婚約直前、俺の人生どこで間違えた?

naomikoryo

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第二章:同窓会の案内と、懐かしの元カノ

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会社の飲み会から帰った翌日、俺は二日酔いの頭を抱えながらスマホを眺めていた。

昨夜のビールのせいで体が重い。
水を飲みながらダラダラとSNSをチェックしていると、ふとLINEの通知が目に入った。

「【中学3年B組 同窓会のご案内】】

「……同窓会?」

30歳にもなると、こういうイベントの話がちらほら出る年齢だ。
送信者は幹事らしき人物で、詳細がズラズラと書かれている。

日程:来週土曜日
場所:オシャレな居酒屋(駅から徒歩5分)

うーん、微妙なタイミングだな。

最近は婚約のこともあって頭がモヤモヤしていたし、仕事も忙しく、わざわざ中学の同級生と再会する気分ではなかった。

「……まあ、別に行かなくてもいいか」

そんなふうに思いながらスマホを閉じようとした瞬間——

『奈々』

俺の視界の端に、その名前が見えた。

「相沢 奈々も参加予定!」

「……マジかよ」

奈々——相沢 奈々(あいざわ なな)。
俺が大学生の時に付き合っていた、いわゆる元カノだ。

久しぶりにその名前を目にして、俺は思わずスマホを握りしめた。

◆ 大学時代の元カノ

奈々とは、中学の同級生だったが、本格的に仲良くなったのは大学に入ってからだった。

あいつはとにかく元気で、よくしゃべる女だった。
口が悪いくせに、どこか憎めなくて、俺をよく振り回してきた。

「桐生、お前、もうちょい気の利いたこと言えないの?」
「いや、俺は普通にしてるだけなんだけど」
「それがダメなの! もっと女の気持ち考えろ!」

そんな調子で、一緒にいると妙に疲れるのに、なぜか居心地がよかった。

最初は「こんな女、絶対めんどくさい」と思っていたのに、気づけば付き合うことになっていた。

だけど、俺たちは長く続かなかった。

奈々は感情表現が豊かで、喜怒哀楽がはっきりしていた。
一方で、俺はどちらかといえば落ち着いているタイプで、「何を考えているのかわからない」と言われることが多かった。

何度か大喧嘩もした。
そして、結局は俺が奈々に振られる形で終わった。

「……今さら思い出してどうするんだよ」

過去の話だ。もう関係ない。

そう思いながらも、俺はなぜか奈々に会ってみたい気持ちになっていた。

……いや、別に未練があるわけじゃない。
ただ、久しぶりに話してみたら何か変わるかもしれない、そう思っただけだ。

——俺のモヤモヤの正体を、奈々なら何か言い当ててくれるかもしれない。

◆ 参加決定、そして当日

そんなわけで、俺は結局同窓会に参加することにした。

当日、指定された居酒屋に到着すると、既に何人かが集まっていた。

「おー! 桐生じゃん、久しぶり!」
「相変わらず真面目そうな顔してんな」

久々に会う同級生たちは、当時と変わらないノリで話しかけてくる。
懐かしさを感じながらも、俺は適当に挨拶を返していた。

そして、店の奥に視線を向けると——

「……あ」

いた。

相沢 奈々。

髪は肩につくくらいのミディアムボブになっていたが、相変わらず元気そうな雰囲気だった。
昔と変わらず口の悪そうな笑みを浮かべながら、誰かと談笑している。

俺は、少しだけ躊躇した。

どう接すればいいんだろうか。
何を話せばいいのか。

そう考えているうちに、奈々がこちらを振り向いた。

目が合う。

すると、奈々はニヤッと笑って言った。

「……あれ? 桐生じゃん!」

その瞬間、俺の背筋がゾクッとした。

「お、おう……久しぶり」

「マジで久しぶり! え、何? 元気してた?」

「まあ……ぼちぼち」

「てか、聞いたよ? あんた婚約するんだって?」

「えっ……」

いきなり核心を突かれ、俺は固まった。

「お、おう……まあ、そんな感じ?」

奈々はじっと俺の顔を見つめて——

「ふーん」

そして、ニヤリと笑った。

「じゃあさ、ちょっと相談乗ってあげよっか?」

そう言った奈々の表情は、どこか楽しそうだった。
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