フランクリン・ヘイズの人生

nekome

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子供時代

No.11 会いたくない

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「明日で一週間だな」

いつも通り言葉を読んでいると、ゴッダードさんはそんなことを呟いた。

「何のはなし?」

僕は顔を上げて聞く。

「一週間したら帰るんだろ?」

僕はその言葉を聞いて頭を巡らせる。

「あ……」

僕は、帰らなきゃいけないんだ。

「忘れてたのか」

スープを啜りながらゴッダードさんはそう言った。

「うん」

お父さんとお母さんを思い浮かべる。
いつもニコニコしながら話すお父さんと、優しいお母さん。
とっても大好きなはずなのに、会うのが怖いのはどうしてだろう。

「明日、お前の父さんが迎えに来てくれる」

お父さんの顔が浮かぶ。顔を思い浮かべただけで、怖いと思うのはどうしてだろう。

大好きなのに。

「寂しいな」

「また来ればいい」

このままゴッダードさんの家で過ごしたいと思うのは、我儘なんだろうか。
ペラペラと、ページを開いて読んでいくけれど、書いてあることが何も頭に入ってこない。

「帰りたくないな」

僕は恐る恐るそんなことを呟いてみた。

「その本はやるから安心していい」

そういうことじゃない

「お父さんとお母さんと、会いたくない」

どうしてお父さんとお母さんと過ごさなきゃいけないんだろう。
この一週間、一度だって会いに来てくれなかったのに。

「会え、お前の父さん母さんも会いたがってる」

じゃあ、どうして

「嘘だよ、会いたがってるなら、なんで来てくれないの」

「気を使っているんだ。それにすら気づかないのか?」

そんなの知らない。僕は頭の中が覗けるわけじゃないんだから。

「だって、教えてもらってないよ。それに、気を使うって何なの?」

「相手の気持ちを汲み取ること」

「なんで僕なんかに気を遣うの?」

ゴッダードさんがイライラしているのが目に見て分かる。でも、僕は聞くことを辞められなかった。

「それは本人に聞け」

「だってお父さんに聞いても、お母さんに聞いても、何も教えてくれないんだもん。ゴッダードさんなら知ってるでしょ?教えてよ」

「知るわけないだろ」

知りたいのに、知りたいのに、ゴッダードさんでも教えてくれない。


なんで、と口にした瞬間に、ゴッダードさんは腕を机に強く押し付ける。
机が揺れた衝撃で、目の前のコップが床に落ち、割れた。

怖くて怖くて仕方がなくて、身体が動かない。

「忘れてくれ」

そう言ってゴッダードさんは床に散らばった破片を片付け始めた。
ごめんなさいと謝りたいのに、声が出ない。

部屋に居ることが耐えられなくて、僕は久しぶりに外に出る。
前出たときと景色がとても変わっていて、新鮮だった。

そのまま遊ぼうと思ったけれど、かぶりものを着てないことに気が付いた。
仕方なく僕は急いで家の中に戻って、ベッドの中に潜り込んだ。
またかゆくなるのは嫌だった。

ゴッダードさんを怒らせてしまった。
文字を見ていたら忘れられるのに、手元に文字はない。
当たり前のことで、取りに行けばいいだけなのに、僕は動くことが出来なかった。

ーーーー

「晩飯が出来たが、食べるか?」

どれぐらいの時間が経ったかはわからないけれど、ゴッダードさんは僕を呼んだ。

「うん」

ベッドから出て、机にあるご飯を食べる。
珍しくお腹が空いていて、夢中になって食べるとすぐなくなってしまった。

いつも何か話しかけてくれるのに、食べている間、ゴッダードさんは何も話してくれなかった。
そのうちゴッダードさんも全て食べ終わって、食器を片付け始める。

コツコツと、ドアが誰かに叩かれた。

ゴッダードさんは手に持っている食器を置いて、ドアを開ける。

「どうされましたか?」

そうゴッダードさんが聞いてすぐ、ドアの向こうにいた人が家の中へと入ってきた。

「ちょっと待ってください」

そう言ってゴッダードさんは止めようとするけれど、その人は聞きもしないで家の中に入っていく。

「支度をしなさい」

その人は僕に向かってそう言い放った。誰だろう?知らない人だ。

僕はその人に近づく。

「なんで?なんで、支度をしなきゃいけないの?」

近くで顔を見ると、顔はしわくちゃで、まるでおばけみたいだった。

この人は立ったまま、僕を睨みつけた。

その瞬間、僕のお腹に大きな衝撃が走った。
僕の体は後ろへと飛んで机の角へと当る。あまりにも痛いものだから、思わずせき込んでしまう。
何が起こったのかがわからなくて、顔を上げてしわくちゃの顔をみるとまたお腹に衝撃が走る。

喉の奥からこみ上げて来たものを、僕は吐いてしまう。

この人が蹴ったんだ。
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