面白ミステリー『名探偵マコトの事件簿2』

naomikoryo

文字の大きさ
28 / 85

第28話『名探偵、美穂と共に校内を爆走す』

しおりを挟む
「いい!? 捜査ってのはスピードが命なの!!」

美穂が廊下を全力疾走しながら叫ぶ。

「今この瞬間にも! 犯人は証拠を隠してるかもしれない!!」

「いや、まずその“犯人いる前提”を捨ててくれ!!」

マコトも追いつこうと必死で走っていたが、内心はツッコミの嵐である。

目的地:保健室前。

証言によれば、シュシュ“らしきもの”が落ちていたとのこと。
その真偽を確かめるべく、ふたりは走った。とにかく走った。

 
「おーい! 危ないから廊下は走らなーい!!」

「名探偵捜査中ですうううぅぅ!!!」

 
「理由がめっちゃバカ!!!!!」

保健室前に到着した瞬間、美穂が地面に倒れこむ勢いでしゃがみ込む。

「……ない!? えっ!? シュシュない!!?」

「おい、まさかの先越されたパターン!?!」

「ヤバい……これは“先に気づいた第2の犯人”が存在する可能性……!」

 
マコトがノートを取り出し、書き込む。

【進捗状況】

・証言者A「保健室前に落ちてた」
→現在、なし
→誰かが拾った or 回収された or 消失した(!?)

【可能性】

・第1犯人とは別に、第2の“拾得者”が現れた!?
・そして今も校内に潜伏中……?

「これは……“2重構造犯行”のにおいがするぜ……!!」

 
「マジでなに言ってんの!?!?!?!?」

そこに現れたのは、ことり。
ちょっと遠巻きに様子を見ていたが、ついに声をかけてきた。

 
「……あの、さっき先生が、掃除のとき落し物箱に何か入れてました」

「ナイスうぅぅぅうう!! ことりちゃん情報神ッ!!」

「っていうか、それもう落し物扱いで片付いてるじゃん」

 
「くっ……それでも、俺たちは見届けなきゃならない……!
この手で、事件の決着をッッッッ!!!!」
 

「早く行こ!!! 落し物ボックスだよね!? 職員室前でしょ!? ダッシュッ!!」

 
「や、だから廊下は――」

「事件なんで!! 名探偵と助手の職権で許可済みなんで!!」

「誰からの許可だよ!!!」

落し物ボックス前。

ふたりは箱をガサゴソと探り、ついにそれらしきブツを発見する。

「これだッッ!!!」

「ま、まちがいない!! これあたしのシュシュだ!!!!

ラメの角度が昨日と同じだし!!! あと“推しの色”の気配がある!!!」

「推しの色の気配ってなに!?」

だが、美穂はシュシュを手にしたその瞬間――固まった。

「…………あれ?」

「どうした?」

「……これ……」

 
「……ちょっとだけ形違う」

 
「おいィィィィィィィ!?!?!?!?」

 
「ちょっとだけ! ちょっとだけだよ!? でも違うかも!? いや似てる!! でも……えっ……!?」

マコト:「冷静になれ! 落ち着くんだ助手よ!!」

美穂:「あたし名探偵の助手辞めていい!?」

そのとき――

「あ、あの……すみません、それ……私のです……」

後ろから小さな声が聞こえた。

振り返ると、知らない1年生女子がもじもじしながら立っていた。

「あの……さっき教室に落としちゃって……探してたら、ここにあるって言われて……」

「…………」

美穂:スンッ……

 
「まじでごめん…………」

 
「やっぱりお前のじゃなかったーーーーーーッ!!!!」

 
マコト:「シュシュ、ダブってるのかよ……!?」

気まずすぎる空気の中、美穂はすごすごと引き下がる。

「……この場面、人生で一番消えたい……」

マコトもポンと肩に手を置く。

「……ドンマイだ、助手。よく頑張った。俺は、お前の“推しシュシュへの愛”をしかと受け取ったぜ……!」

「なにこの青春漫画のヒロインみたいな労い!!やめて逆にツラい!!」

そして、教室に戻った美穂は――

 
「…………」

机の下から、自分のリュックを引っ張り出し、ゴソゴソ。

 
「…………え?」

 
「…………あった。」

 
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 
全校に響き渡る悲鳴。
事件は、ここに幕を下ろした。

◆マコトの名探偵ノート(更新)
【事件名】
シュシュ紛失事件(ヘアリング・レクイエム)

【真相】
・美穂が自分のリュックに入れっぱなしだった
・誰も盗んでない
・落ちてもいなかった
・見つけたのに違う人のだった(地獄)

【学んだこと】
・“大事なもの”ほど、自分で見直そう
・人騒がせはほどほどに
・シュシュ、ダブりがち

美穂:「もう一生、探し物しない……」

早紀:「その前に、まず落ち着いて物を見よう」

ことり:「……記録つけてるだけなのに、やたらドラマティックでしたね……」

 
マコト:「ふふ……だが、これが俺たちの“日常”だ」

「いや、お前の“日常のテンション”だけ高すぎるんだよ!!!!」

(つづく/次回:まさかの“反省文編”?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...