名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第12話:スケッチブックに描かれた嘘(2/4)

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~美術準備室と“遺作を描く男”~
翌日の放課後。
生徒会メンバーは美術棟の一角にある“美術準備室”の前に集まっていた。

ここは、普段は美術教員が画材や資料を保管しておくための場所。
が、噂によれば、上級生のある人物がこの部屋を“アトリエ”代わりに使っているらしい。

扉は少しだけ開いていた。
中からは、鉛筆が紙をなぞる微かな音が聞こえる。

マコトがそっと覗きこむと――

「……あれが、橘 時雨(たちばな しぐれ)……?」

■彼は“兄の影”を描いていた
中にはひとりの男子生徒がいた。
制服の上から白いアトリエコートを羽織り、淡々と鉛筆を走らせている。
机の上にはいくつものスケッチと、古びた参考写真、そして日下部慧(故人)の絵と思しき模写作品。

「……もしかして、真犯人、ってやつか?」

マコトが声をかける。

「すみません、生徒会の者ですが……」

その声に、彼――橘時雨はようやく視線を上げた。

「……あぁ、生徒会か。“探偵ごっこ”してるって噂の。何の用?」

声音は冷たい。目元に覇気はなく、どこか“過去のなか”を見ているような瞳だった。

「失礼ですが……日下部慧さんと、親しかったと聞きました」

「……あいつの妹か。昨日、廊下ですれ違ったな。俺が描いたんじゃないかって、疑ってる?」

「実際、スケッチブックに“兄の絵に似せた絵”が描き足されていました。そのタッチ、あなたにしか描けないという話もあります」

橘はわずかに眉を動かし、紙から手を離した。

「……“描ける”のと、“描いた”のは違う」

「じゃあ否定しますか?」

「否定はしない」

全員:「は!?!?」

■橘の証言
「俺は、“慧の続き”を描いてる。
 ただし、スケッチブックには一切触れていない。
 あれは、慧が完成させなかったものたち。
 俺にとっても、絶対に越えてはいけない領域だ」

マコト:「でも、あなたは“模写”をしている。これ、慧さんの“未公開作品”のように見えるけど?」

「慧の部屋に行ったことがある。遺族の許可で写真資料も整理した。
 ――俺が描いてるのは、慧の“影”だ。けれど、彼の名を騙るようなことはしない」

早紀:「じゃあ、誰が……?」

橘は静かに言った。

「“慧に似せて描ける奴”は、他にもいた。
 慧の“元彼女”だよ」

マコト:「えぇぇぇえ!?そう来る!?」

■浮上するもうひとりのキーパーソン
「彼女の名前は姫乃 樹里(ひめの じゅり)。
 慧が亡くなる数ヶ月前まで付き合ってた。
 同じ美術部だったが、慧の死を機に学校を一時休んでいたらしい」

「最近になってまた復学した。1年生の美術コースに……」

いろはの顔が強張る。

「……えっ……1年生……?」

「うちのクラスにいるの、樹里って子……いるけど……」

静まり返る一同。

マコトはゆっくりスケッチブックを閉じ、こう言った。

「――これは、“兄の遺作を描く犯人を探す事件”じゃない。
 **“誰が、慧を消さずに残そうとしてるのか”**を探す事件だ」

橘は立ち上がり、背を向けてこう言った。

「姫乃を訪ねるなら、注意しろ。“真実”と“思い込み”の区別がつかない奴だからな」

その言葉を残して、橘は奥の扉の向こうに姿を消した。

生徒会室に戻る道すがら、いろははずっと黙っていた。

「……樹里さんが、兄の代わりに絵を描いてるなんて、信じたくないけど……」

マコトはそんな彼女の横で、そっと呟いた。

「信じたくない、ってことは――
 少しだけ、信じてるってことなんだよね」

早紀:「……マコトのくせに、たまにいいこと言うな」

◆つづく◆
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