推しが同居人になりまして。

naomikoryo

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第6話:「推しバレの危機!?嘘はどこまで通じるのか」

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――推しに、オタク部屋を見られた。

 終わった。
 マジで終わった。
 ここまでか。

 目の前には、大量の 桐生隼人グッズ が床に散乱している。
 主演映画のポスター、インタビュー記事を切り抜いた雑誌、ドラマのBlu-ray、アクリルスタンド……。

 どの方向を見ても 桐生隼人。

 そして、そんなカオスな光景の中で、当の本人が 無表情で立ち尽くしている。

「……」

「……」

「……なにこれ?」

 もう終わったァァァァァァァ!!!!!!!!!

■ 最悪の状況で炸裂する、クソみたいな言い訳
 このままだと、私は ガチオタ であることを推しに知られてしまう。
 そうなったら……

(A)「え、キモ」と思われる
(B)「引くわ」と言われる
(C)「出てけ」と言われる

 どれも無理!!!!!!!!!!!!

 私の人生がかかっている!!!!!!!!

 今ここで、なんとしても誤魔化さなければ!!!!

「え、えっと、これ全部友達のなんです!!!!」

 ――言った。
 人は追い詰められると とっさにアホみたいな嘘をつく というが、本当にその通りだ。

「……友達?」

「そ、そうです!!!」

「誰の?」

「えっ……」

「名前は?」

「………………」

 詰んだ。

 だってそんな友達いない。
 この部屋のグッズは 全部100%私のもの だから。

 私は必死に頭を回転させる。
 そうだ、ここで 架空の友達を作り上げるしかない!!!!

「え、えっと、あの……友達の……えっと……さくら……さくらもちさん……?」

「……は?」

「さ、さくらもちさんっていう友達のなんです!!!」

「どんな名前だよ」

 言ってる自分が一番思ってるわ!!!!!!!!

「えっと……さくらもちさんは、その……えっと、すごく桐生隼人さんのファンで……あの……私の家が広いから、グッズを預かってるんです……!!!」

「へぇ」

 隼人は めちゃくちゃ疑わしそうな目 で私を見ている。
 そりゃそうだ。自分のグッズが 部屋一面に広がってる のに、これが 他人のもの だなんて信じられるはずがない。

「じゃあ、その友達に今電話してみてよ」

「えっ!?」

「本当にいるなら、今ここで電話できるよな?」

「えっと、それは……あの……えっと……」

「……」

「……」

「やっぱお前のだろ」

 終 わ っ た。

■ 推しが、こっちをジッと見てくる
 もうダメだ。
 何を言っても、何をどう誤魔化しても、もう オタクバレ確定。

 私は 絶望 の中、床に崩れ落ちた。

「うう……すみません……嘘つきました……全部私のです……」

「だろうな」

「桐生隼人さんが好きすぎて、つい……」

「知ってる」

「えっ」

「いや、お前、前から様子おかしかったし」

 隼人は ジト目 で私を見下ろしながら言う。

「初対面のとき、ガチガチに固まってたし」

「うっ」

「朝飯作っただけで、変なテンションになってたし」

「ぐぅっ」

「俺のグッズ、片付けた痕跡あったし」

「ぐはぁっ」

「あと、そもそも……」

 隼人はチラリと床に転がる 一冊の雑誌 を見た。
 それは、3年前の特集記事で、桐生隼人の初主演映画を扱った超レア雑誌 だった。

「これ、もう廃刊になってるやつだよな?」

「!!!!!!」

「普通、ただのルームメイトが持ってるもんじゃねぇだろ」

「……」

 詰んだ。完全に詰んだ。

 もう逃げ道がない。
 ここで観念するしかない。

「……すみません……私……」

 私は意を決して、土下座 した。

「私、5年間、あなたのファンです!!!!!!!!!!!」

「……」

「映画、ドラマ、バラエティ、全部観てます!!!!!」

「……」

「過去の雑誌も全部集めました!!!!!」

「……」

「SNSもエゴサしてます!!!!!」

「え」

「え」

 ヤバイ。言わなくていいことまで言ってしまった。

「いや、エゴサって、お前」

「い、いや違うんです!!エゴサっていうか、こう、ファンの間での話題をチェックする的な……!!!」

「……はぁ」

 隼人は ものすごく疲れた顔 でため息をついた。

「……で? それを俺にバレたくなかったと?」

「そ、そうです……」

「……まぁ、そりゃそうか」

 隼人は、腕を組んでしばらく考え込んだ後、フッと小さく笑った。

「別に、いいけどな」

「えっ……?」

「お前がファンでも」

「……」

「ただし」

「た、ただし?」

 隼人は ニヤリ と笑った。

「今後、俺のことを“推し”って呼ぶのは禁止な」

「!?!?!?!?」

「あと、朝飯のときに“推しの手料理……”とか呟くのも禁止」

「聞こえてたんですかぁぁぁぁぁぁ!?」

「全部聞こえてる。隣の部屋だし」

「うわああああああ!!!!!」

「ま、これからはもう隠すなよ」

 そう言って、隼人はスタスタと部屋を出て行った。

 私はしばらくその場に 崩れ落ちていた。

 ――こうして、私の「オタクバレ」の危機は終わった。

 しかし、代わりに 推し本人にオタク行動を監視されるという新たな地獄が始まった のだった――。
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