年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女

naomikoryo

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お弁当

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昼休みになり、亨はいつものように仲間に誘われて購買へパンを買いに行こうとした。
その時、校内放送で自分の名前が呼ばれた。
「里崎亨くん、里崎徹君、至急保健室に来てください。」

「なんだろう?
ごめん、今日はパスで!」
「お、おお、わかった。」
仲間に軽くゴメンと手を合わせて急いで保健室へ向かった。
トントン
軽くノックすると、
「どうぞ!」
と声が聞こえた。
「あれ?」」と思いながらもドアを開けた瞬間、目の前にはやっぱり美咲が立っていた。
彼女はにっこりと微笑みながら、弁当箱を亨に手渡す。



「これ、京さんから預かった、亨の分だよ。」
美咲が言う。
亨の母が二人分の同じ弁当を用意してくれたらしい。
亨は驚きながらも嬉しさがこみ上げてくるが、
「え、そうなの?
あ、ありがとう!」
と返す。

美咲は続けて、
「今週は引っ越しの片付けで何かと忙しいけど、来週からは私がメインで作ってあげるからね!」
と、満面の笑みで言った。
その笑顔に心が温かくなる一方で、亨は遠慮がちに頑張って断ろうとする。
「あ、いや、悪いよ。
俺、そんなことまでしてもらうのは…。」
「大丈夫、大丈夫!
私がしたいんだから、いいの!」
と美咲は言い張る。
しかし、亨は少し困惑していた。
「一緒に車で来るのも目立ちすぎて無理だと思うし…」
と心配を口にする。

美咲はその言葉に少し考え込み、
「じゃあ、月・水・金だけ弁当を受け入れてくれるのなら、仕方がないから一緒に登校は諦めてあげる。」
と交換条件を出す。
亨はその提案に戸惑ったが、内心では美咲との距離が近くなることに少し期待を抱いていた。

結局、隔日の弁当を受け入れることになり、食事はこの保健室で一緒に食べることになった。
美咲は保健室の中を見回し、
「ここで一緒に食べるのもいいかもね。」
と明るく言った。
亨は少し照れくさい気持ちになりながらも、嬉しさがこみ上げてくる。
また、保健の先生には、
「留守番がてら、弟みたいな亨を彼の母親に頼まれて面倒を見ている」
と説明しておくことにした。
そうすることで、亨は美咲との関係を周囲に理解させることができるだろう。

保健室の静かな空間で、僕たち弁当を広げた。
美咲は笑顔で、彼女の手作りのおかずを亨に教えた。
「これとこれは私が作ったの。
どうかな?」
と少し不安げに尋ねる。

僕はだし巻き卵を一口食べた。
程よい出汁の香りと甘みがあった。
「うん、美味しいよ!」
と答えた。
美咲はその言葉に安心し、少し顔がほころんだ。

食事を進めながら、美咲は自然な流れで子供の頃の話を持ち出した。
「そういえば、昔、私たちが小学校の時、あの『こんいんとどけ』の話、覚えてる?」
と、彼女がにっこりと笑う。

僕は思い出そうとするが、曖昧な記憶の中でモヤモヤしていた。
「えっと、何だっけ?」
美咲は少し楽しげに続ける。
「私が小学校の時、亨が私にその『こんいんとどけ』を書いてくれたじゃない。
確か、あの時は二人だけで私の家で遊んでたよね?」
僕は眉をひそめながら、
「ああ、そんなこともあったかな…」
と、何となく記憶が蘇ってきた。
美咲はその反応を見て、さらに話を進める。
「その時、亨が私のことを守ってくれるって言ってくれたの。
すごく嬉しかった。」
「そ、そうだったかな?」
少し照れくさくなりながら問いかけた。
美咲は頷き、
「そうよ!
私のことを王子様みたいに守ってくれるって言ったんだから!」
と笑いながら言う。
僕はその言葉に、少し恥ずかしさを覚えたが、同時に心が温かくなった。

「それに、あの時亨が私に言った、
『一緒にいる限り、絶対に離さないから』
って…
あれ、すごく印象に残ってるの。」
美咲の言葉に心がざわつく。
そんなませた言い方をした覚えがあるような、ないような…
思い出せないが、彼女がその言葉を大切に思ってくれていることが嬉しかった。

「そ、そうなんだ…」
と少し口ごもりながら言った。
美咲の表情は真剣で、亨は何か特別なことが起こっているのを感じた。
「ねえねぇ、これは覚えてるかな?
私たちが大きくなったら、一緒に結婚するって約束したよね?」
美咲が少し意地悪な笑みを浮かべる。
僕は驚き、
「え、そんなことまで言ったっけ?」
と焦ってしまう。

「言ったよ、言った!
私はその約束をずっと覚えてるから!」
美咲は楽しそうに笑い、亨の反応を楽しんでいる様子だった。
僕は心臓がドキドキし始め、焦りを隠しきれない。
「じゃ、じゃあ、今からその約束を破るわけにはいかないよね…?」
と冗談めかして言うと、美咲は目を輝かせながら頷いた。
「もちろん!
私、ずっと待ってるから。」

その言葉に、亨はますます混乱してしまった。
美咲の思いが自分に向いていることを実感し、心の中で彼女との関係がどう進展するのか、期待と不安が入り混じる。
保健室の中で、美咲と過ごす時間は、彼にとって特別なことになる予感がした。
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