Murder Mystery VR ~SF電脳空間でミステリー体験? VRの世界へようこそ~

冴季栄瑠

文字の大きさ
27 / 43

19.二日目・朝 三人目の犠牲者

しおりを挟む
 親しくなった友人の首吊り死体を目の前で見ることとなった宇佐美は、ひどく動揺し、歯がカチカチと鳴るほど身を震わせていた。

「大丈夫、これはゲームです……。あーちゃんはゲームオーバーになっただけです。今ごろ現実世界に意識が浮上して、途中リタイアを残念がっていますよ、きっと」

「そ、そう……そうよ、ね……。ちょっと、びっくり、してしまって……」

 過呼吸のような症状を起こしていたので、ひとまず食堂に連れ戻し、介抱した。

 すると、朝食をとるために、ヒカル、エレノア、そして夢人が、続々と食堂へ集まってくる。待ち合わせて来たわけではなく、たまたまエレベーターで一緒になったらしい。

「みんな、ちょっと集まってほしい」

 なんとなく凶報と察したのだろう、一瞬で表情を固くした面々に、事情を説明した。
 まさか朝っぱらから、あーちゃんが殺害されたことを報告するはめになるとは思わなかったが……。
 プレイヤーたちはそれぞれ驚愕の表情で、言葉を無くしている。

「昨日の今日で、また殺られたのか……」と言ったのはヒカル。
「今度は、あーちゃんさんが……」とエレノア。
「三人目じゃないか、やりすぎだよ……」と声を裏返らせているのは、夢人。

 ――だが、言葉通りに受け取ることはできない。この中で、誰かが嘘をついている。犯行を行いながら、そしらぬ顔で、演技をしているのだ。
 今生存しているメンバーの中に、あーちゃんを手にかけた「犯人」が必ずいるはずなのだから……。

 それから全員で図書室に移動し、現場検証を済ませて――男たちに手伝ってもらい、宙に足が浮いているあーちゃんを床に下ろし、横たえる。
 首にくいこんだ縄も解いてやったが、非常に精神的苦痛をともなう作業だった……。
(正直、こんな自由度はいらない。戻ったら運営に文句言ってやる……)

 ゲームの不満点は置いておいて、調査過程でわかったことは、以下のとおりだ。

・死因は絞殺による窒息死。
・犯人の痕跡はなく部屋に乱れがないことから、被害者の背後から忍び寄り、吊り下げに使ったロープで襲ったと思われる。
・あーちゃんの鼻に引っ掻き傷あり。また、彼女の爪に血液が付着していた。

 三つ目については、もしや犯人の痕跡? という線もあったが、あーちゃんが後ろから襲われていることや、手がかりを残さない狡猾な犯人の性格からして、直接的に犯人に繋がるものではないという意見が有力だった。要は、首を絞められたあーちゃんが、自ら暴れて自分の鼻を引っ掻いた、というものだ。

(ゲームだから苦痛は感じないはずだけど……首を掴まれて、やばいと感じて掻きむしったのかな……)
 ふと、食堂で最後に会話したときの、あーちゃんの言葉がよみがえった。

『あとで意見交換でもする? 個人の能力のこととか、知られないほうがいいと思っていたけど、やっぱりライちゃんになら教えてもいいかなって」』

 へへっと鼻を擦りながら、笑顔を浮かべていたっけ。
 俺になら、能力について明かしてもいいと言ってくれて……。

(傷……鼻……もしかしたら、こちらに何かを伝えようとした可能性も――?)

「このくらいでいいだろう。……はぁ……いったん座って話し合わないか。食堂に戻ろう」

 ヒカルが提案し、全員疲れた顔で、図書室をあとにした。
 朝食を食べ損ねた者たちが数名いたが、新たに注文する者はいなかった。

***

「宇佐美さん、辛いと思いますが、発見当初、何があったのか詳しく話してもらえますか」

 食堂の椅子に浅く腰かけた宇佐美は、揺らぐ目を閉じ、大きく深呼吸をひとつした。
 少しは気持ちが落ち着いてきたのだろうか。ぽつりぽつりと話しはじめた彼女の話によれば……。

【宇佐美の行動】
・あーちゃんと待ち合わせて朝食をとり、本を返すために食堂を先に出て、図書室に向かった。
・図書室内に人はおらず(カウンターも無人)、本の返却したのち、新しい本を選ぼうと書架の前に立った。
・直後、首の後ろに衝撃を受けて、意識を失った。
・目が覚めて室内を見回すと、天井から下がった、あーちゃんの体が……。

 最後は光景を思い出したのか、うっと吐き気をこらえるように口元を押さえた。

「気絶させられ、そのあとのことはわからないわけですね?」
「ええ、そうよ……」

 やはり犯人の姿は見ていない、か……。
 落胆と、やっぱりなという気持ちで考え込んでいると、

「聞いてもいいですか?」
 エレノアが手を上げて、発言した。

「図書室に向かうには食堂前の廊下を必ず通らなければならないですよね。ライさんが食堂であーちゃんさんと別れたあと、誰か食堂の前を通った人物は?」

「俺は、そこの廊下を見通せる席でコーヒーを飲んでいたけれど、図書室に向かう人影は見なかったな……」

 その点については、念のためマーリンさんにも裏付けをお願いした。

「ワタシも見ていないわね。お兄さんがずっと食堂にいたことも証言できる。ちなみに厨房にいても蠅一匹見逃さない自信があるわ」

 次に、ヒカルが発言した。
「宇佐美さんが気絶していたというのは、そもそも本当なんですか?」

 宇佐美が口の端を歪めて答える。
「そう言われると思ってたけど……首の裏を見て。痕になっているんじゃないかしら」

 宇佐美が髪をかき上げた首の後ろには、たしかに手刀をくらったような痣があった。

「え、でも……、やっぱり犯人は、宇佐美さんしか、いないですよね……?」

 それまで積極的に話には加わらず、黙って聞いていた夢人が、ぽんと石を投げ入れるように、呟いた。
 全員の、強めの視線がそちらに集まる。中でも特に反応を見せたのは、名指しにされた宇佐美だ。

「なんですって?」

「だって図書室には、他に誰もいなかったんでしょ?
 宇佐美さんが先に図書室に向かって、そのあとあーちゃんさんが追いかけた。食堂には、こっちのお兄さんとマーリンさんがいて、あとからそっちへ向かう人は見ていないと言ってる。現場にはあなたと被害者のふたりきり。そうですよね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...