【R18】愛欲の施設-Love Shelter-

皐月うしこ

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第15話 休息の愛撫 (後編)

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泣いて鳴いて必死に捕まる少女を堪能するように、輝は乱れる優羽をもてあそびながら、ふっと笑い声を漏らした。


「そんなに気持ちいいか?」


うつろな瞳に、上気したホホと、半開きの唇。視点の合わない弛んだ筋肉が、優羽の顔を恍惚に染めている。思わずのどを鳴らしてしまうほどの色気に、知らずと快楽へ導く指先にも力がこもった。


「答えねぇと知らねぇぞ?」


からかうように耳元で囁けば、優羽は面白いほど素直に、うんうんと首を縦に振ってそれに答える。


「知ってる。」

「ッ?!」


その低く甘い声音が、優羽の心をブルブルと震わせ、より一層与えられる快楽を明確にしていた。

こんな声知らない

こんな眼知らない

意地悪としか思えないほどひどいことをされているはずなのに、気持ちいいと感じてしまう体に怖くなる。


「なに、頑張って我慢してんの?」


からかうような輝の声に、まだ何もされていない蜜壺の奥底から潤滑油が溢れ出すのがわかる。


「らっ…~ッて」

「だってもくそもねぇよ。」


声を噛み締めながら抱きつく優羽の耳に、花弁を強制的に開く輝の声が笑いかけていた。


「ちゃんと磨いてやらねぇとな。」


赤く充血して尖った先に、優羽の奇声じみた狂声が染み渡る。
ぷっくりと表現できるほど可愛らしくイビツに主張した乙女の蕾は、極細毛の摩擦に泡を吹いて喜んでいた。


「固く尖らせて喜んでばっかじゃ、説得力の欠片もねぇぜ?」


壊れたオモチャのように、三度目の絶頂以降、しがみつくこともままならなくなった優羽の身体は抱き起こされる。


「俺をあんま興奮させんな。我慢されると余計に虐めてやりたくなる。」


歯磨きとは名ばかりの情欲の躾(シツケ)に、綺麗にされた優羽の身体には細かな汗の粒が浮かんでいた。

あつい

沸騰するように、前後する呼吸の音だけが吐息の狭間を行き来している。
制御出来なくなった強制快楽の連続のせいで、ぐったりと脱力した優羽にまだ満足しないのか、背後から伸びて固定された輝の指は止まらない。

時々思い出したように暴れる優羽をなだめながら、集中的にただ一ヶ所だけを拷問し続けていた。


「優羽の具合はどう?」

「歯磨きタイムがお気に召しててな。」


着替え終えたらしい晶と戒がそろって顔をのぞかせる。
自分達がお風呂にいれた意味があったのかと疑いたくなるほど水滴にまみれた優羽と、対照的に一糸乱れない輝の姿に、思わず両名から呆れたため息が吐き出された。


「でも、まぁ。たしかに気に入っているようですね。」


優羽の叫声と泣き顔に、クスクスと笑いながら近寄ってきた戒は輝と向かい合うように優羽の前へとやってくる。
その重みでギシッとわずかにベッドがきしんだが、その視界に歯ブラシしか見えていない優羽には誰がきたかなんてどうでもよかった。

もう無理

感じすぎて痛いほどに麻痺した淫核は、空気が当たるだけでもスースーと存在を凝らしめてくる。


「美味しそうに腫れてますね。」

「輝。優羽が暴れないように、ちゃんと固定してくれるかな。」


何をするつもりなのだろう。
優羽は隣で、何かのフタを開けてドロリとした液体を指先にからませた晶へと視線を動かす。
まともな思考を停止した頭では、それが何を意味するものなのかは、さっぱり検討もつかなかった。


「ッ?!」


歯ブラシを放り投げた輝の手が、太ももの付け根を押さえるように優羽の足を固定する。膨らんだ果実がパックリと割れて、ヒクヒクと卑猥な呼吸を繰り返していた。


「ヒァッ?!」


今までの痛覚に近い刺激とは真逆のぬるっとした柔らかい感触が、晶の指先からこぼれ落ちて蜜壺へと導かれていく。


「イヤァァアッ」


敏感な芽を親指の腹でなぞりながら、複数の指が差し込まれ。今度は穴の奥まで出入りを繰り返すもどかしさに優羽は暴れた。


「優羽、じっとしてください。」

「可愛い優羽のために、アフターケアをしてるだけだよ。」


口調は優しいが、逃げたり閉じたりしないように、羽交い締めされた輝の腕の中で悶え喘ぐ優羽にその声は届かない。
晶の真似をするように自身の指先にもクリームらしき薬湯をすくった戒の愛撫も加わったせいで、それどころじゃなかった。


「やッ晶っ戒ッ?!やだやッヤァァ」


何本もの滑る指先に、飛沫して飛び散っていく愛液に声が枯れそうになる。


「そう言いながらしっかりイッてんじゃねぇか。」


グイッと上を向かされた顎に、覗きこむ輝の唇が重なったおかげで、絶頂に助けを乞う言葉は吸い上げられて消えていく。


「戒、こっちにもそれくれ。」


輝にその中身を渡すなんてどうかしている。
いや、そもそも中身がただの美容液だったとしても三人の技師にかかれば、それはもはや媚薬レベルの効果効能をうたえるに違いない。


「乳首までたたせてどーすんだよ。」


肌を滑り始めた輝の手のひらに、今度は胸までも捕まってしまった。
固く尖った先端が捕まれ快感がビリビリと駆け抜けていく。


「気持ち良さそうですね。」

「ひッ?!」


昨日晶に処女を奪われた肛門に、グイッと昇るように戒の指が押し込まれてきた。


「患部には奥までしっかり塗る方がいいんだよ。」


だからじっとしてと、意味がわからない晶の指も深く淫角の裏側を堪能するように侵入していた。

全身を撫で回される感覚に意識が飛ぶ。

何度も何度も指先まで往復を繰り返す六本の腕と三十本の指先に、五感を封印する方法があるなら今すぐにでも教えてほしい。


「やめ…~っほんとッバカになぅッ」


ビクビクと勝手に跳ねる快感に、頭の中にあるシナプスがぷちぷちと切れる音がするみたいだった。
何も考えられない。
バカみたいに、あーあーとしか繰り返せない声帯が、人間ではなく飼育される別の生き物みたいで惨めに見える。
施される愛撫を受け入れる以外の選択肢が何一つ見つからない現状に理性は失われていた。


「このまま壊れちまうか?」

「ッ?!」


深い眼差しがあまりにも綺麗すぎて、優羽は痙攣を起こしながらシーツを握りしめる。


「輝が意地悪言うから泣いてしまいましたよ?」

「俺のせいだけじゃねぇだろ。」


はぁはぁと、握りしめたシーツの上をはって逃げようとした体は、ずるずると引き戻されて、また撫で回される。

イヤだ

確かにそう叫んだ気がするのに、どうしてこんなに込み上げる快楽が止まらないのだろう。


「あぁ…ちょ~~ッだ…ぃ」

「優羽のおねだりには応えてあげたいのですが。」

「お願…欲し…ッイあっ晶…戒ッ」

「優羽、顔がだらしなくなってるよ。」


すがるように伸ばされた指先を絡ませながら晶が笑っている。


「アァッて…輝ッイヤァァ」

「欲しがってもやんねぇよ。夜になったら、また皆で可愛がってやる。」


にっこりと笑いながら頭を撫でてくる輝の声に、恐怖のマッサージは終わりを告げた。
自分の体から出せる水分は全部出たんじゃないかと思う。
それもいろんなところから。


「淫乱優羽ちゃんの願いが聞けなくて悪りぃな。」

「ッ?!」

「アフターケアだって晶も言ったろ?」


痙攣が収まるのを待って、ぐったりと体を起こした優羽は、その言葉には納得できないと輝をにらむ。


「そんな顔して誘ってもやんねぇよ。」

「なっ?!」


くやしい。
勝ち誇った顔に何かひとつでも言い返したいのに、事実なだけに何も言い返せる言葉がなかった。


「夜は親父も陸もいるからな。」

「っ。」


想像するだけで逃げ出したくなる宣告に、優羽は裸体を思わず抱き締める。昨日から始まった怒濤の愛情表現は、これからずっと加速し続けるのだろうか。

いくらなんでも身が持たない。

脳ミソまでも溶けてしまいそうな快楽はまるで、底無し沼に沈んでいってるようだった。


「一生監禁されて犯されたくなけりゃ、俺らのことをもうちょっと信じろ。」


どうやら服を着せてくれるらしい輝に、優羽は首をかしげて目を閉じる。何が言いたいのかわからない。
今さら脅迫めいたことを言ってきたところで、輝が本気でそれを望んでいないことは知っている。


「わかってんのか?」


ぷはっと、服から顔を出した目の前で輝はあきれたような顔をしていた。


「愛してるって言ってんだよ。」

「っ?!」


ひどい。
不意打ちにもほどがある告白に、何を恥ずかしげもなく口にするのかと、こっちの顔が赤くなる。


「優羽は本当にバカですからね。」

「手のかかるところがいいんだよ。」


そういいながら靴を履かせてくれたり、髪を整えたりしてくれる晶や戒にも輝と同じことが言えた。


「一生、優羽を手放す気はねぇから。」


されるがまま赤い顔で彼らの会話を聞いていた優羽は、額に落とされたキスにうなずく。
小さくありがとうと呟いた声は、まだ彼らの傍にいることを許されたことが嬉しくて、染み渡るように消えていった。

誰でもいいわけじゃない

一緒にいたいと願い、求めているのは彼らだけ。
自信を持ってそう言えるのに、何故だか心にポッカリと空いたように埋まらない感覚があることを否定できない。


「ごめんなさい。」


出掛ける準備を終えてホテルの部屋をあとにする彼らの背中に、優羽は言い様のない謝罪の言葉を口にした。

─────────────
───────────
────────

平日の水族館はほぼ貸しきりで、優羽は晶と輝と戒の三人と一緒に大きな水槽の前にいた。仲良く泳ぐ数種類の生き物たちが、擬似的に作られた海の中で泳いでいる。


「優羽ーー!!」


自分の名前を呼ばれたことで、水槽から顔をあげた優羽はその声がする方へと体を向ける。
見慣れた天使が走りよってくるのが見えた。


「陸んッ?!」


そのまま抱きつかれて唇を奪われた身としては、水槽の魚同様にパクパクと酸素を求めてふらつくほかない。


「大丈夫?」

「え?」


自分で仕掛けといて心配するところが陸らしいと、質問の意図を聞き返した優羽は支えてくれる顔を見上げながら吐息をこぼした。
だけど、どうやら違うらしい。


「僕がいないからって四人で楽しいこと、じゃなかった。三人に酷いこと、いっぱいされなかった?」


陸は酸素不足に陥れたキスに対してではなく、ずる休みを許してくれなかった幸彦のせいで行く羽目になった学校の制服を着たまま、自分が不在にしていた時間への確認をする。
本音をすり替えた言葉には引っ掛かりを覚えたが、優羽は慌てて首を横に振って陸の間違いを正した。


「酷いことされてないよ。」


陸の目を見て答えることが出来ない。
鮮明に思い出せる数時間前の快楽は、そんなに簡単には消えない。


「そっかぁ、ごめんね。」


急にワントーン高くなった陸の声に、ビクリと優羽の体がこわばる。抱き締められた腕にこもる力の量で、陸の機嫌がややマイナスに傾いたことがわかった。


「夜は僕もちゃんと参加して、優羽を気持ちよくさせてあげるからね。」

「ッ?!」


最悪だ。
せっかく無事に部屋を抜け出し、ホテルで昼食を終え、デートがしたいと不満を口にしたおかげで、こうして夢が叶っているというのに、そんなに早く夜が来てもらっては困る。


「ッあ」


引き寄せられた身体に、どうしようと混乱した頭が優羽の目をギュッと閉じさせた。が、チュッと軽く目の下にキスをした陸は、身体を離して手をつなぐように優羽の手首をつかんで走り出した。


「優羽、この水族館はね、こっちに面白いのがあるんだよ。」

「あ、ちょ!」


笑顔で楽しそうに駆け出す陸のせいで転けそうになりながらも、優羽は頑張ってそれに続く。筋肉痛の身体に運動はつらい。
それでも今朝起きたときより身体が軽く感じるのは、三人の専属プロによるマッサージのおかげだろう。薄暗い館内を小さな恋人達が駆け抜けていくが、人もまばらな平日のこの時間帯では誰も、かの有名な魅壷家の子供だとは気づかない。


「あはは!筋肉痛とかうけるんだけど。」

「笑い事じゃないでしょ!」

「だからって、今夜は手加減して───」

「陸、みて!」


大きな水槽の前を横切り、いくつかの珍しい展示をすり抜け、トンネル上になった水槽の下で笑顔の優羽は跳び跳ねていた。
まだ夢の中じゃないかと、嬉しい気持ちが押さえきれない。


「───はしゃぎすぎー!」


そう言いながら走ってくる陸も楽しそうに笑っている。
あの魚は何かとか、この水槽に放り込まれたら何になりたいかとか、他愛もない会話をしながら優羽は普通の恋人らしいデートを体験していた。

想像よりもずっと楽しい。

新しい顔、いつもと違う話題、共通の体験。一緒にはしゃぐ陸だけじゃなく、ちゃんとついてきてくれている晶も輝も戒も楽しそうに肩を並べて話に参加してくれる。


「優羽、エサやりの時間だそうですよ。」

「優羽はお腹すいてない?」

「うん、大丈夫。」


晶と戒に挟まれて見上げた先で、飼育員が与えるご飯に魚が群がっていた。
もぐもぐと、ひとつの餌に複数が群れる姿は日頃の自分となぜか重なる。


「エサが自分みたいなんて変なの。」


浮かんだ疑問は、すぐに消えた。


「ねぇねぇ優羽。こっちのクラゲ光ってるよ!」


一瞬で終わった魚の宴会を後にして、進み始めた優羽たちを陸が手招きしている。
駆け寄ってみると、たしかに光るクラゲがたくさんいた。キラキラと電気を流して虹色に光るクラゲは小さくて可愛い。


「へぇ、こんなのが好きなのか。」

「ッ?!」


光るクラゲを見ながらニヤリと笑った輝の横顔に、いい予感はしない。
ゾクゾクと嫌な想像が脳裏をよぎったが、優羽は聞こえなかった振りをしてそっとその場を離れた。


「優羽、イルカのショーはみる?」

「みたい!」


逃げ込んだ先で、時計とパンフレットの時間を照らし合わせながら晶が話しかけてきた。即答で返事をした優羽は、顔をあげた先で晶が何かに目を奪われていることに気付く。
それは、この水族館に勤務する女の人。
遠目でもスタイルがよく、綺麗な大人の女性のようだが、晶はああいう人が好みなのだろうか?


「なにか気になることでもあった?」


思った以上にムッとした声が出たことに驚いた。いつからこんなに心が狭くなったのだろうと、無意識の嫉妬に戸惑いを隠せない。
だからだろう。


「あの制服もらえるかな?」

「えっ?!」


予想外の晶の発言に声が裏返ってしまった。それを聞いていたのか、戒がクスクスと笑いかけてくる。


「優羽は百面相ですね。」

「っ。」

「心配しなくてもわたしたちの視界には、いつでも優羽しかうつっていませんよ。」


恥ずかしくて穴があったら入りたいと優羽は赤面してうつむいた。
からかわれているのか、本気なのか、どちらにしても心臓に悪すぎる。


「ちょっと聞いてくるよ。」

「えっ?!」


この行動力はなんなのか、そんなもの聞かなくても大丈夫だし、着るつもりはないからと優羽は慌てて晶の後ろを追いかけていった。
そんな優羽を中心にした輪を眺めながら輝はおもむろに携帯を取り出して、ある目当ての人物を呼び出す。
ほどなくして、不機嫌な声が「なんや?」とそれに応じた。


「おう、久しぶり。」

「久しぶりちゃうわ。」


どすの聞いた方言にもめげず、輝は軽くその声をあしらう。
さくさくと要件のみを伝えたい雰囲気にあきれたのか、電話越しの相手がため息を吐くのがわかった。


「俺が一人でどんなけ───」

「優羽が見つかった。けど、記憶がねぇ。」

「───は?」


最後まで話を聞かず、本当に本題だけを告げた輝の言葉に、相手は理解不能だと訴える。
それはそうだろう。
何の脈絡もない端的な報告に、現状を想像だけで補うにはあまりにも情報が欠落していた。


「ちょ、まっ、え?なんなん?」


混乱した声の主に答えるつもりはないらしい。


「竜、早く帰ってこいよ。」


制服を無事にもらいうけたらしい晶へ文句を言っている優羽が見えたからか、輝の声色が幾分優しく聞こえる。向こうの相手もそう思ったに違いない。


「輝、なんか変なもんでも食うた?」


心配そうに声をかけられた。


「食うかよ。」


面倒そうに輝が答える。
その返答に若干安心したものの、電話の主は再確認するように輝に疑問を投げた。


「なんか気色悪いで。優羽会いたさに夢でも見てるんちゃう?」

「見てねぇよ。」


お決まりのやりとり。
けれど、いつもと違う会話の展開に電話の向こうで竜と呼ばれた男の目が細く変わる。


「いーから、さっさと帰ってこいよ。色々と面倒くせーことになってっから。じゃあな。」


有無を言わせぬ早業で電話を切った輝は、まるで一仕事終えたと言わんばかりに、携帯をしまいながら自分の名前を呼ぶ優羽の元へと歩いていった。

──────To be continue.
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