異世界ダークエルフの守護者 -Master of Dark Elf-

あんたれす

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プロローグ

5 エアガンを強化してみる

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 吾郎は荒野を歩いている間に考えていたアイデアを実験してみることにした。

 それは攻撃力の強化及び安定化である。

 地面に落ちている石ころを強化して攻撃する方法は、決して悪い手段ではない。

 荒野には無限といってよい程に転がっているし、実に手軽で強力な攻撃方法ではある。

 いざという時には今後も役に立つであろうが、ネット通販のチートが有る以上はそこに拘る必要性が特に無い。

 というか、いちいち石ころを集めて回るのが面倒くさいと吾郎は考えた。

「それに、石ころを主武器として砦内に備蓄するとしても、もし戦闘中に弾切れを起こしたら、敵がいる外に拾いにいかなければならなくなる。通販で庭用の敷石などを手に入れることもできるが、一袋2000金貨ぐらいはするしコスパが良くない」

 吾郎は自身の中で考えを整理して納得する為に、更にひとりごちる。

「もし備蓄するとして、すぐに使えるように強化済みにしておかなければ効率が悪いし、そうなると確実に危険物となるので、取り扱いが大変になる。なにせ手元からこぼれたり、こけて放り出しただけで発射状態になって砦が吹っ飛んでしまうかもしれないからだ。というか、そもそもの話として、石を投げる際の命中率が悪すぎる。遠くの敵であればあるほど当たりにくいし、つまるところ石ころをメイン武器にするのは、やはり却下だ」

 吾郎はネット通販ウインドウを空中に浮かび上がらせると、迷い無く目当ての商品までリンクを辿っていく。

「あの黒蟻のように、巨大な虫が襲ってくるゲームを遊んだことがあるが、その時の主人公の武器は銃火器の類だった。やはり銃は狙いも付けやすいだろうし、武器としても申し分ない。ただ、チート能力の『ネット通販』は、日本国内の販売サイトからしか取り寄せができない。つまり日本の通販では実銃はもちろん、軍用火器などは絶対に手に入らないということになる……」

 吾郎は悲観的な言葉を呟きつつも、別に困った様子もなくお目当ての商品を次々と買い物かごに放り込んでいく。


 ・エアガン 2500金貨
(マガジン22発装填可能)
(玩具の黒い銃、型は一般的な自動拳銃系、子供向けの安物、一発ずつエアコッキングが必須)


 ・BB弾 500金貨
(プラスチック製の小さな丸い粒状の弾、2000発セット)


 ・BBローダーLL 1500金貨
(BB弾を手動で素早く弾込め出来る道具、大きめ、500発収納可能)


 ・右足用ホルスターポーチ 2000金貨
(エアガンを専用の袋に収納できる)


 注文を完了すると、吾郎の前に購入した商品が、淡い金色に輝く光の粒子に包まれながら現れた。

「きたきた」

 そう、吾郎は例え実銃が手に入らなくとも、この子供用(10歳以上用)の銃のおもちゃであるエアガンを、チートで強化すれば使えるのではと考えたのだ。

 ちなみに、「エアガン」とは丸い小さなプラスチックの弾(BB弾)を、空気で発射する子供用の玩具の銃の総称である。

 種類は豊富で、大人用(18歳以上用)になると、多少は威力(飛距離)が向上したり、見た目や材質が高品質だったり、サバイバルゲーム用(戦争ごっこ)に軍用火器類の形をした物もあったり、電動で弾をたくさん発射できたり、最近は手榴弾型(中に詰めたBB弾が巻き散らかされる)などの凝った商品も出ているが、大人用とは言ってもあくまで基本は玩具なので人を痛めたり殺すなどの威力は当然ながら無い。
(ただし至近距離で目などを撃つのは絶対にダメです)

 吾郎は子供の時以来ぶりの玩具の銃を箱から取り出すと、手首を捻りながらエアガンを色々な方向から眺める。

「いやー、子供向けとはいえ最近のエアガンは大した品質だなー」

 吾郎はマガジンに白いBB弾を詰めると、スライドを引いて弾を撃ってみる。

 BB弾が「パス!」と軽快な音を立てながら発射された。

「ああ、こんな感じだったな」

 何とも懐かしい感じに、吾郎は少しだけ微笑んだ。

「ただ、これでは全く何の役にも立たないわけで」

 吾郎は早速、「強化鍛冶師(インフレスト)」の力を発動させた。

 右手に握られたエアガンが淡い光を放つ。

 強化対象の特徴を読み解き、どの能力を伸ばすかを決めて、そこに魔力を注ぎ込んでいく。

「(強化は一見、何でも出来そうなチートに見えて、その実、色々と制約がある。まず、その物が持つ特徴を伸ばすのが基本原則となる。簡単に例えるならば剣ならば切れ味、弓なら飛距離などだ。もちろん、剣自身の強度とか重さとか他にも色々といじれるが、その基本からは逸脱は出来ない)」

 吾郎は目を閉じながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

「(もちろん、石ころの様に、この買ったエアガン本体の強度、加速度、貫通力などを強化してぶん投げるという利用も可能ではある。どんな物でも基本は投げられるからだ。ただ、それでは一発限りの無駄遣いでしかない)」

 吾郎は精神の集中を続けていく。

「(だからこそ、エアガンにはエアガンらしい強化を施すべきである。本体の強度強化、ギミックの安定性、冷却能力、射出威力、命中精度などの向上、マガジン内のBB弾は強度のみを向上)」

 BB弾は強度のみとしたのは先の石ころと同じ問題である。

 BB弾そのものに飛距離や貫通力などを持たせてしまった場合、不意に手元から放り投げた際に事故に繋がる可能性があって危険なのである。

 だからこそ、BB弾それ自体は強度のみとして、あくまでエアガンから発射された時のみ威力を発するような仕組みとした。

「とりあえず、これでエアガンから射出されるBB弾が、先ほどの強化石ころ並にはなったはずなんだが」

 吾郎は砦の室内から外の階段の踊り場へと出て行く。

 おもむろにエアガンのスライドを引きセーフティーを下ろして銃口を荒野の果てに向かって構えながら引き金を引くと、「パス!」という軽快な音は同じではあったが、BB弾は強烈な速度で空中をかっ飛んでいった。

「……」

 吾郎は続いてスライドを引き銃口を地面に向けて射撃すると、BB弾は地面に衝突した衝撃で、なかなかの土煙を巻き上げながら地面の中にめり込んだ。

「……うわー」

 想像していたとはいえ子供向けの玩具であるエアガン(安物)が、人間は元よりあの黒蟻ですら殺せる武器になったという現実をあらためて実感して、吾郎は少しばかり胃がすくむ感じがするのだった。

 吾郎は安全の為にセーフティーを上げてマガジンを抜く。

「……圧縮空気容量と排出量を更に強化調整して連射できるようにしようかとも思ったけど、しばらく慣れるまでは、一回一回スライドを引くぐらいで丁度良いかもしれないな」

 吾郎の右手に握られたエアガンは、あいもかわらずプラスチックな手触りと軽さの玩具らしさを持ってはいるが、その実は今や完全な凶器である。

 先ほどの子供の頃を思い出せるような懐かしさは、その黒いエアガンからはもう感じることは出来なかった。
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