俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第26話「私の声、あなたに届くかな」

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夜9時ちょうど。
天音は軽く緊張しながら、桐嶋家のインターホンを押した。
ピンポーンという音の後すぐに、玄関が開いた。
 

「遅い。2分」
 

出迎えた凛音は、ルームウェア姿。
肩にかけた薄手のカーディガンが、彼の家モードを静かに示している。
日中の学園で見せる“俺様”な雰囲気はそのままなのに、どこか気を許した空気がある。
 

「ご、ごめんっ。ちょっと迷って……やっぱり私、邪魔かなって……」
 

「うるさい。入れ」
 

半歩下がって、天音を招き入れる。
入った瞬間、ほのかに香るお茶と甘いアロマ。
リビングの一角には、録音アプリとスピーカー、鏡付きの特訓スペースまで。



「……なにこれ、すごい……」
 

「俺の自由時間を潰してやるんだからな。手加減はしねぇぞ」
 

「うんっ!」
 

それだけで、天音の顔がパッと明るくなる。
その笑顔を見て、凛音はそっと視線を逸らす。
 

(……なんなんだよ。お前が嬉しそうだと、俺の方が落ち着かねぇ)
 

彼女は、すっかり“桐嶋家”にとっても特別な存在になっていた。
姉たちはすでに「天音ちゃん、実質うちの妹」と公言して憚らない。
美咲はSNSに#うちの義妹タグを作り、
由依に至っては「次に弟が女を連れてくるなら、この子しか認めない」と宣言していた。


そして紗奈に至っては――
 

「……今日の練習、紗奈は来ないの?」
 

「呼ぶな。来たら終わりだ」
 

「え?」
 

凛音の言葉に天音が首を傾げた、その時。
 

「りんお~~~ん、 音感指導してるって本当~~~~?」
 

バァン!


ドアが開いた音と共に、ふわりと花柄のスカートが舞った。
 

「紗奈……っ!?」
 

「てへ、 先生だから、突撃しても職権乱用じゃないもんね~~~~♪」
 

「……何しに来た」
 

「そりゃ決まってるじゃん、天音ちゃんのボイトレ衣装チェック♡」
 

「却下だ」
 

「りんおん冷た~い。でもね、私……天音ちゃんのファンになっちゃったの。だってさ、可愛いし、守ってあげたくなるし……」
 

紗奈は、すでに膝をついて天音の手を取っていた。


「天音ちゃん、困ったことあったら、先生になんでも相談してね。特に、凛音にキュンとした時とか♡」


「えっ!? あ、はい……///」


「ああもううるせぇ、帰れっての……!」


「は~い、 でも、天音ちゃんが凛音を癒してくれてるの、家族みんな知ってるから。だから、堂々と甘えていいんだよ~?」
 

「さ、紗奈先生~~~~っ!?!?!?」
 

叫び声と共に、天音の顔が真っ赤に染まる。
それを見て、凛音もわずかに顔を背けた。
 

(紗奈の野郎、いいこと言いやがって……)
 

「じゃ、特訓頑張ってね~~!夜ふかし禁止だぞ☆」
 

ドアが閉まり、静寂が戻る。
 

「……もう、ビックリしたよ……ほんとにお姉さんなんだね、紗奈さん……」


「あれは、ただのスパイだ」


「でも、なんかちょっと嬉しかった……みんな、あったかい」
 

「……だろ」
 

照れたように言って、凛音は音楽アプリを起動した。

画面には「君と重なる旋律」の伴奏と、練習録音機能。
鏡の前に立たされた天音は、緊張した面持ちで声を出した。
 

「き、き~~~~~~~み~と~~~~……」
 
ビミョーに音が外れる。
 
「……やっぱり、私、下手だな……」
 
ぽそりとこぼした天音の声は、少し震えていた。
 
「昔……歌の授業で、男子にからかわれたんだ。『音痴』って……。それから、ちょっとトラウマで……」
 

その言葉に、凛音の眉がわずかに動いた。


「そいつの名前は」
 

「えっ?」
 

「その男子。どこの誰だよ」
 

「り、凛音……?」
 

「お前の歌声にケチつけたやつ、俺がぶっ飛ばす」


「ぶ、ぶっとばさなくていいからっっっ!」
 

焦って止める天音を見て、凛音はふっと息を吐く。
 

「……でも、俺はちゃんと聴いてる。お前の声が、俺にはちゃんと届いてるから」
 

その言葉に、天音の目が潤む。
 

「じゃあ、もっと届くように頑張るね……!」


「その意気だ。まずは、1小節ずつ区切って、声出してみろ」
 

録音ボタンを押し、再生。
何度も繰り返しながら、少しずつ音が合ってくる。


「……おお、今の上手くなかった!?」
 

「うん。……ま、合格点にはまだ遠いけどな」
 

「うぅ~、凛音の“ほめ言葉”ってツンツンすぎるよ~~~~!」
 

「うるせぇ」
 

笑いながら、でもどこかあたたかい声で言う凛音。
その横顔に、天音は静かに心を寄せる。
 

(本当は、すごく優しい。昔から、ずっと)
 

録音された二人のハーモニーが、夜のリビングに優しく響いていた。

 
【つづく】
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