名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第21話:倉庫の対面、動かしたのは君のため(3/4)

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~赤いジャージが伝えたかったこと~
その夜も、体育倉庫は静かに沈んでいた。
風はない。月は淡く照らしている。だが、何かが“起きる”気配は、確かにそこにあった。

「……来る」

蓮の低い声。

倉庫の扉が、またゆっくりと開いた。

ギィィィィ……

そして、床をすべるように――

赤いジャージが、現れた。

まるで“誰か”がそのジャージを、コートへと送り出すように。
まるで“あの日の続き”を、もう一度だけ演じようとしているかのように。

「……待ってたんだ」

マコトが、ジャージの行く手を遮るように立つ。
ライトがひと筋、彼の背からジャージを照らす。

「君が出てくるの、ずっと待ってた」

倉庫の影――
そこに、小さな気配があった。

マコトは静かに言う。

「……中にいるんでしょ。もう、隠れなくていい」

しばらくの沈黙。

やがて、影の奥から現れたのは――
一人の女子生徒。

華奢な体格に、部活用のハーフパンツ。手には、引っ張るための細いナイロン糸。
それが、赤いジャージの袖に結ばれていた。

「……ごめんなさい。わたしが、やりました」

■名乗った少女の名前は
高田 りお。
1年生、女子バレー部。
小柄で、声は小さく、部内ではあまり目立たないタイプ。
だが、ジャージの持ち主――河合 美晴先輩のことを、彼女はこう呼んだ。

「わたしの……憧れだったんです。ずっと。
 先輩みたいになりたくて、同じポジション練習してて……
 でも、先輩が来なくなってから、部活の空気も、コートの音も、全部、変わってしまって」

■“動かした理由”
「最後に、先輩に“出てほしかった”んです。
 試合前日のコートに、せめて……赤ジャージだけでも。
 コーチには内緒で、鍵もこっそり借りて……
 ジャージに糸つけて、床這わせて、
 “そこにいるみたいに”動かしてました」

彼女の声は震えていた。
でも、嘘はひとつもなかった。

「……たぶん、バカですよね」

マコトは首を横に振った。

「いや……すごく、素敵なことをしたと思うよ」

■そして、本人は……
その翌日、意外なことが起きた。

生徒会室に、ひとりの訪問者が現れた。

「失礼します。あの……1年の高田さんの件で、話を聞いたと伺って」

現れたのは、松葉杖姿の女子生徒。
真っ直ぐな瞳で、制服の裾をきちんと揃えた彼女は――

「河合 美晴です」

彼女は知っていた。
自分がいない間、誰かが“何か”をしていたことを。

そして、昨日の夜、**“赤いジャージが歩いた”**という噂を聞いて。

「……それ、多分、りおだなって。
 あの子、わたしのジャージ、いつも畳んでくれてたから」

美晴は、小さく笑った。

「……でも嬉しかったです。
 “自分がいなくても、誰かがその場所に出してくれた”って。
 “歩けない自分が、もう一度だけ、コートに立てた”みたいで」

マコトは、その言葉をそっと書記ファイルにメモした。

「心って、不思議だよな。
 人が動かしたジャージに、ちゃんと魂が宿ったみたいに感じた」

「……いや、あれは完全に物理現象だったでしょ」と早紀が冷静に突っ込んだ。

「うん、知ってる。でも……気持ちの推理も、大事だろ?」

◆つづく◆
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