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第4章 さまよう聖女
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今が何時で、昼なのが夜なのか……自分は今囚われている。むっとするような暑さによって、汗が吹きこぼれ、べた付くような肌の感触が、自分を憂鬱にさせている。
何もしたくない。どうでもよかった。
キイと部屋の戸が開いた。触れば火傷する取手が、なぜか彼女は平気に開けられる。
かつて数少ない臣下だった女。
「お休みでしたか?」
今では、しつこいほど絡んでくるのだ。
「出ていって……」
「ぜひやっていただきたい――」
「いやです」
「では仕方ありませんわ」
祥子は、すっと腰に巻いた木の杖を取り出し、一振りした。すると寝台に横になっていた希和子の身体は、本人の意志に反し立ち上がり、部屋にあった椅子に座らせ、机に向かわせた。
「なんてことを……」
彼女は、魔法をかけた。主に力を行使し、服従させるのは礼法に反することだ。
「ご安心を、悪しき類の魔力は行使しておりませんのよ」
「こんな侮辱は初めてです」
「ご無礼を。どうかお許しを」
「なんですか?」
目の前に置かれた白い用紙とペン。
「ぜひ、両殿下からお願いしたき儀があるとのこと。まずは文面をお読みくださいまし」
用紙に書かれた文言は一つ一つをとっても、あまりにも納得できないことだった。承服することなど不可能だ。
「これは――」
希和子の驚愕に満ちた顔を、祥子は鮮やかに笑う。
「このようなもの、とても――」
希和子は祥子に顔を向ける、しかし強制的に魔法により机に修正され、加えてペンを無たされる。
「さあ陛下、こちらにご自身の御署名を」
「書きたくありません。要りません。片付けなさい!」
あらん限りの力で、悪しき力から逃れようとした。しかし無駄な徒労に終わる。
「さあ、さあ」
祥子はそっと懐中時計を取り出し、希和子の目の前で左右に一定のふり幅で揺れ動した。
「おかしな術をかけないで」
希和子の瞳は、かつて祥子が献上した懐中時計から背けようと必死になる。
「抗おうとするから苦しいのです。もうあなた様に課せられた一切を放棄し、楽におなり下さい」
何もしたくない。どうでもよかった。
キイと部屋の戸が開いた。触れば火傷する取手が、なぜか彼女は平気に開けられる。
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「出ていって……」
「ぜひやっていただきたい――」
「いやです」
「では仕方ありませんわ」
祥子は、すっと腰に巻いた木の杖を取り出し、一振りした。すると寝台に横になっていた希和子の身体は、本人の意志に反し立ち上がり、部屋にあった椅子に座らせ、机に向かわせた。
「なんてことを……」
彼女は、魔法をかけた。主に力を行使し、服従させるのは礼法に反することだ。
「ご安心を、悪しき類の魔力は行使しておりませんのよ」
「こんな侮辱は初めてです」
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「なんですか?」
目の前に置かれた白い用紙とペン。
「ぜひ、両殿下からお願いしたき儀があるとのこと。まずは文面をお読みくださいまし」
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「これは――」
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「このようなもの、とても――」
希和子は祥子に顔を向ける、しかし強制的に魔法により机に修正され、加えてペンを無たされる。
「さあ陛下、こちらにご自身の御署名を」
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あらん限りの力で、悪しき力から逃れようとした。しかし無駄な徒労に終わる。
「さあ、さあ」
祥子はそっと懐中時計を取り出し、希和子の目の前で左右に一定のふり幅で揺れ動した。
「おかしな術をかけないで」
希和子の瞳は、かつて祥子が献上した懐中時計から背けようと必死になる。
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