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15 混乱する朝食
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目が覚めると、俺は寝台に寝かされていた。外は随分と雨が降っていて、畑へは出られそうにない。隣には、まだ眠っているルイ様がいる。一緒に二度寝をしたい気持ちになって、やたらとそわそわした。
思い切って、布団に身体を潜らせて、抱きついてみる。全身がすべすべしていて、髪はさらさらだった。どうやら、誰かが清めておいてくれたらしい。
ルイ様の大きな身体が身じろぎをして、俺を抱きしめた。そして頭を撫でられて、俺は目を細める。
「起きてたんですか?」
「今起きた」
ふあ、と大きなあくびをしたルイ様につられて、俺も大あくびが出た。恥ずかしくなってうつむくと、ルイ様はくつくつと喉を鳴らして笑う。
「昨晩は、随分と大胆だったじゃないか」
「あれは……」
恥ずかしくなって、くるりと背中を向ける。ルイ様は俺を追って、お腹に手を回して引き寄せた。
それに応えてやろうと思って、振り向く。ちゅうと唇へ吸い付くと、ルイ様はまた笑った。俺はもう一度ルイ様へ抱きついて、首筋へ懐く。頭を撫でられて、うっとりと目を細めた。
だけどすぐに、身体が離れる。ルイ様は俺から手を離して、ベッドから立ち上がった。名残惜しくて見上げると、ルイ様は「我慢しろ」と囁いた。それが無性に恥ずかしくて、というか、照れ臭くて、うつむいた。
「俺は今日、会議がある。ここへは夜遅くまで戻らないかもしれないから、先に寝ていてくれ」
「はい」
俺は大人しく従うふりをして、頷いた。
だけど本音を言うなら、ルイ様が帰ってくるまで起きていたい。そして、驚かせてやろうと思う。
俺が密かに悪巧みを働いているとも知らず、ルイ様はベルを鳴らして使用人を呼んだ。俺はルイ様ともども着替えさせられて、食事を食べに食堂へと向かう。
雨が降っている。屋敷中に、雨音が染み付いて、どこか暗い雰囲気だった。
俺たちが食堂へ到着すると、そこにはエーミールがいた。思わず驚いて立ち止まる。エーミールは俺に笑いかけてくれたけど、どこかその表情はぎこちない。
そしてその隣には、マニュエル様が座っていた。平然とした表情で、真っ直ぐに前を見つめている。
ルイ様も動揺しているみたいで、動きが止まった。固まっている俺たちに、マニュエル様が微笑みかける。
「どうしたんですか? ほら、早く座ってください」
今日のマニュエル様は、どこか様子がいつもと違う。怖い。俺はエーミールに助けてくれと目配せをしたけど、エーミールはずっと目を伏せていた。
そして、あれ、と思う。エーミールの首筋には、何も巻かれていない。剥き出しの白い肌に、なんでか、嫌な予感がした。
ルイ様が先に、席へと座る。俺も慌てて、その後に続いた。やがて領主様ご夫妻がやってきた。
二人はエーミールをちらりと見て、驚いたように目を丸くする。奥方様が、扇をはらりと開いた。口元を隠してはいるけれど、眉は思い切りしかめられている。
「マニュエル。どうして使用人が、私たちの食卓に座っているのかしら」
びくり、とエーミールの肩が揺れた。その薄い背中に、マニュエル様の手が添えられる。まるで支えるようにさすってやるのが、こちらからも見えた。
ルイ様は、「あの野郎」と呆れたように唸る。
俺はおいてけぼりだ。とにかく今にも泣き出しそうなエーミールが心配でたまらなくて、嫌な予感が止まらない。とりあえず、いつでも涙を拭いてやれるように、ナプキンを握りしめた。たぶん礼儀作法的には間違いだろうけど、俺にとってはこれが今の正解だ。
全員の視線を一身に集めて、マニュエル様がにこりと微笑む。ちらりと、鋭い犬歯がのぞいた。
「エーミールは、私の番になりました。ですから私は、後継者として不適格です」
思い切って、布団に身体を潜らせて、抱きついてみる。全身がすべすべしていて、髪はさらさらだった。どうやら、誰かが清めておいてくれたらしい。
ルイ様の大きな身体が身じろぎをして、俺を抱きしめた。そして頭を撫でられて、俺は目を細める。
「起きてたんですか?」
「今起きた」
ふあ、と大きなあくびをしたルイ様につられて、俺も大あくびが出た。恥ずかしくなってうつむくと、ルイ様はくつくつと喉を鳴らして笑う。
「昨晩は、随分と大胆だったじゃないか」
「あれは……」
恥ずかしくなって、くるりと背中を向ける。ルイ様は俺を追って、お腹に手を回して引き寄せた。
それに応えてやろうと思って、振り向く。ちゅうと唇へ吸い付くと、ルイ様はまた笑った。俺はもう一度ルイ様へ抱きついて、首筋へ懐く。頭を撫でられて、うっとりと目を細めた。
だけどすぐに、身体が離れる。ルイ様は俺から手を離して、ベッドから立ち上がった。名残惜しくて見上げると、ルイ様は「我慢しろ」と囁いた。それが無性に恥ずかしくて、というか、照れ臭くて、うつむいた。
「俺は今日、会議がある。ここへは夜遅くまで戻らないかもしれないから、先に寝ていてくれ」
「はい」
俺は大人しく従うふりをして、頷いた。
だけど本音を言うなら、ルイ様が帰ってくるまで起きていたい。そして、驚かせてやろうと思う。
俺が密かに悪巧みを働いているとも知らず、ルイ様はベルを鳴らして使用人を呼んだ。俺はルイ様ともども着替えさせられて、食事を食べに食堂へと向かう。
雨が降っている。屋敷中に、雨音が染み付いて、どこか暗い雰囲気だった。
俺たちが食堂へ到着すると、そこにはエーミールがいた。思わず驚いて立ち止まる。エーミールは俺に笑いかけてくれたけど、どこかその表情はぎこちない。
そしてその隣には、マニュエル様が座っていた。平然とした表情で、真っ直ぐに前を見つめている。
ルイ様も動揺しているみたいで、動きが止まった。固まっている俺たちに、マニュエル様が微笑みかける。
「どうしたんですか? ほら、早く座ってください」
今日のマニュエル様は、どこか様子がいつもと違う。怖い。俺はエーミールに助けてくれと目配せをしたけど、エーミールはずっと目を伏せていた。
そして、あれ、と思う。エーミールの首筋には、何も巻かれていない。剥き出しの白い肌に、なんでか、嫌な予感がした。
ルイ様が先に、席へと座る。俺も慌てて、その後に続いた。やがて領主様ご夫妻がやってきた。
二人はエーミールをちらりと見て、驚いたように目を丸くする。奥方様が、扇をはらりと開いた。口元を隠してはいるけれど、眉は思い切りしかめられている。
「マニュエル。どうして使用人が、私たちの食卓に座っているのかしら」
びくり、とエーミールの肩が揺れた。その薄い背中に、マニュエル様の手が添えられる。まるで支えるようにさすってやるのが、こちらからも見えた。
ルイ様は、「あの野郎」と呆れたように唸る。
俺はおいてけぼりだ。とにかく今にも泣き出しそうなエーミールが心配でたまらなくて、嫌な予感が止まらない。とりあえず、いつでも涙を拭いてやれるように、ナプキンを握りしめた。たぶん礼儀作法的には間違いだろうけど、俺にとってはこれが今の正解だ。
全員の視線を一身に集めて、マニュエル様がにこりと微笑む。ちらりと、鋭い犬歯がのぞいた。
「エーミールは、私の番になりました。ですから私は、後継者として不適格です」
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