名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第33話:“声が見えるようになるまで”(4/4)

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~その詩は、誰かに見つけてほしかった~
数日後。
生徒会室には、トイレの鏡に貼られた5枚の詩が並べられていた。

そのどれもが、コピー用紙のうえに淡い筆跡で綴られている。
だが、静かな声がそこにあることを、今では誰も疑わなかった。

「本当に、詩だけで伝わるもんなんだなぁ……」
と、美穂がぽつり。

「伝えようとしてたのは“詩”じゃない。“存在”だったからよ」
と早紀。

「なにそれ……名言」とマコトが小声でメモを取りはじめてツッコまれる。

■事件の処理とその後
生徒会からの報告により、
学校側は事実を受け止め、“張り紙事件”を**「問題行動」ではなく「自己表現の範疇」**として処理。

篠原琴音には正式な謝罪は求められなかった。

ただし、彼女自身の希望で――
「放課後、詩を読むサークル活動を提案したい」と、生徒会に申し出があった。

マコトはすぐに書類を整え、
数日後、**“ことばの小部屋”**という詩の読書・創作サークルが、
非公式活動として誕生することとなった。

■事件記録・ファイル抜粋(要約)
項目 内容
事件名 “怪文詩”が貼られるトイレ事件
発端 毎週月曜、女子トイレ鏡に謎の詩が貼られる事案が発生
発見者 複数の女子生徒/SNSでの拡散あり
真相 2年生・篠原琴音が「自分の存在」を訴えるために書いた連続詩
動機 教室内での孤立・無視に近い状況の中、自分が“見られていない”苦しみを“詩”で表現した
対応 校内放送による説明/生徒会による支援/詩のサークル創設

■詩として残された“最後の一行”
「だれにも見えなかった声が、ようやく聞こえた」

マコトは、その言葉を事件記録の最後に記した。

■生徒会コメント欄
・ 副会長・早紀
怖いものの正体って、“知らないまま”だから怖いんだよね。
本当の中身が“誰かの声”だったとわかれば、それはもう怪文じゃない。言葉だ。

・ 佐伯(補佐)
無音の映像って、逆に何かが語りかけてくる。
あの朝、彼女が紙を貼る姿を見たとき、俺はカメラを止める気にならなかった。

・ 蓮(書記)
存在とは、名を呼ばれることではなく、“誰かの記憶に残ること”だ。
彼女の詩は、確かに記憶になった。

・ 美穂(会計)
ギャルも言葉選ぶときあるけど、あの子の詩はホントずるい。
泣かされたの久々。認める。

・ 綾小路(補佐)
詩とは、心の断片を他者に渡す形式だ。
そして今回は、それがちゃんと“受け取られた”。
名もなき舞台の独白が、観客を得た瞬間だった。

・ 詩織(補佐)
あの詩を“処罰”するような学校でなくてよかった。
私たちは、言葉を“壊す”のではなく“拾い上げる”側でいたい。

・ 会長・マコト
最後の詩に名前があって、俺はホッとしたんだ。
“見てほしい”って言ってくれる人には、絶対応えたい。
探偵って、事件だけじゃなく、“沈黙の声”も拾う役割なんじゃないかって思った。

■ファイル保存先
記録棚E-2「非犯罪系・心の声」カテゴリに登録

●事件タイトル(綾小路命名)
『声は見えない。でも、聞こえる詩』
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