28 / 43
20.まさかの外部犯行説(1)
しおりを挟む
夢人は早口に自分の考えを主張し――まるでクイズの正解を閃いた子どものような態度だ。
宇佐美はカッとして叫んだ。
「そんなわけないでしょう? 私が彼女を殺すなんて……だいたい、私は先に犯人に襲われて、気絶させられたと言ってるじゃない! 急になんなの? 黒須さんのときに、私があなたのことを疑ったから、その仕返しのつもり?」
「自分で棚の角かなんかにぶつけて、気絶したふりをしただけかもしれないよ」
「そんなバレバレなこと、しないわよ!」
「でなかったら、気絶させるなんて面倒くさいことをせずに、先に図書室に入った方を殺ればいいじゃないですか。わざわざ後から来たあーちゃんさんをターゲットにした意味は?」
夢人の中では確信を持っているのか、宇佐美への攻撃は止まらない。
「それは私を犯人に仕立て上げるために……」
「いやいや、そんなの意味が分からない。このゲーム、難易度初級じゃないですか。そこまでメチャクチャにする意味あります?」
「そんなの……犯人がゲームの指示に従わずに動いているとしたら、どうかしら。そう、きっとそうだわ。犯人は愉快犯的な思考の持ち主なのよ。ゲームの枠を超えて、私たちを混乱させようとしている。あなたみたいに子どもっぽくて、下品な人間ならやりかねないわね」
「なんだって!?」
夢人が気色ばんだ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って……落ち着いて、ふたりとも」
罵り合いになりそうだったので、いちど口を挟む。皆がこちらへと視線を移した。
「あーちゃんが狙われた理由だけど……それなら少し、心当たりがあるよ。彼女は昨夜、犯人の手がかりについて、なにか掴んだと言っていたんだ。犯人にもそれが伝わってしまい、彼女の口を封じたんじゃないかって……」
あーちゃんは主に、宇佐美と行動を共にしていた。
今朝も、あーちゃんと宇佐美が食堂へ向かう様子を、犯人は監視していたに違いない。
宇佐美が図書室に向かうだろうことは、昨夜、本人が「本を借りた」と言っていたことから、周知の事実だった。本を借りたなら、読み終わったら返却する。図書室に寄るとしたら、食堂に行くときが最も効率的だ。
宇佐美が図書室に向かえば、あーちゃんも一緒についてくるだろう。図書室には大抵、誰もいない。犯人はそこを犯行現場と決めて、ついでに宇佐美に罪を着せようとした――。
……と、考えうる限りのことを説明したが、思ったような反応は得られなかった。皆、困惑したような顔色を浮かべている。全て憶測上のことだから、すんなり頷くには至らないのだろう。
夢人が言った。
「宇佐美さんをフォローしたいのはわかるけど……そういう線もあるってだけのことでしょ?」
「どうしても私を犯人にしたいみたいね!」と宇佐美。どちらも感情的になっている。
「だってもう、それしか考えられない。そうに決まってる! ね、ヒカルさん。エレノアさんも。ライさんだって、本当はそう思うでしょう?」
「ま、まぁまぁ……どうしたんだ、夢人くん。ちょっと落ち着けって」
なだめようと、夢人の肩を掴もうとした。すると、
「わっ、触らないで!」
激しく振り払われた。瞬発的な動きに驚いて、バンザイの姿勢をとる。思わず言葉をなくしていると、
「あっ……ご、ごめんなさい。僕、潔癖症なんだ……。人に接近するのも苦手で……。ゲームの中なら平気かと思ったけど、やっぱり生理的に無理で……」
夢人は潔癖症……。そして接近恐怖症? 人付き合いは苦手そうだと思ってはいたが……。
すると、宇佐美が鼻で笑った。
「潔癖症ですって? それでわかったわ。
――今朝、食堂に来る前に、あーちゃんと一緒に黒須さんの部屋の前の廊下を見にいったのよ。現場百ぺんというでしょう? もういちど、見逃しているものはないかと思って……。そうしたら、わずかだけど、昨夜とは様相が違っていたの。――床の血溜まりが、拭き取られていたのよ」
宇佐美はカッとして叫んだ。
「そんなわけないでしょう? 私が彼女を殺すなんて……だいたい、私は先に犯人に襲われて、気絶させられたと言ってるじゃない! 急になんなの? 黒須さんのときに、私があなたのことを疑ったから、その仕返しのつもり?」
「自分で棚の角かなんかにぶつけて、気絶したふりをしただけかもしれないよ」
「そんなバレバレなこと、しないわよ!」
「でなかったら、気絶させるなんて面倒くさいことをせずに、先に図書室に入った方を殺ればいいじゃないですか。わざわざ後から来たあーちゃんさんをターゲットにした意味は?」
夢人の中では確信を持っているのか、宇佐美への攻撃は止まらない。
「それは私を犯人に仕立て上げるために……」
「いやいや、そんなの意味が分からない。このゲーム、難易度初級じゃないですか。そこまでメチャクチャにする意味あります?」
「そんなの……犯人がゲームの指示に従わずに動いているとしたら、どうかしら。そう、きっとそうだわ。犯人は愉快犯的な思考の持ち主なのよ。ゲームの枠を超えて、私たちを混乱させようとしている。あなたみたいに子どもっぽくて、下品な人間ならやりかねないわね」
「なんだって!?」
夢人が気色ばんだ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って……落ち着いて、ふたりとも」
罵り合いになりそうだったので、いちど口を挟む。皆がこちらへと視線を移した。
「あーちゃんが狙われた理由だけど……それなら少し、心当たりがあるよ。彼女は昨夜、犯人の手がかりについて、なにか掴んだと言っていたんだ。犯人にもそれが伝わってしまい、彼女の口を封じたんじゃないかって……」
あーちゃんは主に、宇佐美と行動を共にしていた。
今朝も、あーちゃんと宇佐美が食堂へ向かう様子を、犯人は監視していたに違いない。
宇佐美が図書室に向かうだろうことは、昨夜、本人が「本を借りた」と言っていたことから、周知の事実だった。本を借りたなら、読み終わったら返却する。図書室に寄るとしたら、食堂に行くときが最も効率的だ。
宇佐美が図書室に向かえば、あーちゃんも一緒についてくるだろう。図書室には大抵、誰もいない。犯人はそこを犯行現場と決めて、ついでに宇佐美に罪を着せようとした――。
……と、考えうる限りのことを説明したが、思ったような反応は得られなかった。皆、困惑したような顔色を浮かべている。全て憶測上のことだから、すんなり頷くには至らないのだろう。
夢人が言った。
「宇佐美さんをフォローしたいのはわかるけど……そういう線もあるってだけのことでしょ?」
「どうしても私を犯人にしたいみたいね!」と宇佐美。どちらも感情的になっている。
「だってもう、それしか考えられない。そうに決まってる! ね、ヒカルさん。エレノアさんも。ライさんだって、本当はそう思うでしょう?」
「ま、まぁまぁ……どうしたんだ、夢人くん。ちょっと落ち着けって」
なだめようと、夢人の肩を掴もうとした。すると、
「わっ、触らないで!」
激しく振り払われた。瞬発的な動きに驚いて、バンザイの姿勢をとる。思わず言葉をなくしていると、
「あっ……ご、ごめんなさい。僕、潔癖症なんだ……。人に接近するのも苦手で……。ゲームの中なら平気かと思ったけど、やっぱり生理的に無理で……」
夢人は潔癖症……。そして接近恐怖症? 人付き合いは苦手そうだと思ってはいたが……。
すると、宇佐美が鼻で笑った。
「潔癖症ですって? それでわかったわ。
――今朝、食堂に来る前に、あーちゃんと一緒に黒須さんの部屋の前の廊下を見にいったのよ。現場百ぺんというでしょう? もういちど、見逃しているものはないかと思って……。そうしたら、わずかだけど、昨夜とは様相が違っていたの。――床の血溜まりが、拭き取られていたのよ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる