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しおりを挟む暖かい気持ちのまま公爵邸に着いた。そのまま玄関エントランスまでエスコートして下さった殿下。まだそんなに遅い時間では無かった為アレンも起きておりセバスチャンやマリーと共に出迎えてくれた。
「お姉様、お帰りなさい!」 「「「お帰りなさいませ。」」」
皆の優しい笑顔が少し翳り、心配気に見てくる。それはそうだ、夜会に行く時のエスコートはリチャード殿下だったのに帰りはガブリエル殿下だから戸惑いがあるのだろう。
「皆んな・・・ただいま戻りました。
こちらは、ロワイス帝国の第三皇子殿下でガブリエル殿下よ。リチャード殿下とも御友人で・・・今日はお送り下さったの。」
皆が貴人に対する礼をとる。
「ああ、急に私がお送りする事になって驚かせてしまったね、申し訳ない。ロワイス帝国第3皇子のガブリエルだ。よろしく頼む。」
と柔らかな笑みを浮かべたガブリエル殿下。
「先に、殿下のご紹介からになってしまい申し訳ありません。」と伝えると
「いや、急に訪ったのは私だ夜会帰りにエスコート相手が違えば家人が不安になるのも致し方無い事だよ。気にしていないよ。」と言って下さった。
「お気遣いありがとうございます。
改めまして、こちらは私の弟でアレンと申します。順に執事のセバスチャン、侍女頭のマリーにお付きの者達です。」
皆が再度礼をとり、アレンに挨拶を促すと
「初めまして、ルヴェリス公爵家が長男アレンと申します。姉をお送り下さり感謝致します。」と再度頭を下げると
「いや、急にエスコートが変わり申し訳なかった。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。また、近い内に会う事になるだろう、また宜しく頼む。
だが、今日は送って来ただけだ。時間も遅いしこれで失礼するよ。公爵御夫妻に宜しくお伝え下さい。」
と告げられて穏やかな笑みを見せお帰りになった。
お見送りした後、ドレスを脱ぎ軽くシャワーを浴びた後身支度を整えサロンに行くとアレンとセバスチャン、マリー達が待っていた。
「お姉様、改めてお帰りなさい・・・大丈夫?何かあったの?」
と不安そうな顔を向けて来るアレン。本来ならばまだ幼い7歳の弟にまで告げる事はしないが、前回からの夜会に行く前のやり取りの事からもアレンが年齢よりもしっかりとしており次期公爵としての心構えもある為伝えて良いと判断した。
「そうね、何も無かったとは言えないわね・・・___。」と夜会であった事をある程度話す。
「そうだったんだね。相変わらずの人達でびっくりした。その他にもあったんだろうけれど・・・お姉様が無事で良かった。リチャード殿下も帝国からお帰りになったし、王家も、そしてさっきのガブリエル殿下もお姉様の味方だよね?」
と、そっと抱きつきながらキュルルンと見てくる。しっかりとした後継者の顔と可愛い弟の顔とのギャップよ___お姉さんは萌えです。我が弟が可愛くて仕方ない。
「そうよ。きっとこれからはもう少し良くなるはずよ。ありがとうアレン、皆んな。
明日、驚くといけないから言っておくわね___。」
と明日お父様達がOKを出せばガブリエル殿下がいらっしゃる事を伝える。皆びっくりしているがなんとなく察した様な顔をして頷いている。アレンには遅い時間となった為お休みなさいのハグをして自室に引き上げた。
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
そして翌日のお茶の時間頃にガブリエル、リチャード両殿下が公爵邸にお見えになった。
そして、両親揃う中ガブリエル殿下から婚約の申し込みがなされた。夜会での事等も含めて昨日リチャード殿下より大体聞いていた両親だが、良縁だと言うことは勿論であるのだがガブリエル殿下と帝国側の真意・・・思惑を図り兼ねていた。
「ガブリエル皇子殿下。お話は大変ありがたく、お受けしたいとは思うのですが、ご存知の通りアンリは半年程前に婚約破棄されております。それ以前も大変不本意ながら “ 無能 “ とのレッテルを貼られこの国の社交界では今の所力を発揮出来ておりません。殿下のお気持ちがあったとして、帝国皇家にはその事を受け入れて頂けるのでしょうか?
今までの事もありアンリには穏やかに、好きな事をして刻を過ごして欲しいと考えております。
もし、政略的な事が必要ならば他に適した令嬢もいるかと思うのですが。」
と、もっともな不安要素ではあるがが率直過ぎるとも思われる事が問われた。王国王弟として公爵家当主として、尤もな問いではあるが、何より、父として娘を思っての事だった。私もガブリエル殿下への気持ちはあれど政略的な婚姻となると厳しいと言わざるを得なかった。
それともう一つ懸念点があるのが、昨日の夜会で聞いた我が国の貴族達の失態。それも、一度や二度では無さそうな案件は我が国の対外的な立場が弱いと思われる。帝国との婚姻は、我が国には利があれど帝国には無い。ただでさえ大した強みの無い大きくも小さくも無い我が国、それでも婚姻を結ぶ意味が帝国側にあるのかと言う意味合いもあるのだ。
そんな肩身の狭い中強者である帝国に娘を嫁がせる事への不安が両親の心を陰らせていた。
ただ、以前のスキルを知らず使いこなせない私では無く、無限の可能性を秘めている現在は社交出来なくても婚家に不利益を与える事は無い。普通の貴族家であれば・・・・・だが今回は皇家であるのが問題だ。
私のスキルに関しては以前の “ 無能 “ では無く真の有用性に気付かれると使い潰される危険さえある程の利益を齎すだろう。この点において慎重に見極めてスキルを伝える必要がある。ガブリエル殿下が良くても周りからしたら知らなければ蔑みの、知れば欲望を叶えるただの道具になる可能性もある。
そんなリスクを前に、わざわざ苦労するかも知れない婚姻ならばする必要が無いと言うのが現状だ。
クリエイト出来る前から両親から公爵家は商会からの収益で充分賄える為、自由に生きて行きなさいとの言葉を貰っている。
今となっては自分の商会の利益だけで自由気ままな暮らしを満喫出来るのだから柵を抱えるくらいなら婚姻もしなくて良いと言うのが正直なところなのだ。
私の空間系の商品は世界的に見てもかなり有用な商品でどの国の王侯貴族も商人も喉から手が出る程欲しいと言わしめる物なのだ。社会的地位を欲しない私の将来は安泰だ。
そんな中、ロワイス皇家皇子の婚姻ともなればお互いの気持ちだけでは成すことは出来ないかなりの難関だ。
父の、様々な要素を加味した言葉にガブリエル殿下は穏やかな表情の中に凛とした皇家としての顔となり言葉を返した
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