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第四部 楽園崩壊
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宮廷。ずいぶんと市内から離れたが、遠目に見えるそこは聖地。天より下向し、天に代わって統治を委ねられた一族が住まうところ。聖都のあらゆる建物より高いところに座し、都を一望できる。咲子の生まれたところである。あと半年後に、咲子は宮廷に戻る。そこで修業を積み次の聖女となる。
咲子の本性は天乃咲夜子姫と呼ぶ。天乃の姓を持つ者は聖族である証だった。名の由来は、夜に生を受けたことから転じ、夜に咲いた子という意味を持っている。18という年頃の娘であり、とても類まれな美しさを持っていた。
つい抓みたくなる鼻、桜色の唇、線のように細い眉、大きな黒水晶のような瞳、少しだけ癖のある巻き毛。どれ一つとっても咲子が美しいと言われるゆえんである。
美しさと何より若さという武器があるのに、使うことなく宮廷で過ごすのだ。
「もうじきですわね。本当にこれからが大事なときですわ」
「ヨボヨボになることの何が大事なのよ」
咲子はそれきり夏帆と口を聞かなかった。
ガタガタとあぜ道を走る馬車の音がするだけだった。
2ヶ月ぶりの学園である。学生とはいえ、すでに咲子の聖女への修練は始まっているのだ。戻ってきたとき、校門から漂う紅椿の匂いに懐かしさを感じた。
多くの者が校門で咲子の帰りを待っていた。
「お帰りなさいませ」
「皆さん、ただいま戻りましたわ。お元気にしていた?」
「ええ。皆さん大変心待ちにしておりましたの」
「ふふ。あら? 須世子様と多紀子様は?」
「さあ。須世子様はきっと生徒会室。多紀子様は弓術のお稽古ではありませんか?」
「そう。あとで訪ねるわ」
少女たちはにっこりと微笑んだ。誰も咲子の考えに反しない。学園は各国の要職につく者たちがその子女たちを集める場所だった。最も高貴な一族である聖族からの入学は、学園側としても気を付ける必要がある。
「ではごきげんよう」
咲子が向かったのは生徒会室だった。生徒会長だったから、そこの主である。授業などの時間を除き、日中はそこにいた。
扉を開ける。
「あら? お帰りなさいませ」
部屋の中でいた少女が恭しくお辞儀をする。少女の名は須世子。咲子と同い年である。
短めの髪の赤みがかった髪。ふっくらとした顔立ち。たたずまいからは気品の良さを醸し出しているが、どこか口調に力を含んでいた。
須世子は窓辺の山百合に水をやっていた。
「ご挨拶ね。校門にも来ないなんて、忙しい用事でもおありかしら?」
「大変申し訳ございません。今年度の学園の予算がまとまらず。一重の私の力不足ですわ」
「あら大変ね」
咲子はゆっくりと気取ったような足どりで自分の椅子に向かう。その際もしっかりと須世子をけん制することを忘れなかった。それから部屋をさっと見渡した。
椅子に腰かけると違和感があった。咲子はそのことに気づき笑う。
「それで? どうだった?」
「どうとは?」
「この椅子の居心地ですわ。私がいない間、須世子様の思い通りですもの。楽しかった?」
「とても私には荷が重く、咲子様のご苦労がよく身に染みてわかりましたの」
「そう」
「これも経験。大変貴重なお時間でしたわ」
須世子はにっこりと笑顔で返してくる。
「それはよかった。大した自信だわ」
「いえ、自信などとは」
咲子は首に回していた腕を外す。須世子の言動、振る舞いを見てよくわかる。
「お勤めご苦労様。戻っていいわよ」
咲子は、須世子に素っ気なく言う。ではというと須世子も静かに去っていった。代わりに夏帆が入室する。
「相変わらずね」
「須世子様ですか?」
「何だかいつもに増して挑戦的だったわ」
生暖かい椅子。部屋の置物の配置換え。咲子は部屋の主を須世子に一時委ねていた。何をやろうとしているか図っていた。
「よろしいではありませんか? 須世子様にも誇りというものはございます。咲子様と何か言い難いものがあるのでございましょう」
「そうね。あの子はずっと私のことで何か思っているの」
「何か?」
「それが知りたいの。ふふ、あの子を感服させてみたいのよ」
「皆、咲子様のご所業に感服しておりますわ」
「なら感服させてあげるわよ。弓道場に行きましょう」
何だかイライラしてきた。お世辞なんていい。行動で示してやる。
場所が変わって体育館。
「多紀子様」
咲子はたった今矢を打った少女の名を呼んだ。多紀子はすっと声のする方角を向いた。美しかった。まず多紀子を見て感じる言葉はその一言であろう。
艶やかな黒髪、面長な顔立ち、細くすっと伸びた誠実さを伝える目、薄い唇。藤の弓道着に身を包んだ姿に清涼さを感じる。もし咲子が薔薇のような派手な美しさを持っているとしたら、多紀子は藤のように洗練とされた美しさを持っていると例えることができる。
多紀子は二射目を打つことをやめる。弦は下級生に持たせた。静かに咲子に近寄り膝を折った。
「お帰りなさいませ」
「精が出ますわね。ずっと鍛錬しているのかしら?」
「はい。まだ足りずといったところ」
「あなたの足りずとは、人からしたら満足を越えているものよ」
多紀子は黙ってしまう。何か気の利いたことぐらい言えないのか。
「いいわ。少しお相手して下さらない?」
咲子は弓道の腕を多紀子と競うことにした。2人は部でも双璧を成すほどの技量を持っていた。
それでもって美しさも学園内では二分するほどである。
咲子は着替え室で弓道着に着替えた。純白の袖に腕を通し、紺の袴をはいた。
誰もが一目置きたくなる乙女の姿がそこにある。引き締まった胸元。洗練された足取り。
「お待たせ致しましたわ」
多紀子はすっと引き下がり、一礼する。感情を隠しているようで、どことなく闘志を秘めているようだった。
「多紀子様から打つといいわ」
「では、お先に」
多紀子はすっと胴造りに入る。体位が整うと弓構えを行う。狙いを定めて、気を呼んだ。矢は間をおいて離れた。矢は何かに吸い込むようにして的の中心に刺さる。数秒の間、姿勢は保たれる。
残心・・・
矢を打つ構えからその後の余韻すべてにおいて藤に包まれた多紀子の姿に見とれる者はいなかった。咲子さえも、藤色の袴に身を包んだ同い年の少女に一目置かざるを得ない。
「さすがだわ。お上手ね」
次は自分だ。しばらくやっていないが、技は体にしみ込んでいる。負けるわけにはいかない。自信はあるのだ。
手が震えていた。なぜ迷う? どうして? 誰もが持ちたがっている者をすべてあるというのに。多紀子の射撃は確かにうまいし、その体位は美しい。でも自分が技量と美しさで負けているはずがない。
揺らいだ矢は方向性を定められずにいた。的の中心から少しだけ左に外れる。
数秒間の沈黙。一射目が終わり、多紀子がそっと寄ってくる。
「もう少々、お力をお抜きくださいませ。あとしっかりと狙いをお定めください」
多紀子は淡々と助言を始める。多紀子は聖族に仕える武門の家に生まれた。200年前、聖女希和子の救出に集められた7人の英雄を先祖に持つ。
「それではもう一度」
渡された矢を咲子は受け取る。これぐらい言われるまでもない。しばらくの間、稽古をしていなかっただけ。
矢は必ず当ててやる。
ヒュッと矢は手から離れ、放物線を描き的の中央に収まる。
どうだ、とばかりに多紀子を見たが、何の感情のない能面であった。
「お見事にございます」
「ありがとう。あなたもとてもお上手ですこと」
「いえ。私は修練の身。まだ研鑽が足りません」
そうと咲子は言う。もうよかった。
「そろそろ戻るわ。皆さん。お稽古頑張ってくださいな」
「まあよろしいのですか?」
ええ、とだけ言って咲子は後にした。何だか疲れていた。
部屋に戻ると咲子はベッドに横になる。今日の出来事を脳裏に蘇る。
主に仕える者。
プレッシャーをかける者。
助言をする者。
その他、咲子の周りに集まる者たち。
多くの者が集う場所で、咲子は自身の焦燥感を知る。
何が自身を駆り立てているのかわからない。
こうして咲子の一日は終わる。
咲子の本性は天乃咲夜子姫と呼ぶ。天乃の姓を持つ者は聖族である証だった。名の由来は、夜に生を受けたことから転じ、夜に咲いた子という意味を持っている。18という年頃の娘であり、とても類まれな美しさを持っていた。
つい抓みたくなる鼻、桜色の唇、線のように細い眉、大きな黒水晶のような瞳、少しだけ癖のある巻き毛。どれ一つとっても咲子が美しいと言われるゆえんである。
美しさと何より若さという武器があるのに、使うことなく宮廷で過ごすのだ。
「もうじきですわね。本当にこれからが大事なときですわ」
「ヨボヨボになることの何が大事なのよ」
咲子はそれきり夏帆と口を聞かなかった。
ガタガタとあぜ道を走る馬車の音がするだけだった。
2ヶ月ぶりの学園である。学生とはいえ、すでに咲子の聖女への修練は始まっているのだ。戻ってきたとき、校門から漂う紅椿の匂いに懐かしさを感じた。
多くの者が校門で咲子の帰りを待っていた。
「お帰りなさいませ」
「皆さん、ただいま戻りましたわ。お元気にしていた?」
「ええ。皆さん大変心待ちにしておりましたの」
「ふふ。あら? 須世子様と多紀子様は?」
「さあ。須世子様はきっと生徒会室。多紀子様は弓術のお稽古ではありませんか?」
「そう。あとで訪ねるわ」
少女たちはにっこりと微笑んだ。誰も咲子の考えに反しない。学園は各国の要職につく者たちがその子女たちを集める場所だった。最も高貴な一族である聖族からの入学は、学園側としても気を付ける必要がある。
「ではごきげんよう」
咲子が向かったのは生徒会室だった。生徒会長だったから、そこの主である。授業などの時間を除き、日中はそこにいた。
扉を開ける。
「あら? お帰りなさいませ」
部屋の中でいた少女が恭しくお辞儀をする。少女の名は須世子。咲子と同い年である。
短めの髪の赤みがかった髪。ふっくらとした顔立ち。たたずまいからは気品の良さを醸し出しているが、どこか口調に力を含んでいた。
須世子は窓辺の山百合に水をやっていた。
「ご挨拶ね。校門にも来ないなんて、忙しい用事でもおありかしら?」
「大変申し訳ございません。今年度の学園の予算がまとまらず。一重の私の力不足ですわ」
「あら大変ね」
咲子はゆっくりと気取ったような足どりで自分の椅子に向かう。その際もしっかりと須世子をけん制することを忘れなかった。それから部屋をさっと見渡した。
椅子に腰かけると違和感があった。咲子はそのことに気づき笑う。
「それで? どうだった?」
「どうとは?」
「この椅子の居心地ですわ。私がいない間、須世子様の思い通りですもの。楽しかった?」
「とても私には荷が重く、咲子様のご苦労がよく身に染みてわかりましたの」
「そう」
「これも経験。大変貴重なお時間でしたわ」
須世子はにっこりと笑顔で返してくる。
「それはよかった。大した自信だわ」
「いえ、自信などとは」
咲子は首に回していた腕を外す。須世子の言動、振る舞いを見てよくわかる。
「お勤めご苦労様。戻っていいわよ」
咲子は、須世子に素っ気なく言う。ではというと須世子も静かに去っていった。代わりに夏帆が入室する。
「相変わらずね」
「須世子様ですか?」
「何だかいつもに増して挑戦的だったわ」
生暖かい椅子。部屋の置物の配置換え。咲子は部屋の主を須世子に一時委ねていた。何をやろうとしているか図っていた。
「よろしいではありませんか? 須世子様にも誇りというものはございます。咲子様と何か言い難いものがあるのでございましょう」
「そうね。あの子はずっと私のことで何か思っているの」
「何か?」
「それが知りたいの。ふふ、あの子を感服させてみたいのよ」
「皆、咲子様のご所業に感服しておりますわ」
「なら感服させてあげるわよ。弓道場に行きましょう」
何だかイライラしてきた。お世辞なんていい。行動で示してやる。
場所が変わって体育館。
「多紀子様」
咲子はたった今矢を打った少女の名を呼んだ。多紀子はすっと声のする方角を向いた。美しかった。まず多紀子を見て感じる言葉はその一言であろう。
艶やかな黒髪、面長な顔立ち、細くすっと伸びた誠実さを伝える目、薄い唇。藤の弓道着に身を包んだ姿に清涼さを感じる。もし咲子が薔薇のような派手な美しさを持っているとしたら、多紀子は藤のように洗練とされた美しさを持っていると例えることができる。
多紀子は二射目を打つことをやめる。弦は下級生に持たせた。静かに咲子に近寄り膝を折った。
「お帰りなさいませ」
「精が出ますわね。ずっと鍛錬しているのかしら?」
「はい。まだ足りずといったところ」
「あなたの足りずとは、人からしたら満足を越えているものよ」
多紀子は黙ってしまう。何か気の利いたことぐらい言えないのか。
「いいわ。少しお相手して下さらない?」
咲子は弓道の腕を多紀子と競うことにした。2人は部でも双璧を成すほどの技量を持っていた。
それでもって美しさも学園内では二分するほどである。
咲子は着替え室で弓道着に着替えた。純白の袖に腕を通し、紺の袴をはいた。
誰もが一目置きたくなる乙女の姿がそこにある。引き締まった胸元。洗練された足取り。
「お待たせ致しましたわ」
多紀子はすっと引き下がり、一礼する。感情を隠しているようで、どことなく闘志を秘めているようだった。
「多紀子様から打つといいわ」
「では、お先に」
多紀子はすっと胴造りに入る。体位が整うと弓構えを行う。狙いを定めて、気を呼んだ。矢は間をおいて離れた。矢は何かに吸い込むようにして的の中心に刺さる。数秒の間、姿勢は保たれる。
残心・・・
矢を打つ構えからその後の余韻すべてにおいて藤に包まれた多紀子の姿に見とれる者はいなかった。咲子さえも、藤色の袴に身を包んだ同い年の少女に一目置かざるを得ない。
「さすがだわ。お上手ね」
次は自分だ。しばらくやっていないが、技は体にしみ込んでいる。負けるわけにはいかない。自信はあるのだ。
手が震えていた。なぜ迷う? どうして? 誰もが持ちたがっている者をすべてあるというのに。多紀子の射撃は確かにうまいし、その体位は美しい。でも自分が技量と美しさで負けているはずがない。
揺らいだ矢は方向性を定められずにいた。的の中心から少しだけ左に外れる。
数秒間の沈黙。一射目が終わり、多紀子がそっと寄ってくる。
「もう少々、お力をお抜きくださいませ。あとしっかりと狙いをお定めください」
多紀子は淡々と助言を始める。多紀子は聖族に仕える武門の家に生まれた。200年前、聖女希和子の救出に集められた7人の英雄を先祖に持つ。
「それではもう一度」
渡された矢を咲子は受け取る。これぐらい言われるまでもない。しばらくの間、稽古をしていなかっただけ。
矢は必ず当ててやる。
ヒュッと矢は手から離れ、放物線を描き的の中央に収まる。
どうだ、とばかりに多紀子を見たが、何の感情のない能面であった。
「お見事にございます」
「ありがとう。あなたもとてもお上手ですこと」
「いえ。私は修練の身。まだ研鑽が足りません」
そうと咲子は言う。もうよかった。
「そろそろ戻るわ。皆さん。お稽古頑張ってくださいな」
「まあよろしいのですか?」
ええ、とだけ言って咲子は後にした。何だか疲れていた。
部屋に戻ると咲子はベッドに横になる。今日の出来事を脳裏に蘇る。
主に仕える者。
プレッシャーをかける者。
助言をする者。
その他、咲子の周りに集まる者たち。
多くの者が集う場所で、咲子は自身の焦燥感を知る。
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