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第三章 それぞれの素性
第四十二話 暴かれた本質
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天井を向いて噛み締めた口の端からよだれが零れて、獣じみた濁った母音の唸り声が吐き出されていく。
自分の意思とは無関係に。
馬鹿みたいに振り乱れて叫ぶだけ。
「イっ…あぁ…また…ヤッ、やめない…ぁッ」
「ヤめてっていうからヤめてあげたのに?」
「~~~ッ、ぅ…ぁ、アッ」
涙と嗚咽でぐちゃぐちゃになった顔。与えられる快楽に限界を訴える神経。
手首と足首は手錠で拘束され、背中を預けるロイに後ろから膝を押さえつけられ、剥き出しになった下半身はもとより上半身にも見るに堪えないくらい赤い印が散りばめられている。
イキそうになった回数分。唇で印を刻まれている。
「はぁ…っ…アッ…はぁ」
「可愛い、アヤ。もうどこを触っても感じちゃうね」
「ッ…アッ…やめ…ヤダぁ…」
背中を預けるロイの体温はもちろん。スヲンとランディの手の平が全身を撫で続けている。
「イヤァアァッッぁあ」
「アヤ、嘘はよくないよ」
「ウソじゃな…ッ…抜いて…ぁッ」
「嫌がってるようには見えないし、全部埋まってるから今さら抜けないよ」
ずっと圧迫感がある肛門。
お尻の穴には球体が繋がった特殊のプラグを埋め込まれ苦しくてたまらない。
「ああ、気持ちいいね。また逃げようとして、どうしたの?」
白々しく背後から囁いてくる存在が怖い。
いや、怖いのはロイだけではない。
「逃げられると思ってるのか?」
「…ぅ…スヲ…ンッ」
「学習能力がないやつだな」
「~~~っ、らん…でぃ…イッあ」
「その顔、もっと見せて。ボクとキスしよ…ん…ランディとスヲンに可愛がられてるアヤが可愛すぎて、もっと苛めたくなる」
「…ッ…ぁ…アッ…やっ」
「ダメだよ。ボクたちからは逃げられないんだから、怖がってないで早くこっちにおいで」
「あだま…へんに、な…りゅ…こわれる…ぅ」
スヲンにつるつるになるまで剃られた割れ目は、なぜか左右のラビアをクリップで止められ、そこに結びついたゴム同士がでお尻側から引っ張り合い、強制的に開いた状態に固定されている。それだけならまだしも、その中心の核はランディの親指と人差し指でつぶされ続けていた。
「遠慮するな。撫でているだけだ」
「ちがう…ッ…ぜっ、たい…それぇ」
「そうか、嬉しいか」
「うれしく…な…ぁ…ア…ァッ…アぁ」
「まだ体と言葉が結びつかないようだな」
「やだ、らんで…ぃ…触らな、で…なんでまた舐めるの!?」
ランディの指が膣内に一本侵入してきて折れ曲がり、硬く勃起した陰核はランディの口の中に消えていく。
熱くて変な汗が噴き出してしまう。
どうせ最後までイカセテくれないのに、音をたててしゃぶられる果肉は、もうとっくに溶けてドロドロに崩れているのに、美味しそうに食べるランディの頭が涙で滲んでいく。
「アヤ、クリトリスばっかり気にしてないで、乳首はどう?」
「ャッ…ぁ…イ、クッ…スヲンい~~~ッぁ…なんでぇ」
別に特別なことは何もない。
彼らはずっと指と舌だけで肌を撫で、引っ掻き、摘まみ、全身触れなかった場所がないのではと思えるほどのマッサージを何時間もかけて続けてきただけのこと。時々思いついたようにキスマークをつけ、かと思えば歯形が残らない程度に噛み、懇切丁寧に触れてきただけのこと。
窓の外は赤い色が溶けて、夏らしい夕焼けの空を沈めていく。
「い…かせて…お願い…イカセテくださッ」
「お願いできるようになって偉いね、アヤ」
背後でよしよしと頭を撫でてこめかみにキスを落としてくる悪魔のせいで、背中の肌につけられた印の数はわからない。
「えらいね」と褒めておきながら、全然その願いを聞いてくれる気がないことは一目瞭然で、実際スヲンとランディの攻め手が同時に止まったことで、アヤの瞳にはまた大粒の涙がにじんでいた。
「やだ、いきたい…ッ…いきたいイかせて…ィっ…ぅ」
腰を振って、駄々をこねる。
くすぶり続けた快感が泣き叫んでいる。たぎる熱さが内臓を溶かしたみたいに全身を汗ばませ、疼いた神経が快感を通り越して痛みに似た刺激を与えてくる。
狂えるほど繰り返される愛撫の連続に悲鳴をあげて訴えている。
「アヤ、そんなに叫んでばかりいると可愛い声がつぶれちゃうよ?」
「~~ッう゛…んぁ…ッ」
「んー、ボクのキス嫌い?」
「ぁ…しゅき…好きだから、アァッ…ちゃんとしゅきって、言った…いやぁぁぁ」
少し降下したところでまたスヲンとランディの指と舌が肌の上をすべる。
今度は欲しいところには一切触れてくれない。確実に快楽を得られる場所を避け、周囲の神経やリンパをなぞる程度の優しい触れ方。
「っぅああぁぁ」
「違う」ことが通じ合わずに心が壊れていく。
彼らなら言葉にしなくてもわかってくれると思っていた。実際、わかってくれていた。だから何も言わなくても大丈夫だと、どこかで高を括っていた。
「甘やかすだけが愛じゃないんだってボクたちも学んだんだ」
泣きじゃくる彼女を目の前にして、しらじらしく泣きまねをするロイが信じられない。
「やだ、ロイ…ッ…おねが、い…イかせて」
「…くっ…可愛い…アヤ、もう一回言って」
「~~~っ、ぃ…ロイ」
「おねがい?」
「します。お願いします、いかせてください、ヤッ、スヲン、らんでぃ」
体がのけぞってエビみたいに跳ねているのに、絶頂は訪れない。
「お願いします」も懇願に近く、いつの間にか口癖のように出てくるだけで人生でこんなに他人にお願いを強要したことはないほどの回数を使用している。
「アヤはイきたいから好きって言ってるだけだもんね。ボクたちの愛はそうじゃないって、アヤにどうやったら伝わるのかな」
「伝わッテりゅ…も…ッう、じゅうぶん…伝わッ!?」
また天井を見上げて、歯を噛み締めて、訪れない絶頂を嘆く。
たらたらと零れる液体を舐めとられ、永遠に続く優しいだけの愛撫に溺れていく。脳みそが溶けたみたいにぐずぐずしている。
このままイカせてもらえなかったら。そう考えるだけで、涙が全然止まらない。
「~~~ッ……きらい、みんなキライっ」
蚊が泣くほどの小さな声で呟くしかない。
それなのに、そういうときばかりやたら聞く姿勢を見せてくる三人の愛撫がピタリとやんだ。
「アヤ、それは本心?」
背後のロイは怖くて見れない。
「キライなら止めるか。嫌いなヤツには、触られたくもないだろ」
ランディの指が膣から抜けて、顔が足の間から離れていく。
「ランディ、やだ、やめちゃヤダ!!」
「アヤ、言ってることが支離滅裂だ」
「ごめんなさい…っ、嘘…ウソ、キライじゃない…言ってな…スヲン…っ…ぁ」
スヲンまで離れていく。「待って」と声にならない息で繋げば、わずかに聞く姿勢を見せたスヲンがじっと見下ろしてくる。
「なんだ?」
たった一言。
でも、その一言が「解答を間違えればそれで終わり」だと伝えてくる。
アヤは、ゴクリとのどを鳴らして溶けた頭で解答を口にした。
「スヲンもロイもランディも好きだけど、お願い…聞いてくれないの…イヤなの」
「お願いを聞いてくれなくなったら、俺たちを嫌いになるのか?」
「ッ…チ、ちがうちがうちがう…すっ好き…好きなのに…こんなに、好きなのに…なんで、わかってくれないの!?」
うわーんと子どものように泣きじゃくる。
どうしようもないほど大好きなのに、愛しているのに、伝わってくれないことがもどかしくて苦しくて、耐えられないほど悔しくて、情けない。
「ずっと一緒に…っ…わかって…いなくなったらヤダ……離れたら死んじゃ…ぅ」
どうすれば伝わるのか。言葉で、態度で、全身で訴えているのに届かないツラさが、心を暴れさせて、連動した手錠が体をくねらせる。
「お願い…っ…傍にいて…離れないで…ずっと…もっと私のこと…私を…私だけ…っぅ」
ポロポロと涙が溢れて止まらない。
「いなくなったら生きていけない」
嗚咽混じりの言葉がこぼれ落ちていく。
「お願い…愛してるの…どこにも、行かないでぇ」
イかせて欲しくて吐くのではない。一緒にいてくれるなら求める欲望を放棄して、このまま止めてしまってもかまわない。
えぐえぐと無様な姿で泣くアヤに、ふっと笑う息はみっつ。
「嘘をつく悪い子はイヤだな」
「うん…ァッ…ごめんなさ…ロイッ…ごめんなさい」
「キライなんて言われたからすごく傷ついた」
「…っ…ぅ…」
涙をためた目を見開き、唇を噛み締めて絶望に震えるしかない。
別れる結果になるなんて、それこそ望んでもなければ、吐いた言葉に後悔しか感じられない。
「やだ、別れない!!」
「許してほしい?」
「ほしい…ッ…ホシイ…許して」
「じゃあ、ボクたちがしたいようにしていい?」
何でもいいから許してほしい。
すがるように縦に振る首は、効果音をつけるなら「ぶんぶん」と音を立てているだろう。哀れな姿で無様に許しを乞うにはあまりにも悲惨。美しい男たちは汗ひとつかいていないのに、その中心で液体という液体を垂れ流し真っ赤にはらした体で決定権を持つその瞳を見つめる。
「なにしてもキライにならない?」
キライになんてなるはずもない。
アヤはうんうんと背後のロイにすり寄りながら、何度も首を縦に振っていた。
「ちゃんと声に出して」
「ならない…っ…ロイとスヲンとランディになら何されてもいい」
「本心に思ってないことを口にしたらダメだよ」
「…してない…なにしてもいいから、どこにもいかないで」
「逃げようとしたりしない?」
「しな…ぃ…ンッ、はぁ…はぁ…ァッぁ」
「じゃあ、ちゃんと証明してね」
ニコリと笑われた顔に悪寒が走る。
自分の意思とは無関係に。
馬鹿みたいに振り乱れて叫ぶだけ。
「イっ…あぁ…また…ヤッ、やめない…ぁッ」
「ヤめてっていうからヤめてあげたのに?」
「~~~ッ、ぅ…ぁ、アッ」
涙と嗚咽でぐちゃぐちゃになった顔。与えられる快楽に限界を訴える神経。
手首と足首は手錠で拘束され、背中を預けるロイに後ろから膝を押さえつけられ、剥き出しになった下半身はもとより上半身にも見るに堪えないくらい赤い印が散りばめられている。
イキそうになった回数分。唇で印を刻まれている。
「はぁ…っ…アッ…はぁ」
「可愛い、アヤ。もうどこを触っても感じちゃうね」
「ッ…アッ…やめ…ヤダぁ…」
背中を預けるロイの体温はもちろん。スヲンとランディの手の平が全身を撫で続けている。
「イヤァアァッッぁあ」
「アヤ、嘘はよくないよ」
「ウソじゃな…ッ…抜いて…ぁッ」
「嫌がってるようには見えないし、全部埋まってるから今さら抜けないよ」
ずっと圧迫感がある肛門。
お尻の穴には球体が繋がった特殊のプラグを埋め込まれ苦しくてたまらない。
「ああ、気持ちいいね。また逃げようとして、どうしたの?」
白々しく背後から囁いてくる存在が怖い。
いや、怖いのはロイだけではない。
「逃げられると思ってるのか?」
「…ぅ…スヲ…ンッ」
「学習能力がないやつだな」
「~~~っ、らん…でぃ…イッあ」
「その顔、もっと見せて。ボクとキスしよ…ん…ランディとスヲンに可愛がられてるアヤが可愛すぎて、もっと苛めたくなる」
「…ッ…ぁ…アッ…やっ」
「ダメだよ。ボクたちからは逃げられないんだから、怖がってないで早くこっちにおいで」
「あだま…へんに、な…りゅ…こわれる…ぅ」
スヲンにつるつるになるまで剃られた割れ目は、なぜか左右のラビアをクリップで止められ、そこに結びついたゴム同士がでお尻側から引っ張り合い、強制的に開いた状態に固定されている。それだけならまだしも、その中心の核はランディの親指と人差し指でつぶされ続けていた。
「遠慮するな。撫でているだけだ」
「ちがう…ッ…ぜっ、たい…それぇ」
「そうか、嬉しいか」
「うれしく…な…ぁ…ア…ァッ…アぁ」
「まだ体と言葉が結びつかないようだな」
「やだ、らんで…ぃ…触らな、で…なんでまた舐めるの!?」
ランディの指が膣内に一本侵入してきて折れ曲がり、硬く勃起した陰核はランディの口の中に消えていく。
熱くて変な汗が噴き出してしまう。
どうせ最後までイカセテくれないのに、音をたててしゃぶられる果肉は、もうとっくに溶けてドロドロに崩れているのに、美味しそうに食べるランディの頭が涙で滲んでいく。
「アヤ、クリトリスばっかり気にしてないで、乳首はどう?」
「ャッ…ぁ…イ、クッ…スヲンい~~~ッぁ…なんでぇ」
別に特別なことは何もない。
彼らはずっと指と舌だけで肌を撫で、引っ掻き、摘まみ、全身触れなかった場所がないのではと思えるほどのマッサージを何時間もかけて続けてきただけのこと。時々思いついたようにキスマークをつけ、かと思えば歯形が残らない程度に噛み、懇切丁寧に触れてきただけのこと。
窓の外は赤い色が溶けて、夏らしい夕焼けの空を沈めていく。
「い…かせて…お願い…イカセテくださッ」
「お願いできるようになって偉いね、アヤ」
背後でよしよしと頭を撫でてこめかみにキスを落としてくる悪魔のせいで、背中の肌につけられた印の数はわからない。
「えらいね」と褒めておきながら、全然その願いを聞いてくれる気がないことは一目瞭然で、実際スヲンとランディの攻め手が同時に止まったことで、アヤの瞳にはまた大粒の涙がにじんでいた。
「やだ、いきたい…ッ…いきたいイかせて…ィっ…ぅ」
腰を振って、駄々をこねる。
くすぶり続けた快感が泣き叫んでいる。たぎる熱さが内臓を溶かしたみたいに全身を汗ばませ、疼いた神経が快感を通り越して痛みに似た刺激を与えてくる。
狂えるほど繰り返される愛撫の連続に悲鳴をあげて訴えている。
「アヤ、そんなに叫んでばかりいると可愛い声がつぶれちゃうよ?」
「~~ッう゛…んぁ…ッ」
「んー、ボクのキス嫌い?」
「ぁ…しゅき…好きだから、アァッ…ちゃんとしゅきって、言った…いやぁぁぁ」
少し降下したところでまたスヲンとランディの指と舌が肌の上をすべる。
今度は欲しいところには一切触れてくれない。確実に快楽を得られる場所を避け、周囲の神経やリンパをなぞる程度の優しい触れ方。
「っぅああぁぁ」
「違う」ことが通じ合わずに心が壊れていく。
彼らなら言葉にしなくてもわかってくれると思っていた。実際、わかってくれていた。だから何も言わなくても大丈夫だと、どこかで高を括っていた。
「甘やかすだけが愛じゃないんだってボクたちも学んだんだ」
泣きじゃくる彼女を目の前にして、しらじらしく泣きまねをするロイが信じられない。
「やだ、ロイ…ッ…おねが、い…イかせて」
「…くっ…可愛い…アヤ、もう一回言って」
「~~~っ、ぃ…ロイ」
「おねがい?」
「します。お願いします、いかせてください、ヤッ、スヲン、らんでぃ」
体がのけぞってエビみたいに跳ねているのに、絶頂は訪れない。
「お願いします」も懇願に近く、いつの間にか口癖のように出てくるだけで人生でこんなに他人にお願いを強要したことはないほどの回数を使用している。
「アヤはイきたいから好きって言ってるだけだもんね。ボクたちの愛はそうじゃないって、アヤにどうやったら伝わるのかな」
「伝わッテりゅ…も…ッう、じゅうぶん…伝わッ!?」
また天井を見上げて、歯を噛み締めて、訪れない絶頂を嘆く。
たらたらと零れる液体を舐めとられ、永遠に続く優しいだけの愛撫に溺れていく。脳みそが溶けたみたいにぐずぐずしている。
このままイカせてもらえなかったら。そう考えるだけで、涙が全然止まらない。
「~~~ッ……きらい、みんなキライっ」
蚊が泣くほどの小さな声で呟くしかない。
それなのに、そういうときばかりやたら聞く姿勢を見せてくる三人の愛撫がピタリとやんだ。
「アヤ、それは本心?」
背後のロイは怖くて見れない。
「キライなら止めるか。嫌いなヤツには、触られたくもないだろ」
ランディの指が膣から抜けて、顔が足の間から離れていく。
「ランディ、やだ、やめちゃヤダ!!」
「アヤ、言ってることが支離滅裂だ」
「ごめんなさい…っ、嘘…ウソ、キライじゃない…言ってな…スヲン…っ…ぁ」
スヲンまで離れていく。「待って」と声にならない息で繋げば、わずかに聞く姿勢を見せたスヲンがじっと見下ろしてくる。
「なんだ?」
たった一言。
でも、その一言が「解答を間違えればそれで終わり」だと伝えてくる。
アヤは、ゴクリとのどを鳴らして溶けた頭で解答を口にした。
「スヲンもロイもランディも好きだけど、お願い…聞いてくれないの…イヤなの」
「お願いを聞いてくれなくなったら、俺たちを嫌いになるのか?」
「ッ…チ、ちがうちがうちがう…すっ好き…好きなのに…こんなに、好きなのに…なんで、わかってくれないの!?」
うわーんと子どものように泣きじゃくる。
どうしようもないほど大好きなのに、愛しているのに、伝わってくれないことがもどかしくて苦しくて、耐えられないほど悔しくて、情けない。
「ずっと一緒に…っ…わかって…いなくなったらヤダ……離れたら死んじゃ…ぅ」
どうすれば伝わるのか。言葉で、態度で、全身で訴えているのに届かないツラさが、心を暴れさせて、連動した手錠が体をくねらせる。
「お願い…っ…傍にいて…離れないで…ずっと…もっと私のこと…私を…私だけ…っぅ」
ポロポロと涙が溢れて止まらない。
「いなくなったら生きていけない」
嗚咽混じりの言葉がこぼれ落ちていく。
「お願い…愛してるの…どこにも、行かないでぇ」
イかせて欲しくて吐くのではない。一緒にいてくれるなら求める欲望を放棄して、このまま止めてしまってもかまわない。
えぐえぐと無様な姿で泣くアヤに、ふっと笑う息はみっつ。
「嘘をつく悪い子はイヤだな」
「うん…ァッ…ごめんなさ…ロイッ…ごめんなさい」
「キライなんて言われたからすごく傷ついた」
「…っ…ぅ…」
涙をためた目を見開き、唇を噛み締めて絶望に震えるしかない。
別れる結果になるなんて、それこそ望んでもなければ、吐いた言葉に後悔しか感じられない。
「やだ、別れない!!」
「許してほしい?」
「ほしい…ッ…ホシイ…許して」
「じゃあ、ボクたちがしたいようにしていい?」
何でもいいから許してほしい。
すがるように縦に振る首は、効果音をつけるなら「ぶんぶん」と音を立てているだろう。哀れな姿で無様に許しを乞うにはあまりにも悲惨。美しい男たちは汗ひとつかいていないのに、その中心で液体という液体を垂れ流し真っ赤にはらした体で決定権を持つその瞳を見つめる。
「なにしてもキライにならない?」
キライになんてなるはずもない。
アヤはうんうんと背後のロイにすり寄りながら、何度も首を縦に振っていた。
「ちゃんと声に出して」
「ならない…っ…ロイとスヲンとランディになら何されてもいい」
「本心に思ってないことを口にしたらダメだよ」
「…してない…なにしてもいいから、どこにもいかないで」
「逃げようとしたりしない?」
「しな…ぃ…ンッ、はぁ…はぁ…ァッぁ」
「じゃあ、ちゃんと証明してね」
ニコリと笑われた顔に悪寒が走る。
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