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スピンオフ編【一ノ瀬悠真】:第6話「選ぶということ、離れるということ」
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空は、やけに青かった。
雲ひとつない午後の空に、木々の葉が静かに揺れていた。
その日、悠真は放課後の教室に残っていた。
誰もいない空間。
机の並び。
かすかに残る騒がしさの残り香。
そのすべてが、なんとなく名残惜しかった。
(たぶん、俺……)
(少しずつ、“あの輪”から離れていくんだろうな)
天音と凛音。
ふたりの距離が縮まっていくことに、
もう誰も異論を挟まない。
クラス全体が、自然にそれを「応援」し始めていた。
最初はただの転校生だった天音が、
いつの間にかクラスの中心にいる。
その隣には、ずっと変わらない“俺様”な親友がいて。
あまりにも綺麗にハマったその構図に、
もう悠真が入り込む余地なんてなかった。
◆
「悠真くん」
静かな声が背後から届く。
振り返ると、天音が立っていた。
髪を結い直して、制服のリボンを少し緩めている。
「あの、ちょっと……いい?」
「いいけど、何?」
天音は一瞬、何かを躊躇うように視線を泳がせた。
けれどすぐに、真っ直ぐな目で悠真を見つめた。
「最近……あまり、凛音くんと話してないよね」
「うん。まあ、別に……ケンカしたとかじゃないけど」
「わかってる。
でも……それって、わざと距離を置いてるんでしょ?」
悠真はドキリとした。
天音の“天然”の中には、ときどき鋭利な刃のような真実が隠れている。
「悠真くんって、すごく優しいよね」
「誰かの“気持ち”に気づいても、何も言わずにいられる」
「……でも、優しすぎると、自分が傷つくことってあるよ?」
悠真は何も言わなかった。
ただ黙って、天音の言葉を受け止めた。
「私、ずっと感謝してる。
悠真くんがいたから、凛音くんの側にいられるようになった」
「だから……その距離、無理に離れなくてもいいんだよ」
「誰かの“隣”になるって、選ぶことかもしれないけど――
“残る”ことも、ちゃんと選んでいいんだから」
天音はそう言って、ふわりと笑った。
どこまでも柔らかく、風みたいに軽く、でも確かに温かい笑顔だった。
悠真は、胸の奥に何かがほどけていくのを感じた。
◆
その日の帰り道。
悠真は夏菜と一緒に歩いていた。
少しずつ日が短くなってきた頃合い。
街灯がぽつぽつと灯り始める時間帯。
「天音に言われた」
「“選んでもいいけど、残ってもいい”って」
夏菜は、驚いたように少しだけ目を見開いた。
「……あの子、やっぱりそういうとこあるよね。
無意識に人の核心を突くっていうか」
「うん。わかってたくせに、
ずっと“気づかないふり”してたの、俺だけだったのかも」
悠真は言った。
もう一度、ちゃんと凛音と向き合おうと思った。
親友として、じゃなく。
過去を断ち切るために。
「でも、それって……」
夏菜が言いかけたとき、
悠真はふと立ち止まり、夏菜の方を見つめた。
「お前にだけは、ちゃんと伝えたいと思ってた」
「凛音のこと、好きだった」
「でも……もう、その気持ちに答えを出したい」
夏菜は一瞬だけ表情を凍らせた。
それでも、少しだけ寂しそうに笑ってうなずいた。
「そっか。
ちゃんと終わらせるってことだね」
「うん。お前が、ずっと俺にそうしろって教えてくれた」
ふたりの間に、沈黙が降りる。
でもその沈黙は、もう重くはなかった。
どこか、晴れやかな空気すら含んでいた。
「……じゃあさ、終わったら、また教えてよ」
「そしたら、私も、ちゃんと一歩前に進むから」
「……ああ、約束する」
◆
夜。
悠真は一人、凛音にメッセージを送った。
《明日、ちょっと時間あるか? 話したい》
すぐに既読がつき、
《OK。屋上な》と返ってきた。
夜風が部屋のカーテンを揺らす。
悠真の中で、何かが終わろうとしていた。
でも同時に、何かが――始まりそうな気がしていた。
雲ひとつない午後の空に、木々の葉が静かに揺れていた。
その日、悠真は放課後の教室に残っていた。
誰もいない空間。
机の並び。
かすかに残る騒がしさの残り香。
そのすべてが、なんとなく名残惜しかった。
(たぶん、俺……)
(少しずつ、“あの輪”から離れていくんだろうな)
天音と凛音。
ふたりの距離が縮まっていくことに、
もう誰も異論を挟まない。
クラス全体が、自然にそれを「応援」し始めていた。
最初はただの転校生だった天音が、
いつの間にかクラスの中心にいる。
その隣には、ずっと変わらない“俺様”な親友がいて。
あまりにも綺麗にハマったその構図に、
もう悠真が入り込む余地なんてなかった。
◆
「悠真くん」
静かな声が背後から届く。
振り返ると、天音が立っていた。
髪を結い直して、制服のリボンを少し緩めている。
「あの、ちょっと……いい?」
「いいけど、何?」
天音は一瞬、何かを躊躇うように視線を泳がせた。
けれどすぐに、真っ直ぐな目で悠真を見つめた。
「最近……あまり、凛音くんと話してないよね」
「うん。まあ、別に……ケンカしたとかじゃないけど」
「わかってる。
でも……それって、わざと距離を置いてるんでしょ?」
悠真はドキリとした。
天音の“天然”の中には、ときどき鋭利な刃のような真実が隠れている。
「悠真くんって、すごく優しいよね」
「誰かの“気持ち”に気づいても、何も言わずにいられる」
「……でも、優しすぎると、自分が傷つくことってあるよ?」
悠真は何も言わなかった。
ただ黙って、天音の言葉を受け止めた。
「私、ずっと感謝してる。
悠真くんがいたから、凛音くんの側にいられるようになった」
「だから……その距離、無理に離れなくてもいいんだよ」
「誰かの“隣”になるって、選ぶことかもしれないけど――
“残る”ことも、ちゃんと選んでいいんだから」
天音はそう言って、ふわりと笑った。
どこまでも柔らかく、風みたいに軽く、でも確かに温かい笑顔だった。
悠真は、胸の奥に何かがほどけていくのを感じた。
◆
その日の帰り道。
悠真は夏菜と一緒に歩いていた。
少しずつ日が短くなってきた頃合い。
街灯がぽつぽつと灯り始める時間帯。
「天音に言われた」
「“選んでもいいけど、残ってもいい”って」
夏菜は、驚いたように少しだけ目を見開いた。
「……あの子、やっぱりそういうとこあるよね。
無意識に人の核心を突くっていうか」
「うん。わかってたくせに、
ずっと“気づかないふり”してたの、俺だけだったのかも」
悠真は言った。
もう一度、ちゃんと凛音と向き合おうと思った。
親友として、じゃなく。
過去を断ち切るために。
「でも、それって……」
夏菜が言いかけたとき、
悠真はふと立ち止まり、夏菜の方を見つめた。
「お前にだけは、ちゃんと伝えたいと思ってた」
「凛音のこと、好きだった」
「でも……もう、その気持ちに答えを出したい」
夏菜は一瞬だけ表情を凍らせた。
それでも、少しだけ寂しそうに笑ってうなずいた。
「そっか。
ちゃんと終わらせるってことだね」
「うん。お前が、ずっと俺にそうしろって教えてくれた」
ふたりの間に、沈黙が降りる。
でもその沈黙は、もう重くはなかった。
どこか、晴れやかな空気すら含んでいた。
「……じゃあさ、終わったら、また教えてよ」
「そしたら、私も、ちゃんと一歩前に進むから」
「……ああ、約束する」
◆
夜。
悠真は一人、凛音にメッセージを送った。
《明日、ちょっと時間あるか? 話したい》
すぐに既読がつき、
《OK。屋上な》と返ってきた。
夜風が部屋のカーテンを揺らす。
悠真の中で、何かが終わろうとしていた。
でも同時に、何かが――始まりそうな気がしていた。
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