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第6話:会長は探偵、仲間はどこだ?
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~孤独な名探偵、生徒会に立つ~
青葉ヶ丘高校の生徒会室は、思っていたよりも狭かった。
それでも扉を開けた瞬間、マコトの胸はほんの少し高鳴った。
(ついに俺も……この扉の向こう側に来たんだ……)
目の前にあるのは、木製の長机がひとつ。そして積み上がる書類、書類、書類。
奥の壁にはホワイトボード、時計は微妙に3分遅れている。唯一の窓から差し込む日差しがホコリを照らしていた。
「……うん、まぁ、うん。思ったより地味だな」
マコトは独りごちると、生徒会長の席――らしき場所に腰を下ろした。
が、イスの脚がギィ、と派手な音を立てて傾き、半ケツのまま沈んだ。
「ぐあっ!? い、いきなり罠か!?これは事件の匂いッ……!」
そのとき、背後から声が飛んできた。
「……お前の重心が事件なんだよ」
「うおっ!? 幽霊か!?心霊ミステリーか!?」
「私だよ」
ドアに立っていたのは早紀だった。呆れ顔はもはや様式美である。
「どーせ、ひとりでハイテンションになってると思って。ほら、顧問の先生がこれ預かってきてって」
そう言って差し出されたのは、分厚い封筒。
【生徒会引継書類】
「えっ、これ、辞書?いや、時限爆弾か……?」
「ちがう。生徒会業務マニュアルと、予算配分の手続き資料と、外部申請届の記入例が入ってるだけ。あと、生徒会主催のイベント一覧も」
「それ……どこで笑えばいいの?」
マコトはイスを直しながら言った。
「いやー……まさか、本当に誰もいないとは思わなかったよ、生徒会メンバー」
「そりゃそうでしょ。普通、選挙に勝ってから“人集め”する奴なんかいないわよ」
「でもさ、1人じゃ事件解決もできないじゃん?」
「え、生徒会活動の話じゃなくてそっちなの?」
「もちろん!だってこれ、“探偵生徒会”だから!」
早紀は呆れ果てた顔で書類を机に置き、言った。
「……せめて、最低限のメンバーは揃えなさいよ。会長・副会長・会計・書記・補佐3人。それがないと、予算も降りないし、活動も認可されない」
「補佐3人!?そんなに必要なの!?」
「うん。去年の会長は“補佐をサクラで埋めて”怒られてた。ちゃんとやらないと、顧問の樋口先生が何か“仕掛けて”くるよ」
「な、なるほど……これは事実上の“生徒会員スカウト戦”……!」
マコトは立ち上がり、拳を握った。
「よし!この名探偵が!事件とともに仲間を探し出してみせるッ!」
「違う。事件じゃなくて“人”を探して」
「仲間集めも、ひとつの事件だと思えばいい!」
「いや、たぶんそれ、解決しないパターンの事件」
そんなマコトの背中に、ポンと手を置く者が現れた。
「……はいはーい。名探偵生徒会、おもしろそーだし、あたしも入る~」
にっこりと笑ったのは、美穂だった。
「えっ、美穂!?」
「え、あたし会計やるよ?ギャルだからってバカだと思ったら大間違いだかんね~。簿記も取ってるし」
「えっ、簿記!?」
「高校生活って、面白いほうが勝ちじゃん。あたし、マコトの暴走見てるの結構楽しいし。ね、早紀」
「私は疲れるだけだけどね……」
「まぁまぁ、これで少なくとも、財務担当は確保!」
「よし!次は、書記だ!それと、補佐が3人!」
「いやちょっと待って、それ以上に私が気になってることがあるんだけど」
と早紀が眉をひそめる。
「最初の依頼者……いたでしょ?新入生の女の子。結局あれ、放置なの?」
「あっ……」
沈黙。
「……完全に忘れてたーッッ!!!」
こうして、名探偵マコトの“会長としての初日”は、
仲間ゼロ、混乱マシマシ、しかも初仕事放置という状態で終わったのであった。
しかし翌日、マコトの下に一通の“挑戦状”が届く。
それは、“書記志望”と名乗る人物からの、奇妙なメッセージだった。
◆つづく◆
青葉ヶ丘高校の生徒会室は、思っていたよりも狭かった。
それでも扉を開けた瞬間、マコトの胸はほんの少し高鳴った。
(ついに俺も……この扉の向こう側に来たんだ……)
目の前にあるのは、木製の長机がひとつ。そして積み上がる書類、書類、書類。
奥の壁にはホワイトボード、時計は微妙に3分遅れている。唯一の窓から差し込む日差しがホコリを照らしていた。
「……うん、まぁ、うん。思ったより地味だな」
マコトは独りごちると、生徒会長の席――らしき場所に腰を下ろした。
が、イスの脚がギィ、と派手な音を立てて傾き、半ケツのまま沈んだ。
「ぐあっ!? い、いきなり罠か!?これは事件の匂いッ……!」
そのとき、背後から声が飛んできた。
「……お前の重心が事件なんだよ」
「うおっ!? 幽霊か!?心霊ミステリーか!?」
「私だよ」
ドアに立っていたのは早紀だった。呆れ顔はもはや様式美である。
「どーせ、ひとりでハイテンションになってると思って。ほら、顧問の先生がこれ預かってきてって」
そう言って差し出されたのは、分厚い封筒。
【生徒会引継書類】
「えっ、これ、辞書?いや、時限爆弾か……?」
「ちがう。生徒会業務マニュアルと、予算配分の手続き資料と、外部申請届の記入例が入ってるだけ。あと、生徒会主催のイベント一覧も」
「それ……どこで笑えばいいの?」
マコトはイスを直しながら言った。
「いやー……まさか、本当に誰もいないとは思わなかったよ、生徒会メンバー」
「そりゃそうでしょ。普通、選挙に勝ってから“人集め”する奴なんかいないわよ」
「でもさ、1人じゃ事件解決もできないじゃん?」
「え、生徒会活動の話じゃなくてそっちなの?」
「もちろん!だってこれ、“探偵生徒会”だから!」
早紀は呆れ果てた顔で書類を机に置き、言った。
「……せめて、最低限のメンバーは揃えなさいよ。会長・副会長・会計・書記・補佐3人。それがないと、予算も降りないし、活動も認可されない」
「補佐3人!?そんなに必要なの!?」
「うん。去年の会長は“補佐をサクラで埋めて”怒られてた。ちゃんとやらないと、顧問の樋口先生が何か“仕掛けて”くるよ」
「な、なるほど……これは事実上の“生徒会員スカウト戦”……!」
マコトは立ち上がり、拳を握った。
「よし!この名探偵が!事件とともに仲間を探し出してみせるッ!」
「違う。事件じゃなくて“人”を探して」
「仲間集めも、ひとつの事件だと思えばいい!」
「いや、たぶんそれ、解決しないパターンの事件」
そんなマコトの背中に、ポンと手を置く者が現れた。
「……はいはーい。名探偵生徒会、おもしろそーだし、あたしも入る~」
にっこりと笑ったのは、美穂だった。
「えっ、美穂!?」
「え、あたし会計やるよ?ギャルだからってバカだと思ったら大間違いだかんね~。簿記も取ってるし」
「えっ、簿記!?」
「高校生活って、面白いほうが勝ちじゃん。あたし、マコトの暴走見てるの結構楽しいし。ね、早紀」
「私は疲れるだけだけどね……」
「まぁまぁ、これで少なくとも、財務担当は確保!」
「よし!次は、書記だ!それと、補佐が3人!」
「いやちょっと待って、それ以上に私が気になってることがあるんだけど」
と早紀が眉をひそめる。
「最初の依頼者……いたでしょ?新入生の女の子。結局あれ、放置なの?」
「あっ……」
沈黙。
「……完全に忘れてたーッッ!!!」
こうして、名探偵マコトの“会長としての初日”は、
仲間ゼロ、混乱マシマシ、しかも初仕事放置という状態で終わったのであった。
しかし翌日、マコトの下に一通の“挑戦状”が届く。
それは、“書記志望”と名乗る人物からの、奇妙なメッセージだった。
◆つづく◆
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