名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第17話:彼女の声を、もう一度(3/4)

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~「幽霊」は、忘れられたくなかった~
放送室の空気が変わった。

「……俺が、あの放送を“流しました”。」

演劇部・音響担当の間宮 翔太は、正面から名乗った。

硬く閉ざしていたような表情とは裏腹に、その声は震えていた。
綾小路が一歩前に出る。

「理由を聞いても?」

「……3年前の、沢井加奈先輩のことを、誰も知らなかったんです。
 放送部でずっと活動してたのに……卒業アルバムにも名前はなくて、写真もない。
 それが、ずっと……ずっと、気になってて」

■動機:彼女の“声だけが残された世界”
「中学のときに聞いたんです。偶然。
 あの人が最後に残した、朗読の音源。
 今まで聞いたどの演劇より、どの朗読よりも――心に残った」

マコトがそっと口を挟む。

「だから、君は“彼女の声を、学校にもう一度響かせた”……?」

「はい。あれは、“幽霊の声”じゃない。
 忘れられた声を、思い出してもらうための放送です」

「でもさ。やり方、もうちょっとあったんじゃないの?」

美穂が苦笑混じりに言う。

「深夜に流れたらそりゃ怖いし、噂にもなるし……。
 せっかく残した声も、逆に“怖い”って印象で終わっちゃうよ」

「……それは、僕もわかってました。
 でも、誰かに聞いてほしかったんです。
 “この人が、ここにいた”って。たとえ噂でも、思い出に残れば、それで」

早紀が、何かを思い出したように小声で言う。

「……あの声、本当に“ただの録音”なのに、
 なんか、言葉にできない気持ちが残ったのよね。
 “助けて”とも、“覚えてて”とも違う、でも確かに――」

「心が、そこにあったんだよ」

マコトが小さく言った。

「それを“幽霊”って呼ぶなら、それでもいい。
 でも俺たちがやるべきことは、“その幽霊の正体”を伝えることだと思うんだ」

■最後の放送
数日後、生徒会は校内放送の許可を取りつけ、1度だけの特別放送を実施することにした。

📻《放送内容》:

生徒会からの「最近の噂」への公式説明

最後に、沢井加奈による“未公開朗読”の一部(本人の声)を再生

スピーカー越しに流れる、優しく澄んだ女性の声――
それは、どこか懐かしく、でも決して古びてはいない、**生きた“ことば”**だった。

「……どんなに暗い夜でも、
 声が届けば、きっと誰かは笑える」

放送室の窓の外、春の夕暮れ。
マコトは小さく呟いた。

「ねえ加奈先輩。ちゃんと、届きましたよ」

■事件の記録(要約)
項目 内容
依頼者 匿名の複数証言による通報(1年生中心)
事件名 放送室の幽霊は、二人いる
現象 放送室から深夜に声が流れる/女のすすり泣き・男の声
真相 自動再生設定のまま残された旧録音テープと、音響担当・間宮による追悼放送が重なったもの
動機 忘れ去られた元放送部員・沢井加奈を“もう一度思い出してほしい”という後輩の想い

■生徒会それぞれの記録メモ(一部抜粋)
📝 副会長・早紀

今回の“幽霊”は、心に残る人のことだった。
こういう事件は、解決して終わりじゃなくて、“忘れないこと”が大事なのかもしれない。

📷 佐伯

最後の放送中、教室で泣いてた子がいた。
俺はそれだけで、この事件に関われてよかったと思う。

🎭 綾小路

幽霊の話は、誰も傷つかないホラーとして消費されがちだ。
でも、本当は“誰かが置き去りにした感情”なのかもしれない。
…今回は、それが救われた。

🕵️‍♂️ 会長・マコト

お化けなんかいなかった。でも、“忘れたくない人”はいた。
それを伝える手段が“声”だった。
……俺たち、ちょっとだけ、探偵らしかったよな!

◆つづく◆
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