傲慢溺愛王子様は僕を孕ませたいらしい

鳥羽ミワ

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1 出産

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 研究者フラエ=リンカーは自室のベッドの上で、陣痛に悶えながら喜びに打ち震えていた。後天的に獲得した子宮で妊娠したものを、後天的に作成した膣を介して出産する。すべては順調に、研究計画通りに実験は進んでいた。
 大きく膨らんだ腹部に力を込め、必死に歯を食いしばる。普段結い上げている長い黒髪は、しどけなく散って汗で張り付いている。滝のような汗をかきながら笑う彼に、助産師として駆けつけた同僚たちは不気味なものを見る目で彼の様子を伺った。それでも彼らも研究者だ。彼から産まれる種子を淡々と回収し、計測する。
 
「変異ヌメリツタの精液による種子妊娠の場合、概ね六から十個産まれるのが平均的だ。ミスミ、今何個目が出そう?」
「五個。まだまだ出てくる」
「大きさも基準値以内。魔力属性は土。至って標準的なヌメリツタの種子だ」
 
 冷静に分析する彼らの前で恥ずかしげもなく股を開き、会陰部に開けた膣口を晒した。これまで自分の計画を邪魔しようと目論んできた人々の顔が頭に浮かんで、見ていろよ、とにやけてしまう。
 馬鹿なことをするなと邪魔ばかりする父親。自分を嘲笑してきた騎士団時代の同僚たち。それから、あの腹立たしい元同級生。第三王子。
 股間には血の海が広がり、ぬらぬらと光る半透明のゼラチン質に覆われた鶏卵ほどの大きさの種子がごろごろとシーツに転がっていく。子宮内に残留していた最後の種子がメリメリと膣口を押し広げる。フラエは必死に荒い息をつきながら、下腹部へ懸命に力を込めた。

「あ、ふぅっ……、ぐ、っあ、っあ、う~っ……!」

 ぎゅう、ときつくシーツを握りしめた瞬間。ぼとんと湿った音を立てて、それは粘液の糸を引きながらベッドへと沈んだ。フラエはどっと襲い掛かる疲労感に目を瞑り、力の入らない身体を叱咤して右の拳を突き上げた。

「やっ、た……!」

 息も絶え絶えに力尽きて倒れ込むと同時に、「リンカー!」「お前いっぺん死んで馬鹿直せ!」「死ぬな!」と散々な声が聞こえたが、フラエは自分の出した成果に満足していたので、そのまま気を失うことにした。

 クアルトゥス王国では落ち葉の月二十一日、史上初めての男性による妊娠・出産が行われた。この知らせはすぐさま王宮へと届けられたが、あまりの荒唐無稽さに誰も信じる者はいなかった。

 リンカー公爵家の直系であるフラエ=リンカーが魔術によって身体の変化を行い、一般に「ハラマセソウ」と呼ばれるヌメリツタという植物の精液で孕んでいたことが噂になるのは、その翌日。
 フラエの所属する王立グラナ研究所が、身体変異による男性妊娠・出産に成功したことを正式に公表したのは、さらにその一週間後のことだった。
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