19 / 56
弐書:封花印
04:手負いの虎
しおりを挟む「これで、信じた?」
イルハの唇を吸う勢いで唇をはなしたせいで、ぷちゅっと可愛らしい音が聞こえてくる。
そんなことは気にしていられない。アザミはイルハの瞳を覗き込みながらにらみつけ、それからふんっと口角をあげて勝ち誇った笑みを浮かべた。
「信じたなら、聞かなかったことにしてあげ……ッ、ん……むぅ」
突然の口づけ返しに、アザミはイルハの肩を押して抵抗する。
負けず嫌いを発揮するのは今じゃないと言いたいのに、後頭部を抑え込まれて逃げ道をふさがれる。
「待っ……イルハ……ッ、ん……ぁ」
正直、二歳年下という認識が邪魔をして、イルハを男として甘く見ていた。
邪獣退治を趣味にするくらいなのだから、もっと武骨で乱暴なのだと思い込んでいた。
「イル……は……っ、ん」
想像と違う口づけの威力に混乱が生じてくる。
丁寧についばむような触れ方をしたと思ったら、歯列をなぞり、口内を舐めて、舌を吸い上げ、優しくからめとってくる。
「……ッ……ぁ……ふ、ッァ……イル、ハ」
息がしやすいように絶妙のタイミングで呼吸をさせてくれるのに、次の瞬間には酸欠になるほどふさがれる。単調でいて、計算された技巧に、アザミは敗北を認めると同時に、腰が抜けるのを自覚していた。
「アザミ……オレのことが好きか?」
頭ごと窒息させるほど抱きしめてくるのに、壊れものに触れるほど優しいという矛盾が、アザミの思考をイルハの匂いに染めていく。
大きな手、分厚い身体。
可愛い年下の男の子ではない。大人の男だと余裕さえ感じる雰囲気なのに、切羽詰まったような目で見つめられると、素直な気持ちしか伝えられなくなる。
「うん、好き。大好き、イルハ」
「オレも好きだ。アザミ」
次に重なった唇が、寝具の上に運ばれることを告げてくる。
脚に力が入らなくなったアザミは軽々とイルハに抱え上げられ、そのまま布団の上になだれ込むように押し倒された。
「脱がせるの、もったいねぇ」
飾りを外し、髪を崩している間も無言で口づけてきたイルハが、帯に手をかけたときに、ようやくまともらしいことを口にする。
それが妙にくすぐったくて、嬉しくて。今日の衣装はこれにしてよかったと、心から誇らしくなってくる。
「イルハのためなら毎日着るよ」
「……っ、お前なぁ。毎日オレに脱がされる覚悟があるやつがいう台詞だってわかってんのか?」
「うん……だから、早く脱がせて」
イルハだから大胆でいられる。
両手を伸ばしてねだるのは、イルハだからできるのだと、静かに帯をほどくその仕草に理解する。言葉は乱暴でも、イルハは絶対乱暴なことをしない。そういう素振りをみせても、イルハは絶対相手が嫌がることをしない。
「触るぞ」
いちいち言葉にしなくていいのに、確認してくれるあたりがイルハらしい。
ゆっくりと肌に触れて、撫でてくれる手がひとつひとつ確認を取るみたいに進んでくる。
「……ん…っ……」
「悪い、痛かったか?」
「ちが……ッ、気持ちいい…そこ……もっと」
イルハの手を誘導するように腰をくねらせて、自分の口でどこに触れてほしいか伝えていく。コウラやヒスイ、アベニにもできないこと、言えないことが、なぜかイルハの前だと誤魔化せない。
「ぃ、きそ……イルハ……ァッ……いっちゃう」
帯をほどかれ、全裸になった身体でイルハに抱き着く。
催促したみたいに顔を寄せたせいで、イルハは口づけをくれたが、その手は休むことなく内部を出入りしていた。
「なあ」
「……ッ、ぁ……な、に?」
イルハの唇が耳をかじっていたずらに笑っている。首筋をべろりと舐めてきた分厚い舌が、何を言いたいのかわからせるように、ちゅっと乳首に吸い付いた。
「他の男に刻まれた痕跡をオレが贈った服の下に隠すって、どんな気分?」
「……っ」
「すっげぇ、締まった。指、食いちぎられそう」
くつくつと笑うイルハは、なぜか楽しそうに指を動かしている。
不機嫌になるどころか、むしろ上機嫌に愛撫の激しさを増していく。
「食われたとこ、オレも全部、食っていいってことだよな?」
「ぁ……待っ……ひっ、ぅ」
「アザミ、こっち向け」
「ッぅ……イルハ……ぁ……また、ッく、ぃク……いくっ」
肌の熱が溶け合うほどの愛撫が続いて、イルハの左手のケガをすっかり忘れかけていたころ。浅い呼吸を繰り返すだけの腑抜けたアザミの上を陣取るように、イルハが覆いかぶさってくる。
「先に言っておく」
「ぁ……んっ……なに、ァッ」
「想像してたよりも余裕がねぇから、オレが暴走したときは叩くでも、蹴るでも、噛むでもいいから無理矢理止めろ」
「え…ッ……何そ……っ、ぁ」
足を持ち上げられ、押し当てられたその硬さにゴクリと喉が鳴る。
熱く血脈をたぎらせて、太く傘を張り巡らせ、へそにつくほどそそり立った陰茎が膣内に侵入しようと圧力を加えてくる。
「……ヒっ、ぅ……おっき、ぃ……」
不思議なことに、ひとりとして同じ形、長さ、太さ、硬さがあるわけではないのだと訴えられているような気がしてならない。それなのに、誰もが等しく同じ場所を目指して挿入し、そこを支配しようと手練手管を凝らしてくる。
子宮はわかっている。
興奮した性器は極上の快楽を求めてオスを促し、自ら潰され、満たされるために降りてくる。
「ァッ、待っ……イルハ……今だ、め……っ」
足を深く折り曲げられ、全体重をそこに乗せようとしていたイルハに静止の声をかけたところでもう遅い。
「~~~~~~~ッ、ぅ……ァ……ぁ、あ」
散々ほぐされた膣内は、イルハが埋まると同時に絶頂を告げ、アザミの視界にチカチカと星を散らせていた。
イルハにもそれが伝わったに違いない。
腰を動かさずにじっとしているが、膣の伸縮を堪能しているのが表情でわかる。
「アザミ」
顔を両手で固定され、名前を呼ばれたのがすべてだった。
「ふっ……ぅ、ンッ……ん゛ぅ」
口づけに合わせて腰が前後運動を開始する。
これまでの優しかったイルハではなく、ここで乱暴になるのかと、吹き飛ばされそうなほど激しい打ち付けに腰がくだけそうになる。
「ぃ゛……ッぐ……ぁ……イリュ……っ」
脳に酸素が行き届かない。口づけのせいで呂律がうまく回らない。
先ほど絶頂を迎えた神経が、追撃を処理しきれずに絶頂を繰り返してびちゃびちゃと潮をまき散らせている。イルハとの結合部から肌のぶつかり合う音と、攪拌される愛蜜の音が混ざり合って、自然と身体がのけぞっていた。
「……ヒッ、ぅ……ぃる……は」
何度も「アザミ」と呼ぶ声が聞こえた気がする。
それに応じるように何度も「イルハ」と呼んだ気がする。
白い光の中に包まれた気もする。イルハが左腕を不思議そうに眺めた気もするが、すぐに「どうでもいい」と言わんばかりに腰を打ち付けてきたせいで、意識がはじけ飛んでいく。
お互いの名前以外は不要だとでもいうように、イルハの熱は速度を変え、体位を変えて、いつまでも中で混ざり合っていた。
5
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる