俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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スピンオフ編【一ノ瀬悠真】:第6話「選ぶということ、離れるということ」

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空は、やけに青かった。
雲ひとつない午後の空に、木々の葉が静かに揺れていた。

 
その日、悠真は放課後の教室に残っていた。
誰もいない空間。
机の並び。
かすかに残る騒がしさの残り香。
 

そのすべてが、なんとなく名残惜しかった。
 

(たぶん、俺……)

 
(少しずつ、“あの輪”から離れていくんだろうな)

 
天音と凛音。
ふたりの距離が縮まっていくことに、
もう誰も異論を挟まない。
クラス全体が、自然にそれを「応援」し始めていた。
 

最初はただの転校生だった天音が、
いつの間にかクラスの中心にいる。
その隣には、ずっと変わらない“俺様”な親友がいて。
 

あまりにも綺麗にハマったその構図に、
もう悠真が入り込む余地なんてなかった。



 

「悠真くん」
 

静かな声が背後から届く。
振り返ると、天音が立っていた。
髪を結い直して、制服のリボンを少し緩めている。


「あの、ちょっと……いい?」

 
「いいけど、何?」
 

天音は一瞬、何かを躊躇うように視線を泳がせた。
けれどすぐに、真っ直ぐな目で悠真を見つめた。
 

「最近……あまり、凛音くんと話してないよね」

 
「うん。まあ、別に……ケンカしたとかじゃないけど」

 
「わかってる。
 でも……それって、わざと距離を置いてるんでしょ?」

 
悠真はドキリとした。
天音の“天然”の中には、ときどき鋭利な刃のような真実が隠れている。

 
「悠真くんって、すごく優しいよね」

 
「誰かの“気持ち”に気づいても、何も言わずにいられる」
 

「……でも、優しすぎると、自分が傷つくことってあるよ?」
 

悠真は何も言わなかった。
ただ黙って、天音の言葉を受け止めた。

 
「私、ずっと感謝してる。
 悠真くんがいたから、凛音くんの側にいられるようになった」

 
「だから……その距離、無理に離れなくてもいいんだよ」

 
「誰かの“隣”になるって、選ぶことかもしれないけど――
 “残る”ことも、ちゃんと選んでいいんだから」
 

天音はそう言って、ふわりと笑った。
どこまでも柔らかく、風みたいに軽く、でも確かに温かい笑顔だった。
 

悠真は、胸の奥に何かがほどけていくのを感じた。
 


 

その日の帰り道。
悠真は夏菜と一緒に歩いていた。

 
少しずつ日が短くなってきた頃合い。
街灯がぽつぽつと灯り始める時間帯。
 

「天音に言われた」

 
「“選んでもいいけど、残ってもいい”って」
 

夏菜は、驚いたように少しだけ目を見開いた。

 
「……あの子、やっぱりそういうとこあるよね。
 無意識に人の核心を突くっていうか」

 
「うん。わかってたくせに、
 ずっと“気づかないふり”してたの、俺だけだったのかも」

 
悠真は言った。
もう一度、ちゃんと凛音と向き合おうと思った。
親友として、じゃなく。
過去を断ち切るために。

 
「でも、それって……」
 

夏菜が言いかけたとき、
悠真はふと立ち止まり、夏菜の方を見つめた。

 
「お前にだけは、ちゃんと伝えたいと思ってた」

 
「凛音のこと、好きだった」

 
「でも……もう、その気持ちに答えを出したい」

 
夏菜は一瞬だけ表情を凍らせた。
それでも、少しだけ寂しそうに笑ってうなずいた。

 
「そっか。
 ちゃんと終わらせるってことだね」

 
「うん。お前が、ずっと俺にそうしろって教えてくれた」

 
ふたりの間に、沈黙が降りる。
でもその沈黙は、もう重くはなかった。

 
どこか、晴れやかな空気すら含んでいた。
 

「……じゃあさ、終わったら、また教えてよ」
 

「そしたら、私も、ちゃんと一歩前に進むから」

 
「……ああ、約束する」

 


 
夜。
悠真は一人、凛音にメッセージを送った。
 

《明日、ちょっと時間あるか? 話したい》

 
すぐに既読がつき、
《OK。屋上な》と返ってきた。

 
夜風が部屋のカーテンを揺らす。

 
悠真の中で、何かが終わろうとしていた。
でも同時に、何かが――始まりそうな気がしていた。
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