Murder Mystery VR ~SF電脳空間でミステリー体験? VRの世界へようこそ~

冴季栄瑠

文字の大きさ
38 / 43

27.三日目・解決編(3)

しおりを挟む
「……ここまで宜しいですか?
 とにかく、設定上の犯人であった黒須さんのまさかの戦力外離脱により、ゲーム上で起きる殺人の目的は、もうひとりの『悪意ある存在』にすげかわってしまいました。これを便宜上『電子の悪魔』と呼ぶことにします」

「……電子の悪魔……透明の能力を持つ、もうひとりの犯人……。そいつは誰なの? そして目的は何?」

 宇佐美が、両腕で自分の体を抱くようにして言った。
 説明の先を促されたと解して、言葉を続けることにする。

「まず先に、相手の目的について――。電子の悪魔はある目的のために、NPCではない有人プレイヤーをキル(殺害され死亡した)状態にしたかったんです。
 通常、有人プレイヤーは電子リンクでこの電子世界と繋がっている。キル状態になると行動不能となる。けれどGAME OVERになっても、即座にバーチャル世界との接続が切れるわけではありません。ゲームから離脱しない限りは、結果発表があるまで脳波とリンクが繋がったままになっているんです。
 ゲームの舞台で行動できないにも関わらず、電子的な信号のやりとりは可能――脳は無防備な状態といえます」

 ここで一度言葉を切り、わかりやすい言葉を選んで、真相を告げた。

「――その無防備な状態を狙って、電子の悪魔は、被害者にプログラムコードの植え付けを行った……簡単に言えば、脳のコンピュータウイルス汚染です」

「脳のコンピュータウイルス汚染……? たしかに、脳の神経伝達のメカニズムは電気信号のやりとりで、原理はコンピュータと同じだって聞いたことはあるけれど……。それって、そのままにしたらどうなるの?」

 夢人が興味とも期待ともつかない表情で、尋ねた。
 彼は人間関係は苦手でも、IT関係には強いのかもしれない。脳にウイルスという時限爆弾を抱えたまま現実世界に戻る――そのイメージはなんとなくでも理解できているようだ。

「戻って検証しないことには、はっきりとはわからないけれど……例えば、性格が変わってしまうような事例が考えられます。
 ――実は、このゲームの開発元の会社に、テストプレイを終えた個人の様子がおかしいと通告があったんです。まるで別人のようになってしまったと……」

 ついでに、自分は会社から調査のために来た(非公式だが)捜査員のようなものだと白状する。皆を騙したつもりはないが、少なからず公平ではない状況になってしまい、すまなかったと謝罪も添えておく。

「開発元の方だったんですね……」

 どこか納得したような顔で、エレノアが呟いた。

「そんなことが起こりえるのか……? まさか、それは会社の意図なのか? 大問題だろう」

 呆然としつつも険しい顔でヒカルが言う。

「そんなテロ行為を会社が計画することは、まぁ可能性はゼロではないですが、まずないと思うので……おそらくは、AI(人工知能)上のバグじゃないかと」

 ――AIは学習する。
 種の起源。繁殖しようとする太古の遺伝子。人類はおよそ十年ごとに、大きな生物的パンデミックに襲われてきた。ワクチンによって対策され、駆逐されそうになると変異して、猛威を増すウイルス……。
 人間が作り出したコンピュータウイルスも同じだ。元は0か1の数字コードだけの存在でも、「そうプログラムされたのなら」そのように行動する。学習し、他者を駆逐し、生き残ろうとする。
 たとえ有機的な存在でなくとも、考える能力を与えられた無機物が、創造主である人を真似て、自らの繁栄と頂点を目指したとしたら?

「それじゃあ……ダオラ船長はNPCだと言っていたし関係ないとして、黒須さんとあーちゃんは汚染されてしまったということ……?」

 宇佐美が尋ねてきたので、こちらは首を横に振った。

「あーちゃんに関しては、そのとおりです。このまま何の対策も打たないまま、ゲームを終了させてしまえば、なんらかの人格障害が出る可能性がある。
 ただ、黒須さんに関しては事情が違っていて――犯人は黒須さんを殺害したものの、目的を達成することはできなかったようです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...