37 / 43
27.三日目・解決編(2)
しおりを挟む
誰ともなく、息をのむ気配。
「犯人と犯行の目的が途中で変わった? ……どういうことだ」とヒカル。
「それは、これから説明します」
事件を振り返り、順を追っての説明を開始する。
まず、第一の事件、ダオラ船長殺害について。
これはチュートリアルに従って、犯人役の人物が起こした最初の事件。シナリオの規定路線だ。
犯行方法とアリバイ工作は、すでに自分が提示した方法で大方、合っていると思う。
この犯人は、アリバイの曖昧だった黒須、夢人、あーちゃん、宇佐美の内の誰かだと仮定したが、この中の誰かが、「ゲームシステム上、正式に選ばれた犯人」だといえる。
と、ここまでは周知の事実なので、さらりと流して――。
次に、第二の事件、黒須殺害について。
この件は、現場から犯人が忽然と消えた謎について、明らかにしていこう。
「まずは夢人くん。もう一度確認させてほしいんだけど……黒須さんが殺害される直前、夢人くんの部屋のインターホンが鳴った、と言っていたよね」
尋ねられた夢人が、瞳をきょろきょろ動かして答える。
「え? う、うん……だけど、人影は見えなかったし……外に出なかったから、よくわからないよ」
「大丈夫。行動としては、それで正解だったかと。先にネタばらししてしまうと……このときの犯人は、『透明になる能力』を使っています」
「「「は?」」」
三人の声がかぶった。声を出したのはエレノア以外の3人だ。口々に文句が飛び交う。
「なんだそれは。ふざけてるのか?」
「犯人の能力が透明だなんて、チートすぎるじゃない」
「ずるいよ、そんな能力。クソゲーじゃんか」
あぁ気持ちはわかる。まるでこちらが悪者かのようにブーイングが浴びせられたが、今は時間もないことですから……。
「納得できるようこれから説明します。なんなら、仮定としてとらえてください。それと、なんでそんな能力を付加したのかという文句は、あとでお客様センターによろしくお願いします」
無理やりに起動修正して、説明を再開する。
犯人の能力が透明だと確信したのは、昨晩、裏の倉庫で何度も殺され……相まみえたからなのだが、コンティニューによるロールバックのことにまで触れるとさらにハチの巣になりそうだから、そのへんは適当に伏せておくことにする。
「では、話を戻しますが――。たとえ犯人が透明だったとしても、ロックのかかった部屋のドアをすり抜けることはできません。こんな状況ですし、普通の感覚であれば、インターホンが鳴っても、相手の姿が見えなかったらわざわざドアを開けたりしないですよね。でも、黒須さんは開けてしまった。何故開けたのか。それは、黒須さんがゲーム上定められた『犯人』だったから。自分は命を狙われるはずがない立場にいたから、油断してしまったんです」
そう、この時点で、ゲーム上「犯人役」を命じられた者が、殺されてしまったのだ。これよりあとに起きる事件は、本来は犯人ではない人物による、イレギュラーの犯行ということになる。
ここで異論をはさむ者はなく、全員がこちらの言葉に耳を傾けている。
「犯人役だった黒須さんが、別の誰かに殺されて……その誰かは透明になる能力を使っていた。だから私とライさんが駆け付けたとき、犯人の姿はどこにも見つけられなかった、というわけですね」
エレノアが、確認するように呟いた。
「そう。アリバイ方面から見て、新たな犯人の能力は『透明』としか考えられません。
俺とエレノアさんが黒須さんの叫び声を聞き、一本通路の最奥にある彼の部屋の前にたどり着いたとき、犯人の姿はなかった。けれど相手が不可視だったと考えれば、俺たちとすれ違って現場から離れ、自分の部屋に戻り、何食わぬ顔で出てくることができる……。
そして翌朝のあーちゃん殺害の事件でも、食堂前の廊下を、俺とマーリンさんの視界に入らずに通過し、図書室であーちゃんを殺害することが容易になる」
黙って成り行きを見守っていたマーリンさんも、ひと言添えてくれた。
「コバエ一匹見逃さないワタシでも、相手が透明だったらさすがに気づけないわね」
どこからともなく、息をつくのが聞こえる。
皆、頭の中で、情報を必死で整理しているのだろう。
「犯人と犯行の目的が途中で変わった? ……どういうことだ」とヒカル。
「それは、これから説明します」
事件を振り返り、順を追っての説明を開始する。
まず、第一の事件、ダオラ船長殺害について。
これはチュートリアルに従って、犯人役の人物が起こした最初の事件。シナリオの規定路線だ。
犯行方法とアリバイ工作は、すでに自分が提示した方法で大方、合っていると思う。
この犯人は、アリバイの曖昧だった黒須、夢人、あーちゃん、宇佐美の内の誰かだと仮定したが、この中の誰かが、「ゲームシステム上、正式に選ばれた犯人」だといえる。
と、ここまでは周知の事実なので、さらりと流して――。
次に、第二の事件、黒須殺害について。
この件は、現場から犯人が忽然と消えた謎について、明らかにしていこう。
「まずは夢人くん。もう一度確認させてほしいんだけど……黒須さんが殺害される直前、夢人くんの部屋のインターホンが鳴った、と言っていたよね」
尋ねられた夢人が、瞳をきょろきょろ動かして答える。
「え? う、うん……だけど、人影は見えなかったし……外に出なかったから、よくわからないよ」
「大丈夫。行動としては、それで正解だったかと。先にネタばらししてしまうと……このときの犯人は、『透明になる能力』を使っています」
「「「は?」」」
三人の声がかぶった。声を出したのはエレノア以外の3人だ。口々に文句が飛び交う。
「なんだそれは。ふざけてるのか?」
「犯人の能力が透明だなんて、チートすぎるじゃない」
「ずるいよ、そんな能力。クソゲーじゃんか」
あぁ気持ちはわかる。まるでこちらが悪者かのようにブーイングが浴びせられたが、今は時間もないことですから……。
「納得できるようこれから説明します。なんなら、仮定としてとらえてください。それと、なんでそんな能力を付加したのかという文句は、あとでお客様センターによろしくお願いします」
無理やりに起動修正して、説明を再開する。
犯人の能力が透明だと確信したのは、昨晩、裏の倉庫で何度も殺され……相まみえたからなのだが、コンティニューによるロールバックのことにまで触れるとさらにハチの巣になりそうだから、そのへんは適当に伏せておくことにする。
「では、話を戻しますが――。たとえ犯人が透明だったとしても、ロックのかかった部屋のドアをすり抜けることはできません。こんな状況ですし、普通の感覚であれば、インターホンが鳴っても、相手の姿が見えなかったらわざわざドアを開けたりしないですよね。でも、黒須さんは開けてしまった。何故開けたのか。それは、黒須さんがゲーム上定められた『犯人』だったから。自分は命を狙われるはずがない立場にいたから、油断してしまったんです」
そう、この時点で、ゲーム上「犯人役」を命じられた者が、殺されてしまったのだ。これよりあとに起きる事件は、本来は犯人ではない人物による、イレギュラーの犯行ということになる。
ここで異論をはさむ者はなく、全員がこちらの言葉に耳を傾けている。
「犯人役だった黒須さんが、別の誰かに殺されて……その誰かは透明になる能力を使っていた。だから私とライさんが駆け付けたとき、犯人の姿はどこにも見つけられなかった、というわけですね」
エレノアが、確認するように呟いた。
「そう。アリバイ方面から見て、新たな犯人の能力は『透明』としか考えられません。
俺とエレノアさんが黒須さんの叫び声を聞き、一本通路の最奥にある彼の部屋の前にたどり着いたとき、犯人の姿はなかった。けれど相手が不可視だったと考えれば、俺たちとすれ違って現場から離れ、自分の部屋に戻り、何食わぬ顔で出てくることができる……。
そして翌朝のあーちゃん殺害の事件でも、食堂前の廊下を、俺とマーリンさんの視界に入らずに通過し、図書室であーちゃんを殺害することが容易になる」
黙って成り行きを見守っていたマーリンさんも、ひと言添えてくれた。
「コバエ一匹見逃さないワタシでも、相手が透明だったらさすがに気づけないわね」
どこからともなく、息をつくのが聞こえる。
皆、頭の中で、情報を必死で整理しているのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる