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自由になった人々  3

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「レイラ・・・良かった」
と頬を濡らすラスティがいた。しかし次に彼の口から出た言葉は辛い気持ちを隠せない切ない響きを纏っていた。

「せっかく通じ合えたお前達に酷だが・・俺たちは__奴隷だ」

言葉を失う2人。暫くして先に言葉を発したのはレイラだった

「そう言えば・・私達、森の中__随分と奥に入った辺りに置いて行かれて、モンスターに襲われた・・・私しか戦えなくて、もう駄目かと思った。レオンが助けてくれたの?」

「俺もいたけど、俺たちの主人になった人のおかげなんだ・・・あの奴隷商は俺とラスティをレオン様とブランシーヌ様に売り付けたんだ。その時に嫌がらせでレイラ達を捨てる話をしてきた・・いや、捨てたとな。奴隷の俺は助けに行けない、絶望した・・・何とか助けに行けないか交渉しようとした時、お二人が皆んなを助けに行くと言ってくださったんだ。もう、陽が落ちるって時に一緒に来て下さった。そして襲われているお前達を見つけたんだ。

間に合って良かった・・・」

レイラが視線を向けて来た、私達に気付くと

「貴女がブランシーヌ様? そして、レオン様・・私達を助けて下さって本当にありがとうございます。しかも危険な夜の森の中にまで。」

「間に合って良かったわ。理不尽に戦争に駆り出された上に怪我の手当もされずなんの褒章も無いなんて許せないわ。」

「そうだ、君たちは何の咎も無いのに罪を捏造され戦わされた。彼の国と相手国には此方で制裁しておく。」
とレオンの低い声がその怒りを表していた

「奴隷の俺たちにここまで良くしてくれた・・・この命お二人の為に捧げる。」

アランが深く頭を下げ礼を言ってくれるが、彼らを奴隷のままにするつもりは無い。レオンと頷き合うと

「その気持ちは嬉しいけれど君達は自由の身だよ。安全な所まではこのまま私達に同行して貰ってそれ以降は君達の意志で決めて良いんだ。元々は何の落ち度も無い言い掛かりだ君達には自由の権利がある。」

「ですが、奴隷となっていた私達を買って下さった上に仲間を救って頂いた恩があります。」
と真摯な眼差しを向けてくるラスティ

「そうです。何より愛するレイラを助けて頂いた・・・この命あなた様方の為になら捨てられる。」
「私もです。お二人の為なら何でも出来ます。」
とアランとレイラまでもが言い募る

「私達はあなた達に命を掛けて欲しいなんて思ってないわ。折角助かったのよ?幸せになって欲しいの。」
ありきたりな言葉だけれど本当に幸せになって欲しい。上辺だけで伝わらない様に心を込めて話す。

「ありがとうございます。お心は伝わりました。しかし私達が出来る事と言えば戦闘くらいです。隠していたお金も治療費に消えました。どうか奴隷としてでも良いのです、使って下さい。出来ることならレイラ達と共にいられるなら嬉しいですが、今は心が繋がりました。レイラが生きている、それだけでも幸せです。」
と3人が頭を下げてくるが本当に奴隷のままでいて欲しいなんて思っていない。

「さっき2人とも “ ずっと側にいて欲しい“ ってお互い言ってたじゃない。そんなに切なそうな顔して・・・無理しないの。どうしても気になるなら “ 越後屋 “ のスタッフとして働いて頂戴?もちろん他の仲間達の安全も保証するわ。
安全な場所までの収入を得る手段にもなるし、どう? 」

と根負けして提案してみるとまだ “ 恩返し “  を気にしている様だったけれどそれで押し切った。 3人と仲間達皆んなと一緒に居られる喜びと、自分達の方だけに良い話だと気になるのとで複雑そうな顔をしていたけれど最後は

「「「よろしくお願いします。」」」と言ってくれた。こうして私達は新しい仲間を得たのだった。





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