレギアとその王の歴史』」
そして安心する。いまの今まで考えていなかったけど、字が読めない可能性があったんだ。しっかり読めて安心した。
本はしっかりした革張りの本で、見た目に違わずとても重い。傷つけないように慎重に開いて、読んでいく。
この国の名前はアークレギア。
太古の龍の血を引く龍人が暮らす国。基本的に国民全員が龍の姿に変身することができるらしい。
ここ何百年かは戦争をしていないが、以前はファルメリアという人間の国と戦争をしていた。
そして、王はイシュア・ラスティリア。強さこそが至高で、戦いによって王を決めるアークレギア。そんな国で弱冠300歳で王になり、一千年君臨し続けている歴代最強の王。
「イシュアさんってそんなに凄いひとなんだ……」
その後も本を読み進め、2時間ほどで「龍の国アークレギアとその王の歴史」を読み終えた。
そしてもう一度魔法陣にたち、思い浮かべる。
今度は「龍人の生態に関する本」がほしい。
そう願うと、今度は一階の、僕の座っている席の目の前の本棚から一冊の本が飛んできた。
座ったままキャッチし、表紙を読んでみるとそこにはシンプルに一言。「龍と龍人の生態」とだけ書かれていた。
この本は比較的薄く、簡素な本で軽い読み物という感じがする。早速文庫本を読む調子で読んでみる。
龍とは、はるか昔神話の時代を生きた世界最強の生物。長い体に鱗と角、鋭い爪を持ち、空を飛ぶことができたという。さらに強い個体に至っては自然現象すら操ることができたらしい。
凄いな、龍って。
龍人は人族と龍の血を引く種族のことを指す。
龍と人族それぞれの特徴を有し、人型に鱗がついた姿のものが多い。ごく稀にツノを持つ者もいるらしい。
よくよく思い出してみると、イシュアさんの頭にはツノがあった気がする。頭から少し出る程度の小さくて、黒いツノが。あれ、珍しいんだ。
龍人は基本的に人族と同じような生態を持つが、違う点が二つある。
ひとつ目は寿命。人族は六十年ほどに対し、龍人は少なくとも3000年、強い個体は10000年生きることもあるという。
二つ目は「運命の番」が存在する点。龍人は生きている限りただ1人、「運命の番」と言われる生涯の伴侶を探し続ける。これは龍人(獣人にも存在する)が感じ取れる存在らしい。
そんな凄い存在が龍人には存在するんだ。というか、獣人もいるんだなこの世界。
この本は1時間ほどで読み終えた。
「カナデ様、そろそろ昼食にいたしましょう。許可をとって塔の近くの中庭に準備しております」
「わかりました」
ちょうど読み終わったところで、ルゼアさんに声をかけられた。本を読むのに集中していて、いつのまにか昼食の時間になっていたらしい。
「すいません、ルゼアさん。この本って元々どこにあったのかわからないんですけど……」
「また魔法陣の中心に立つと、ひとりでに戻っていきますよ」
「凄いんですね……! ありがとうございます」
また魔法陣の中心に立って、今度は本が元の場所に戻ることを願う。すると、手から本が離れて、それぞれが本棚に向かっていき、ぴたりと本棚に収まった。
「本棚の整理要らずですね……」
「いえ、10年に一度誤作動でメチャクチャになるので、整理は必要なんです」
まさかの誤作動。ファンタジー世界もそんなに便利ではないらしい。
その後、昼食は1人でとった。やはり、客人である僕が使用人であるルゼアさんと食べるのは問題あるのだろう。そう考えて何も言わずに1人で食べた。
ちなみに今回はシチューとパンでとてつもなく美味しかった。
「午後はどうなさいますか?」
「午後は部屋で1人でのんびり考え事でもしようともいます」
「では、ご案内いたします」
ルゼアさんに尋ねられて、そう答える。
本を読んだことで、考えなければいけないことがまた増えた。部屋に戻って静かに考えたいんだ。
「ご用がありましたらこのベルを鳴らしてください。誰かがすぐ参りますので」
ルゼアさんはそう言って繊細な装飾のベルを置いて出ていった。
1人になった部屋でつぶやく。
「イシュアさんに恩返し、したいんだけどな……」
僕はイシュアさんに危険なところを救ってもらって、拾ってもらった。だから、何か恩返しをしようと考えていた。
だけど、今日アークレギアに関する本を読んでみると、イシュアさんがとても偉大な人ということがわかった。これじゃあ、恩返しも何もない。
僕はベットに腰掛けて、ため息をつく。
はじめはただ優しい助けてくれた人だった。見ず知らずの僕を助けてくれる眩しい人。
でも、知れば知るほど自分が近くにいていい人間だとは思えなくて。
イシュアさんはアークレギアの王として千年以上も君臨していて、誰よりも強くて、誰よりも優しい。
そんな人が、僕みたいな何もない人間を守ってくれて、隣にいてくれて、ごはんを一緒に食べてくれる。
——不思議だ。嬉しいはずなのに、どこか怖い。
「……僕が、隣にいてもいいのかな」
思わず溢れた言葉に、胸が痛くなる。
どうしようもない不安が胸に広がり、頭を抱える。
でも——。
「僕は、イシュアさんから離れたくない……! 近くとは言わず、隣に自信を持って立てるくらいに自信をつけたい!」
今のままじゃ隣になんか立てない。
今はただ助けられて、甘えているだけ。
だから——。
誰かに気づかれなくていい。イシュアさんが知らなくたっていい。
自分ができることを一つずつ積み重ねていこう。
「……いつか、ありがとうって言えるように」
静かな部屋に、僕の決意だけが響いた。
「……ナデ様? カナデ様? そろそろ中に入りませんか?」
「あ、はい」
ルゼアさんに声をかけられてやっと正気に戻る。流石に図書塔は大きすぎた。
ルゼアさんは塔の足元の方にある入り口をくぐり、塔の中に入っていく。僕も慌ててついていく。
するとそこには——。
「うわあ、すごい……」
アンティーク調の本棚に整然と本が収まる、夢のような空間があった。
塔の壁に沿うように本棚が並び、その中に塔の中心を開けるように机が円形に並んでいる。
ライトは本が読みやすく明るく。自然光も取り入れられていて居心地が良さそう。
さらに、螺旋状の階段でどこの本も梯子を使うことなく取れるようになっている機能的な図書塔だ。
そして、最も気になるのは図書塔の中心の床に描かれている大きな魔法陣。あれは何に使うんだろう。
「これが、我が国の王城の図書塔です」
何だかルゼアさんも誇らしそうだ。そうなる気持ちもわかる図書塔。すごすぎる。
「ルゼアさん、真ん中の魔法陣は何ですか?」
「あれは本を探す魔法陣です。大昔の魔法使いが設置したもので、中心に立ってほしい本を思い浮かべるだけで、本が飛んでくるんです」
「凄いですね……!」
さすが異世界。蔵書検索の方法までファンタジーだ。
「じゃあ、僕読みたい本をあの魔法陣で探してきます」
「では、私はここで控えております。なにかありましたらお申し付けください」
「ありがとうございます」
僕は早速ルゼアさんから離れて、魔法陣の中心に立つ。
そして、ほしい本を思い浮かべる。
僕がほしいのは、「龍の国に関する本」。
「うわぁ、すごい……」
すると、塔の2階から一冊の本がゆっくりと飛んできた。これが僕の求めていた本なのだろう。
早速円形の机に座り、本の表紙を声に出して読む。
「『龍の国アークレギアとその王の歴史』」
そして安心する。いまの今まで考えていなかったけど、字が読めない可能性があったんだ。しっかり読めて安心した。
本はしっかりした革張りの本で、見た目に違わずとても重い。傷つけないように慎重に開いて、読んでいく。
この国の名前はアークレギア。
太古の龍の血を引く龍人が暮らす国。基本的に国民全員が龍の姿に変身することができるらしい。
ここ何百年かは戦争をしていないが、以前はファルメリアという人間の国と戦争をしていた。
そして、王はイシュア・ラスティリア。強さこそが至高で、戦いによって王を決めるアークレギア。そんな国で弱冠300歳で王になり、一千年君臨し続けている歴代最強の王。
「イシュアさんってそんなに凄いひとなんだ……」
その後も本を読み進め、2時間ほどで「龍の国アークレギアとその王の歴史」を読み終えた。
そしてもう一度魔法陣にたち、思い浮かべる。
今度は「龍人の生態に関する本」がほしい。
そう願うと、今度は一階の、僕の座っている席の目の前の本棚から一冊の本が飛んできた。
座ったままキャッチし、表紙を読んでみるとそこにはシンプルに一言。「龍と龍人の生態」とだけ書かれていた。
この本は比較的薄く、簡素な本で軽い読み物という感じがする。早速文庫本を読む調子で読んでみる。
龍とは、はるか昔神話の時代を生きた世界最強の生物。長い体に鱗と角、鋭い爪を持ち、空を飛ぶことができたという。さらに強い個体に至っては自然現象すら操ることができたらしい。
凄いな、龍って。
龍人は人族と龍の血を引く種族のことを指す。
龍と人族それぞれの特徴を有し、人型に鱗がついた姿のものが多い。ごく稀にツノを持つ者もいるらしい。
よくよく思い出してみると、イシュアさんの頭にはツノがあった気がする。頭から少し出る程度の小さくて、黒いツノが。あれ、珍しいんだ。
龍人は基本的に人族と同じような生態を持つが、違う点が二つある。
ひとつ目は寿命。人族は六十年ほどに対し、龍人は少なくとも3000年、強い個体は10000年生きることもあるという。
二つ目は「運命の番」が存在する点。龍人は生きている限りただ1人、「運命の番」と言われる生涯の伴侶を探し続ける。これは龍人(獣人にも存在する)が感じ取れる存在らしい。
そんな凄い存在が龍人には存在するんだ。というか、獣人もいるんだなこの世界。
この本は1時間ほどで読み終えた。
「カナデ様、そろそろ昼食にいたしましょう。許可をとって塔の近くの中庭に準備しております」
「わかりました」
ちょうど読み終わったところで、ルゼアさんに声をかけられた。本を読むのに集中していて、いつのまにか昼食の時間になっていたらしい。
「すいません、ルゼアさん。この本って元々どこにあったのかわからないんですけど……」
「また魔法陣の中心に立つと、ひとりでに戻っていきますよ」
「凄いんですね……! ありがとうございます」
また魔法陣の中心に立って、今度は本が元の場所に戻ることを願う。すると、手から本が離れて、それぞれが本棚に向かっていき、ぴたりと本棚に収まった。
「本棚の整理要らずですね……」
「いえ、10年に一度誤作動でメチャクチャになるので、整理は必要なんです」
まさかの誤作動。ファンタジー世界もそんなに便利ではないらしい。
その後、昼食は1人でとった。やはり、客人である僕が使用人であるルゼアさんと食べるのは問題あるのだろう。そう考えて何も言わずに1人で食べた。
ちなみに今回はシチューとパンでとてつもなく美味しかった。
「午後はどうなさいますか?」
「午後は部屋で1人でのんびり考え事でもしようともいます」
「では、ご案内いたします」
ルゼアさんに尋ねられて、そう答える。
本を読んだことで、考えなければいけないことがまた増えた。部屋に戻って静かに考えたいんだ。
「ご用がありましたらこのベルを鳴らしてください。誰かがすぐ参りますので」
ルゼアさんはそう言って繊細な装飾のベルを置いて出ていった。
1人になった部屋でつぶやく。
「イシュアさんに恩返し、したいんだけどな……」
僕はイシュアさんに危険なところを救ってもらって、拾ってもらった。だから、何か恩返しをしようと考えていた。
だけど、今日アークレギアに関する本を読んでみると、イシュアさんがとても偉大な人ということがわかった。これじゃあ、恩返しも何もない。
僕はベットに腰掛けて、ため息をつく。
はじめはただ優しい助けてくれた人だった。見ず知らずの僕を助けてくれる眩しい人。
でも、知れば知るほど自分が近くにいていい人間だとは思えなくて。
イシュアさんはアークレギアの王として千年以上も君臨していて、誰よりも強くて、誰よりも優しい。
そんな人が、僕みたいな何もない人間を守ってくれて、隣にいてくれて、ごはんを一緒に食べてくれる。
——不思議だ。嬉しいはずなのに、どこか怖い。
「……僕が、隣にいてもいいのかな」
思わず溢れた言葉に、胸が痛くなる。
どうしようもない不安が胸に広がり、頭を抱える。
でも——。
「僕は、イシュアさんから離れたくない……! 近くとは言わず、隣に自信を持って立てるくらいに自信をつけたい!」
今のままじゃ隣になんか立てない。
今はただ助けられて、甘えているだけ。
だから——。
誰かに気づかれなくていい。イシュアさんが知らなくたっていい。
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