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第71話『俺たちは、相棒じゃなかったんだ』
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放課後、静かな教室。
文化祭もパン騒動も、ひとまず一段落ついたタイミングで、
マコトはことりの隣で、珍しくしんみりとパンをかじっていた。
マコト:「……なぁ、ことり」
ことり:「はい?」
マコト:「お前さ、いつも“パートナー”とか“助手”とか言ってたけど、
冷静に考えたら――」
マコト:「お前、そもそも“怪盗”だったんじゃね?」
ことり:「………………」
パンをトースターに入れかけた手が、ピタリと止まる。
ことり:「……はい。私は“怪盗の末裔”だと思っていました」
マコト:「うん、でさ。お前が“怪盗”なら、俺……“探偵”だよな?」
ことり:「そうですね」
マコト:「つまり――根本的に、敵じゃね?」
ことり:「………………」
微妙な沈黙が、パンの焼ける音にかき消された。
ことり:「……じゃあ、先輩は。
私のこと、“敵”だと思っていたんですか?」
マコト:「いや……違う。
オレはずっと“相棒”だと思ってた。隣にいて、支えてくれて、
なんならツッコミまでしてくれるし……」
ことり:「……それ、主に早紀先輩の役目です」
マコト:「……ツッコミ人材、常に不足なんだよ……」
ことりは、ふっと笑った。
でも、その目元は――ほんの少しだけ、寂しげだった。
◆【“相棒じゃない”と言われて】
ことり:「……じゃあ、私は“相棒”じゃなかったんですね」
マコト:「ち、違う違う!そういう意味じゃなくて!
なんていうか……“立ち位置がちょっとフクザツだったな~”って話で!」
ことり:「フクザツ……」
マコト:「お前って、“怪盗”って言ってたくせに、
事件のときはガンガン推理協力してくれるし、
パン焼くし、メモ残すし、アシストしてくれるし……」
ことり:「……それは、“怪盗の誇り”としてやっていました」
マコト:「いや、それもう探偵助手の行動だから!!!」
ことり:「つまり……先輩は、“私が自分を怪盗だと信じていた”ことを、
ずっとツッコまずに放置してたんですね」
マコト:「……うっ、うん」
ことり:「ひどいですね?」
マコト:「だ、だってなんか……言い出せなかったし……!
“あ、この子はそういう世界観なんだな!”って……」
ことり:「それ、創作キャラを見る目線ですね」
マコト:「ごめんなさぁぁああい!!!」
◆【でも、ことりは笑ってた】
ことり:「……でも、ちょっと安心しました」
マコト:「えっ?なんで?」
ことり:「先輩の中では、私は“相棒じゃなかった”かもしれませんけど、
私にとっては――先輩は“特別な存在”だったので」
マコト:「……っ」
ことり:「“怪盗”と“探偵”っていう枠じゃない、
それ以上の、“自分を知ってくれる人”って感じです」
マコト:「……そっか。
じゃあさ――これからは、ちゃんと“相棒”になろうぜ」
ことり:「……やっと、言いましたね」
トースターが「チーン」と鳴る。
パンの香りと、ふたりの距離が、ほんの少し近づいた気がした。
ことり:「じゃあ、改めて――よろしくお願いします、“相棒さん”」
マコト:「……おう、よろしくな、“怪盗助手(仮)”」
(つづく)
文化祭もパン騒動も、ひとまず一段落ついたタイミングで、
マコトはことりの隣で、珍しくしんみりとパンをかじっていた。
マコト:「……なぁ、ことり」
ことり:「はい?」
マコト:「お前さ、いつも“パートナー”とか“助手”とか言ってたけど、
冷静に考えたら――」
マコト:「お前、そもそも“怪盗”だったんじゃね?」
ことり:「………………」
パンをトースターに入れかけた手が、ピタリと止まる。
ことり:「……はい。私は“怪盗の末裔”だと思っていました」
マコト:「うん、でさ。お前が“怪盗”なら、俺……“探偵”だよな?」
ことり:「そうですね」
マコト:「つまり――根本的に、敵じゃね?」
ことり:「………………」
微妙な沈黙が、パンの焼ける音にかき消された。
ことり:「……じゃあ、先輩は。
私のこと、“敵”だと思っていたんですか?」
マコト:「いや……違う。
オレはずっと“相棒”だと思ってた。隣にいて、支えてくれて、
なんならツッコミまでしてくれるし……」
ことり:「……それ、主に早紀先輩の役目です」
マコト:「……ツッコミ人材、常に不足なんだよ……」
ことりは、ふっと笑った。
でも、その目元は――ほんの少しだけ、寂しげだった。
◆【“相棒じゃない”と言われて】
ことり:「……じゃあ、私は“相棒”じゃなかったんですね」
マコト:「ち、違う違う!そういう意味じゃなくて!
なんていうか……“立ち位置がちょっとフクザツだったな~”って話で!」
ことり:「フクザツ……」
マコト:「お前って、“怪盗”って言ってたくせに、
事件のときはガンガン推理協力してくれるし、
パン焼くし、メモ残すし、アシストしてくれるし……」
ことり:「……それは、“怪盗の誇り”としてやっていました」
マコト:「いや、それもう探偵助手の行動だから!!!」
ことり:「つまり……先輩は、“私が自分を怪盗だと信じていた”ことを、
ずっとツッコまずに放置してたんですね」
マコト:「……うっ、うん」
ことり:「ひどいですね?」
マコト:「だ、だってなんか……言い出せなかったし……!
“あ、この子はそういう世界観なんだな!”って……」
ことり:「それ、創作キャラを見る目線ですね」
マコト:「ごめんなさぁぁああい!!!」
◆【でも、ことりは笑ってた】
ことり:「……でも、ちょっと安心しました」
マコト:「えっ?なんで?」
ことり:「先輩の中では、私は“相棒じゃなかった”かもしれませんけど、
私にとっては――先輩は“特別な存在”だったので」
マコト:「……っ」
ことり:「“怪盗”と“探偵”っていう枠じゃない、
それ以上の、“自分を知ってくれる人”って感じです」
マコト:「……そっか。
じゃあさ――これからは、ちゃんと“相棒”になろうぜ」
ことり:「……やっと、言いましたね」
トースターが「チーン」と鳴る。
パンの香りと、ふたりの距離が、ほんの少し近づいた気がした。
ことり:「じゃあ、改めて――よろしくお願いします、“相棒さん”」
マコト:「……おう、よろしくな、“怪盗助手(仮)”」
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