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第12話 過保護な男たち(前編)
しおりを挟む嵐も無事に過ぎ去り、まだ暑さが残る秋の入り口。
無駄に広いリビングのソファーに埋もれながら、手渡されたばかりの小さな機械相手に優羽はひとり奮闘していた。
「あれ?」
説明書を読んでいるうちに、何故か音をたてて真っ黒になってしまった画面に焦る。
「こ…こわしちゃった……かも?」
どのボタンを押しても動こうとしない平らな機械に、優羽の焦りはますます募っていく。
今朝、出掛け間際に幸彦がくれた携帯は、半日たった今になっても使い方がよくわからなかった。誰かに教えてもらおうにも、晶は病院に行ってしまったし、輝は作業室にこもっている。戒は図書館で、残る陸も今日は元気に高校へ登校しているはずだ。
「どっどうしよう……」
もらった日に壊してしまったと、焦った頭が混乱する。
混乱すればするほど、泣きそうになってきた。
「なにしてんの?」
「ッ!!?」
背後からかけられた声に驚いて思わず振り返ると、いつの間にか帰ってきたらしい陸が不思議そうな顔で立っていた。
縮こまりながら必死に何をしているのかと声をかけた陸は、まさか涙目で見上げられると思っていなかったのだろう、驚いたように目を瞬かせると優羽の隣に腰かける。
「どうかしたの?」
「~っ…りくぅ~~」
タイミングよく現れた助っ人に、優羽は抱きつかんばかりの勢いで陸に壊れた電話を差し出した。
「どうしようっ…今朝もらったばかりなのに、もう壊しちゃったの……」
「えっ?」
何のことかサッパリわからないらしい陸が、首をかしげながら半ば強引に差し出された優羽の携帯を受けとる。
それと優羽を交互に見つめながら「誰にもらったの?」と、怪訝な表情で疑問をなげかけた。
「お義父さんが仕事に行く前にくれたんだけど、使い方がよくわからなくて……説明書読んでたら、ピーっていって、真っ暗になって……どうしよう、陸!やっぱり、壊しちゃったのかなぁ?」
混乱で早口になりながら説明らしい説明も出来ずに、優羽は陸を見つめる。
陸は怪訝な表情から、難しい顔に変わり、何とも言えない表情を浮かべていた。
「どっどう?」
ただ黙って見つめてくる陸の姿に、優羽はイイ返事がくることを祈っていた。
「うーん。」
裏返したり、ボタンを押してみたり、考えるように機械に指を滑らす陸の行動をじっと見てみる。
サッパリわからない。
なんとか陸に救いの希望を見いだそうと、優羽は陸の横で大人しくジッとその様子を見守っていた。けれど、陸はフッと小さく笑いをこぼしただけで、意地悪く優羽を見つめる視線を細めてくる。
「あ~あ~。ダメだね、もうコレこのままだと動かないよ。」
「えっ!?そんなっ?!」
絶句した優羽の姿に、陸が眉を寄せて微笑んだ。
「まぁ、なんとか出来ないこともないけど?」
「ほっホントっ!?」
助かる見込みがあるのなら是が非でも教えてもらいたい。
優羽は、陸にすり寄るようにその距離を縮めてその答えを待った。
「うん、でも───」
「でも、何?」
もったいぶる陸に、優羽は真剣な顔をよせる。
何か現状を打開する方法があるのなら聞いておきたい。
「───僕もちょうど困ってるとこなんだよね。」
「陸も?」
それは意外だった。
パット見、悩みなんてなさそうだが、学校で何かイヤなことでもあったのだろうか。
「うん。もし、優羽が僕の困ってることを助けてくれるっていうなら僕も助けてあげる。」
「えっ?」
全然そんな風には見えないが、悩みごとのひとつやふたつ持っていてもおかしくないと、優羽は首をかしげた。
携帯の事で頭がいっぱいだったが、確かに陸の様子はいつもと違っているように見えないこともない。もっとも陸のことだから、それが悩みなのかどうなのか検討もつかない。
「私でよかったら、なんでもするよ?」
「絶対?」
「うん。」
当然だと安易にうなずいた優羽の顔は、してやったりな陸の顔をみて固まった。
にっこりと極上の笑みを浮かべる悪魔との取引は、もちろんなかったことには出来ない。
「っ!?……んっ?!」
どうしてこんなことになったのだろうか。
現状が理解できないまま、優羽はそのままソファーに押し倒されるようにして、陸に唇を奪われていた。
予想できた予想外の出来事に、舌を絡めとってくる陸からわずかに身を引いた優羽は、慌てて両手で陸の肩を押さえた。
「まっ待っ…ンっ……はぁ…ッ」
「ん~なにぃ?」
「こま…困ってるって……アッ?!」
黄昏時の赤い夕日が差し込む窓を背景に、ソファーのスプリングが抵抗の音をあげる。
邸宅の広いリビング。
質のいい調度品に囲まれた空間の中で、乾燥花の香りが鼻腔をくすぐっていく。
「ッン~…っ…はぁ」
年下のくせにビクともしない力強さに組敷かれ、ついばむように角度をかえる舌の隙間から言葉を探してるうちに、陸の手は優羽の服をほぼ半分まで脱がしていた。
「ヤッ…んぁ…ッ…りく…ぅ…」
服の中に潜り込んでくるような陸の動きに優羽の身体は反応する。
慣れた手つきはどこで覚えたのか、キスひとつで自由が簡単に奪われるほど、その口付けは可愛さからはほど遠い。
「ダーメ。ほら、もっと僕に頂戴。」
身体がしびれる。
ワンピースの下から取り払われたブラジャーに、衣服の中で陸の手が楽しそうに小さな実を収穫した。
「アッ?!」
ビクリと反応したせいで、陸が嬉しそうに笑う。
「優羽、可愛いっ。」
「ッ…あっ…ん…」
至近距離に見える天使の微笑みに、顔が赤くなるのがわかる。
夏は終わったはずなのに、カッと昇った血が身体中を熱くさせていた。
「あっ…ヤッ?!」
服を捲(マク)られ、指になぞられて甘い吐息をこぼす肌が露(アラワ)になる。
「美味しそう。食べちゃってもいいよね?」
「ッ?!」
ソファーに押し倒されながら吸い付かれた箇所は赤く尖り、コロコロと陸の口内で固く形を変えていく突起物の存在を噛み締めながら、優羽は柔らかな陸の髪を握りしめた。
「勉強に集中できなくてさぁ~。」
「くっ…んッ…ヒッ…あ」
「優羽が僕の学校の制服なんて着たのが原因なんだよ?」
「そ…っ…なァッ!?」
左右の胸のあいだに顔をうずめながら、陸が見上げてくる。
ご丁寧にもしっかりつかまれた優羽の胸は陸の手の中で無惨に潰れ、親指と人差し指にもてあそばれた乳首が敏感に反応していた。
「責任とってよねぇ。」
「ん…ッ…ヤッあっ」
「優羽ってば、聞いてる?これって僕にとっては、けっこう大きな悩みなんだよ?」
はぁ~と、深いため息をつきながらも陸の手の動きは止まることを知らない。
「だからさぁ、ちゃんと勉強に集中できるようになるまで優羽に助けてもらいたいんだよね。僕が中間テストでひどい点数をとった責任、とりたくないでしょ?」
どの顔がそんなことを言うのだろうかと思うが、可愛らしい外見に似合わない指の動きが優羽に意見を言わせないでいた。
「あっ…りク…だッテ……」
「さっき、"なんでも"するっていったよね?」
「それ…ゎッあ!?」
胸から左右のヒザ裏に手の位置を変えた陸に、優羽の下半身が持ち上げられる。
悩みを解決させるには十分な準備が出来ている優羽をみて、陸の口角がまたあがった。
「こんなに濡れてたら下着の意味ないよね?」
「んぅッ」
「あっ!そうだ。優羽に携帯の使い方教えなきゃいけないんだったっけ?」
優羽の下半身から意味のなさない下着を奪い去った陸が、思い出したように顔をのぞきこんでくる。
にこにこと嬉しそうに声が弾んでいるが、「ねっ」と、笑顔で首を傾けられても、優羽にはどう答えてイイのかわからなかった。
「イヤぁッ!?」
「ほんと優羽って可愛い~。」
天使の誘惑に気を抜いたのがいけない。
「アッ…やめ…そこダ…メ…ッ」
奥深くまでめり込むように差し込まれた指が苦しかった。
「"そこ"が"ダメ"じゃなくて、"ここ"が"イイ"の間違いでしょ?」
遠慮を知らない陸の指が音をあらげて優羽を体の芯から責め立てる。
「優羽のことに関する問題なら、いつでも満点とれるのになぁ。」
快楽から逃れようにも、速度をましては絶妙にツボを押してくる陸の指に優羽は身をよじって答えるしかない。
吐息を喘ぎに変えてもまだ、快感に逆らおうとする優羽の姿に、陸はすねたように口をとがらせた。
「よりにもよって、父さんと同じ機種にしなくてもよかったんじゃない?」
「ンッ…ぁぁっあ…クッ──」
「いっそ、本当に壊しちゃって僕とおそろいにしようよ。」
「───りク…イッぅ…ヤァアッ!?」
何が起こったのかわからない。
曲げられたはずの足はピンッと伸びるように天井をさし、秘芽に押し当てられた正体に優羽は享楽の悲鳴をあげた。
先ほど電子的な音をたてて壊れたのと、よく似た平ら型の機械。
携帯にどんな機能が基本常備されているのかはわからないが、淫核に押し当てられたソレは明らかに振動している。
「あっ、これ?大丈夫、僕の携帯だから。」
そういう問題じゃない。
変に与え続けられる振動は、快楽を知る優羽にはもどかしくて物足りない。
だが、携帯にそんな機能がそなわっていることを知らない優羽にとっては、それどころじゃなかった。
「だめ…ッ…こわれ…ちゃ…ぅ」
「えっ、この程度じゃ優羽は壊れたりしないよ?」
「そ…じゃなッて…くの…っ…陸の携帯が」
「ん?ああ。そうだよねぇ~、ビックリしちゃった。」
あははと笑う陸に、優羽は笑い返すことなど出来ない。
自分の携帯にくわえて、陸の携帯まで壊してしまったらどうしようと気が気じゃなかった。
足の間に埋もれる陸へと視線を向けながら、優羽は陸の行為を阻止しようと両手を伸ば───
「ヒァァァアやッ?!」
───せなかった。
「あはは、やっぱり優羽にはコッチだよね。どう、気持ちいい?」
視界が点滅する。
何故か近代科学の結晶でもあるスマホが、どこかで見たことのある小型のマッサージ機に変わっている。
いつの間に変わったのか問いかける間もなく、優羽の身体は弓なりにのけぞり、微弱な振動から激動へと変化した快感が痙攣を引き起こしていた。
「イクッ…な…~ッ…あぁ」
陸の指を加えたまま、削り取られるように押し当てられた機械にクリトリスが悲鳴をあげる。
「この家って変な人ばっかりでしょ。だから、色んなところに色んなモノを隠してあるから気を付けた方がいいよ。」
「ッひ…メッ…く陸っアァァア」
「ねぇ、優羽。僕の悩みを解決してくれる気、全然ないでしょ?」
連続する絶頂の波から逃れたくても腰が浮くばかりで、何の解決にもならない。
可憐な乙女がぐちゃぐちゃに鳴いているのに、可愛く笑いながらそれを犯し続ける陸はやっぱり悪魔だと思った。
「あ、ヤバ。僕のヤツ本当に壊れちゃったかも。」
「えっ?!…ちょ…~ッんンッ」
「まぁ、ちょうど機種変更しようと思ってたし、優羽とオソロイの買うからいいよ。」
「でも…ぁ…あアッ」
会話が噛み合わない。
こんなに近くにいるのに、手が届く距離にいるのに、まるで悦楽の底無し沼にひきずりこまれていくように身体がソファーに沈んでいく。
キモチイイ
全身を駆け巡る電流のような刺激に、顔の筋肉がゆるんでいく。
「優羽ってば、今、すっごい可愛い顔してるよ。そんなに僕の指、美味しい?」
「ンッ…あぅ…~んッ…アッ」
「あー。その顔、写メしたいー。」
自分の携帯を脇に放り投げた陸が、すり寄るように優羽の体に倒れこんできた。
けれど、更に深く挿入された指と、押し潰される淫核、吸い付くように這わせられる舌の感触に優羽は身体をしならせることしかできなかった。
「ま…たッイク…いっアァァァアっ」
「ぐっちょぐちょ~。」
やっと解放される。
輝の試作品と、陸の指が下半身から離れていくのを感じとりながら優羽は痙攣する身体を自然に委ねていた。
「じゃ、次は僕の番ね。」
荒く胸を上下させる優羽を見下ろしながら陸は言葉通りに濡れた優羽の秘部に自身をあてると、いっきに貫いた。
「っアァァア───」
グイッと曲げられた膝に陸の両手が、彼の体重をのせてくる。奥深くまで侵入してくる"陸の悩みの種"は、優羽の中でますます大きく膨らんだ。
「ねぇ、優羽。充電器どこ?」
優羽の身体を上から押さえつけるように腰を差し込んだ陸が、キョロキョロと何かを探すそぶりをみせる。
何のことを言っているのかわからない優羽は、顔をゆがませながら陸を見上げた。
「だからぁ、優羽の携帯。ただの電池切れだから充電しなきゃダメなんだけどさぁ、充電器が見当たらないんだよね。」
「じ…ッ?!」
後でいいかと、一人で勝手に話を結論付けた陸に、優羽の意識は鈍痛に泣く。
「携帯の充電が完了するまで、僕と遊ぼ。」
それはもう本当に陸の遊びに近いほど、優羽の身体はもてあそばれる。
跳ねては鳴き続ける身体に限界を感じる頃まで、それは止まらなかった。
─────────…
「それじゃあ、ためしに電話かけてみなよ?」
充電が完了してからしばらくして、優羽はなんとか解放された。
壊れていなくてよかったとホッとしたのも束の間、教えてくれる気があるのかないのか、陸の指はいまだに優羽の体中を撫でまわしている。
「ほら、僕の指に感じてないで、こっちね、こっち。」
まだ誰の登録もされていない携帯の上を陸の指がすべっていく。
あまりの速さに目をまたたかせていた優羽は、突然鳴りだした音楽に小さな悲鳴をあげた。
「あはは。えっとね、これが僕の番号。こうして、こうしたら登録が出来るから。でも、僕ら以外の人に教えちゃ許さないからね。」
渡された液晶には、陸の番号らしきものがうつっていた。
わかった?と顔を覗き込んでくる陸に、優羽はうなずくことしかできない。
せっかく義父からのプレゼントを上手に使いこなせる先生があらわれたのに、陸の指は携帯ではなく優羽の身体に快楽を教えていた。
「ッヒァ?!」
また、百点満点の解答で陸の指が一番いいツボを刺激する。
「あ、そうだ。優羽のカメラで撮ってあげるよ。そのイキ顔。」
「イヤァッ?!」
「大丈夫、大丈夫。可愛いから。あとで、僕にちゃんと頂戴ね。」
携帯を取り返すことも出来ないどころか、登り詰めてくる快楽に優羽は勝てなかった。
絶頂に勝つ術はどうすれば手に入るのかわからないが、体力の若さが底抜けの陸相手に精神を正常に保とうとする方がどうかしているのかもしれない。
「っ…くっ陸…~っ」
やまない愛撫に、呂律までもがうまく回らなくなってくる。
「もぉ…だ…ヤ…らッ!!?」
「写メとったし、僕の番号は登録したし、教えることもうないよね?」
ポイッと携帯を放り投げた陸が、これで心おきなく優羽を抱けると宣言した。
じゃあ、今まではなんだったのかと恨めしそうな瞳で陸を見た優羽は、すがる相手が悪かったことを今更ながらに痛感する。
「ちゃんと約束が守れるように、今度は身体に教え込ませてあげるからね。」
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