俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第28話「夢、未来、君の隣」

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月曜日の朝、いつもの教室が騒がしい。
とはいえ、騒いでいるのは一部の生徒ではない。
クラス全員が、一様に興奮していた。

 
「凛音くんのソロ、まじでヤバかったよな!」
「うちの学校、芸能事務所に乗っ取られてんの!?ってぐらい本気だったよね」
「天音ちゃんの声、あの瞬間すごく澄んでたよ……泣いたもん……」
 

壁のホワイトボードには、いつの間にか
《合唱コンクール:トレンド入り記念カウントダウン》と書かれていた。
 

実際、Twitterのトレンドワードに

#凛音の声が国宝
#天音ちゃん尊い
#2Cの奇跡

といったタグが並び、配信映像はすでに数百万回再生を突破していた。
 

そして、凛音は――

いつも通り、無表情で席に座っていた。

ただ、唯一違ったのは。

天音の机の下に、二人の手が軽く繋がれていたこと。

 
「……朝から、変な汗かく~……」

 
天音がぽつりと呟く。

凛音はそれを聞いて、わざとらしくため息をついた。

 
「お前が勝手に顔真っ赤にするからだろ」

 
「だ、だって……!あんなにみんなに見られたし……それに、あの……“ライブで隣に歌え”って……」

 
「本心だよ」
 

「っ……///」
 

天音の顔がますます赤くなる。

周囲の生徒たちは、もう暗黙の了解という顔で二人を見守っていた。

 
夏菜は悠真と目を合わせて、そっと頷いた。
 

「……もう、公式認定って感じね」

 
「うん。今さら誰も止めようなんて思わないだろ」

 
「でも、天音って本当に不思議な子だよね。最初、音痴でどうなるかと思ったけど」

 
「……ああいう子だから、凛音も守りたくなるんだよ」

 
「悠真……?」
 

「いや、なんでもない。見守ろうな、二人とも」
 

その言葉に、夏菜は少しだけ顔をほころばせた。

 


 
昼休み。
天音は屋上にいた。

誰もいない空間。
空は高く、少し冷たい風が頬をなでた。

 
(……こんなに注目されるなんて、思ってなかった)

(合唱コンクールのあと、いろんな人が声をかけてくれた)

(「すごくよかった」とか、「歌、感動した」って)

(だけど……)

 
天音の胸の奥には、ほんの少しの違和感が残っていた。

 
(……もし、私が凛音とじゃなかったら)

(もし、私じゃなくて……もっと歌が上手な、素敵な人だったら)

(凛音は、もっと堂々と舞台に立てたんじゃないかな……)
 

「何、独りでうじうじしてんだよ」
 

突然、背後から聞き慣れた声が降ってきた。

振り返れば、やはりそこに凛音が立っていた。
 

「っ!? り、凛音……っ、ど、どうしてここに……」
 

「お前が屋上にいる時は、だいたいメンタルが迷子の時だ。予想通り」
 

「なっ……!?」

 
天音は言葉を失った。
まさか、そこまで読まれているとは思ってもいなかった。
 

「……言っとくけどな。お前が下手だったら、俺は隣に立たせなかった」


「っ……でも……」

 
「でも、なんだよ。自信ないとか、俺に失礼すぎんだろ」

 
「……え?」

 
「お前が横にいると、俺の声はもっと伸びる。鼓膜に直接響く感じでな。あんなの、一人じゃ出せねぇ」
 

言いながら、凛音はふいに手を伸ばして、天音の髪を撫でた。

 
「俺が歌ったのは、お前がいたからだ」
 

天音の目から、ポロッと涙がこぼれた。
 

「……ずるいよ、凛音……っ」

 
「うるせぇ」
 

けれど、凛音の声は柔らかかった。
 

「お前が隣にいるなら、未来だって悪くねぇ。
だから、ビビって逃げるな。……夢があるなら、追え。
俺は、どこにいてもお前の隣にいるから」

 
その一言で、天音の胸の迷いがすーっと晴れていった。
 

「……ありがとう、凛音。私、もっと上手くなる」

 
「なるに決まってんだろ。俺が教えるんだからな」

 
そう言って笑う凛音に、天音も笑い返した。
 


 

その日の夜。
美沙の会社では、さっそく映像の再編集が始まっていた。
 

「ねぇ、これ、海外フェス向けに売れそうなんだけど」

「凛音くんと天音ちゃん、VTuber化したらバズるんじゃない?」

「いや、まじで歌番組からオファー来てるんだけど……」
 

次々と寄せられるスカウトと提案。
だが、美沙は紅茶を啜りながら、優雅に微笑むだけだった。
 

「うちの子が動くときは、自分で決めるわよ。
いまは……恋に忙しいからね♡」

 


 
星が瞬く夜。
桐嶋家のリビングでは、天音が再び録音アプリを開いていた。

その横で、凛音がイヤホンを片耳に当てる。
 

「……やっぱ、前より上手くなってんな」

 
「ほんと?」

 
「ああ。……でも」
 

「でも?」

 
「お前の“好き”って言葉の方が、俺の鼓膜には最高だな」

 
「なっ……!? なにそれ~~~!」
 

「録音しとくか?」
 

「やーめーてーーーっ!」
 

笑い声と歌声が重なる夜。
未来はまだ何も決まっていないけれど、
彼らの“旋律”は、確かに今、同じリズムを刻んでいた。

 
【つづく】
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