【本編完結】生活能力皆無の漫画家、お世話係の遊び人編集者をうっかり沼らせてしまう

鳥羽ミワ

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20. 生活能力皆無の漫画家、告白される

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 目を覚ます。
 隣には誰もいない。だけど全身が軋むように痛んだ。起き上がれなくて悶絶していると、ドアが開く。

「遥さん。大丈夫ですか」

 昨日と同じ呼び方で呼んでくれる。僕はほっとして、「圭人くん」と呼んだ。声は掠れて、風邪を引いたみたいになってる。

「あけましておめでとうございます」

 律儀に言うから、「あけましておめでとう」とぼそぼそ返す。
 圭人くんはにこりと微笑んで、「ご飯できてますよ」と囁いた。

「立てますか?」
「無理そう」

 甘えるように言うと、圭人くんは僕の身体を引き寄せた。簡単に抱き上げられて、「わ」と声が漏れる。

「じゃあ、連れていきますね」

 圭人くんの甘い声に、背筋がぞくぞくする。
 椅子に座らせてもらうと、お椀が出された。中には汁物が入っている。お雑煮だ。澄んだだし汁に、具はお餅と菜っぱ。

「いただきます」

 お雑煮なんていつぶりだろう。ありがたくいただく。もちもちと頬張っていると、正面の席に圭人くんが座った。彼もお椀を置いて、「いただきます」と手を合わせる。

 しばらく僕たちは、無言でお雑煮を食べた。
 僕が汁を飲んでいると、圭人くんはお箸を置く。

「遥さん。俺の話、聞いてくれますか」
「うん。なぁに?」

 僕も箸を置いて、圭人くんと向き合う。
 彼は少し息を吐いて、唇を噛んだ。

「……俺、最近、カウンセリングに行ってたんです」

 静かに始まった告白に、僕は頷いた。
 圭人くんは少しほっとしたように目を細めて、さらに続けた。

「俺は遥さんに依存してました。お世話を焼いて、感謝されるのが嬉しくて……だから、遥さんが自分で何かしようとすると、止めました。ごめんなさい」

 そして深々と頭をさげる。僕はおろおろと首を横に振った。

「でも、たしかに助かってたし」
「いいえ。俺は……遥さんを、尊重できてなかったから」

 訥々と語る圭人くんを、僕はじっと見つめた。それで、と彼は続ける。

「こんなのはおかしいって人に言われて、……カウンセリングに行きました。しばらくそこで、治療を受けました」

 すごく柔らかくて、傷つきやすい部分が、僕に委ねられている。僕は撫でさすって、甘やかしてあげたくなった。

 立ち上がって、軋む身体を引きずって、圭人くんの側へ寄る。肩をさすって、じっと目を見つめた。圭人くんは薄く笑って、椅子を後ろへ引く。

「膝、来ます?」

 僕は言葉に甘えて、圭人くんの膝に乗った。抱きかかえられて、僕からもぎゅっと抱きしめ返す。

「がんばったね」

 そうでもないです、と圭人くんは呟いた。僕は首を横に振って、首筋に懐いた。

「すごいことだよ。自分の面倒を、自分で見れているんだから」

 そっか、と圭人くんは呟いた。

「うん、そうです。カウンセリングに行って、執着心をどうしたいか相談して、でも分からなくてどうしようもなくて。それで昨日、やっと決めたんです」

 圭人くんは僕を見上げた。僕は左巻きのつむじの頭を抱き込んで、撫でてあげる。

「俺は遥さんが好きです。付き合ってくれませんか? 順番がめちゃくちゃで、すみません」

 僕は圭人くんを抱きしめて、うん、と頷いた。

「こちらこそ、僕でよければよろしくお願いします」

 圭人くんは顔をあげて、僕をじっと見つめる。もっと顔を見たくなって、僕はまじまじとその顔を覗き込んだ。
 圭人くんから顔を近づけられて、咄嗟に目を閉じる。ちゅっと唇が触れ合った。

「……一回、家に帰ってもいいですか」
「帰っちゃうの?」

 心細くて呟くと、圭人くんは「まさか」と笑った。

「俺の着替えを持ってきます。年末年始は、一緒に過ごしましょう」

 その言葉に、僕は舞い上がってしまった。つまり、お泊まりだ。
 僕は上機嫌になって、圭人くんへしきりにくっついた。くっつき虫になった僕へ、からかうように圭人くんが言う。

「キスしてくれないんですか?」

 その言葉に、少し恥ずかしくなって首を横に振った。もじもじと身体をよじって、なんとか本音を言う。

「……圭人くんからしてほしい」
「魔性め」

 罵るような言葉選びだけど、甘ったるい声だった。
 圭人くんは僕を引き寄せて、唇にキスをする。

 こうして、僕らは付き合い始めた。
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