Murder Mystery VR ~SF電脳空間でミステリー体験? VRの世界へようこそ~

冴季栄瑠

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26.二日目・夜 最後の調査

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 にゃいぼが転んでいた場所を調べると、床に赤いネバネバが付着していた。
 彼女はこれに滑って転んでしまったらしい。

 自分の想像では、この赤いやつは、さっきの見えない殺人鬼とは関係がない。
 そして、事件の重要人物でもあり――おそらくは「彼」のなれの果て。
 「彼」は、自らの能力によって別の姿になった。ねばねばを発するような形状をしていて、当然まだ生きており、移動しながら身を隠している……はずだ。

 事件の全貌を解くためには、その赤いやつも見つけださねばならないのだが――通風孔でも通り抜けられるような特殊な相手を、移動が制限される船内で追うことは骨が折れる。

「にゃいぼ。この赤いねばねばの本体を捜索できるか?」

「おやすい御用ですにゃ。にゃいぼは船内を知り尽くしてますにゃ」

「じゃあ頼む。それから――申し訳ないが、先に俺が部屋に戻るまでの警護を頼めるか。不審な気配が近づくようなら教えてくれ」

「かしこまりましたにゃ」

 これで万全だ。
 にゃいぼのセンサーで安心を担保し、その場をあとにした。

***

 まずは食堂でマーリンさんに声をかけて、倉庫調査の報告を済ませた。
 それと、もうひとつ「気になっていたこと」を尋ねて、プレイヤーに関するヒントを得る――。

 それから、食堂の奥の図書室にも寄り、ソファに安置されているあーちゃんの遺体を調べた。

「――デバッグ」
 
 ピコン。画面が開いた。物言わぬ物体となってしまったあーちゃんを構成する、プログラムデータだ。
 デバックは有人プレイヤーには通用しないはずなのだが、死亡したキャラクターの場合は「物」と同義となるのだろう。

 ゲーム開発時のバグ取り作業をするかのごとく、あーちゃんの抜け殻に、エラーがないか調べていく。同じく遺体となったダオラ船長と黒須には、おそらく見当たらない「異常」を見つけるために。

 第一、第二の殺人では飽き足らず、あの殺人鬼が執拗に獲物を追い求めた理由が、必ずあるはずなのだ。

 膨大なアルファベットの羅列をまばたきもせずに目で追っていく。いつの間にか作業に没頭するうちに、体感よりも早く時間は経過し、やがて――。

「……あった……」

 不審なプログラムコード。
 現役プログラマーたる自分でも見たことのない言語で、新しく書き加えられた形跡がある……。

 どこかで察していた予想通りの結果に、満足というにはほど遠い――複雑な胸中で、それを見つめた。

「やっぱりこれが……理由だったんだな」

***

 全ての調査を終えてから、にゃいぼに伴われ、自室に戻ることにした。
 時間は多分、夜の九時頃。普段通りであったなら、部屋で休むには少し早い時間かもしれないが……。

 決して、さぼろうとしたとか、余裕をぶっこいていたわけではない。
 立て続けのロールバックで目の前がチカチカして、活動の限界が近づいているのを感じたからだ。

 一見するとほんの数時間の間でも、見えないバロメーターのようなものを大幅に消耗してしまったようだ。少し休息をとる必要がある。

 念の為、にゃいぼに部屋の中に異常がないかサーチしてもらい、問題なしと見て入室した。

「では、これから頼まれた件にとりかかりますにゃ。赤いやつの捜索はお任せくださいにゃ。おやすみなさいですにゃーん」

「ああ、よろしく頼むよ……」

 猫娘ロボットを送り出して、部屋にロックをかける。
 あとは彼女の仕事を待つばかり、だ。

 倒れるようにベッドに倒れ込む。
 事件を反芻しながら瞼を閉じる――。

 第一の事件、ダオラ船長殺害。
 第二の事件、黒須殺害。
 第三の事件、あーちゃん殺害。

(だいたいのことが、繋がった――あとは、ネバネバに裏付けをとれれば……)

 すぐに、磁力に吸い寄せられる砂鉄のように、眠りのふちへと落ちていった――。
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