93 / 147
93)深夜のドライブスルー
しおりを挟む
1
これは、数年前に実際に体験した話だ。
その日、俺は仕事で帰りが遅くなり、深夜2時過ぎに家へ向かって車を走らせていた。夜道は閑散としており、すれ違う車もほとんどない。疲れが溜まっていたせいか、腹が減って仕方なかった。
そんなとき、目に入ったのが24時間営業のハンバーガー店のドライブスルーだった。
「ちょうどいい……」
そう思い、俺は車を駐め、スピーカーの前で注文を告げた。
「すみません、チーズバーガーセットを一つお願いします」
数秒の沈黙の後、無機質な女性の声が返ってきた。
「……かしこまりました。お車をお進めください」
声に違和感はなかった。だが、何かが妙に引っかかる。眠気のせいだろうか。俺はゆっくり車を前に進め、窓口へ向かった。
2
窓口には誰もいなかった。
厨房の奥は薄暗く、店員の姿は見えない。それどころか、電気もほとんど消えている。
(……ん? 営業してるよな?)
さっきの声は確かに聞こえた。それに、店の看板も点いている。なのに、人の気配がしない。
俺は窓越しに顔を覗かせ、「すみません」と声をかけた。
すると――
ガタンッ!
奥の厨房から音がした。驚いて目を凝らすと、暗闇の中に何かが立っている。
人影だった。店員の制服を着ているように見える。だが、こちらに顔を向けず、じっと動かない。
「……すみません?」
再び呼びかけると、影はゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。
だが、何かがおかしい。
その歩き方が、異常にぎこちないのだ。関節が外れたように、不自然な動きで足を引きずっている。
(……ヤバい)
俺の本能が警鐘を鳴らした。
これは「普通じゃない」。
反射的にギアをバックに入れ、急いで車を下がらせた。その瞬間、スピーカーから例の女性の声が響いた。
「……お待ちください……ご注文の商品を……お渡しします……」
俺はゾッとした。
さっきと声が違う。抑揚がなく、まるで壊れたスピーカーから流れるような、機械的な音だった。
俺はアクセルを踏み込み、その場を離れた。
3
数キロ先のコンビニに駆け込み、震える手でホットコーヒーを買った。落ち着こうとしても心臓がバクバクしている。
(なんだったんだ、あれは……?)
とにかく、あの店の様子がおかしかったのは間違いない。
俺はスマホを取り出し、「○○市 ドライブスルー 24時間」と検索した。
すると、ある記事がヒットした。
そこには、こう書かれていた。
「深夜のドライブスルーで起きた事故」
数年前、その店では深夜シフトの女性店員が、強盗に襲われ殺害されたというのだ。
強盗は彼女を刺し、そのまま厨房に放置して逃走。翌朝、出勤した店長が彼女の遺体を発見した。
それ以来、深夜の時間帯に「誰もいないはずの店で注文が通る」という怪現象が頻発するようになったらしい。
背筋が凍った。
俺が聞いたあの無機質な声は……まさか……。
4
後日、友人にこの話をした。
すると、彼は思い出したように言った。
「それさ……前にも似た話を聞いたことがある。深夜にそのドライブスルーで注文すると、店員がいないのに食べ物が出てくるって話だよ」
「食べ物が?」
「でも、それを食べると……数日以内に事故に遭うって噂があるんだ」
冗談じゃない。
あのまま待っていたら、俺は何を渡されていたんだろう?
――注文したチーズバーガーセットか?
それとも……もっと別の何かか。
俺はそれ以来、深夜のドライブスルーを利用しなくなった。
……いや、今でも、あの店の前を通るのさえ、避けている。
これは、数年前に実際に体験した話だ。
その日、俺は仕事で帰りが遅くなり、深夜2時過ぎに家へ向かって車を走らせていた。夜道は閑散としており、すれ違う車もほとんどない。疲れが溜まっていたせいか、腹が減って仕方なかった。
そんなとき、目に入ったのが24時間営業のハンバーガー店のドライブスルーだった。
「ちょうどいい……」
そう思い、俺は車を駐め、スピーカーの前で注文を告げた。
「すみません、チーズバーガーセットを一つお願いします」
数秒の沈黙の後、無機質な女性の声が返ってきた。
「……かしこまりました。お車をお進めください」
声に違和感はなかった。だが、何かが妙に引っかかる。眠気のせいだろうか。俺はゆっくり車を前に進め、窓口へ向かった。
2
窓口には誰もいなかった。
厨房の奥は薄暗く、店員の姿は見えない。それどころか、電気もほとんど消えている。
(……ん? 営業してるよな?)
さっきの声は確かに聞こえた。それに、店の看板も点いている。なのに、人の気配がしない。
俺は窓越しに顔を覗かせ、「すみません」と声をかけた。
すると――
ガタンッ!
奥の厨房から音がした。驚いて目を凝らすと、暗闇の中に何かが立っている。
人影だった。店員の制服を着ているように見える。だが、こちらに顔を向けず、じっと動かない。
「……すみません?」
再び呼びかけると、影はゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。
だが、何かがおかしい。
その歩き方が、異常にぎこちないのだ。関節が外れたように、不自然な動きで足を引きずっている。
(……ヤバい)
俺の本能が警鐘を鳴らした。
これは「普通じゃない」。
反射的にギアをバックに入れ、急いで車を下がらせた。その瞬間、スピーカーから例の女性の声が響いた。
「……お待ちください……ご注文の商品を……お渡しします……」
俺はゾッとした。
さっきと声が違う。抑揚がなく、まるで壊れたスピーカーから流れるような、機械的な音だった。
俺はアクセルを踏み込み、その場を離れた。
3
数キロ先のコンビニに駆け込み、震える手でホットコーヒーを買った。落ち着こうとしても心臓がバクバクしている。
(なんだったんだ、あれは……?)
とにかく、あの店の様子がおかしかったのは間違いない。
俺はスマホを取り出し、「○○市 ドライブスルー 24時間」と検索した。
すると、ある記事がヒットした。
そこには、こう書かれていた。
「深夜のドライブスルーで起きた事故」
数年前、その店では深夜シフトの女性店員が、強盗に襲われ殺害されたというのだ。
強盗は彼女を刺し、そのまま厨房に放置して逃走。翌朝、出勤した店長が彼女の遺体を発見した。
それ以来、深夜の時間帯に「誰もいないはずの店で注文が通る」という怪現象が頻発するようになったらしい。
背筋が凍った。
俺が聞いたあの無機質な声は……まさか……。
4
後日、友人にこの話をした。
すると、彼は思い出したように言った。
「それさ……前にも似た話を聞いたことがある。深夜にそのドライブスルーで注文すると、店員がいないのに食べ物が出てくるって話だよ」
「食べ物が?」
「でも、それを食べると……数日以内に事故に遭うって噂があるんだ」
冗談じゃない。
あのまま待っていたら、俺は何を渡されていたんだろう?
――注文したチーズバーガーセットか?
それとも……もっと別の何かか。
俺はそれ以来、深夜のドライブスルーを利用しなくなった。
……いや、今でも、あの店の前を通るのさえ、避けている。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる