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第参章:八束市の支配者
06:破瓜の痛み
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「ッく…ャ…ぁ…っ、炉伯」
息ができない。
思っていたのと全然違う。
「……ァッ…ひ……」
股から裂けてしまいそうな圧力に、全身が強張って炉伯を拒絶している。
お祖父様が許さないとか、主従関係が壊れてしまうとか、言い訳を繰り返す余裕もなく眩暈がしてくる。ぱちぱちと電流が走るみたいに視界が点滅していく。
数日前、たしかに処女をあげることは許可したが、本気と冗談が半々で、まさか本当に実行してくるとは思わなかった。
それ以上は無理だと、全身が悲鳴をあげて逃げようとしている。
「ぁ……ァッ……ぅ」
人間、許容範囲を超える痛みを与えられると身体と思考が分離するのかもしれない。
汗が噴き出すほど痛いのに、そう感じているはずなのに、脳は冷静に別のことを考えている。きちんと思考がまとまるような、そんなものではない。
怖い。
関係性が変わってしまうようで、誤魔化していた気持ちが壊れていく音が聞こえてくるようで、たまらなく怖い。
「ゃ……ぁッ、やだぁ……ァッ」
「胡涅」
「……く…炉伯…ろは…く」
もう無理だと歪んできた視界で、胡涅は首を横に振った。それなのに、炉伯はさらに腰を押し進めてくる。
「ヒッ……ぃ、痛…ァッ…ャぁ」
「大丈夫だ。胡涅、俺をみろ」
「炉伯…ッ…炉伯」
感じたことの無い痛みが身体の中心から込み上げてきて、息が苦しい。
ぎちぎちと近付いてくる圧力に胡涅は元凶の男の名前を繰り返す。それしか出来ない。炉伯が侵入を試みるほど、頭から状況も感情も思考も全部吹き飛んで、無防備に受け入れることしか出来ない。
「炉伯。時間をかけすぎだ」
「胡涅がきつすぎんだよ」
「それは、まあ。そうだろうな」
ふむと朱禅は頷くと「胡涅、そのように指を噛むな」と右手まで奪っていく。
さらにそのまま上半身を折り曲げて、唇を無理矢理こじ開けてきた。
「愛しいな、まったく」
「………ッぁ」
どういうわけか、唇をキスでほぐされると力が抜けて、力が抜けると炉伯が進んでくる。悲鳴に似た断続的な声が「あ……あ……あ」と肺を動かして、胡涅が目を見開くと同時に朱禅はキスをやめた。
「ァッ……ヒッ、ぅ…ぁ…ぁ」
朱禅がキスをやめた代わりに、足を掴んでいた手を離した炉伯が唇を重ねるために腕を伸ばしてくる。
「も…無理…ッ゛…痛い…痛ッ、ィ」
青い目を見た瞬間、なぜか泣けてきた。
痛みを与えてくる男を認識した途端、現在進行形で処女が奪われているのだと現実味が帯びてきて、どうしようもなく泣けてくる。続行する炉伯に潤んだ瞳で停止を求めるが、べろりと舐めとられた涙に、その訴えは棄却された。
「いいな、胡涅」
余裕の無い炉伯なんて初めて見る。
興奮した色を青い瞳に宿し、ほんの少し掠れた声が耳をかじる。
「もらうぜ」
胡涅を慰めるように頭ごと抱えた炉伯に、朱禅が「ああ」と同意したのがわかった。なぜ朱禅が同意するのか。それを聞く余裕は胡涅にはない。
「ヒッ…ぅ゛……イヤぁァッぁあぁ」
これまでとは雲泥の差の衝撃が一気に腰を貫いて、胡涅は炉伯の腕の中で弓なりに仰け反っていた。
甲高い声が炉伯の肌に吸い込まれ、折れた足の先がぴくりぴくりと痙攣している。
「………やべぇ」
抱きしめると同時に、腰を全部押し込んだ炉伯の声が感慨深い声を出して、胡涅の頭頂部にキスを落とした。
「胡涅?」
ぷるぷると震えたまま固まる胡涅に気付いたのか、炉伯がそっと胡涅を覗きみる。朱禅も様子が気になったのだろう。
赤い瞳で炉伯の腕のなかを覗き込んだ。
そしてふっと笑みを吐き、満足そうに口角をあげる。
「胡涅、祝言を送ろう」
真っ赤な顔でえぐえぐと泣き始めた胡涅にかける言葉として、それが適切かどうかは疑わしい。それでも朱禅と炉伯は互いに顔を見合わせて、満足そうに頷いているのだから、これはこれで正解なのだろう。
「………ッ…ャぁ」
「大丈夫だ、胡涅。怖くねぇから、ほら、な?」
「痛、ィッ…炉伯、動いちゃ……ヤッぁ」
「痛くねぇように、ゆっくり馴染ませるから」
「ャぁ…ァッ、やっ……ァッあ、アッ」
じっと、埋まったままじっとしてくれていればそれでよかったのに、炉伯が円を描くようにグルグルと腰を回し始める。
わかりやすく胡涅はイヤイヤと首を横にふって、抱き締める炉伯を腕で押し返そうとしていた。
「………ヒゃ…ァッあ゛…ぅ」
「な、よくなってきたろ?」
「な゛ぁ……ァッなって、な…ィッ」
炉伯の言葉を鵜呑みにして認めるには、悔しいものがある。痛いものは痛い。苦しくて、涙が止まらない。
それでも回すだけでなく、ゆるゆると前後にあやしはじめた炉伯の動きに、痛みだけではない何かを感じ始めていることもわかっていた。
「ヤッぁ…ァッ……炉伯、ぁ゛…ひ」
炉伯の上半身が離れていく。
腰は密着したままで、空気が息を連れてくる。
「あ゛ァッ…っ…朱禅」
「胡涅、よく見ておけ」
朱禅に頭を支えられて何を見せられるのかと思えば、再び膝頭を持って足を曲げてきた炉伯がギリギリまで腰を引いて、再び押し込んでくる光景だった。
「ぎァッ」
衝撃が女らしさや可愛さを吹き飛ばしてくる。
パチパチと目の前を星が弾けて、薄紅の膜をまとった炉伯のオスが輸送し出す。
「………ぁあ゛…ヒッぁ゛…ぁ」
誰も触れたことの無い内臓に、暴力的に触れてくる圧力に意識が奪われそうになる。引きずり出されて、押し戻される。
朱禅と炉伯の中心で身体をひねり、腰を逃がそうと奮闘しても、動き出した波は止まらない。
「まだキツいな」
「初手をやったのだ。うまく慣らせよ」
「そう思うなら手伝え」
炉伯の下で泣くことしか出来ない胡涅を見越した朱禅の顔が、炉伯の意見を聞いて移動していく。
「ヤッぁ…っ…ァッぁあ」
炉伯が深く差し込んだまま腰を突き上げたそこに、朱禅の顔が吸い付いていた。ジュルジュルと音をたて、舌で慰めてくるその行為に、胡涅の声が少しずつ変わっていく。
何度も与えられた刺激は甘く、痛みだけではない快楽のつぼみを咲かせていく。
「ゃ…ぁ…ッぁ…ァッ……ん…ンッ」
クリトリスに吸い付きながら器用に手のひらで胸を揉み、乳首を摘まみ、愛撫を始めたその動きに強張っていた神経がほぐれていく。
「しゅぜ…ッン…ろは…くッ」
愛液の量が増えて輸送が楽になってきたのか、炉伯の動きが加速を始めていた。
この感覚は知っている。
二人がいつもくれるもの。
気持ちがいい行為の延長にある「イク」を身体が思い出したのか、ふと今の現状は何も怖くないのだと腑に落ちた感覚が沸き起こってくる。
「っく…ぃ……ァッ……ふ」
力が抜け始めた胡涅に二人も気付いたのだろう。朱禅が吸う力を弱めて、炉伯の顔にも余裕が戻ってくる。
「ァッ…ん…ぁッあ…ぅ…ァ」
刺激と快楽が結び付いてしまえば、あとは得るだけ。高みに連れていってくれる二人がいれば、それは簡単に得られるものだということを知っている。
欲しかったもの。
欲しいと自分がねだったもの。
これこそがずっと欲しかったものだと漠然と理解できた。
「ィッく…ァッ……いくッぅ炉伯…しゅぜ…ンッ、炉伯、朱禅…ァッ……あ…ィく、いっ…く…ィッぁ、あぁぁァッアァア」
炉伯を埋めたまま胡涅は絶頂を教授する。
いつの間にか朱禅が顔を上げて、炉伯と一緒に胡涅が初めての快楽を受け入れる様子を眺めていたが、それを気にしてはいられない。
「ァッ……ぁ、あっ…ひっ、ぅ」
呑み込みがいいと褒められるのを喜ぶべきか、どうなのか。
炉伯の動きに合わせて、胡涅は身体を許していく。一度知ってしまえば、貪欲に求めてしまうのが人のサガなのかもしれない。
「胡涅、いくぞ」
「ん…っ…ぅ…ぅん……炉伯、炉伯」
ようやく自分の中に埋まっているものを認識して、胡涅は炉伯の言葉を受け入れる。
打ち付けられる腰の激しさに、止められない喘ぎ声が飛び出して、それは深く胡涅の中心に吐き出されていった。
「はぁ…ッ…はぁ…ァッ……ぅ」
吐き出す間、ずっと抱きしめてくれた炉伯が身体を離し、腰を引いて抜けていく。最後に涙の後を唇で触れていったが、胡涅はそれに微笑むことで大丈夫だと告げることにした。
「……朱禅、待っ、ぁ゛……ぅ」
炉伯が退いた場所に朱禅が滑り込んでくる。停止の言葉をかけるより先に、愛蜜の混ざったそこにオスをあてがわれて、胡涅の身体が再び緊張に硬直した。
「胡涅。我を拒むのではないな?」
「違ぅ゛…そ、じゃな……ァッ…」
「見ろ。炉伯の嬉しそうな顔を」
「……ァッ……ぅ…」
「我も早くあの顔をしたい」
真顔で告げられて、胡涅は複雑な顔をする。たしかに炉伯は嬉しそうな顔をしている。まだ物足りないと萎えることのない自身にまとわりついた液に指で触れて、感動したように眺めている。
「そ、な……ッ…あッ…」
そんなことを言われても困ると反論しようとした声は、我が道をいく朱禅によって遮られた。
「……おお」
これはなかなかと、一人で感嘆の声を吐く朱禅の行為に恥ずかしさが募ってくる。
炉伯にこじ開けられて、ほぐされて、どういうものかを一度経験した胡涅の膣は、ぬちぬちと押し入ってくる朱禅の行為を息を潜めて眺め続ける。
「ぅ…っ…ん、ぁ…ッ」
半分も入らないうちから、やはりキツさに顔が歪んでしまう。
力を抜いた方がいいとわかっていても、勝手に身体が怖がって、変な力を入れてしまう。
「慣らすか」
何かを思案する素振りを見せた朱禅と目が合う。
何をならすのか、聞こうとした胡涅は、突然持ち上げられ自分の足に悲鳴をあげた。
「ヤッ…ァッあぁァッ……ぁ゛……ぅ」
お尻を持ち上げられ、太ももの裏側を押し込んで、半分に折り畳まれた胡涅の身体を朱禅の全体重が押し潰す。胡涅の膝は胸につくほど折りたたまれ、真上に向いた膣は哀れなほどサイズの違う凶器を叩き込まれて、胡涅の両手は長椅子のシートに深く爪を食い込ませている。
全身が許容範囲を超えた刺激に限界を迎えたのだろう。
特に子宮はオスに入り口を塞がれて、先に注がれた炉伯の精液を逆流させた。
「朱禅、胡涅の気が飛んでるぞー」
「都合が良いではないか」
異変に気付いた炉伯がほんの少し呆れた顔で、肩をすくめて胡涅の髪を撫でる。
それを手で払いのけた朱禅は刺激が強すぎて意識を飛ばした胡涅を抱き寄せ、炉伯がしたように腰を最奥まで突き上げ始めた。
「あーあー、せっかく食わせてやったのに全部吐き出すつもりか?」
「胡涅は少食だからな」
よく言うと炉伯は胡涅の股の間から溢れる泡の白を見つけて眉をあげた。
「胡涅。意識を飛ばしてると、朱禅の好きに食われるぞ」
くすくすと笑いながら炉伯は朱禅の下敷きになる胡涅の耳に囁く。
時折、思い出したように息をするが、ひくひくと痙攣する姿は、朱禅の重さに潰されて快楽を得ているようにも見えた。
「で、どうよ?」
腰を振るに徹した朱禅に、炉伯はいたずらな青の瞳を向ける。
「至福以外の言葉が見つからん」
赤い瞳に興奮を宿し、口角をあげて答えた朱禅に、炉伯がふはっと笑みをこぼす。
「同感」
たった一言。悠久を共に過ごしたもの同士、持ち得た感想は同じだったらしい。
「これからが楽しみだな、胡涅」
「胡涅が見ていないときの貴様の顔は悪党すぎる」
「能ある鷹は爪を隠す、だろ?」
言いながら二人の手も口も止まらない。朱禅に至っては、本能で逃げようとする胡涅を追いかけて、快楽を叩き込んでいた。
「胡涅はまだ逃げるか」
「ならば、胡涅、逃げられぬと学ぶまで犯してやろう」
「………ッぁ゛……」
弓なりに仰け反る身体を抱え込まれた胡涅の足が天井に向かって跳ね上がる。
「どっちが悪党だよ」と炉伯は笑ったが、意識が浮上した胡涅には聞こえない。
「……く…ィッ…イクぁ゛……あぁ」
「さあ、胡涅。我もいくとしよう」
「しゅぜ…ンッ…ぁィックぃ、ァッあ、ャッ…あっアァァアぁ」
身体の中に直接熱いものが広がっていく。じわりじわりと白に染められていく見えない場所が、朱禅の熱を感じて痙攣している。
「……っぅ……ァッ」
くたりと、再び意識を失った胡涅に、朱禅と炉伯は顔を見合わせて微笑み合った。
「胡涅は体力が足りねぇな」
「それでも受け入れてもらうぞ。我ら夜叉の愛は重い」
「ま、時間はある。永く長い時間の中でゆっくり染めていけばいい」
腰を抜いた朱禅の下から現れた胡涅を抱えあげた炉伯は、ゆるく笑ってその額に唇を押し付ける。どことなく不満そうな朱禅と同じ、まだまだ吐き出し足りないと自身のオスは告げているが、なだめるように炉伯は胡涅の髪を撫でるにとどめた。
息ができない。
思っていたのと全然違う。
「……ァッ…ひ……」
股から裂けてしまいそうな圧力に、全身が強張って炉伯を拒絶している。
お祖父様が許さないとか、主従関係が壊れてしまうとか、言い訳を繰り返す余裕もなく眩暈がしてくる。ぱちぱちと電流が走るみたいに視界が点滅していく。
数日前、たしかに処女をあげることは許可したが、本気と冗談が半々で、まさか本当に実行してくるとは思わなかった。
それ以上は無理だと、全身が悲鳴をあげて逃げようとしている。
「ぁ……ァッ……ぅ」
人間、許容範囲を超える痛みを与えられると身体と思考が分離するのかもしれない。
汗が噴き出すほど痛いのに、そう感じているはずなのに、脳は冷静に別のことを考えている。きちんと思考がまとまるような、そんなものではない。
怖い。
関係性が変わってしまうようで、誤魔化していた気持ちが壊れていく音が聞こえてくるようで、たまらなく怖い。
「ゃ……ぁッ、やだぁ……ァッ」
「胡涅」
「……く…炉伯…ろは…く」
もう無理だと歪んできた視界で、胡涅は首を横に振った。それなのに、炉伯はさらに腰を押し進めてくる。
「ヒッ……ぃ、痛…ァッ…ャぁ」
「大丈夫だ。胡涅、俺をみろ」
「炉伯…ッ…炉伯」
感じたことの無い痛みが身体の中心から込み上げてきて、息が苦しい。
ぎちぎちと近付いてくる圧力に胡涅は元凶の男の名前を繰り返す。それしか出来ない。炉伯が侵入を試みるほど、頭から状況も感情も思考も全部吹き飛んで、無防備に受け入れることしか出来ない。
「炉伯。時間をかけすぎだ」
「胡涅がきつすぎんだよ」
「それは、まあ。そうだろうな」
ふむと朱禅は頷くと「胡涅、そのように指を噛むな」と右手まで奪っていく。
さらにそのまま上半身を折り曲げて、唇を無理矢理こじ開けてきた。
「愛しいな、まったく」
「………ッぁ」
どういうわけか、唇をキスでほぐされると力が抜けて、力が抜けると炉伯が進んでくる。悲鳴に似た断続的な声が「あ……あ……あ」と肺を動かして、胡涅が目を見開くと同時に朱禅はキスをやめた。
「ァッ……ヒッ、ぅ…ぁ…ぁ」
朱禅がキスをやめた代わりに、足を掴んでいた手を離した炉伯が唇を重ねるために腕を伸ばしてくる。
「も…無理…ッ゛…痛い…痛ッ、ィ」
青い目を見た瞬間、なぜか泣けてきた。
痛みを与えてくる男を認識した途端、現在進行形で処女が奪われているのだと現実味が帯びてきて、どうしようもなく泣けてくる。続行する炉伯に潤んだ瞳で停止を求めるが、べろりと舐めとられた涙に、その訴えは棄却された。
「いいな、胡涅」
余裕の無い炉伯なんて初めて見る。
興奮した色を青い瞳に宿し、ほんの少し掠れた声が耳をかじる。
「もらうぜ」
胡涅を慰めるように頭ごと抱えた炉伯に、朱禅が「ああ」と同意したのがわかった。なぜ朱禅が同意するのか。それを聞く余裕は胡涅にはない。
「ヒッ…ぅ゛……イヤぁァッぁあぁ」
これまでとは雲泥の差の衝撃が一気に腰を貫いて、胡涅は炉伯の腕の中で弓なりに仰け反っていた。
甲高い声が炉伯の肌に吸い込まれ、折れた足の先がぴくりぴくりと痙攣している。
「………やべぇ」
抱きしめると同時に、腰を全部押し込んだ炉伯の声が感慨深い声を出して、胡涅の頭頂部にキスを落とした。
「胡涅?」
ぷるぷると震えたまま固まる胡涅に気付いたのか、炉伯がそっと胡涅を覗きみる。朱禅も様子が気になったのだろう。
赤い瞳で炉伯の腕のなかを覗き込んだ。
そしてふっと笑みを吐き、満足そうに口角をあげる。
「胡涅、祝言を送ろう」
真っ赤な顔でえぐえぐと泣き始めた胡涅にかける言葉として、それが適切かどうかは疑わしい。それでも朱禅と炉伯は互いに顔を見合わせて、満足そうに頷いているのだから、これはこれで正解なのだろう。
「………ッ…ャぁ」
「大丈夫だ、胡涅。怖くねぇから、ほら、な?」
「痛、ィッ…炉伯、動いちゃ……ヤッぁ」
「痛くねぇように、ゆっくり馴染ませるから」
「ャぁ…ァッ、やっ……ァッあ、アッ」
じっと、埋まったままじっとしてくれていればそれでよかったのに、炉伯が円を描くようにグルグルと腰を回し始める。
わかりやすく胡涅はイヤイヤと首を横にふって、抱き締める炉伯を腕で押し返そうとしていた。
「………ヒゃ…ァッあ゛…ぅ」
「な、よくなってきたろ?」
「な゛ぁ……ァッなって、な…ィッ」
炉伯の言葉を鵜呑みにして認めるには、悔しいものがある。痛いものは痛い。苦しくて、涙が止まらない。
それでも回すだけでなく、ゆるゆると前後にあやしはじめた炉伯の動きに、痛みだけではない何かを感じ始めていることもわかっていた。
「ヤッぁ…ァッ……炉伯、ぁ゛…ひ」
炉伯の上半身が離れていく。
腰は密着したままで、空気が息を連れてくる。
「あ゛ァッ…っ…朱禅」
「胡涅、よく見ておけ」
朱禅に頭を支えられて何を見せられるのかと思えば、再び膝頭を持って足を曲げてきた炉伯がギリギリまで腰を引いて、再び押し込んでくる光景だった。
「ぎァッ」
衝撃が女らしさや可愛さを吹き飛ばしてくる。
パチパチと目の前を星が弾けて、薄紅の膜をまとった炉伯のオスが輸送し出す。
「………ぁあ゛…ヒッぁ゛…ぁ」
誰も触れたことの無い内臓に、暴力的に触れてくる圧力に意識が奪われそうになる。引きずり出されて、押し戻される。
朱禅と炉伯の中心で身体をひねり、腰を逃がそうと奮闘しても、動き出した波は止まらない。
「まだキツいな」
「初手をやったのだ。うまく慣らせよ」
「そう思うなら手伝え」
炉伯の下で泣くことしか出来ない胡涅を見越した朱禅の顔が、炉伯の意見を聞いて移動していく。
「ヤッぁ…っ…ァッぁあ」
炉伯が深く差し込んだまま腰を突き上げたそこに、朱禅の顔が吸い付いていた。ジュルジュルと音をたて、舌で慰めてくるその行為に、胡涅の声が少しずつ変わっていく。
何度も与えられた刺激は甘く、痛みだけではない快楽のつぼみを咲かせていく。
「ゃ…ぁ…ッぁ…ァッ……ん…ンッ」
クリトリスに吸い付きながら器用に手のひらで胸を揉み、乳首を摘まみ、愛撫を始めたその動きに強張っていた神経がほぐれていく。
「しゅぜ…ッン…ろは…くッ」
愛液の量が増えて輸送が楽になってきたのか、炉伯の動きが加速を始めていた。
この感覚は知っている。
二人がいつもくれるもの。
気持ちがいい行為の延長にある「イク」を身体が思い出したのか、ふと今の現状は何も怖くないのだと腑に落ちた感覚が沸き起こってくる。
「っく…ぃ……ァッ……ふ」
力が抜け始めた胡涅に二人も気付いたのだろう。朱禅が吸う力を弱めて、炉伯の顔にも余裕が戻ってくる。
「ァッ…ん…ぁッあ…ぅ…ァ」
刺激と快楽が結び付いてしまえば、あとは得るだけ。高みに連れていってくれる二人がいれば、それは簡単に得られるものだということを知っている。
欲しかったもの。
欲しいと自分がねだったもの。
これこそがずっと欲しかったものだと漠然と理解できた。
「ィッく…ァッ……いくッぅ炉伯…しゅぜ…ンッ、炉伯、朱禅…ァッ……あ…ィく、いっ…く…ィッぁ、あぁぁァッアァア」
炉伯を埋めたまま胡涅は絶頂を教授する。
いつの間にか朱禅が顔を上げて、炉伯と一緒に胡涅が初めての快楽を受け入れる様子を眺めていたが、それを気にしてはいられない。
「ァッ……ぁ、あっ…ひっ、ぅ」
呑み込みがいいと褒められるのを喜ぶべきか、どうなのか。
炉伯の動きに合わせて、胡涅は身体を許していく。一度知ってしまえば、貪欲に求めてしまうのが人のサガなのかもしれない。
「胡涅、いくぞ」
「ん…っ…ぅ…ぅん……炉伯、炉伯」
ようやく自分の中に埋まっているものを認識して、胡涅は炉伯の言葉を受け入れる。
打ち付けられる腰の激しさに、止められない喘ぎ声が飛び出して、それは深く胡涅の中心に吐き出されていった。
「はぁ…ッ…はぁ…ァッ……ぅ」
吐き出す間、ずっと抱きしめてくれた炉伯が身体を離し、腰を引いて抜けていく。最後に涙の後を唇で触れていったが、胡涅はそれに微笑むことで大丈夫だと告げることにした。
「……朱禅、待っ、ぁ゛……ぅ」
炉伯が退いた場所に朱禅が滑り込んでくる。停止の言葉をかけるより先に、愛蜜の混ざったそこにオスをあてがわれて、胡涅の身体が再び緊張に硬直した。
「胡涅。我を拒むのではないな?」
「違ぅ゛…そ、じゃな……ァッ…」
「見ろ。炉伯の嬉しそうな顔を」
「……ァッ……ぅ…」
「我も早くあの顔をしたい」
真顔で告げられて、胡涅は複雑な顔をする。たしかに炉伯は嬉しそうな顔をしている。まだ物足りないと萎えることのない自身にまとわりついた液に指で触れて、感動したように眺めている。
「そ、な……ッ…あッ…」
そんなことを言われても困ると反論しようとした声は、我が道をいく朱禅によって遮られた。
「……おお」
これはなかなかと、一人で感嘆の声を吐く朱禅の行為に恥ずかしさが募ってくる。
炉伯にこじ開けられて、ほぐされて、どういうものかを一度経験した胡涅の膣は、ぬちぬちと押し入ってくる朱禅の行為を息を潜めて眺め続ける。
「ぅ…っ…ん、ぁ…ッ」
半分も入らないうちから、やはりキツさに顔が歪んでしまう。
力を抜いた方がいいとわかっていても、勝手に身体が怖がって、変な力を入れてしまう。
「慣らすか」
何かを思案する素振りを見せた朱禅と目が合う。
何をならすのか、聞こうとした胡涅は、突然持ち上げられ自分の足に悲鳴をあげた。
「ヤッ…ァッあぁァッ……ぁ゛……ぅ」
お尻を持ち上げられ、太ももの裏側を押し込んで、半分に折り畳まれた胡涅の身体を朱禅の全体重が押し潰す。胡涅の膝は胸につくほど折りたたまれ、真上に向いた膣は哀れなほどサイズの違う凶器を叩き込まれて、胡涅の両手は長椅子のシートに深く爪を食い込ませている。
全身が許容範囲を超えた刺激に限界を迎えたのだろう。
特に子宮はオスに入り口を塞がれて、先に注がれた炉伯の精液を逆流させた。
「朱禅、胡涅の気が飛んでるぞー」
「都合が良いではないか」
異変に気付いた炉伯がほんの少し呆れた顔で、肩をすくめて胡涅の髪を撫でる。
それを手で払いのけた朱禅は刺激が強すぎて意識を飛ばした胡涅を抱き寄せ、炉伯がしたように腰を最奥まで突き上げ始めた。
「あーあー、せっかく食わせてやったのに全部吐き出すつもりか?」
「胡涅は少食だからな」
よく言うと炉伯は胡涅の股の間から溢れる泡の白を見つけて眉をあげた。
「胡涅。意識を飛ばしてると、朱禅の好きに食われるぞ」
くすくすと笑いながら炉伯は朱禅の下敷きになる胡涅の耳に囁く。
時折、思い出したように息をするが、ひくひくと痙攣する姿は、朱禅の重さに潰されて快楽を得ているようにも見えた。
「で、どうよ?」
腰を振るに徹した朱禅に、炉伯はいたずらな青の瞳を向ける。
「至福以外の言葉が見つからん」
赤い瞳に興奮を宿し、口角をあげて答えた朱禅に、炉伯がふはっと笑みをこぼす。
「同感」
たった一言。悠久を共に過ごしたもの同士、持ち得た感想は同じだったらしい。
「これからが楽しみだな、胡涅」
「胡涅が見ていないときの貴様の顔は悪党すぎる」
「能ある鷹は爪を隠す、だろ?」
言いながら二人の手も口も止まらない。朱禅に至っては、本能で逃げようとする胡涅を追いかけて、快楽を叩き込んでいた。
「胡涅はまだ逃げるか」
「ならば、胡涅、逃げられぬと学ぶまで犯してやろう」
「………ッぁ゛……」
弓なりに仰け反る身体を抱え込まれた胡涅の足が天井に向かって跳ね上がる。
「どっちが悪党だよ」と炉伯は笑ったが、意識が浮上した胡涅には聞こえない。
「……く…ィッ…イクぁ゛……あぁ」
「さあ、胡涅。我もいくとしよう」
「しゅぜ…ンッ…ぁィックぃ、ァッあ、ャッ…あっアァァアぁ」
身体の中に直接熱いものが広がっていく。じわりじわりと白に染められていく見えない場所が、朱禅の熱を感じて痙攣している。
「……っぅ……ァッ」
くたりと、再び意識を失った胡涅に、朱禅と炉伯は顔を見合わせて微笑み合った。
「胡涅は体力が足りねぇな」
「それでも受け入れてもらうぞ。我ら夜叉の愛は重い」
「ま、時間はある。永く長い時間の中でゆっくり染めていけばいい」
腰を抜いた朱禅の下から現れた胡涅を抱えあげた炉伯は、ゆるく笑ってその額に唇を押し付ける。どことなく不満そうな朱禅と同じ、まだまだ吐き出し足りないと自身のオスは告げているが、なだめるように炉伯は胡涅の髪を撫でるにとどめた。
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