【R18】帝都遊郭カタルシス

皐月うしこ

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弐書:封花印

04:手負いの虎

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「これで、信じた?」


イルハの唇を吸う勢いで唇をはなしたせいで、ぷちゅっと可愛らしい音が聞こえてくる。
そんなことは気にしていられない。アザミはイルハの瞳を覗き込みながらにらみつけ、それからふんっと口角をあげて勝ち誇った笑みを浮かべた。


「信じたなら、聞かなかったことにしてあげ……ッ、ん……むぅ」


突然の口づけ返しに、アザミはイルハの肩を押して抵抗する。
負けず嫌いを発揮するのは今じゃないと言いたいのに、後頭部を抑え込まれて逃げ道をふさがれる。


「待っ……イルハ……ッ、ん……ぁ」


正直、二歳年下という認識が邪魔をして、イルハを男として甘く見ていた。
邪獣退治を趣味にするくらいなのだから、もっと武骨で乱暴なのだと思い込んでいた。


「イル……は……っ、ん」


想像と違う口づけの威力に混乱が生じてくる。
丁寧についばむような触れ方をしたと思ったら、歯列をなぞり、口内を舐めて、舌を吸い上げ、優しくからめとってくる。


「……ッ……ぁ……ふ、ッァ……イル、ハ」


息がしやすいように絶妙のタイミングで呼吸をさせてくれるのに、次の瞬間には酸欠になるほどふさがれる。単調でいて、計算された技巧に、アザミは敗北を認めると同時に、腰が抜けるのを自覚していた。


「アザミ……オレのことが好きか?」


頭ごと窒息させるほど抱きしめてくるのに、壊れものに触れるほど優しいという矛盾が、アザミの思考をイルハの匂いに染めていく。
大きな手、分厚い身体。
可愛い年下の男の子ではない。大人の男だと余裕さえ感じる雰囲気なのに、切羽詰まったような目で見つめられると、素直な気持ちしか伝えられなくなる。


「うん、好き。大好き、イルハ」

「オレも好きだ。アザミ」


次に重なった唇が、寝具の上に運ばれることを告げてくる。
脚に力が入らなくなったアザミは軽々とイルハに抱え上げられ、そのまま布団の上になだれ込むように押し倒された。


「脱がせるの、もったいねぇ」


飾りを外し、髪を崩している間も無言で口づけてきたイルハが、帯に手をかけたときに、ようやくまともらしいことを口にする。
それが妙にくすぐったくて、嬉しくて。今日の衣装はこれにしてよかったと、心から誇らしくなってくる。


「イルハのためなら毎日着るよ」

「……っ、お前なぁ。毎日オレに脱がされる覚悟があるやつがいう台詞だってわかってんのか?」

「うん……だから、早く脱がせて」


イルハだから大胆でいられる。
両手を伸ばしてねだるのは、イルハだからできるのだと、静かに帯をほどくその仕草に理解する。言葉は乱暴でも、イルハは絶対乱暴なことをしない。そういう素振りをみせても、イルハは絶対相手が嫌がることをしない。


「触るぞ」


いちいち言葉にしなくていいのに、確認してくれるあたりがイルハらしい。
ゆっくりと肌に触れて、撫でてくれる手がひとつひとつ確認を取るみたいに進んでくる。


「……ん…っ……」

「悪い、痛かったか?」

「ちが……ッ、気持ちいい…そこ……もっと」


イルハの手を誘導するように腰をくねらせて、自分の口でどこに触れてほしいか伝えていく。コウラやヒスイ、アベニにもできないこと、言えないことが、なぜかイルハの前だと誤魔化せない。


「ぃ、きそ……イルハ……ァッ……いっちゃう」


帯をほどかれ、全裸になった身体でイルハに抱き着く。
催促したみたいに顔を寄せたせいで、イルハは口づけをくれたが、その手は休むことなく内部を出入りしていた。


「なあ」

「……ッ、ぁ……な、に?」


イルハの唇が耳をかじっていたずらに笑っている。首筋をべろりと舐めてきた分厚い舌が、何を言いたいのかわからせるように、ちゅっと乳首に吸い付いた。


「他の男に刻まれた痕跡をオレが贈った服の下に隠すって、どんな気分?」

「……っ」

「すっげぇ、締まった。指、食いちぎられそう」


くつくつと笑うイルハは、なぜか楽しそうに指を動かしている。
不機嫌になるどころか、むしろ上機嫌に愛撫の激しさを増していく。


「食われたとこ、オレも全部、食っていいってことだよな?」

「ぁ……待っ……ひっ、ぅ」

「アザミ、こっち向け」

「ッぅ……イルハ……ぁ……また、ッく、ぃク……いくっ」


肌の熱が溶け合うほどの愛撫が続いて、イルハの左手のケガをすっかり忘れかけていたころ。浅い呼吸を繰り返すだけの腑抜けたアザミの上を陣取るように、イルハが覆いかぶさってくる。


「先に言っておく」

「ぁ……んっ……なに、ァッ」

「想像してたよりも余裕がねぇから、オレが暴走したときは叩くでも、蹴るでも、噛むでもいいから無理矢理止めろ」

「え…ッ……何そ……っ、ぁ」


足を持ち上げられ、押し当てられたその硬さにゴクリと喉が鳴る。
熱く血脈をたぎらせて、太く傘を張り巡らせ、へそにつくほどそそり立った陰茎が膣内に侵入しようと圧力を加えてくる。


「……ヒっ、ぅ……おっき、ぃ……」


不思議なことに、ひとりとして同じ形、長さ、太さ、硬さがあるわけではないのだと訴えられているような気がしてならない。それなのに、誰もが等しく同じ場所を目指して挿入し、そこを支配しようと手練手管を凝らしてくる。
子宮はわかっている。
興奮した性器は極上の快楽を求めてオスを促し、自ら潰され、満たされるために降りてくる。


「ァッ、待っ……イルハ……今だ、め……っ」


足を深く折り曲げられ、全体重をそこに乗せようとしていたイルハに静止の声をかけたところでもう遅い。


「~~~~~~~ッ、ぅ……ァ……ぁ、あ」


散々ほぐされた膣内は、イルハが埋まると同時に絶頂を告げ、アザミの視界にチカチカと星を散らせていた。
イルハにもそれが伝わったに違いない。
腰を動かさずにじっとしているが、膣の伸縮を堪能しているのが表情でわかる。


「アザミ」


顔を両手で固定され、名前を呼ばれたのがすべてだった。


「ふっ……ぅ、ンッ……ん゛ぅ」


口づけに合わせて腰が前後運動を開始する。
これまでの優しかったイルハではなく、ここで乱暴になるのかと、吹き飛ばされそうなほど激しい打ち付けに腰がくだけそうになる。


「ぃ゛……ッぐ……ぁ……イリュ……っ」


脳に酸素が行き届かない。口づけのせいで呂律がうまく回らない。
先ほど絶頂を迎えた神経が、追撃を処理しきれずに絶頂を繰り返してびちゃびちゃと潮をまき散らせている。イルハとの結合部から肌のぶつかり合う音と、攪拌される愛蜜の音が混ざり合って、自然と身体がのけぞっていた。


「……ヒッ、ぅ……ぃる……は」


何度も「アザミ」と呼ぶ声が聞こえた気がする。
それに応じるように何度も「イルハ」と呼んだ気がする。
白い光の中に包まれた気もする。イルハが左腕を不思議そうに眺めた気もするが、すぐに「どうでもいい」と言わんばかりに腰を打ち付けてきたせいで、意識がはじけ飛んでいく。
お互いの名前以外は不要だとでもいうように、イルハの熱は速度を変え、体位を変えて、いつまでも中で混ざり合っていた。
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