推しが同居人になりまして。

naomikoryo

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第7話:「はじめての共同作業は、洗濯物干し」

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――推しにオタクバレしました。

 でも、意外と優しかった。
 「別にいいけどな」って言ってくれた。

 ……いやいやいや!!!!!!!

 むしろ地獄なんだけど!?!?!?!?

 だって、推しが私のオタク行動を 全部把握してる ってことでしょ!?!?!?!?

 「推しの手料理……」とか言ってたのも聞こえてたし!!!
 どんなテンションで生きていけばいいの!?!?!?!?

 とりあえず、私は誓った。
 もう 隼人の前で推しムーブをしない と。

 ――そして、その翌日。
 私は とんでもない試練 に直面することになる。

■ ルームシェアの現実、それは「洗濯物」
 昼過ぎ。
 私は漫画のネーム作業を終えて、伸びをした。

「ふぅ……そろそろ洗濯でもするか……」

 洗濯物が溜まりすぎると、あとで面倒になる。
 ルームシェアが始まって数日、共同生活のルールにも少しずつ慣れてきたし、ここはちゃんと家事をして、少しでも「一般人らしさ」をアピールしなければ……!

 そう思い、私は洗濯機を回し、ベランダへ出た。

 すると。

「お、やる気になったか」

「……!?」

 目の前には、すでに洗濯カゴを持ってベランダに立つ隼人の姿があった。

 そう、私たちの部屋のベランダは共有スペース。
 洗濯物を干す場所も、必然的に 同じ になる。

「お、お疲れ様です!!!」

「いや、別に職場じゃねぇから」

「た、確かに!!!!!」

 何この気まずい空気!?!?!?!?

 い、いやでも、ここは冷静になれ!!
 私は 推しと同居してる一般人 であって、ガチオタではない。
 普通に振る舞えばいいんだ!!!!

 そう思い、私は無理やり落ち着いて洗濯カゴを持ち、隼人の隣で洗濯物を干し始めた。

■ 推しの洗濯物、破壊力がすごい
 洗濯物を取り出して、ハンガーにかける。

 Tシャツ。
 ズボン。
 靴下。

 ……よし、普通だな。

 そして、隼人の洗濯カゴの中身もチラッと見えたんだけど――

 タンクトップ(昨日見たやつ)
 黒のスウェット(部屋着)
 バスタオル(推しが毎日使ってるやつ)

 うわあああああああああ!!!!!!!!!

 推しの生活感、エグい!!!!!!!!!

 まってまってまって、今この手にあるの、推しのTシャツ なんですけど!?!?!?
 このTシャツ、あの桐生隼人が着てたやつ!!!!!!

 いやいや、ダメだダメだ!!!!
 推しの服を変な目で見るのは禁止!!!!!!!!!

 私は深呼吸して、Tシャツをハンガーにかける。

「……」

 うん、大丈夫。冷静。

「お前、干すの下手だな」

「えっ」

 隼人が私の手元を見て、呆れたように言った。

「襟の部分が歪んでるし、シワがついたままだと乾いたとき変な形になるぞ」

「そ、そうなんですか!?」

「……家事、マジでダメなんだな」

「うっ……」

 バレた。
 いや、元からバレてるんだけど!!!

 すると、隼人は無言で私の隣に立ち、私が干したシャツをスッと取り直し、器用にハンガーにかけ直した。

「ほら、こうやるんだよ」

 スッ……とシワを伸ばし、綺麗に干す。

 ――え、推し、家事できる系男子!?!?!?!?

「お前、こういうの覚えとけよ。どうせ今後も干すことになるんだから」

「は、はい……!!!!」

 推しの言葉、重みが違う。
 いや、これが 「推しに家事を教わる」という奇跡の空間 なのか……!!!!!!!

■ 油断したら、地獄
 私は必死に洗濯物を干しながら、隼人の手さばきを横目で盗み見ていた。
 すると――

 風が吹いた。

 バサッ!!!!

「あっ」

 次の瞬間、私の洗濯カゴから、一枚の布が飛ばされた。

 風に舞う、それは――

 ピンク色のレースのブラジャー。

 ――あ。

 終わった。

 私は スローモーション で、それが隼人の目の前に落ちていくのを見た。

 そして、隼人の足元に、ふわりと着地。

 

「………………」

「………………」

 

 無音。

 

 地獄の沈黙。

 

「……お前さ」

 隼人が めちゃくちゃ冷静なトーン で言った。

「今、俺の前に落ちたやつ……拾わないの?」

「いや!!!!!!違うんです!!!!!!」

「何が違うのか説明してくれ」

「これは!!!!風のせいです!!!!!!」

「知ってるよ」

 もうダメだああああああ!!!!!!!!!!

「……ほら」

 隼人は、超無表情のまま 人差し指と親指の二本指で それを摘んで、私の方に差し出してきた。

「大事なもんだろ」

「ぎゃああああああああ!!!!!!!」

 私は超高速でそれを引ったくり、洗濯カゴの奥底にねじ込んだ。

「お前、もうちょい気をつけろよ……」

「うぅ……はい……」

 心臓が爆発しそう。
 推しと生活するの、こんなにも精神削られるものだったの!?!?!?
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