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番外編:アンリ、セクシーランジェリーを着る※R-18
アンリはベッドの上で、悶々とバスローブの前を合わせていた。
下には、ちょっと、かなり、過激な下着をつけている。三十代でこれは攻め過ぎたか、と若干後悔するくらいにはあからさまだ。
それにしても、アンリは不安だった。なにせ、めちゃくちゃな大喧嘩中なのである。
原因はさっぱり忘れたが、寝室はここ数日冷え切っていた。
ちなみに下着は、花嫁もかくやと白いレースがふんだんに盛られた、隠すべきところをあまり隠せていないものだ。かわいらしくて、いかにもレオナードが気に入りそうなものだったから、アンリが手ずから選んだのだが。
(でもレオって……本当にこれで、喜ぶ、か……?)
数年にわたる結婚生活で、アンリはすっかり丸くなっていた。レオナードはアンリがかわいいといつもちやほやするし、もはや閨で何をしても情欲をそそられるらしい。
ここまで条件がそろっていてもなお、これだけ長く触れられない(数日間だけではあるが)のは不安だった。
(だって向こうが謝ってこないんだからさぁ)
結婚してからというもの、アチアチで冷えることを知らなかった寝室である。このままではよくない。そこでアンリが一肌脱いでやろう、と思ったのだ。実際は、セクシーランジェリーを着込んだのだが。
こんなに緊張するのなんて、初夜以来かもしれない。風呂上がりだというのに、アンリはじっとり汗ばんでいた。
(い、いや、でも……これ以外に思いつかない……!)
アンリは、愚かな男だった。押してダメならさらに押すことしか知らない。
やがて寝室の扉が開く。レオナードが静かに入ってきて、ベッドへ上がった。
「レ、レオ」
遠慮がちに声をかけても、彼はだんまりだ。アンリがいるのに、こんなに不機嫌な彼は珍しい。それこそ何年か前に、アンリが見知らぬ貴族に粉をかけられたとき以来だ。
「れお……」
アンリが途方に暮れて夫を呼んでも、その広い背中は何も言わない。ごろりとそっぽを向いて横たわるレオナードを、アンリはゆさゆさと揺すった。
「ね、ねぇ。こっち向いてよ……」
無言。アンリはだんだん、むかっ腹が立ってきた。
こっちがこれだけ下手に出ているのに、こちらを向かないなんて。
「ねぇ。ねぇ」
抱き着いて、アンリはレオナードの耳元で囁いた。それに対しても顔を背けられて、アンリは「そうか」と、口をへの字に曲げる。
いよいよ、アンリも嫌になってきた。
「いいよ、もう。僕はあなたのためにえっちな下着を着たのに――」
「今なんて言った?」
レオナードが勢いよくこちらを向く。その目は驚愕に見開かれ、若干血走っていた。アンリは途端に勢いを削がれて、「その」と、恐る恐る前をはだけさせる。
「こういう……」
情けないほど細い身体が晒される。だんだん肉付きのよくなってきた下腹部にはショーツの紐が食い込み、太腿にはむっちりとフリルのリボンが巻かれていた。
男性なので本来隠さなくてもいいはずの胸元には申し訳程度の布が当てられ、余計に卑猥だ。腹の上の切り替えからは薄いレースの布がおりて、身体のラインが透けて見える。
「お、おかしいよね、僕はもう三十路過ぎの、お、おじさんだし」
ぱ、とすぐに合わせを戻す。そのままベッドへ潜り込むアンリの腕を、起き上がったレオナードが掴んだ。
「俺のために着たのか」
ごくごく当たり前のことを、信じられないといった調子でレオナードが言う。
アンリは涙目で彼を見つめ、ふいと目を逸らした。
「……ほかに、何かある?」
レオナードが生唾を飲み込む音が、いやに響いた。アンリはおそるおそる、彼の目を見つめる。
そこからは、話がはやかった。レオナードの手がアンリの身体へ届き、アンリはそれへ身をゆだねる。二人してシーツの海へと倒れ込み、身体を絡み合わせた。
「ん、ね、ここ……」
アンリは、下腹部へレオナードの手を導く。彼がそこの肉をつまんだのを、「ばか」と罵った。
「ちょっと最近、太ってきて、きにしてるのに。もっと下だって」
「かわいい」
熱い体温がのしかかる。レオナードはアンリを寝転ばせて、股を開かせた。アンリは従順にされるがままになって、「ほら」と手を伸ばす。
「えっち、しよ」
唇が合わさり、舌が絡む。アンリは脚をレオナードの腰へ絡ませて、レオナードは骨盤の横の結び目を解いた。
はらりとショーツがほどけ、アンリの局部がむき出しになる。レオナードは片手間に香油の瓶を取り出し、中身を掌へ出した。
「ね、ね、ちゅーして」
数日ぶりの行為に、アンリは、べったりと甘えていた。レオナードはそれに応じつつ、彼の秘部へ指を伸ばす。数日ぶりでも、そこはやわらかくほどけて、レオナードを迎え入れた。
「あふ、ん、ふふ……」
アンリはくすくす笑った。そのたびに下腹部が上下して、レオナードの指を締め付ける。
「どうして、こんなにかわいいんだ?」
唸りながらも、彼は愛撫の手を止めない。アンリは馴染んだ快楽へ身を委ねつつ、胸元の布を手繰り寄せた。
つんと立った乳首を彼の眼前にさらして、「ほら」と促す。
「たくさん、きもちよく、してよ」
唇が、身体へと降りる。そして胸元を吸われて、アンリの腰が跳ねた。
「いいこ」
うっとり目を細めて、レオナードの頭を抱える。その間も、彼の愛撫の手は止まらない。
アンリは、久しぶりの快楽に溺れた。内腿はわなないてレオナードを挟み、やわらかい腹の下でちいさな男性器が勃起して、蜜を垂らしている。乳首は赤く熟れて、ぷっくりと膨らんでいた。
しかしどこか未成熟で、アンバランスな色気がある。レオナードはアンリの下腹部を舌で味わいながら、アンリの胸元をいじった。
「ん、ふ、ぁ……」
とろりと甘えを滴らせた声で、アンリが喘ぐ。レオナードは「アンリ」と夫を呼び、首筋へ噛みついた。
「エロすぎる」
「んふふ」
大満足だ。笑っていると、秘部へたかぶりが押し当てられる。声を上げる間もなく、腹へずんと質量が入ってきた。
「あ、あ、あ、」
アンリのつま先がぴんと伸びる。レオナードは深く息を吐き出し、腰を掴んでアンリの身体を曲げた。
上からのしかかる体勢になりながら、「どうして?」と尋ねる。
「どうして、こんなエロい格好をしたんだ?」
「ん、ぁ、…だってぇ」
目じりから、ほろりと涙が転がる。アンリはぐずつきながら、レオナードを見上げた。
「ずっと、ぼくたち、……くっついてなくて、さみしかった」
ぐう、とレオナードの喉が低く鳴る。そのまま、身体を垂直に落とすように、腰を打ち付けた。
アンリの呼吸が止まる。まって、と口が開いたが、それはキスでふさがれた。
「ん、う、うぅん、んーっ」
苦しげな声を上げるアンリに構わず、レオナードはピストンを続ける。
「いいにおいがする。アンリのにおいだ……」
首筋に顔が埋められ、吸われる。そのまま動脈のあたりを舐められて、アンリは腰を浮かせた。
「あ、や……っ! おく、こんこん、してる」
「いやか?」
「ううん、もっと、もっと」
数年間、すっかりレオナードに開拓されつくした身体は、こんなものでは満足しない。レオナードは歯を食いしばり、アンリの足を持ち上げた。
そのまま肩に腿を担いで、「あのな」と、低い声で、脅すように言う。
「俺が、なんで怒ってたのか、わかってるか?」
「ふぇ……」
アンリが言葉に詰まると、「そういうところだぞ」と、レオナードは咎めるように言った。ゆっくり腰をつかって、ねちっこく奥を責める。アンリは甘ったるく掠れた声を上げて、腰を揺らした。
「なあ。俺がどんな思いで、お前を見ていると思っている」
「ん、ぇ、なに…? れお、おこってる?」
「お前が他の男に、優しくしたからだぞ」
そんなこと、したっけ。アンリが思い出すよりはやく、彼が腰を打ち付けた。身体を跳ねさせるアンリのへその下に、レオナードの手が伸びる。やわらかい感触のそこを手で押しつつ、「お前が悪い」と呻いた。
「俺に嫉妬させた、お前が悪い」
「いいがかり、じゃ、ない……?」
都合の悪い言葉は聞きたくないとばかりに、腰が真上から打ちつけられた。そのまま再び、激しい律動がはじまる。
甲高い悲鳴を上げるアンリ。その上で息を切らせながら、レオナードが呻いた。
「ほんとに、お前ッ……! いつか、ほんとに、孕ませて、やるからな……!」
「えっ…? ぼく、あかちゃん、できな、い」
戸惑うアンリに構わず、レオナードは腰を打ち付け続ける。アンリはひんひんあえぎながら、「できない」と首を横に振った。
「できる」
レオナードは息を荒げながら、言い聞かせるように言った。
「俺の精子が欲しいって、これだけ腹が吸い付いてくるんだぞ」
なあ、と、優しい声がアンリをとろけさせる。きゅう、と腹の奥がうずいた。胎内は熱く濡れて、レオナードのものへ吸い付いて離れない。
アンリは思わず小刻みにうなずいて、「れお」と呼んだ。
「はらむ、はらむから……」
だして、と呼吸だけで言う。その瞬間、レオナードは達した。アンリも彼の熱にあてられて、身体がびくんと跳ねる。
しばらく、二人はただ抱きしめ合っていた。呼吸のたびに上下する胸を合わせて、お互いの心音を聞く。
「レオ」
アンリが、幾分かはっきりした声で、夫を呼んだ。レオナードは情けなく眉をさげて、「すまない」と頭をかく。
「……子どもじみた嫉妬で、お前を怒らせた。ごめん」
ん、とアンリは頷いた。かわいらしい下着は、すっかりもみくちゃになっている。ある意味、役目を果たしたと言えるだろう。
胎内から、レオナードの熱が抜けていった。アンリはふるりと肩を震わせて、彼を見上げる。
「あかちゃん、ほしいの?」
アンリは、下腹部をさする。レオナードは「いや」と、首を横に振った。
「お前がいれば、他に何もいらない。ただ、その」
言葉に詰まった彼を、アンリは見上げる。レオナードはしばらく意味のない声を発した後、観念したように手をあげた。
「……ずっと、腹が、えろいと思っていて」
「お腹が」
「それだけだ……」
勘弁してくれ、とレオナードが頭を抱える。ふーん、とアンリは目を細めた。唇の端は得意げにつり上がり、肉付きのいい尻がシーツの上で跳ねる。
「ねえ、レオ」
するり、と彼へしなだれかかる。彼の手を自らの下腹部へ当て、へその下あたりにぐっと掌を押し付けた。
「ここに、たくさんほしいな。孕むくらい……」
その言葉に、一も二もなくレオナードは飛びついた。二人の喧嘩にはこうして終止符が打たれ、しばらく孕ませプレイ(種付けプレスつき)がブームとなった。
その後、アンリによからぬ思いを向けた輩は、二人のラブラブっぷりに恐れをなして逃げ帰った。レオナードが処すまでもなかった。
根性のない奴め、とレオナードは鼻で笑い、アンリはそんなことも忘れて彼にメロメロだった。
下には、ちょっと、かなり、過激な下着をつけている。三十代でこれは攻め過ぎたか、と若干後悔するくらいにはあからさまだ。
それにしても、アンリは不安だった。なにせ、めちゃくちゃな大喧嘩中なのである。
原因はさっぱり忘れたが、寝室はここ数日冷え切っていた。
ちなみに下着は、花嫁もかくやと白いレースがふんだんに盛られた、隠すべきところをあまり隠せていないものだ。かわいらしくて、いかにもレオナードが気に入りそうなものだったから、アンリが手ずから選んだのだが。
(でもレオって……本当にこれで、喜ぶ、か……?)
数年にわたる結婚生活で、アンリはすっかり丸くなっていた。レオナードはアンリがかわいいといつもちやほやするし、もはや閨で何をしても情欲をそそられるらしい。
ここまで条件がそろっていてもなお、これだけ長く触れられない(数日間だけではあるが)のは不安だった。
(だって向こうが謝ってこないんだからさぁ)
結婚してからというもの、アチアチで冷えることを知らなかった寝室である。このままではよくない。そこでアンリが一肌脱いでやろう、と思ったのだ。実際は、セクシーランジェリーを着込んだのだが。
こんなに緊張するのなんて、初夜以来かもしれない。風呂上がりだというのに、アンリはじっとり汗ばんでいた。
(い、いや、でも……これ以外に思いつかない……!)
アンリは、愚かな男だった。押してダメならさらに押すことしか知らない。
やがて寝室の扉が開く。レオナードが静かに入ってきて、ベッドへ上がった。
「レ、レオ」
遠慮がちに声をかけても、彼はだんまりだ。アンリがいるのに、こんなに不機嫌な彼は珍しい。それこそ何年か前に、アンリが見知らぬ貴族に粉をかけられたとき以来だ。
「れお……」
アンリが途方に暮れて夫を呼んでも、その広い背中は何も言わない。ごろりとそっぽを向いて横たわるレオナードを、アンリはゆさゆさと揺すった。
「ね、ねぇ。こっち向いてよ……」
無言。アンリはだんだん、むかっ腹が立ってきた。
こっちがこれだけ下手に出ているのに、こちらを向かないなんて。
「ねぇ。ねぇ」
抱き着いて、アンリはレオナードの耳元で囁いた。それに対しても顔を背けられて、アンリは「そうか」と、口をへの字に曲げる。
いよいよ、アンリも嫌になってきた。
「いいよ、もう。僕はあなたのためにえっちな下着を着たのに――」
「今なんて言った?」
レオナードが勢いよくこちらを向く。その目は驚愕に見開かれ、若干血走っていた。アンリは途端に勢いを削がれて、「その」と、恐る恐る前をはだけさせる。
「こういう……」
情けないほど細い身体が晒される。だんだん肉付きのよくなってきた下腹部にはショーツの紐が食い込み、太腿にはむっちりとフリルのリボンが巻かれていた。
男性なので本来隠さなくてもいいはずの胸元には申し訳程度の布が当てられ、余計に卑猥だ。腹の上の切り替えからは薄いレースの布がおりて、身体のラインが透けて見える。
「お、おかしいよね、僕はもう三十路過ぎの、お、おじさんだし」
ぱ、とすぐに合わせを戻す。そのままベッドへ潜り込むアンリの腕を、起き上がったレオナードが掴んだ。
「俺のために着たのか」
ごくごく当たり前のことを、信じられないといった調子でレオナードが言う。
アンリは涙目で彼を見つめ、ふいと目を逸らした。
「……ほかに、何かある?」
レオナードが生唾を飲み込む音が、いやに響いた。アンリはおそるおそる、彼の目を見つめる。
そこからは、話がはやかった。レオナードの手がアンリの身体へ届き、アンリはそれへ身をゆだねる。二人してシーツの海へと倒れ込み、身体を絡み合わせた。
「ん、ね、ここ……」
アンリは、下腹部へレオナードの手を導く。彼がそこの肉をつまんだのを、「ばか」と罵った。
「ちょっと最近、太ってきて、きにしてるのに。もっと下だって」
「かわいい」
熱い体温がのしかかる。レオナードはアンリを寝転ばせて、股を開かせた。アンリは従順にされるがままになって、「ほら」と手を伸ばす。
「えっち、しよ」
唇が合わさり、舌が絡む。アンリは脚をレオナードの腰へ絡ませて、レオナードは骨盤の横の結び目を解いた。
はらりとショーツがほどけ、アンリの局部がむき出しになる。レオナードは片手間に香油の瓶を取り出し、中身を掌へ出した。
「ね、ね、ちゅーして」
数日ぶりの行為に、アンリは、べったりと甘えていた。レオナードはそれに応じつつ、彼の秘部へ指を伸ばす。数日ぶりでも、そこはやわらかくほどけて、レオナードを迎え入れた。
「あふ、ん、ふふ……」
アンリはくすくす笑った。そのたびに下腹部が上下して、レオナードの指を締め付ける。
「どうして、こんなにかわいいんだ?」
唸りながらも、彼は愛撫の手を止めない。アンリは馴染んだ快楽へ身を委ねつつ、胸元の布を手繰り寄せた。
つんと立った乳首を彼の眼前にさらして、「ほら」と促す。
「たくさん、きもちよく、してよ」
唇が、身体へと降りる。そして胸元を吸われて、アンリの腰が跳ねた。
「いいこ」
うっとり目を細めて、レオナードの頭を抱える。その間も、彼の愛撫の手は止まらない。
アンリは、久しぶりの快楽に溺れた。内腿はわなないてレオナードを挟み、やわらかい腹の下でちいさな男性器が勃起して、蜜を垂らしている。乳首は赤く熟れて、ぷっくりと膨らんでいた。
しかしどこか未成熟で、アンバランスな色気がある。レオナードはアンリの下腹部を舌で味わいながら、アンリの胸元をいじった。
「ん、ふ、ぁ……」
とろりと甘えを滴らせた声で、アンリが喘ぐ。レオナードは「アンリ」と夫を呼び、首筋へ噛みついた。
「エロすぎる」
「んふふ」
大満足だ。笑っていると、秘部へたかぶりが押し当てられる。声を上げる間もなく、腹へずんと質量が入ってきた。
「あ、あ、あ、」
アンリのつま先がぴんと伸びる。レオナードは深く息を吐き出し、腰を掴んでアンリの身体を曲げた。
上からのしかかる体勢になりながら、「どうして?」と尋ねる。
「どうして、こんなエロい格好をしたんだ?」
「ん、ぁ、…だってぇ」
目じりから、ほろりと涙が転がる。アンリはぐずつきながら、レオナードを見上げた。
「ずっと、ぼくたち、……くっついてなくて、さみしかった」
ぐう、とレオナードの喉が低く鳴る。そのまま、身体を垂直に落とすように、腰を打ち付けた。
アンリの呼吸が止まる。まって、と口が開いたが、それはキスでふさがれた。
「ん、う、うぅん、んーっ」
苦しげな声を上げるアンリに構わず、レオナードはピストンを続ける。
「いいにおいがする。アンリのにおいだ……」
首筋に顔が埋められ、吸われる。そのまま動脈のあたりを舐められて、アンリは腰を浮かせた。
「あ、や……っ! おく、こんこん、してる」
「いやか?」
「ううん、もっと、もっと」
数年間、すっかりレオナードに開拓されつくした身体は、こんなものでは満足しない。レオナードは歯を食いしばり、アンリの足を持ち上げた。
そのまま肩に腿を担いで、「あのな」と、低い声で、脅すように言う。
「俺が、なんで怒ってたのか、わかってるか?」
「ふぇ……」
アンリが言葉に詰まると、「そういうところだぞ」と、レオナードは咎めるように言った。ゆっくり腰をつかって、ねちっこく奥を責める。アンリは甘ったるく掠れた声を上げて、腰を揺らした。
「なあ。俺がどんな思いで、お前を見ていると思っている」
「ん、ぇ、なに…? れお、おこってる?」
「お前が他の男に、優しくしたからだぞ」
そんなこと、したっけ。アンリが思い出すよりはやく、彼が腰を打ち付けた。身体を跳ねさせるアンリのへその下に、レオナードの手が伸びる。やわらかい感触のそこを手で押しつつ、「お前が悪い」と呻いた。
「俺に嫉妬させた、お前が悪い」
「いいがかり、じゃ、ない……?」
都合の悪い言葉は聞きたくないとばかりに、腰が真上から打ちつけられた。そのまま再び、激しい律動がはじまる。
甲高い悲鳴を上げるアンリ。その上で息を切らせながら、レオナードが呻いた。
「ほんとに、お前ッ……! いつか、ほんとに、孕ませて、やるからな……!」
「えっ…? ぼく、あかちゃん、できな、い」
戸惑うアンリに構わず、レオナードは腰を打ち付け続ける。アンリはひんひんあえぎながら、「できない」と首を横に振った。
「できる」
レオナードは息を荒げながら、言い聞かせるように言った。
「俺の精子が欲しいって、これだけ腹が吸い付いてくるんだぞ」
なあ、と、優しい声がアンリをとろけさせる。きゅう、と腹の奥がうずいた。胎内は熱く濡れて、レオナードのものへ吸い付いて離れない。
アンリは思わず小刻みにうなずいて、「れお」と呼んだ。
「はらむ、はらむから……」
だして、と呼吸だけで言う。その瞬間、レオナードは達した。アンリも彼の熱にあてられて、身体がびくんと跳ねる。
しばらく、二人はただ抱きしめ合っていた。呼吸のたびに上下する胸を合わせて、お互いの心音を聞く。
「レオ」
アンリが、幾分かはっきりした声で、夫を呼んだ。レオナードは情けなく眉をさげて、「すまない」と頭をかく。
「……子どもじみた嫉妬で、お前を怒らせた。ごめん」
ん、とアンリは頷いた。かわいらしい下着は、すっかりもみくちゃになっている。ある意味、役目を果たしたと言えるだろう。
胎内から、レオナードの熱が抜けていった。アンリはふるりと肩を震わせて、彼を見上げる。
「あかちゃん、ほしいの?」
アンリは、下腹部をさする。レオナードは「いや」と、首を横に振った。
「お前がいれば、他に何もいらない。ただ、その」
言葉に詰まった彼を、アンリは見上げる。レオナードはしばらく意味のない声を発した後、観念したように手をあげた。
「……ずっと、腹が、えろいと思っていて」
「お腹が」
「それだけだ……」
勘弁してくれ、とレオナードが頭を抱える。ふーん、とアンリは目を細めた。唇の端は得意げにつり上がり、肉付きのいい尻がシーツの上で跳ねる。
「ねえ、レオ」
するり、と彼へしなだれかかる。彼の手を自らの下腹部へ当て、へその下あたりにぐっと掌を押し付けた。
「ここに、たくさんほしいな。孕むくらい……」
その言葉に、一も二もなくレオナードは飛びついた。二人の喧嘩にはこうして終止符が打たれ、しばらく孕ませプレイ(種付けプレスつき)がブームとなった。
その後、アンリによからぬ思いを向けた輩は、二人のラブラブっぷりに恐れをなして逃げ帰った。レオナードが処すまでもなかった。
根性のない奴め、とレオナードは鼻で笑い、アンリはそんなことも忘れて彼にメロメロだった。
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