異世界ダークエルフの守護者 -Master of Dark Elf-

あんたれす

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本編

18 救助活動

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 ダークエルフ達による恩返しの凄みを、あらためて実感した吾郎は心の中で一人唸った。

「(何という律義さなのだろう)」

 辺りのダークエルフ達は吾郎の存在に気がついたのか、より騒々しくなる。

「砦の人間殿だ」

「あれが砦の人間殿」

「人間殿は無事だったようだね」

「良かった。恩を返せたみたいだね」

 口々から吾郎の事を気遣う言葉ばかりが漏れ聞こえてくる。

「(この状況下で、俺の無事を喜んでくれるのか)」

 吾郎は申し訳無さとありがたさで何とも言えない気持ちになる。

「……」

 吾郎の足元には、今、運搬係と共に運んできた重症のダークエルフが寝転ばされており、今や小刻みに咳き込みながら吐血をしはじめていた。

 その隣には、決死隊の先駆けをしてくれた美しいダークエルフが苦悶の表情で呻いていた。

 その隣も、またその隣も、決死隊のダークエルフ達が一列に並んで苦しそうに横たわっていた。

「(……命懸けの恩返し、確かに受け取った)」

 吾郎は決死隊のダークエルフ達に対して一人静かに頭を下げると、即座にチート能力である通販ウインドウを立ち上げた。

「(チートを隠す為にコソコソする時間も惜しい。まずは彼女達を救おう。後のことは後でいい)」

 吾郎はダークエルフ達の前で、チート能力を隠さずに発動して操作していく。

「水と食料が必要というならば俺が用意しよう。では、まずは水からだ」

 吾郎は通販でペットボトル水2L(100金貨)、ペットボトルサーバー(2000金貨)、紙コップ100個セット(1000金貨)を購入すると、目の前で商品が淡い金色に輝く光の粒子に包まれながら現れた。

「……こ、これは一体?」

 吾郎の通販チートを見て、先程から受け答えをしてくれていたダークエルフがワナワナと震えていた。

「俺の得意魔法だ。色んな物品を金貨と交換して呼び寄せる事ができる」

「と、砦の人間殿、それはもはや魔法ではなく、古の魔法の類。奇跡の部類ですよ!?」

「そうなのか? なら、そうなのかもな」

 吾郎は平然とそう答えると、ペットボトルとサーバーを合体させてから手を添えた。

「そして、これを強化で巨大化する」

 吾郎の「強化鍛冶師(インフレスト)」のチート能力を注ぎ込まれたペットボトルサーバーが約50倍の大きさに巨大化する。

 こうすれば、無駄なお金を使わなくて済むからだ。

 周りのダークエルフ達は口をあんぐりと開けながら呆然としていた。

 吾郎は巨大化したペットボトルサーバーのコックを片手でグイと軽く押して開くと、蛇口から水が程よく出てきたので、取り出した紙コップに水を注ぎ入れてから、足元で横たわっている吾郎達が運んできた重症のダークエルフの口元に注いであげる。

「さあ、水だ」

「……ん、ん」

 咳き込みながらもコクコクと水を飲んでいくダークエルフ。

 やがて、ダークエルフの咳と吐血が収まり始めた。

「(……おいおい、本当に水だけで内臓の損傷が回復し始めたのかよ。何という回復力だ)」

 吾郎があらためてダークエルフの異様な回復力に驚きつつも、周りのダークエルフに向かって指示を発した。

「――さあ、皆にも水を飲ませてあげてくれ!!」

 吾郎は急かすように号令をかけるのだが、なぜか看病係のダークエルフ達は吾郎を見つめながら誰も動かなかった。

 吾郎は訝しげに眉を寄せながら、目の前にいる受け答えをしてくれていたダークエルフに問いかけた。

「一体、どうした?」

「い、いえ、あの、その、あの、本当にその水を私達が頂いても宜しいのですか?」

「ん? 水が必要だと言うから用意したのだが、これではダメなのか?」

 吾郎が小さく首を傾げると、受け答えしてくれているダークエルフがフルフルと力強く首を振った。

「い、いえ! ただ、この水の透明度は明らかに最高級の精製された純水! つまり、貴族や王族にしか口に出来ない貴重品です。私達は泥水しか飲んだ事がありませんので、これほどのものを頂けると言われても恐れ多くて……」

「ああ……なるほど」

 吾郎にとっては普通の水を分け与える程度の考えだったが、ダークエルフ達にとってはかなり過剰な援助物資のようであった。

 吾郎は自分とダークエルフ達の間には、大なり小なりの価値観の違いが有ることにあらためて理解した。

「なに、感謝をしてくれればそれでいいさ」

「も、もちろん! 私達を盗賊から助けて下さっただけでも感謝をしてもしきれない程に感謝をしております!」

「今回の事にも恩を感じてくれるのなら、またいつか返してくれればそれでいい」

「――は、はい! この恩は必ずや! 必ずやお返し致します!」

 その真剣な眼差しに吾郎は少しだけ気圧されてしまう。

 吾郎はダークエルフ達との間に価値観の相違があることは理解しつつあったが、それが具体的にはどう違うのか、という点については少しも知り得ていない状態なのである。

 つまり、吾郎は返済期限など無い恩を着せる形を取ることにより、ダークエルフ達の負い目を軽くしてあげようという程度の考えであったのだが、恩返しをする際に命懸けすらもいとわないダークエルフ達に対して、過剰な援助をしたあげく「恩に着せる」という事の恐ろしさ?について、吾郎は残念ながら少し甘く考えてしまっていた。

 ゆえに、この後、当然ながら色々な意味で大変な事になっていくのだが、所詮は後の祭りなのである。

「さあ、早く水をケガ人達に!」

 吾郎の促しを受けて、受け答えをしてくれていた美しいダークエルフが仲間達に声をかけた。

「――皆!! 偉大なる砦の人間殿からの慈悲です!! 感謝を決して忘れず、ありがたく純水を頂きましょう!!」

 受け答えをしてくれていた美しいダークエルフの言葉で、呆然と眺めていた周りのダークエルフ達は納得ができたのか力強く頷くと、吾郎が生み出したペットボトルサーバーから紙コップで水を注ぎ入れては、ケガ人達の口に含ませて飲ませていく。

「ケガ人に飲ませたら、ケガをしていないあんたらも飲むといい!」

 吾郎の掛け声に、ケガをしていないダークエルフ達から唸るような黄色い歓声が沸き起こった。

「――わ、私達にも!? な、何という温情! ありがとうございます! ありがとうございます! 偉大なる砦の人間殿!!」

 先程から受け答えをしてくれていた美しいダークエルフは、その場で正座をすると三指を立てて頭を下げてきた。

 そんなダークエルフに吾郎は小さく首を振った。

「いやいや、だから、こちらこそ危ない所を助けてもらって感謝をしているから」

「い、いえ! そもそも、砦の人間殿は何の義理も無い中で、盗賊達から私達を助けて下さったのです! それがいかに尊いものか言葉にも表せません!」

 吾郎を見つめる美しいダークエルフの瞳は、今や溢れんばかりに潤んでいた。

「所詮、私達のした事は恩を恩で返したというだけのこと! 砦の人間殿の行いに比べれば天地の差があります! それなのに、ケガをした仲間のみならず、私達にまでも貴重な純水を分けて下さるなんて! もはや感謝の言葉もございません!!」

 受け答えをしてくれていた美しいダークエルフは「ありがとうございます!」と何度も叫びながら頭を下げると、最後は地面に額を擦り付けるのであった。

 吾郎はその真剣かつ鬼気迫る謝意に、またも少しばかり気圧されてしまうのだった。
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