年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女

酔った美咲

歌の時間が進む中、僕は美咲の言葉と行動が頭の中でぐるぐる回っていた。
彼女との関係がどう変わっていくのか、心の中で考え続けていたが、その思いは次第に優愛との関係にも影響を与え始めていると感じた。
友達が盛り上がる中、僕は少し離れた場所で静かに思いを巡らせていた。
美咲と優愛、どちらの気持ちを大切にすべきか、心が揺れ動いていた。
その答えを見つけるために、もう少し時間が必要だと思った。


部屋に戻った美咲は、みんなの勢いに押されてついビールを口にしてしまった。
普段はアルコールにめっぽう弱い彼女だが、その日は興奮していたのか、何も気にせずグラスを傾けていた。
数分後、彼女の顔は少し赤くなり、表情がぼやけてきた。
それから、訳の分からないことを喚きながら美咲はついに僕たちの部屋に乱入してきた。
彼女の行動にみんなが驚きつつも笑いが起こる中、先生方もその後を追ってなだれ込んできた。
カラオケボックスの部屋は一瞬にして騒がしくなり、
「一体、何が起きてるの？」
と優愛が叫んだくらいだった。

教頭が少し笑いながらも、
「もう遅いから、君たちは帰りなさい！」
と指摘した。
確かに、もう七時を回っている。
すると、美咲は僕に抱き着きながら、
「帰ろ～う！」
と甘えるように言った。
みんな驚いて、どう反応していいか分からなかったが、美咲の愛らしい表情に心が動かされた。
その様子を見て、保健の田上先生が事情を説明する。
「美咲先生は幼少の頃に里崎君のお隣さんで、今もすぐ近くに住んでいて、家族みたいなものなんですって。
里崎君、ちゃんと送り届けてくださいね。」
それを聞いて教頭は僕に向かって指示を出した。
「はい、分かりました」
と僕は返事をした。

店員からタクシーが来たと連絡を受けると、僕たちと教頭は店の前に出た。
教頭が運転手にお金を渡し、
「無事に届けるように頼むよ。」
と僕に再度言い添えた。
そして、教頭は笑顔で
「じゃあ、私たちは時間まで楽しんでいるから！」
とカラオケの部屋に戻っていった。

その一連の流れを見ていた優愛は、美咲が亨に寄り添う様子に嫉妬心を燃やしていた。
彼女は、なぜ美咲がそんなに自由に亨に甘えることができるのか、自分との違いを感じていた。
「どうしよう、亨が美咲に心を奪われちゃったら…」
優愛は心配と嫉妬で複雑な気持ちに包まれていた。

結局、優愛たちは解散し、それぞれが帰路に着くことになった。
僕は美咲をタクシーに押し込んで、
「じゃあ、みんな、おやすみ！」
と声を掛けた。
「いいな～！」
という男連中の声をよそに、優愛は不機嫌そうな顔で挨拶を返した。
僕は美咲の様子を心配しつつ、
「大丈夫？
無理して飲まなくてもよかったのに…」
と声をかける。

美咲は軽く笑い、
「平気よ！
みんなと楽しかったから！」
と答えながら僕の膝に寝転んだ。
「まったく…」
と言いながら、僕は無意識に美咲の頭を軽く撫でていた。

運転手が目的地に向かって車を走らせる中、美咲は無邪気な寝顔を見せていた。
まだ、そんなに僕たちの年齢は離れていないことが良く分かった。
普段はどこか、無理に大人っぽくしている所があるが、素顔の美咲はまだ十分幼く見えた。
僕はその寝顔に心を奪われ、美咲のことをもっと知りたいと思うようになっていた。

カラオケの楽しさが心の中に残る中、亨は美咲と過ごす時間がどれほど特別なものであるかを実感していた。
このまま美咲との関係が進展していくのか、それとも優愛との関係も大切にしなければならないのか、亨は心の中で葛藤を抱えながら、タクシーの中で静かに考え続けていた。