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肆書:邪獣襲来
08:天女の授け物
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ひくひくと、まともに息も出来ないアザミを見下ろす影は五つ。
明け方近くになって雨はあがり、薄い雲が白く染まり始めているせいで、寝台はその影の輪郭を映している。
「賊を討伐したときに同じ状況、見たことあるわ」
ぽつりと声を発したイルハに、誰も何も言わないのは、妙に的確な事案のせいだろう。目隠しをされ、帯で直立不動で縛られ、白濁の液が垂れるほど注がれた女体。無抵抗に犯されるか、愛されるかにさほど違いがないと思えるのは、余韻の引かないアザミが目の前にいるせいだろう。
「イルハ、こっちの後始末頼んでいいか?」
「ンで、オレが」
「あっちに参加するか?」
アザミの目隠しを外し、帯をほどいたアベニに言われて、イルハは無言で「あっち」を向く。
ジンが仲裁しているのは、殺気に満ちた男と全裸で壁際まで追い込まれた男。イルハが来た時にはすでにこの状態で、ところどころ氷柱がある室内をみれば、その過激さは容易に想像がつく。
激怒したコウラの仮面はすっかり剥がれ落ちて、「新月の約束を今すぐ撤廃しろ」とジンにまで詰め寄っている。ヒスイがへらへらとしながら謝っているが、反省の色は皆無といえるだけに、次回から新月の夜は全員で過ごすことになると、空気が決定事項のように流れていた。
「よく平気でいられるな」
「ヒスイの後は大抵こんな感じだからな。慣れだ、慣れ」
笑いながらアベニはアザミを抱き上げているが、湯桶に連れていく後姿が微笑ましいかと聞かれると、そうともいえない。
「じゃ、頼むな」
イルハが意識を向けている間に、アベニはアザミを連れて行ってしまった。
そのあと、イルハがどうしたのかは知るに知れない。
アベニはすでに用意しておいた湯桶にアザミを入れ、涙などで汚れた顔を手ぬぐいで丁寧に拭き取っていた。
「ん……む……」
触れるたびに反応するアザミを見ていると、優しさが吹き飛びそうになる。理性を保つには慣れているのか、アベニは淡々と作業をこなし、アザミの身体からホッと力が抜けていくのを見守っていた。
「封花印の色が濃くなってんな」
顔の次は首、肩と降りて、だらりと力を無くした腕を手に取る。
左手首の内側に刻まれた菊の模様。見るたびに濃くなるわけではないが、気付くたびに濃くなっていく痣をアベニは無意識に指の腹で擦る。
「ぁ…っ……ぅ」
封花印に口づけて、その肌を舐めると、アザミの目がうっすらと開いて、眩しそうに顔を歪めた。
「アベニ…さ……ま?」
「んー。こんなんでも感じちまうか?」
久しぶりに視界が開けて、真っ先に飛び込んできたのは朱色の髪。アベニの瞳に焦げ付きそうなほど見つめられている。炎を宿した赤い瞳が、どこか楽しそうに煌めいている。
「ァッ、ふ…ぅ……ッ……ん」
湯桶に浸っていると同時に、アベニに手拭いで身体を清められているのだと理解するのは難しくない。腕から胸元に戻ってきたアベニの手が、お腹を滑り落ちて、足の間に伸びている。
「じっとしてろ。すぐに終わる」
「でも……ッ、ぁ」
「なんだ、いつもより敏感じゃねぇか。物足りないって顔してるぜ」
「だって、ヒスイ様が…ッ…ずっと…ぁ」
舐めてばかりで、と続く言葉が途中で途切れる。
アベニの指が水の抵抗を無視して膣の奥へと侵入してくるせいだが、曲げた指にかき出されたそこは白濁のとろみを湯桶に混ぜていた。
「アザミ、声を我慢できるってんなら、なぐさめてやろうか?」
「んっ……ぅ……」
「どうせ、かき出すなら一緒だろ」
耳元で囁かれて、自分の股の間を見つめてみる。
どくりと鼓動が跳ねて、下腹部がじんと疼いた。
一晩中、愛撫だけで過ごした身体は、一度出されたくらいではおさまらないと不満そうに訴えている気がする。
「アベニ様の……ほしい」
湯桶から腕を伸ばして、アザミはアベニの頬を両手で包む。
じっと目を見つめておねだりしてみれば、アベニはごくりと喉をならして、すぐにふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「いいぜ」
短い了承の言葉とともに、承諾の口づけを受け取る。
静かに唇を重ね、舌を絡ませる時間。
「声は、我慢しろよ」
「……っん……うん」
秘密を作り上げていく背徳感がゾクゾクと神経を刺激して、これから始まる行為に期待がつのる。
「後ろ向け」
湯桶から抱き上げられて床に降ろされた足は、反対を向くように誘導され、湯桶のふちを両手でつかむように指示される。アザミは従順な態度を示すと、自分からお尻を高くつきだし、アベニが挿入しやすい体勢を取った。
前戯はいらない。
余韻が持続して、火照った身体は何をされても感じるに決まっている。
「…………ァッ……ん゛……」
「しぃー。あいつらに気付かれてぇのか?」
腰を掴んでゆっくりと入ってきたアベニが、腰を折って背後から告げてくる。
全員向こうにいる。
部屋を整えて、アザミが湯桶から戻ってくるのを今か今かと待っている。そうした情報を教えてくれる。
「なんだ、アザミ。全員いるって教えてやるなり、しめつけが増したぞ?」
「……っ……ぁ」
「前も後ろもわからないくらい愛されたいか?」
くつくつと声を押し殺して笑うアベニの言葉に、アザミはぐっと息を飲み込む。
前も後ろもわからないくらい。
その状況を瞬時に想像してしまうほど、淫らな身体になってしまった。処女の花魁だったころの、数か月前の自分は信じないだろう。
一人ひとりに削られる体力は半端なく、いつも記憶が曖昧に終わる。この状況でさらに四人も追加するのは危険すぎる。身体がいくつあっても足りない。
それなのに、それを望んでいる自分がいる。
浮かぶ顔に意識が飛ぶまで愛されて、記憶をなくしてしまいたい。
いつからこんなに、はしたなくなってしまったのか。
「……ッ」
腰が音もなく打ち付けられる静かさに耐えながら、揺れるお湯に映る顔が赤く染まって見える。
「おーい、アザミ、今、誰を想像した?」
「ヒッ……ぅ」
密着した腰が突き上げる形で止まって、足が宙に浮く。
つま先を床につけて支えたくても、アベニが意図的に身体を持ち上げようとしてくるのだから難しい。湯桶をつかむ手が震えている。
想像したのは「誰か」ではなく「全員」だといえば、アベニはどんな顔をするだろう。
「……ぁ」
腰から滑り落ちたアベニの手が、垂れて揺れていた胸を包んでいく。下を向いているのだからよく見える。その指先が乳首をすりつぶすために意地悪く笑ったような気がした。
「声、我慢出来て偉いぞ、アザミ」
「ッ………ぅ………ぁ」
「おいおい、へばるには早いだろ。腰あげろ、腰」
左手で胸をこねながら、右手でお尻を叩かれる。音をたてないように軽いものだったとしても、アベニの埋まる膣はこれ以上は無理だと泣いている。
足がつくかつかないかの体勢で、お尻を突き出したまま受け入れるしかない姿勢で、視界に飛び込んでくる刺激があまりにも大きい。
「ったく、しゃーねぇな」
お尻を叩いていたアベニの手が唐突に右足を持ち上げてくる。
立ったまま開脚するには限界があり、アベニの腕にひざを引っかけて止まったが、先ほどよりも視界に映る面積の広さにアザミの目は丸々と見開いていた。
「どうした、まじまじと見つめて」
「…っ……アベニさ…ま」
「誰のが入ってるか、今しがた理解したのか?」
「ぁ……ちが……ッ……ぁ」
ヒスイに目隠しをされ、視覚がずっと奪われていたからか。実際に目にする情報の多さにめまいがして、ぶるぶると身体が震えていく。
アベニが腰を前後に動かすせいで、竿が出たり入ったりしている様子がありありと映り、目に毒だと思っていても、目が離せない。
「………キモチ、ぃ……ぃ…アベニ様…もっと」
もっと見ていたい。赤い髪を揺らして、赤い瞳をぎらつかせて、ほんの少し息をあげたアベニに見下ろされながら、その身をゆだねるしかない現実に溺れていきたい。
「もっと…ッ…アベニ様……ぁ…ッ、く」
割れた腹筋から続く腰に押し上げられて、身体が確実に宙に浮いた。
それでも、まだかろうじて左足のつま先が床に触れているのは、律動に合わせて身体が動いているせいだろう。両手でつかんだ湯桶が、アベニの動きにつられて波を激しく揺らしている。
「ァッ、い……ィク…ッ…ぃくいく…アベニ様…っ…アベニ様」
「ああ…っ…一緒に。アザミ」
いつの間に掴んでいたのか。湯桶から離れた右手がアベニの右腕を掴んで、アベニにも腕を掴まれている。左足だけで身体を支えて、右足が中途半端に浮いているが、密着して止まった腰を思えば、それは当然の結果なのかもしれない。
「……おっと」
腰を引き抜いたアベニが、その場に崩れ落ちたアザミを支えて苦笑していた。けれどすぐに、「立てない」と不思議そうに呟いているアザミを見て、満足そうな笑顔に変わる。
「身体が冷えるといけないからな」
「アベニ様、っ」
炎を司るアベニの魔那で適温が維持されたお湯にアザミは浸される。髪まで丁寧に洗ってくれるつもりだろう。抱き上げて湯桶に入れてくれたアベニの腕をアザミは引っ張っていた。
「アベニ様……口づけ…したい」
もう少しだけ温もりを感じたい。
それを口にしたアザミの唇に、アベニの唇は静かに落ちてくる。
甘やかされているように感じるのは、口づけの合間にもアベニの手が休まずにお湯をかけてくれるからだろう。腕を回して口づけを求めるアザミの肩や背中に、手酌のお湯が流れていく。
「アザミ、可愛いお前をずっと甘やかしてやりたいんだが、そろそろ邪魔が入る」
「ん…ぅ……っ」
「疲れただろう。後のことは任せて、少し眠れ」
ほほを指の背でこすられて、赤い瞳を見つめたのがアザミの記憶の最後だといえばいいのか。アベニは首に回っていたアザミの手がガクンと緩んだことに気付いて、ふっと優しい息を吐いた。
「あれ、アザミちゃん。寝ちゃった?」
「いま眠らせた。ヒスイも一緒に入るのか?」
「そうしようと思ってきたんだけど、アベニくんも抜け目ないなぁ」
裸でやってきたヒスイが、湯桶の中でされるがままのアザミを見てくすくすと笑う。その横顔を見て、アベニは湯桶から飛び出したアザミの髪を丁寧にクシでとかしはじめた。
「封花印の色、濃くなってない?」
「何かしらの力が発動するたびに濃くなるんじゃないか?」
藍色の長髪をまとう肌がキレイな人肌をしているのを見て、アベニはヒスイの疑問に疑問で答える。
新月の周期は前後を含めてヒスイが苦しんできたことを知っている。
幼いころは高熱にうなされていたことも、大人になってからは笑顔の下に隠せるようになったことも知っている。全身に鱗が浮き出る激痛にヒスイが顔をゆがめていても、本人が「大丈夫」だといい、治療法がない現状をどうすることもできずにいたのはアベニも同じ。
だから、アザミがその苦しみの緩和になるのであればと、独占権を承諾した。
「コウラに殺されなくてよかったな」
「アベニくんも気を付けてね」
それが何を意味するのかはわかっている。
目隠しや帯など可愛いものだとヒスイは文句を言っているが、アベニもそう思うのだから二人の間に言葉はいらない。
「ジンとイルハは?」
「あー、なんかあの面倒な女の対応?」
「アザミ付きはニガナだろ?」
「今は朝だし、それに……ニガナちゃん、怪我をしたそうだよ。階段から落ちたって」
「それはまた物騒だな」
「華族の息がかかっているからね」
「華族出身の妓女なんざ、珍しくもなんともないってのに、染みついた格差ってのは厄介だな」
会話を続けながらアザミをいつくしむ手は止まらない。
アザミの全身を洗い終え、拭いて、乾かして、服を着せている間にヒスイも身を清め終えたらしく、アベニと入れ替わりでアザミの髪を結い始める。
「ん。なんだ?」
アザミの髪が結い終わり、アベニも身支度を終えるころ、突如響いたのは食器が割れる音。地震のような振動。そして耳障りな女の声。
誰に聞くまでもなく、それがメイリンのものであり、悲鳴に近いものであることは確かだった。
「ジンは大丈夫か?」
「コウラくんとイルハくんがいるから大丈夫だと思うけど」
「アザミは、ここに寝かせているほうがいいか」
「そうだね。そのほうが……アベニくんっ」
アザミを浴室にある長椅子に寝かせることに同意した矢先、ヒスイの声が焦燥にアベニを呼ぶ。その声に触発されたのか、アザミのまぶたがわずかに揺れて、ゆっくりと目が開いた。
「ッ」
目覚めにしては、あまりにも悪い。
真っ先に視界に入ってきたのは、赤と青の双璧。アベニとヒスイの髪の色だと認識して、微笑みながら腕を伸ばした瞬間、二人の身体がぐらりと倒れて、その向こうに見たことのない生き物が居座っていた。
「アベニ様…ッ、ヒスイ様」
怪我をしたのか、床に倒れた二人の身体はぴくりとも動かない。
椅子から体を起こし、慌てて触れようとしたところで、アザミはその生き物が遠吠えのような叫び声を発するのを聞いた。
明け方近くになって雨はあがり、薄い雲が白く染まり始めているせいで、寝台はその影の輪郭を映している。
「賊を討伐したときに同じ状況、見たことあるわ」
ぽつりと声を発したイルハに、誰も何も言わないのは、妙に的確な事案のせいだろう。目隠しをされ、帯で直立不動で縛られ、白濁の液が垂れるほど注がれた女体。無抵抗に犯されるか、愛されるかにさほど違いがないと思えるのは、余韻の引かないアザミが目の前にいるせいだろう。
「イルハ、こっちの後始末頼んでいいか?」
「ンで、オレが」
「あっちに参加するか?」
アザミの目隠しを外し、帯をほどいたアベニに言われて、イルハは無言で「あっち」を向く。
ジンが仲裁しているのは、殺気に満ちた男と全裸で壁際まで追い込まれた男。イルハが来た時にはすでにこの状態で、ところどころ氷柱がある室内をみれば、その過激さは容易に想像がつく。
激怒したコウラの仮面はすっかり剥がれ落ちて、「新月の約束を今すぐ撤廃しろ」とジンにまで詰め寄っている。ヒスイがへらへらとしながら謝っているが、反省の色は皆無といえるだけに、次回から新月の夜は全員で過ごすことになると、空気が決定事項のように流れていた。
「よく平気でいられるな」
「ヒスイの後は大抵こんな感じだからな。慣れだ、慣れ」
笑いながらアベニはアザミを抱き上げているが、湯桶に連れていく後姿が微笑ましいかと聞かれると、そうともいえない。
「じゃ、頼むな」
イルハが意識を向けている間に、アベニはアザミを連れて行ってしまった。
そのあと、イルハがどうしたのかは知るに知れない。
アベニはすでに用意しておいた湯桶にアザミを入れ、涙などで汚れた顔を手ぬぐいで丁寧に拭き取っていた。
「ん……む……」
触れるたびに反応するアザミを見ていると、優しさが吹き飛びそうになる。理性を保つには慣れているのか、アベニは淡々と作業をこなし、アザミの身体からホッと力が抜けていくのを見守っていた。
「封花印の色が濃くなってんな」
顔の次は首、肩と降りて、だらりと力を無くした腕を手に取る。
左手首の内側に刻まれた菊の模様。見るたびに濃くなるわけではないが、気付くたびに濃くなっていく痣をアベニは無意識に指の腹で擦る。
「ぁ…っ……ぅ」
封花印に口づけて、その肌を舐めると、アザミの目がうっすらと開いて、眩しそうに顔を歪めた。
「アベニ…さ……ま?」
「んー。こんなんでも感じちまうか?」
久しぶりに視界が開けて、真っ先に飛び込んできたのは朱色の髪。アベニの瞳に焦げ付きそうなほど見つめられている。炎を宿した赤い瞳が、どこか楽しそうに煌めいている。
「ァッ、ふ…ぅ……ッ……ん」
湯桶に浸っていると同時に、アベニに手拭いで身体を清められているのだと理解するのは難しくない。腕から胸元に戻ってきたアベニの手が、お腹を滑り落ちて、足の間に伸びている。
「じっとしてろ。すぐに終わる」
「でも……ッ、ぁ」
「なんだ、いつもより敏感じゃねぇか。物足りないって顔してるぜ」
「だって、ヒスイ様が…ッ…ずっと…ぁ」
舐めてばかりで、と続く言葉が途中で途切れる。
アベニの指が水の抵抗を無視して膣の奥へと侵入してくるせいだが、曲げた指にかき出されたそこは白濁のとろみを湯桶に混ぜていた。
「アザミ、声を我慢できるってんなら、なぐさめてやろうか?」
「んっ……ぅ……」
「どうせ、かき出すなら一緒だろ」
耳元で囁かれて、自分の股の間を見つめてみる。
どくりと鼓動が跳ねて、下腹部がじんと疼いた。
一晩中、愛撫だけで過ごした身体は、一度出されたくらいではおさまらないと不満そうに訴えている気がする。
「アベニ様の……ほしい」
湯桶から腕を伸ばして、アザミはアベニの頬を両手で包む。
じっと目を見つめておねだりしてみれば、アベニはごくりと喉をならして、すぐにふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「いいぜ」
短い了承の言葉とともに、承諾の口づけを受け取る。
静かに唇を重ね、舌を絡ませる時間。
「声は、我慢しろよ」
「……っん……うん」
秘密を作り上げていく背徳感がゾクゾクと神経を刺激して、これから始まる行為に期待がつのる。
「後ろ向け」
湯桶から抱き上げられて床に降ろされた足は、反対を向くように誘導され、湯桶のふちを両手でつかむように指示される。アザミは従順な態度を示すと、自分からお尻を高くつきだし、アベニが挿入しやすい体勢を取った。
前戯はいらない。
余韻が持続して、火照った身体は何をされても感じるに決まっている。
「…………ァッ……ん゛……」
「しぃー。あいつらに気付かれてぇのか?」
腰を掴んでゆっくりと入ってきたアベニが、腰を折って背後から告げてくる。
全員向こうにいる。
部屋を整えて、アザミが湯桶から戻ってくるのを今か今かと待っている。そうした情報を教えてくれる。
「なんだ、アザミ。全員いるって教えてやるなり、しめつけが増したぞ?」
「……っ……ぁ」
「前も後ろもわからないくらい愛されたいか?」
くつくつと声を押し殺して笑うアベニの言葉に、アザミはぐっと息を飲み込む。
前も後ろもわからないくらい。
その状況を瞬時に想像してしまうほど、淫らな身体になってしまった。処女の花魁だったころの、数か月前の自分は信じないだろう。
一人ひとりに削られる体力は半端なく、いつも記憶が曖昧に終わる。この状況でさらに四人も追加するのは危険すぎる。身体がいくつあっても足りない。
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浮かぶ顔に意識が飛ぶまで愛されて、記憶をなくしてしまいたい。
いつからこんなに、はしたなくなってしまったのか。
「……ッ」
腰が音もなく打ち付けられる静かさに耐えながら、揺れるお湯に映る顔が赤く染まって見える。
「おーい、アザミ、今、誰を想像した?」
「ヒッ……ぅ」
密着した腰が突き上げる形で止まって、足が宙に浮く。
つま先を床につけて支えたくても、アベニが意図的に身体を持ち上げようとしてくるのだから難しい。湯桶をつかむ手が震えている。
想像したのは「誰か」ではなく「全員」だといえば、アベニはどんな顔をするだろう。
「……ぁ」
腰から滑り落ちたアベニの手が、垂れて揺れていた胸を包んでいく。下を向いているのだからよく見える。その指先が乳首をすりつぶすために意地悪く笑ったような気がした。
「声、我慢出来て偉いぞ、アザミ」
「ッ………ぅ………ぁ」
「おいおい、へばるには早いだろ。腰あげろ、腰」
左手で胸をこねながら、右手でお尻を叩かれる。音をたてないように軽いものだったとしても、アベニの埋まる膣はこれ以上は無理だと泣いている。
足がつくかつかないかの体勢で、お尻を突き出したまま受け入れるしかない姿勢で、視界に飛び込んでくる刺激があまりにも大きい。
「ったく、しゃーねぇな」
お尻を叩いていたアベニの手が唐突に右足を持ち上げてくる。
立ったまま開脚するには限界があり、アベニの腕にひざを引っかけて止まったが、先ほどよりも視界に映る面積の広さにアザミの目は丸々と見開いていた。
「どうした、まじまじと見つめて」
「…っ……アベニさ…ま」
「誰のが入ってるか、今しがた理解したのか?」
「ぁ……ちが……ッ……ぁ」
ヒスイに目隠しをされ、視覚がずっと奪われていたからか。実際に目にする情報の多さにめまいがして、ぶるぶると身体が震えていく。
アベニが腰を前後に動かすせいで、竿が出たり入ったりしている様子がありありと映り、目に毒だと思っていても、目が離せない。
「………キモチ、ぃ……ぃ…アベニ様…もっと」
もっと見ていたい。赤い髪を揺らして、赤い瞳をぎらつかせて、ほんの少し息をあげたアベニに見下ろされながら、その身をゆだねるしかない現実に溺れていきたい。
「もっと…ッ…アベニ様……ぁ…ッ、く」
割れた腹筋から続く腰に押し上げられて、身体が確実に宙に浮いた。
それでも、まだかろうじて左足のつま先が床に触れているのは、律動に合わせて身体が動いているせいだろう。両手でつかんだ湯桶が、アベニの動きにつられて波を激しく揺らしている。
「ァッ、い……ィク…ッ…ぃくいく…アベニ様…っ…アベニ様」
「ああ…っ…一緒に。アザミ」
いつの間に掴んでいたのか。湯桶から離れた右手がアベニの右腕を掴んで、アベニにも腕を掴まれている。左足だけで身体を支えて、右足が中途半端に浮いているが、密着して止まった腰を思えば、それは当然の結果なのかもしれない。
「……おっと」
腰を引き抜いたアベニが、その場に崩れ落ちたアザミを支えて苦笑していた。けれどすぐに、「立てない」と不思議そうに呟いているアザミを見て、満足そうな笑顔に変わる。
「身体が冷えるといけないからな」
「アベニ様、っ」
炎を司るアベニの魔那で適温が維持されたお湯にアザミは浸される。髪まで丁寧に洗ってくれるつもりだろう。抱き上げて湯桶に入れてくれたアベニの腕をアザミは引っ張っていた。
「アベニ様……口づけ…したい」
もう少しだけ温もりを感じたい。
それを口にしたアザミの唇に、アベニの唇は静かに落ちてくる。
甘やかされているように感じるのは、口づけの合間にもアベニの手が休まずにお湯をかけてくれるからだろう。腕を回して口づけを求めるアザミの肩や背中に、手酌のお湯が流れていく。
「アザミ、可愛いお前をずっと甘やかしてやりたいんだが、そろそろ邪魔が入る」
「ん…ぅ……っ」
「疲れただろう。後のことは任せて、少し眠れ」
ほほを指の背でこすられて、赤い瞳を見つめたのがアザミの記憶の最後だといえばいいのか。アベニは首に回っていたアザミの手がガクンと緩んだことに気付いて、ふっと優しい息を吐いた。
「あれ、アザミちゃん。寝ちゃった?」
「いま眠らせた。ヒスイも一緒に入るのか?」
「そうしようと思ってきたんだけど、アベニくんも抜け目ないなぁ」
裸でやってきたヒスイが、湯桶の中でされるがままのアザミを見てくすくすと笑う。その横顔を見て、アベニは湯桶から飛び出したアザミの髪を丁寧にクシでとかしはじめた。
「封花印の色、濃くなってない?」
「何かしらの力が発動するたびに濃くなるんじゃないか?」
藍色の長髪をまとう肌がキレイな人肌をしているのを見て、アベニはヒスイの疑問に疑問で答える。
新月の周期は前後を含めてヒスイが苦しんできたことを知っている。
幼いころは高熱にうなされていたことも、大人になってからは笑顔の下に隠せるようになったことも知っている。全身に鱗が浮き出る激痛にヒスイが顔をゆがめていても、本人が「大丈夫」だといい、治療法がない現状をどうすることもできずにいたのはアベニも同じ。
だから、アザミがその苦しみの緩和になるのであればと、独占権を承諾した。
「コウラに殺されなくてよかったな」
「アベニくんも気を付けてね」
それが何を意味するのかはわかっている。
目隠しや帯など可愛いものだとヒスイは文句を言っているが、アベニもそう思うのだから二人の間に言葉はいらない。
「ジンとイルハは?」
「あー、なんかあの面倒な女の対応?」
「アザミ付きはニガナだろ?」
「今は朝だし、それに……ニガナちゃん、怪我をしたそうだよ。階段から落ちたって」
「それはまた物騒だな」
「華族の息がかかっているからね」
「華族出身の妓女なんざ、珍しくもなんともないってのに、染みついた格差ってのは厄介だな」
会話を続けながらアザミをいつくしむ手は止まらない。
アザミの全身を洗い終え、拭いて、乾かして、服を着せている間にヒスイも身を清め終えたらしく、アベニと入れ替わりでアザミの髪を結い始める。
「ん。なんだ?」
アザミの髪が結い終わり、アベニも身支度を終えるころ、突如響いたのは食器が割れる音。地震のような振動。そして耳障りな女の声。
誰に聞くまでもなく、それがメイリンのものであり、悲鳴に近いものであることは確かだった。
「ジンは大丈夫か?」
「コウラくんとイルハくんがいるから大丈夫だと思うけど」
「アザミは、ここに寝かせているほうがいいか」
「そうだね。そのほうが……アベニくんっ」
アザミを浴室にある長椅子に寝かせることに同意した矢先、ヒスイの声が焦燥にアベニを呼ぶ。その声に触発されたのか、アザミのまぶたがわずかに揺れて、ゆっくりと目が開いた。
「ッ」
目覚めにしては、あまりにも悪い。
真っ先に視界に入ってきたのは、赤と青の双璧。アベニとヒスイの髪の色だと認識して、微笑みながら腕を伸ばした瞬間、二人の身体がぐらりと倒れて、その向こうに見たことのない生き物が居座っていた。
「アベニ様…ッ、ヒスイ様」
怪我をしたのか、床に倒れた二人の身体はぴくりとも動かない。
椅子から体を起こし、慌てて触れようとしたところで、アザミはその生き物が遠吠えのような叫び声を発するのを聞いた。
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そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
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