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第11話 嵐の前の静けさ(前編)
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夏休みが終わり、金木犀の香りが鼻腔をくすぐり始めた季節の移り変わり目に、それはやってきた。
まだ雨は降っていないが、空は曇天で世界を暗く沈め、強まり出した風に窓が時々カタカタと震えている。
「休みだー!」
台風のため警報になったのだろう。急遽学校が休みになったと、陸の喜ぶ声が朝食の席に響いた。
「陸、うるさいよ。」
「ったく、警報くらいで休んでんじゃねぇよ。」
「そうですよ。学校はあいてるでしょう。」
陸とはうって変わって、警報ごときで休みにならない立場の兄弟たちは不機嫌そうに朝食を口にしている。モグモグと動かす口に、文句も一緒に飲みこんでいっているらしい。
「優羽、なにして遊ぶ?」
「え?」
そんな兄たちを尻目に、話題を突然ふってきた陸へと、優羽はボーッと眺めていた意識を呼び戻す。
台風かどうかは知らないが、なんだかダルい湿気に朝から頭が上手く働かない。
「ねぇ、何して遊ぶ?」
キラキラと嬉しそうな瞳で見つめてくる陸が眩しかった。
「陸は何したい?」
「僕にそれ聞いちゃう?思春期真っ只中の男子高校生がしたいことなんてひとつしかないけど。」
「え?」
引き寄せられた肩に目が覚めたのか、優羽はパチパチと驚いたように陸が近づいてくるのを見つめていた。
「いったぁ?!」
あと数センチで唇が重なる一歩手前で、陸が頭を抱えてうずくまる。
「油断も隙もねぇな。」
「別にいいじゃん!」
暴力反対だと、輝に抗議する陸の元気は一体どこからくるのだろう。
「優羽、大丈夫ですか?」
「寝不足かな?」
ギャーギャーと騒ぐ輝と陸を横目に、戒と晶が心配そうに声をかけてくれるが、優羽は首を横にふってそれを否定した。
寝不足ではない。
「輝が激しいから優羽が寝不足になっちゃうんだよ。」
「人聞き悪いこと言ってんじゃねぇよ。ちゃんと寝かしてやっただろ?」
同意を求める輝に、優羽は顔を赤くしながら小さくうなずく。
いつからこんなに堂々と男女の関係を赤裸々に口にするようになったのかはよく覚えていないが、彼らは本当に覗いているのではないかと疑えるほど、寝静まった深夜に何が行われているのかよく知っている。
いつどこで誰が何を
とりわけ優羽の事に関しては、隠しカメラでも仕込まれているのではないかと思えるくらいに、彼らの観察力はバカにできなかった。
「試作品で遊ぶのもほどほどにしてください。」
「うわー。戒がそれ言っちゃう?」
「優羽が鳴いて喜んでりゃ問題ねぇだろ。」
「優羽は可愛いから、ついつい苛めたくなるだろうしね。」
交わされる内容に顔を赤くした優羽を無視するように、彼らは朝食を食べ進めている。
どこで反論を口にすればいいかわからないが、プライバシーという言葉はこの家の中にはないらしい。
世間のルールも魅壷家では無意味。
「わたしも休むことにしよう。」
何を思い付いたのか、カチャンとコーヒーカップが軽い音をたてて室内の空気を沈めた。
水を打ったように静まり返った朝食の席で犯人は新聞から顔をあげると、満面の笑みを子供たちにむける。
「どうだい、お父さんと勝負をしようじゃないか。」
そのたった一言で、台風が迫っていることを理由に、彼らは全員、休むことを選択したらしい。
ポツリポツリと雨が降り始めた。
「あ。雨だ。」
窓の外へと視線を流した優羽の言葉に、全員がすっと目を細める。夏の渇きを潤すように、大地に恵みの雨が染み込んでいった。
「で、勝負がなんでドッチボールなのさ。」
ふてくされた陸の声が観客席に座る優羽にも聞こえる。
「みんな頑張って。」
まさか家の地下に体育館があるとは思っていなかったが、幸彦の言う勝負をつけるための代案がドッチボールだとはもっと予想出来なかった。
やるんだ。
正直な感想は胸にしまうとしても、危ないから観客でいなさいと仲間に入れてもらえなかったのは少し寂しい。
「じゃ、いっくよー。」
「ッ?!」
前言撤回。
あんなに可愛い顔をしているのに、陸は本当に悪魔なんじゃないだろうかと疑えてならない。
「危ないですね。」
普通の音ではない大砲のような玉を受け取った戒にも優羽は驚きを隠せないでいた。
「これ、ドッチボールだよね?」
誰にでもなく困惑した優羽の疑問は、視界にとらえるのも難しい早さで往復するボールの中に消えていく。
ドッチボールのルールは至って簡単。
けれど、今目の前で開催されるのはもはやスポーツといっても過言ではない。
「いくぜ。」
「いつでもおいでよ。」
なぜか対面で構えを見せる輝と晶の顔が真剣すぎて、その口角がそれぞれ楽しそうにあがっていた。
思わず眺めているだけなのに、ごくりと喉がなる。
彼らが何に対してでも真剣に取り組むことはわかったが、優羽は人生で経験したどの球技にも当てはまらない空気感に息をのんで見守るしかない。
「くそっ!」
ドーンっと、輝が放ったボールを両手で受け止めた晶が1メートルほど足をすべらせる。
「おしかったね、輝。」
にこりと、笑いながらボールを両手で軽く回転させた晶が今度は幸彦に向かってそのボールをなげた。
それから十五分。
一向に決着がつかなかった球技大会に、一人目の敗退者が決まる。
「かっ戒、大丈夫?」
ボールを取り損ねたら負け。
受け止めきれずに落としたボールを冷たい視線で見下ろした後、戒は不機嫌な顔で傍観する優羽のもとへとやってきた。
「負けました。」
「え?うん。残念だったね。」
「本当にそう思ってるんですか?」
「おっ思ってるよ。」
左隣に腰かけた戒の熱気に、思わず心臓がドキリと音をたてて固まる。
普段冷静な人物が額に汗を流して荒い息を吐くことが、どれだけの刺激を異性に与えるかなど、きっと戒は知らないのだろう。
「優羽?」
心配そうな顔で覗きこまれた顔が熱くなる。
抱かれている時だってみせない吐息と汗ばんだ肌に、ゾクゾクと欲情が刺激されるようだった。
「この勝負───」
「いったぁーーい!」
「───陸も負けたようですね。」
赤面したまま固まる優羽に手を伸ばしかけたいた戒の手が、陸の叫び声を聞いて思いとどまる。その叫び声に、はっと我にかえった優羽も慌ててその方向に顔を向けた。
「くやしー!負けた!」
「陸、お疲れ様。」
ドカッと右隣に座って天井に向かって叫ぶ陸の体も蒸気がほてっている。
たかがドッチボールに、ここまで汗ばむ試合が出来ることがうらやましいが、腕捲りをした陸の腕に思わず目がいく。
「あっつー。」
そう言って汗をぬぐう陸の顔が可愛さとかっこよさを混ぜ合わせているようで、心臓に悪かった。
「なんか飲みたい。」
「ッ?!」
ワガママを言うだけならまだしも、熱を帯びた目で見つめられると言葉につまる。
「そうですね、喉が乾きました。」
「かっ戒?!」
「ずるい、僕も欲しい!」
「りっ…ッふ~……んっ」
左隣の戒と右隣の陸に交合に奪われる唇に、体が揺れていく。
ふわふわと心地いい揺れに力が抜けて、優羽は押し倒されていった。
「何してんだ、てめぇら。」
「痛いっ?!」
「殴るなんてひどいです。」
どうやら負けたらしい輝が、観客席で三色団子を楽しむ席にやってくるなり、陸と戒の頭をはたいたようだった。
両脇で頭をさすりながら抗議を訴える二人から、優羽は輝に助け出される。
「優羽も簡単に許してんじゃねぇよ。」
「えっ?!」
どうして自分まで注意されなきゃいけないのか、納得がいかない。
「んな、顔で誘うなって。」
「誘ってなっ?!」
「はいはい。優勝商品は大人しく勝者が決まるまで我慢しろ。」
「ッ?!」
今なんて?!
輝の口から発せられた言葉の真意を問いたくても、ぐりぐりと撫でられる頭にそれは叶わない。
一体、どうして自分が景品のポジションに据えられたのかはわからないが、優勝者の好き勝手にされてはたまらない。
「父さんが勝つだろうけどね。」
「まぁ、晶もああ見えて負けず嫌いなので粘るんじゃないですか?」
「あー喉乾いた。なんか飲まねぇ?」
誰も優羽の憂(ウレ)いに答えるつもりはないらしい。
行き場をなくした賞品の疑問は、ぞろぞろと試合見物を放棄した兄弟たちに無視される。
「喉乾いたからなんか飲んでくるねー。」
「ルールは守りますよ。」
「ほら、優羽行くぞ。」
白熱する幸彦と晶はお互いがさも宿敵かのようににらみあっているが、その光景を見るとますますドッチボールという競技への奥深さに感心する。そんな二人に後ろ髪をひかれながらも、優羽は輝に差しのべられた手をとっていつ決着がつくかわからない体育館をあとにした。
ダイニングで冷たい飲み物を運んできた陸にお礼を言って、優羽はそのコップに口をつける。
「美味しい。」
飲んだことのないフルーツジュースだったが、さっぱりとした後味に自然と笑みがこぼれた。
「でしょ。これ、駅前に出来た新しいカフェのジュースなんだ。」
「駅前にそんなのありました?」
「出来たんだって。今度戒も行ってみなよ。なかなか静かだったよ?」
「静かっつっても、駅前なんか人が多いんじゃねぇの?」
「そんなことないって。」
ジュースひとつで会話に花が咲く。
わいわいと話す彼らの顔を順当に見つめながら、優羽は不満そうに息をこぼした。
うらやましい。
自分も陸や戒みたいに、街に出て色んなところに行ってみたい。
別に監禁されいるわけでも、不便を強いられているわけでもないが、やっぱり外の空気には触れてみたい。
「最近は図書館近くの喫茶店にしか行ってませんよ。」
「あそこのサンドイッチ美味しいんだよね。僕も久しぶりに行ってみようかな。」
「マスターまだ現役なのかよ。」
自分の知らない世界の会話はあまり聞いていて楽しいものではない。いつもなら彼らの話に心踊るはずが、なんだか少し気に障る。
「どうしたの?」
「ひゃあッ?!」
背後から突然耳もとで囁かれた声に反応した優羽の叫び声に、視線が集中する。
その元凶を確認した三人の顔は、そろって苦笑の息を吐き出した。
「晶も負けちゃったね。」
「勝てると思ったんだけどね。」
陸の差し出すジュースを受け取りながら、心底残念そうに肩を落とす晶の吐息に優羽の顔が真っ赤に染まる。
体から発せられる熱と吐息を至近距離で感じて平然としていられるほど、大人にはなりきれていなかった。
「ちょ…っ…あき…ぁッ──」
ジュースをこぼさないように持つ手が震える。
からみつくように背後から抱き締める晶の息に、優羽はギュッと目をつぶった。
「そういえば、何か悩み事?」
「───えっ……あぅ…ん。」
「ん?」
優羽は晶の雰囲気に負けないように目をつぶったままうなずいた。
でも、すぐにその目は開かれる。
「父さんに直接お願いしておいで。」
「……ッ…えっ?」
提案された意外な返答に目を開けてみたが、その先で顔と並行するように見せられた笑顔に胸が高鳴る。
不覚にも運動直後の彼らに変な意識がわいてしまった。
「きっと機嫌がいいから──」
「ッ?!」
「───ね?」
色気全開で迫ってくる真横の晶に言い返す言葉が出てこない。
言い様のない気恥ずかしさに顔を真っ赤にしたまま、優羽は黙って席を立った。
「優羽のお願いが聞いてもらえるといいですね。」
「その前に父さんのお願い事を聞くことになっちゃうんじゃない?」
「だろうな。ま、ヤらしいこと考えてた淫乱ちゃんには嬉しい願いじゃねぇの?」
火照る顔を両手で冷ましながら部屋を出ようとしていた優羽は、輝の一言でゆでダコのように赤くなる。
「~~っ…もぉ!!」
赤い顔のまま部屋を飛び出した優羽は、熱を冷ますように廊下を歩いていく。
別にイヤらしい願い事ばかり考えていた訳じゃないと反論したかったが、あながち間違ってもいなかっただけに、優羽は踏みしめて歩く階段の手すりにもたれかかった。
「はぁ~。」
深呼吸してから、二階の奥にある幸彦の部屋へとむかう。
どんな顔をして幸彦に何を言えばいいのかわからないが、先ほどリビングで感じたことを素直に言えばきっと大丈夫だろう。
「いいって言ってくれるかな?」
あまり自信はない。
「ここっていう特に場所はないんだけど、街に行きたいって変なのかな?」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、優羽は階段の踊り場を曲がり、二階の廊下を進んでいく。
別に何か欲しいものがあるとか、見たい映画があるとか、そういうのではない。俗にいうウィンドウショッピングがしたいだけなのだが、お金もなければ、移動手段もない。つまりは、少し都会に足を運ぶだけでも協力が必要不可欠になる。
「お金持ちって不便。」
ふんっと鼻を鳴らすことは十分すぎる贅沢に慣れたお嬢様そのものだというのに、優羽は廊下の壁にかけられた絵画にべーっと舌をつきだした。
「私もみんなと同じ世界がみたい。」
みんなが見るもの見て、みんなが感じるものを感じて、みんながすることをしてみたい。
仲間はずれになりたくない。
話す内容の全部を知りたい。
「外で遊ぶとかしたことないけど。」
施設の幼い兄弟たちの面倒をみる毎日で、遊びらしい遊びなんてしたことがなかった。
施設を出ることも考えていたが、生活をしていくために仕事をするためであって遊ぶためではない。高校進学を諦めたのもそういう理由が含まれている。
「いいって言ってくれますように。」
優羽は祈るように、たどり着いた幸彦の部屋の扉をノックした。
重厚なその扉はすぐに開いた。
幸彦の部屋に入るのは初めてなだけに、妙な緊張感が体を走る。
「早かったね。」
「えっ?」
「いや、こっちの話しだよ。」
大人な笑顔は、この人にしか出せないと思う。
どこかホッとさせるのに、妙に鼓動が跳ね上がってしまうのは、白熱した試合直後の熱のせいだけではない。
「あっ、お邪魔します。」
おずおずと辺りをうかがいながら、優羽は幸彦の背中を追いかけるようにその部屋へと身をくぐらせた。
「こちらに来なさい。」
柱ひとつない大きな部屋。
目の前をしめる壁一面は、床から天井まで透明なガラスでおおわれているからか、台風の暴風域に入った曇天でも十分に明るい。
右手にある天凱つきのベッドは品があって高そうだが、幸彦はそちらではなく、左手にある長机の方から優羽を手招きしていた。
「お仕事してたの?」
机の上に広げられたパソコンと積み上げられた書類が目に入る。
邪魔してしまったのかと、駆け寄るなり心配そうに見上げた優羽の腕は、次の瞬間、強く引かれて幸彦に抱き締められていた。
「ッ?!」
重なり合う唇にかかる吐息が熱い。
「…っ…あッ…ん……っ……。」
何度も角度を変えて、ついばむようなキスから濃厚に舌をからませ合うキスへと変化していく。
素直に幸彦のキスを受け入れながらも、優羽は聞いてもらいたいことを先に言っておこうと身体を離そうとした。
「あの…ね……ッ…あっ……」
立ったまま身体中を撫で回す幸彦の手のひらにゾクゾクする。
離れることを許されなかった状況に体を委ねると、自然と声が高鳴っていく。そうして乱れていく衣服が込み上げてくる快楽を吟味するように優羽の肌を幸彦の前に差し出した。
「アッ…っ…ゆき」
下着だけを器用に取り除かれたせいで、中途半端に脱げたワンピースの中で幸彦の指が暴れ始める。
「っ…アッ…ん……ぅ…っ……」
吸いつくように鎖骨に唇を落としてきた幸彦の腕の中で、優羽はお尻と胸を撫で回すその手に小さく声をあげていく。
こんな広い空間の中で密着した部分だけが、熱くて熱くてのぼせてしまいそうだった。
「アッ?!」
下肢に割り込んできた幸彦の指にビクリと緊張が全身を駆け抜ける。
崩れ落ちないように必死にしがみついた先で、優羽は体を硬直させた。
「ヒッ…っ~ッ幸彦さ……ま」
湧き出る愛蜜が止まらない。
「ッ…ねぇっ…ネッいいでしょ?」
「なんのことかな?」
与えられる快感に言葉が上手く続かない。
説明を飛ばして了解だけを得ようとした優羽を見上げるように、幸彦は指を根元まで挿入した。
「ヤッ~~っ、だからぁ…そっ外に…っアッ…遊びにッ!?」
グイッと奥深くで曲がった幸彦の指に、優羽は体を大きくのけぞらせる。
親指で敏感な部分をこすりながら、中をうごめく数本の指に、言わずと腰が動いていた。
「すまないね。よく聞き取れなかったから、もう一度言ってもらえるかな?」
「ッ…~アァ…だか…らッ……」
「だから?」
どんどん潤滑に乱れていく指の動きに、言葉がうまく出てこない。
立っている足を支えているだけでもやっとなのに、腰から抜け落ちてしまいそうな感覚に体中が震えていた。
「だ…ッ…か…らァァッァァ?!」
幸彦の肩を握り締めながら、優羽はその腰を激しく振り動かす。
力がうまく入らなくなってしまった足を必死に立たせながら、優羽は止まらない幸彦の愛撫を受け入れていた。
まだ雨は降っていないが、空は曇天で世界を暗く沈め、強まり出した風に窓が時々カタカタと震えている。
「休みだー!」
台風のため警報になったのだろう。急遽学校が休みになったと、陸の喜ぶ声が朝食の席に響いた。
「陸、うるさいよ。」
「ったく、警報くらいで休んでんじゃねぇよ。」
「そうですよ。学校はあいてるでしょう。」
陸とはうって変わって、警報ごときで休みにならない立場の兄弟たちは不機嫌そうに朝食を口にしている。モグモグと動かす口に、文句も一緒に飲みこんでいっているらしい。
「優羽、なにして遊ぶ?」
「え?」
そんな兄たちを尻目に、話題を突然ふってきた陸へと、優羽はボーッと眺めていた意識を呼び戻す。
台風かどうかは知らないが、なんだかダルい湿気に朝から頭が上手く働かない。
「ねぇ、何して遊ぶ?」
キラキラと嬉しそうな瞳で見つめてくる陸が眩しかった。
「陸は何したい?」
「僕にそれ聞いちゃう?思春期真っ只中の男子高校生がしたいことなんてひとつしかないけど。」
「え?」
引き寄せられた肩に目が覚めたのか、優羽はパチパチと驚いたように陸が近づいてくるのを見つめていた。
「いったぁ?!」
あと数センチで唇が重なる一歩手前で、陸が頭を抱えてうずくまる。
「油断も隙もねぇな。」
「別にいいじゃん!」
暴力反対だと、輝に抗議する陸の元気は一体どこからくるのだろう。
「優羽、大丈夫ですか?」
「寝不足かな?」
ギャーギャーと騒ぐ輝と陸を横目に、戒と晶が心配そうに声をかけてくれるが、優羽は首を横にふってそれを否定した。
寝不足ではない。
「輝が激しいから優羽が寝不足になっちゃうんだよ。」
「人聞き悪いこと言ってんじゃねぇよ。ちゃんと寝かしてやっただろ?」
同意を求める輝に、優羽は顔を赤くしながら小さくうなずく。
いつからこんなに堂々と男女の関係を赤裸々に口にするようになったのかはよく覚えていないが、彼らは本当に覗いているのではないかと疑えるほど、寝静まった深夜に何が行われているのかよく知っている。
いつどこで誰が何を
とりわけ優羽の事に関しては、隠しカメラでも仕込まれているのではないかと思えるくらいに、彼らの観察力はバカにできなかった。
「試作品で遊ぶのもほどほどにしてください。」
「うわー。戒がそれ言っちゃう?」
「優羽が鳴いて喜んでりゃ問題ねぇだろ。」
「優羽は可愛いから、ついつい苛めたくなるだろうしね。」
交わされる内容に顔を赤くした優羽を無視するように、彼らは朝食を食べ進めている。
どこで反論を口にすればいいかわからないが、プライバシーという言葉はこの家の中にはないらしい。
世間のルールも魅壷家では無意味。
「わたしも休むことにしよう。」
何を思い付いたのか、カチャンとコーヒーカップが軽い音をたてて室内の空気を沈めた。
水を打ったように静まり返った朝食の席で犯人は新聞から顔をあげると、満面の笑みを子供たちにむける。
「どうだい、お父さんと勝負をしようじゃないか。」
そのたった一言で、台風が迫っていることを理由に、彼らは全員、休むことを選択したらしい。
ポツリポツリと雨が降り始めた。
「あ。雨だ。」
窓の外へと視線を流した優羽の言葉に、全員がすっと目を細める。夏の渇きを潤すように、大地に恵みの雨が染み込んでいった。
「で、勝負がなんでドッチボールなのさ。」
ふてくされた陸の声が観客席に座る優羽にも聞こえる。
「みんな頑張って。」
まさか家の地下に体育館があるとは思っていなかったが、幸彦の言う勝負をつけるための代案がドッチボールだとはもっと予想出来なかった。
やるんだ。
正直な感想は胸にしまうとしても、危ないから観客でいなさいと仲間に入れてもらえなかったのは少し寂しい。
「じゃ、いっくよー。」
「ッ?!」
前言撤回。
あんなに可愛い顔をしているのに、陸は本当に悪魔なんじゃないだろうかと疑えてならない。
「危ないですね。」
普通の音ではない大砲のような玉を受け取った戒にも優羽は驚きを隠せないでいた。
「これ、ドッチボールだよね?」
誰にでもなく困惑した優羽の疑問は、視界にとらえるのも難しい早さで往復するボールの中に消えていく。
ドッチボールのルールは至って簡単。
けれど、今目の前で開催されるのはもはやスポーツといっても過言ではない。
「いくぜ。」
「いつでもおいでよ。」
なぜか対面で構えを見せる輝と晶の顔が真剣すぎて、その口角がそれぞれ楽しそうにあがっていた。
思わず眺めているだけなのに、ごくりと喉がなる。
彼らが何に対してでも真剣に取り組むことはわかったが、優羽は人生で経験したどの球技にも当てはまらない空気感に息をのんで見守るしかない。
「くそっ!」
ドーンっと、輝が放ったボールを両手で受け止めた晶が1メートルほど足をすべらせる。
「おしかったね、輝。」
にこりと、笑いながらボールを両手で軽く回転させた晶が今度は幸彦に向かってそのボールをなげた。
それから十五分。
一向に決着がつかなかった球技大会に、一人目の敗退者が決まる。
「かっ戒、大丈夫?」
ボールを取り損ねたら負け。
受け止めきれずに落としたボールを冷たい視線で見下ろした後、戒は不機嫌な顔で傍観する優羽のもとへとやってきた。
「負けました。」
「え?うん。残念だったね。」
「本当にそう思ってるんですか?」
「おっ思ってるよ。」
左隣に腰かけた戒の熱気に、思わず心臓がドキリと音をたてて固まる。
普段冷静な人物が額に汗を流して荒い息を吐くことが、どれだけの刺激を異性に与えるかなど、きっと戒は知らないのだろう。
「優羽?」
心配そうな顔で覗きこまれた顔が熱くなる。
抱かれている時だってみせない吐息と汗ばんだ肌に、ゾクゾクと欲情が刺激されるようだった。
「この勝負───」
「いったぁーーい!」
「───陸も負けたようですね。」
赤面したまま固まる優羽に手を伸ばしかけたいた戒の手が、陸の叫び声を聞いて思いとどまる。その叫び声に、はっと我にかえった優羽も慌ててその方向に顔を向けた。
「くやしー!負けた!」
「陸、お疲れ様。」
ドカッと右隣に座って天井に向かって叫ぶ陸の体も蒸気がほてっている。
たかがドッチボールに、ここまで汗ばむ試合が出来ることがうらやましいが、腕捲りをした陸の腕に思わず目がいく。
「あっつー。」
そう言って汗をぬぐう陸の顔が可愛さとかっこよさを混ぜ合わせているようで、心臓に悪かった。
「なんか飲みたい。」
「ッ?!」
ワガママを言うだけならまだしも、熱を帯びた目で見つめられると言葉につまる。
「そうですね、喉が乾きました。」
「かっ戒?!」
「ずるい、僕も欲しい!」
「りっ…ッふ~……んっ」
左隣の戒と右隣の陸に交合に奪われる唇に、体が揺れていく。
ふわふわと心地いい揺れに力が抜けて、優羽は押し倒されていった。
「何してんだ、てめぇら。」
「痛いっ?!」
「殴るなんてひどいです。」
どうやら負けたらしい輝が、観客席で三色団子を楽しむ席にやってくるなり、陸と戒の頭をはたいたようだった。
両脇で頭をさすりながら抗議を訴える二人から、優羽は輝に助け出される。
「優羽も簡単に許してんじゃねぇよ。」
「えっ?!」
どうして自分まで注意されなきゃいけないのか、納得がいかない。
「んな、顔で誘うなって。」
「誘ってなっ?!」
「はいはい。優勝商品は大人しく勝者が決まるまで我慢しろ。」
「ッ?!」
今なんて?!
輝の口から発せられた言葉の真意を問いたくても、ぐりぐりと撫でられる頭にそれは叶わない。
一体、どうして自分が景品のポジションに据えられたのかはわからないが、優勝者の好き勝手にされてはたまらない。
「父さんが勝つだろうけどね。」
「まぁ、晶もああ見えて負けず嫌いなので粘るんじゃないですか?」
「あー喉乾いた。なんか飲まねぇ?」
誰も優羽の憂(ウレ)いに答えるつもりはないらしい。
行き場をなくした賞品の疑問は、ぞろぞろと試合見物を放棄した兄弟たちに無視される。
「喉乾いたからなんか飲んでくるねー。」
「ルールは守りますよ。」
「ほら、優羽行くぞ。」
白熱する幸彦と晶はお互いがさも宿敵かのようににらみあっているが、その光景を見るとますますドッチボールという競技への奥深さに感心する。そんな二人に後ろ髪をひかれながらも、優羽は輝に差しのべられた手をとっていつ決着がつくかわからない体育館をあとにした。
ダイニングで冷たい飲み物を運んできた陸にお礼を言って、優羽はそのコップに口をつける。
「美味しい。」
飲んだことのないフルーツジュースだったが、さっぱりとした後味に自然と笑みがこぼれた。
「でしょ。これ、駅前に出来た新しいカフェのジュースなんだ。」
「駅前にそんなのありました?」
「出来たんだって。今度戒も行ってみなよ。なかなか静かだったよ?」
「静かっつっても、駅前なんか人が多いんじゃねぇの?」
「そんなことないって。」
ジュースひとつで会話に花が咲く。
わいわいと話す彼らの顔を順当に見つめながら、優羽は不満そうに息をこぼした。
うらやましい。
自分も陸や戒みたいに、街に出て色んなところに行ってみたい。
別に監禁されいるわけでも、不便を強いられているわけでもないが、やっぱり外の空気には触れてみたい。
「最近は図書館近くの喫茶店にしか行ってませんよ。」
「あそこのサンドイッチ美味しいんだよね。僕も久しぶりに行ってみようかな。」
「マスターまだ現役なのかよ。」
自分の知らない世界の会話はあまり聞いていて楽しいものではない。いつもなら彼らの話に心踊るはずが、なんだか少し気に障る。
「どうしたの?」
「ひゃあッ?!」
背後から突然耳もとで囁かれた声に反応した優羽の叫び声に、視線が集中する。
その元凶を確認した三人の顔は、そろって苦笑の息を吐き出した。
「晶も負けちゃったね。」
「勝てると思ったんだけどね。」
陸の差し出すジュースを受け取りながら、心底残念そうに肩を落とす晶の吐息に優羽の顔が真っ赤に染まる。
体から発せられる熱と吐息を至近距離で感じて平然としていられるほど、大人にはなりきれていなかった。
「ちょ…っ…あき…ぁッ──」
ジュースをこぼさないように持つ手が震える。
からみつくように背後から抱き締める晶の息に、優羽はギュッと目をつぶった。
「そういえば、何か悩み事?」
「───えっ……あぅ…ん。」
「ん?」
優羽は晶の雰囲気に負けないように目をつぶったままうなずいた。
でも、すぐにその目は開かれる。
「父さんに直接お願いしておいで。」
「……ッ…えっ?」
提案された意外な返答に目を開けてみたが、その先で顔と並行するように見せられた笑顔に胸が高鳴る。
不覚にも運動直後の彼らに変な意識がわいてしまった。
「きっと機嫌がいいから──」
「ッ?!」
「───ね?」
色気全開で迫ってくる真横の晶に言い返す言葉が出てこない。
言い様のない気恥ずかしさに顔を真っ赤にしたまま、優羽は黙って席を立った。
「優羽のお願いが聞いてもらえるといいですね。」
「その前に父さんのお願い事を聞くことになっちゃうんじゃない?」
「だろうな。ま、ヤらしいこと考えてた淫乱ちゃんには嬉しい願いじゃねぇの?」
火照る顔を両手で冷ましながら部屋を出ようとしていた優羽は、輝の一言でゆでダコのように赤くなる。
「~~っ…もぉ!!」
赤い顔のまま部屋を飛び出した優羽は、熱を冷ますように廊下を歩いていく。
別にイヤらしい願い事ばかり考えていた訳じゃないと反論したかったが、あながち間違ってもいなかっただけに、優羽は踏みしめて歩く階段の手すりにもたれかかった。
「はぁ~。」
深呼吸してから、二階の奥にある幸彦の部屋へとむかう。
どんな顔をして幸彦に何を言えばいいのかわからないが、先ほどリビングで感じたことを素直に言えばきっと大丈夫だろう。
「いいって言ってくれるかな?」
あまり自信はない。
「ここっていう特に場所はないんだけど、街に行きたいって変なのかな?」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、優羽は階段の踊り場を曲がり、二階の廊下を進んでいく。
別に何か欲しいものがあるとか、見たい映画があるとか、そういうのではない。俗にいうウィンドウショッピングがしたいだけなのだが、お金もなければ、移動手段もない。つまりは、少し都会に足を運ぶだけでも協力が必要不可欠になる。
「お金持ちって不便。」
ふんっと鼻を鳴らすことは十分すぎる贅沢に慣れたお嬢様そのものだというのに、優羽は廊下の壁にかけられた絵画にべーっと舌をつきだした。
「私もみんなと同じ世界がみたい。」
みんなが見るもの見て、みんなが感じるものを感じて、みんながすることをしてみたい。
仲間はずれになりたくない。
話す内容の全部を知りたい。
「外で遊ぶとかしたことないけど。」
施設の幼い兄弟たちの面倒をみる毎日で、遊びらしい遊びなんてしたことがなかった。
施設を出ることも考えていたが、生活をしていくために仕事をするためであって遊ぶためではない。高校進学を諦めたのもそういう理由が含まれている。
「いいって言ってくれますように。」
優羽は祈るように、たどり着いた幸彦の部屋の扉をノックした。
重厚なその扉はすぐに開いた。
幸彦の部屋に入るのは初めてなだけに、妙な緊張感が体を走る。
「早かったね。」
「えっ?」
「いや、こっちの話しだよ。」
大人な笑顔は、この人にしか出せないと思う。
どこかホッとさせるのに、妙に鼓動が跳ね上がってしまうのは、白熱した試合直後の熱のせいだけではない。
「あっ、お邪魔します。」
おずおずと辺りをうかがいながら、優羽は幸彦の背中を追いかけるようにその部屋へと身をくぐらせた。
「こちらに来なさい。」
柱ひとつない大きな部屋。
目の前をしめる壁一面は、床から天井まで透明なガラスでおおわれているからか、台風の暴風域に入った曇天でも十分に明るい。
右手にある天凱つきのベッドは品があって高そうだが、幸彦はそちらではなく、左手にある長机の方から優羽を手招きしていた。
「お仕事してたの?」
机の上に広げられたパソコンと積み上げられた書類が目に入る。
邪魔してしまったのかと、駆け寄るなり心配そうに見上げた優羽の腕は、次の瞬間、強く引かれて幸彦に抱き締められていた。
「ッ?!」
重なり合う唇にかかる吐息が熱い。
「…っ…あッ…ん……っ……。」
何度も角度を変えて、ついばむようなキスから濃厚に舌をからませ合うキスへと変化していく。
素直に幸彦のキスを受け入れながらも、優羽は聞いてもらいたいことを先に言っておこうと身体を離そうとした。
「あの…ね……ッ…あっ……」
立ったまま身体中を撫で回す幸彦の手のひらにゾクゾクする。
離れることを許されなかった状況に体を委ねると、自然と声が高鳴っていく。そうして乱れていく衣服が込み上げてくる快楽を吟味するように優羽の肌を幸彦の前に差し出した。
「アッ…っ…ゆき」
下着だけを器用に取り除かれたせいで、中途半端に脱げたワンピースの中で幸彦の指が暴れ始める。
「っ…アッ…ん……ぅ…っ……」
吸いつくように鎖骨に唇を落としてきた幸彦の腕の中で、優羽はお尻と胸を撫で回すその手に小さく声をあげていく。
こんな広い空間の中で密着した部分だけが、熱くて熱くてのぼせてしまいそうだった。
「アッ?!」
下肢に割り込んできた幸彦の指にビクリと緊張が全身を駆け抜ける。
崩れ落ちないように必死にしがみついた先で、優羽は体を硬直させた。
「ヒッ…っ~ッ幸彦さ……ま」
湧き出る愛蜜が止まらない。
「ッ…ねぇっ…ネッいいでしょ?」
「なんのことかな?」
与えられる快感に言葉が上手く続かない。
説明を飛ばして了解だけを得ようとした優羽を見上げるように、幸彦は指を根元まで挿入した。
「ヤッ~~っ、だからぁ…そっ外に…っアッ…遊びにッ!?」
グイッと奥深くで曲がった幸彦の指に、優羽は体を大きくのけぞらせる。
親指で敏感な部分をこすりながら、中をうごめく数本の指に、言わずと腰が動いていた。
「すまないね。よく聞き取れなかったから、もう一度言ってもらえるかな?」
「ッ…~アァ…だか…らッ……」
「だから?」
どんどん潤滑に乱れていく指の動きに、言葉がうまく出てこない。
立っている足を支えているだけでもやっとなのに、腰から抜け落ちてしまいそうな感覚に体中が震えていた。
「だ…ッ…か…らァァッァァ?!」
幸彦の肩を握り締めながら、優羽はその腰を激しく振り動かす。
力がうまく入らなくなってしまった足を必死に立たせながら、優羽は止まらない幸彦の愛撫を受け入れていた。
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