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第4章:躾
第1話:重なる影の奥
机の上に据え置かれたランプが影を揺り動かす。
話を聞いて何を思ったのか、そもそも聞きたい答えが何だったのか、拘束された乃亜にはわからない。斎磨の表情はもともと変化のわかりにくい顔をしている。物言わぬ視線の方が、より多くを語っている気もするが、それでも、後ろにある斎磨の顔を見ることさえ出来ないこの状況では瞳の色すら確認するのは難しい。
「ひっ…ぁ…なっなに?」
半身を机の上に乗せて縛られた体は、斎磨の重みを乗せている。
身動きの取れない視界では斎磨が本を置いたところしか確認できず、ランプの明かりだけが頼りの室内では周囲の様子はわからない。
「ぁ…さい…ま…っやめ」
後ろ手に縛られた結び目を押さえつける斎間の右手とは逆に、左手が自由の利く足の裏側をなぞっている。いくらスカートで隠された足とはいえ、抵抗の出来ない状態でその行為の意味は考えたくない。膝裏を通って太ももの裏をなぞり、机の上に無遠慮に持ち上げられた左足のせいで、めくれたスカートの裾が影の形を変えている。
唯一体を支える右足は、ほぼ床につくかつかないかの際どい高さで止まり、バランスを崩さないように体制を保つだけで乃亜の意識は緊迫していた。
「大人しくしろ」
「ッ…ぁ…っん」
斎磨の声が耳の裏をなぞる。
それに目をつぶって羞恥に耐えていると、なぜか少し緩んだ腕の結び目が、次の瞬間には左足の膝裏を通って硬く固定しなおされていた。
「なっ…ぁ…どうし…ふァッ」
これでは右足だけで体重を支え、保ち続けなくてはならない。
いくら机の上に半身を預けているとはいえ、質のいい衣服では滑り落ちていくしかない。
「やっ…ァッ…やめっ」
無遠慮にショーツの上を往復する斎磨の指先が、震える足の意識を奪っていく。大人しくしろと命令されたところで、暴れることも、逃げることもできない体勢に快楽だけが神経を煽っていた。
「ヤァっ…ぁ…そこ指っンッ…入れ」
布を器用にどけて内部に侵入してきた指に、声が漏れ出る。
「なんだ、もう濡れているのか」
「んっ斎磨…っ…ぁ…言わな…で」
「萌樹と三織に可愛いがられただろう?」
「っンッ…違…っ」
「あの二人がお前のような獲物をただで解放するわけがないからな」
何か気に障ることでもあるのか、斎磨の指は往復のついでに見つけた穴に出たり入ったりを繰り返している。ずっと入っているわけでもなく、かといって浅瀬で満足するわけでもなく、ぬるぬると愛蜜をまとって滑る指は、乃亜の果肉をほぐすように様々な場所を這い巡る。
「そ…こッ…ひ…っぃ」
体を支える足が限界を訴えて震えている。
それでもどうすることもできない。
後ろを支配する斎磨の指先は遊びを覚え、乃亜を手放すつもりはないらしい。
「ぁ…~~ッ…斎磨…やメッ」
「そうは見えないが?」
「違っ…ァッ…違ぅ…ぁ」
「違う?」
「感じて…な…ッいぁ…アァ」
自由の利かない体が、ただ一点に加えられるだけの愛撫を受け入れてしまう。縛られた腕は解放を求めてねじり、手のひらを閉じたり開いたりしてもがいているが、それも叶わない。声を抑えたくても、力を右足に注いでいるために唇や歯にまで回せる神経がどこにもない。
机に押し付けている胸のせいで圧迫された肺が、叫びたくなるほど甘美な刺激を吐息に変換していくだけ。
「乃亜はあの二人がどういう類(タグイ)の人種か知っているか?」
「ッ…ぅ…え?」
「この俺も含めてそうだが、お前の望む愛人には到底不向きな連中だ」
この状態で何を言っているのか、斎磨の与える会話の内容と指の動きが違いすぎて、正常に働くはずの脳が混乱していく。
不向き、人種。そういう基準は何を基準として判断すればいいのだろう。
「俺を刺して殺したのは婚約者だ」
「っなん…の…話…ァッ」
「いいからまあ聞け」
おとぎ話でも始めるのか、斎磨の声が低く笑う。それでも休むことのない指は、乃亜の右足が時間との勝負にもつれ込んでいることをわかっていながら、溢れ出る蜜の在処を探っていた。
「生まれながらに婚約者は決まっていた。だが、俺にはこうして特殊な本性が宿っている。縛り、叩き、首輪をつけて飼いならす愛玩動物は必要不可欠。幸い金と容姿に困らなかったのでな、闇の人身売買に手を出さずとも奴隷はすぐに見つかった」
「ぅ…ぁっ…そこっ、ぁ」
「こうして躾を施し、可愛がっても、人間は弱く、すぐに壊れていく」
「ヒッぁ…~~っ…はぁ…はぁ」
「有限の命。絶望とは思わなかった。まあ、刺されたことは驚いたが、あれは俺の落ち度だ。一番飼いならす必要のあった女を野放しにしていたのが悪かった」
一気に三本の指が最奥をついたせいで、乃亜の上半身が弓なりに跳ねる。反応した机の上のランプがまた不必要に影を揺り動かしたが、指の付け根まで乃亜の内部を圧迫した斎磨だけがそのままの姿勢を維持していた。
「女は二種類だ。無理矢理開花させて従属させるか、元からそういう種を持っているか」
また、止まったままの時間が動き出す。
「俺たちみたいな奴は鼻が利く。飽くまで愛(メ)で、枯れるまで食(ハ)む。だがお前は枯れない。狂えるほどどこまでも尽くしてやるぞ」
「っ…ぁ…やっ…おかしく…な…ぅ」
「聞いているか?」
斎磨自身は乃亜に聞かせるつもりがあるのか、と逆に問いたくなる。
話を聞いて何を思ったのか、そもそも聞きたい答えが何だったのか、拘束された乃亜にはわからない。斎磨の表情はもともと変化のわかりにくい顔をしている。物言わぬ視線の方が、より多くを語っている気もするが、それでも、後ろにある斎磨の顔を見ることさえ出来ないこの状況では瞳の色すら確認するのは難しい。
「ひっ…ぁ…なっなに?」
半身を机の上に乗せて縛られた体は、斎磨の重みを乗せている。
身動きの取れない視界では斎磨が本を置いたところしか確認できず、ランプの明かりだけが頼りの室内では周囲の様子はわからない。
「ぁ…さい…ま…っやめ」
後ろ手に縛られた結び目を押さえつける斎間の右手とは逆に、左手が自由の利く足の裏側をなぞっている。いくらスカートで隠された足とはいえ、抵抗の出来ない状態でその行為の意味は考えたくない。膝裏を通って太ももの裏をなぞり、机の上に無遠慮に持ち上げられた左足のせいで、めくれたスカートの裾が影の形を変えている。
唯一体を支える右足は、ほぼ床につくかつかないかの際どい高さで止まり、バランスを崩さないように体制を保つだけで乃亜の意識は緊迫していた。
「大人しくしろ」
「ッ…ぁ…っん」
斎磨の声が耳の裏をなぞる。
それに目をつぶって羞恥に耐えていると、なぜか少し緩んだ腕の結び目が、次の瞬間には左足の膝裏を通って硬く固定しなおされていた。
「なっ…ぁ…どうし…ふァッ」
これでは右足だけで体重を支え、保ち続けなくてはならない。
いくら机の上に半身を預けているとはいえ、質のいい衣服では滑り落ちていくしかない。
「やっ…ァッ…やめっ」
無遠慮にショーツの上を往復する斎磨の指先が、震える足の意識を奪っていく。大人しくしろと命令されたところで、暴れることも、逃げることもできない体勢に快楽だけが神経を煽っていた。
「ヤァっ…ぁ…そこ指っンッ…入れ」
布を器用にどけて内部に侵入してきた指に、声が漏れ出る。
「なんだ、もう濡れているのか」
「んっ斎磨…っ…ぁ…言わな…で」
「萌樹と三織に可愛いがられただろう?」
「っンッ…違…っ」
「あの二人がお前のような獲物をただで解放するわけがないからな」
何か気に障ることでもあるのか、斎磨の指は往復のついでに見つけた穴に出たり入ったりを繰り返している。ずっと入っているわけでもなく、かといって浅瀬で満足するわけでもなく、ぬるぬると愛蜜をまとって滑る指は、乃亜の果肉をほぐすように様々な場所を這い巡る。
「そ…こッ…ひ…っぃ」
体を支える足が限界を訴えて震えている。
それでもどうすることもできない。
後ろを支配する斎磨の指先は遊びを覚え、乃亜を手放すつもりはないらしい。
「ぁ…~~ッ…斎磨…やメッ」
「そうは見えないが?」
「違っ…ァッ…違ぅ…ぁ」
「違う?」
「感じて…な…ッいぁ…アァ」
自由の利かない体が、ただ一点に加えられるだけの愛撫を受け入れてしまう。縛られた腕は解放を求めてねじり、手のひらを閉じたり開いたりしてもがいているが、それも叶わない。声を抑えたくても、力を右足に注いでいるために唇や歯にまで回せる神経がどこにもない。
机に押し付けている胸のせいで圧迫された肺が、叫びたくなるほど甘美な刺激を吐息に変換していくだけ。
「乃亜はあの二人がどういう類(タグイ)の人種か知っているか?」
「ッ…ぅ…え?」
「この俺も含めてそうだが、お前の望む愛人には到底不向きな連中だ」
この状態で何を言っているのか、斎磨の与える会話の内容と指の動きが違いすぎて、正常に働くはずの脳が混乱していく。
不向き、人種。そういう基準は何を基準として判断すればいいのだろう。
「俺を刺して殺したのは婚約者だ」
「っなん…の…話…ァッ」
「いいからまあ聞け」
おとぎ話でも始めるのか、斎磨の声が低く笑う。それでも休むことのない指は、乃亜の右足が時間との勝負にもつれ込んでいることをわかっていながら、溢れ出る蜜の在処を探っていた。
「生まれながらに婚約者は決まっていた。だが、俺にはこうして特殊な本性が宿っている。縛り、叩き、首輪をつけて飼いならす愛玩動物は必要不可欠。幸い金と容姿に困らなかったのでな、闇の人身売買に手を出さずとも奴隷はすぐに見つかった」
「ぅ…ぁっ…そこっ、ぁ」
「こうして躾を施し、可愛がっても、人間は弱く、すぐに壊れていく」
「ヒッぁ…~~っ…はぁ…はぁ」
「有限の命。絶望とは思わなかった。まあ、刺されたことは驚いたが、あれは俺の落ち度だ。一番飼いならす必要のあった女を野放しにしていたのが悪かった」
一気に三本の指が最奥をついたせいで、乃亜の上半身が弓なりに跳ねる。反応した机の上のランプがまた不必要に影を揺り動かしたが、指の付け根まで乃亜の内部を圧迫した斎磨だけがそのままの姿勢を維持していた。
「女は二種類だ。無理矢理開花させて従属させるか、元からそういう種を持っているか」
また、止まったままの時間が動き出す。
「俺たちみたいな奴は鼻が利く。飽くまで愛(メ)で、枯れるまで食(ハ)む。だがお前は枯れない。狂えるほどどこまでも尽くしてやるぞ」
「っ…ぁ…やっ…おかしく…な…ぅ」
「聞いているか?」
斎磨自身は乃亜に聞かせるつもりがあるのか、と逆に問いたくなる。
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