第25区域(セクター・トゥエンティファイブ)

naomikoryo

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第3話:仲間たちとの出会い

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沈黙は、時に拷問よりも人間を壊す。
だが――それが破られるとき、人間は自分がどれだけ脆い存在かを思い知る。

リオの独房に、それは音もなくやってきた。

「……なに?」

夜間照明の落ちた薄闇の中。
天井の点検口から――何かが“降ってきた”。

「お、おい! ちょっと待て、お前誰だ!! ドローンか!? 新型か!? クソッ、俺、まだ死にたく――」

「黙れ」

その声は、明確に“人間”だった。
女の声。
低く、鋭く、凍えるような静けさを含んでいた。

暗闇の中、リオの視界に映ったのは、黒い戦闘スーツに身を包んだ細身の女性。
ボディスーツは、施設内の熱源センサーを無効化する仕様らしく、体温も存在も限りなく機械に近い。

「誰……だ?」

「スコープ。私たちは、脱出のためにここにいる。お前を試していた」

「……試してた? は?」

リオはベッドから起き上がると、肩越しに彼女を睨みつけた。
一歩踏み出そうとするが、身体が揺れる。
まだ実験の後遺症が抜けきっていない。

「何を……何を勝手に俺のこと試してんだよ。お前ら、敵か?」

「敵なら今頃、殺してる」

「それもそっか。っていうか、何? マジで人間? それとも義体化されたAI? あー、わかんねぇわ、最近の技術、マジで人間味なさすぎて怖ぇ」

彼女は無言でリオを観察していたが、やがて一歩前に出る。

「名乗るほどのことでもないが、セラ。コードネーム:S-09」

「セラ……スコープの人間ってことは、組織か? 地下の?」

「私たちは“反抗者”じゃない。選ばれなかった人間の側よ。あんたも、たぶんそう」

「選ばれなかった……?」

セラは、独房の壁を掌で撫でるようにして通信端末を起動した。
赤外光の粒子が壁に走り、ノイズ混じりの映像がモニターに現れる。

それは、第25区域の地図だった。
想像以上に巨大で、複雑で、無駄がなかった。

「ここの構造を見て。私たちは、この区域の“外周”で生き延びてる。監視が少ない配管エリア、廃棄された研究フロア、壊れたAIコアの死角……それらを移動して、監視から逃れながら動いてる」

「施設の内部から逃げるってことか……?」

「その通り。ただし、脱出は“物理的な突破”じゃない。“中枢システム”にアクセスしない限り、ここの“空間構造”自体が……変化し続ける」

「……どういう意味だ?」

「この施設は、量子認識レベルで“形を変える”。迷宮そのものなのよ。管理AIが人間の行動パターンを学習し、リアルタイムで構造を再生成してる」

「……おいおい、マジかよ。じゃあ俺たちは、迷路の中を逃げ回ってるネズミか。……クソ、笑えねぇな」

セラは目を細める。

「あなたは異常な“適合率”を持ってるらしい。私たちのネットワークにも、あなたの記録が上がってきた」

「92パーだか、97パーだか、そんなんだっけ? そもそも“適合率”って何の?」

「人体改造、ナノ強化、精神操作への耐性。いわば、“次世代人類”としての適応度よ」

「俺が……人間やめかけてるってことかよ」

リオは苦笑し、天井を見上げた。

「でもな、セラ。俺は記憶がねぇんだよ。自分が何したか、誰だったかもロクに覚えてねぇ。そんな俺が、希望になるってのか?」

「それでも、選ばれるより“選びたい”って思うなら、こっち側に来なさい」

「……チッ。そういう台詞、キライじゃねぇ」

そのとき、天井の照明が唐突に明るくなった。
セラが振り返る。

「時間切れ。監視ドローンがルート異常を検知した。次は、彼に会って」

「誰に?」

「ユウマ。スコープの頭脳。あんたと同じくらい、イカれてるけど……話は通じる」

「なるほどな……つまり、イカれてる俺と気が合うってことか」

セラは笑わなかった。ただ小さく頷いて、点検口から再び姿を消した。

翌日。
リオは“いつもの”実験ではなく、なぜか「定期検査」と称されたフロアへと移送された。

そこには、金属フレームの車椅子に乗った少年がいた。
片目に量子光学スコープを装着し、腕には義体化モジュール。
あどけなさの残る顔で、リオを見て言った。

「よぉ、“未来の人間さん”。会いたかったぜ、RX-05-13――いや、“リオ”でいいか?」

「……あんたが、ユウマか?」

「正解。IQ180、改造済み、問題児。君と同じさ」

「同じ?」

ユウマはニヤリと笑った。

「俺もさ――“選ばれなかった側”だよ。でもな、こっち側のほうが面白い。だって、全部ぶっ壊せるから」
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