魔女の贈り物 ~僕という奇跡~

naomikoryo

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第5章 魔女っ娘との邂逅

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入院生活も終盤に差し掛かる頃、琢磨の病室に、一通の奇妙な封書がそっと置かれた。
封筒は、銀色の光をまとい、まるで夜空に輝く星々の断片を閉じ込めたかのように美しく、普段の堅実な病室の風景とはまるで対照的だった。
琢磨は、点滴のリズムに合わせるように静かな呼吸の中で、ふとその封書に気づいた。
誰が、何のために自分の病室へ手紙を届けたのだろうか――
その疑問と共に、胸の奥にかすかな期待が芽生えた。

封筒を慎重に開くと、中からは淡い光を帯びた便箋が現れた。
紙面には、まるで魔法のような細かい装飾が施され、端々に浮かぶ星や小さな花弁のような模様が、不思議な世界へ誘うかのようだった。
筆跡は、柔らかく、しかしどこか力強い。そこにはこう記されていた。

「あなたの勇気に、心から感謝します。
あの日、あなたが見せた優しさは、私にとって何よりも大切な光でした。
お礼として、私からの小さな魔法を――
一つの願いを叶えさせていただきます。
あなたが本当に望むものが、真実の姿となりますように。
― ミラ」

その名は、差出人の名前としてだけ現れていた。
琢磨は、一瞬、過去の交差点で救ったあの小さな女の子の面影を思い浮かべた。
彼女は単なる子供のような無邪気な存在ではなく、どこか妖艶で、神秘的な輝きを宿していた――
まさに“魔女っ娘”の名にふさわしい雰囲気を漂わせていた。

手紙を読み終えると、琢磨の心は複雑な感情で満たされた。
病室の静寂と淡い明かりの中、彼はこれまで誰にも打ち明けることのなかった、ひそかな願望を思い返した。
自分はいつも、控えめで地味な教師としての姿を守るために、内面のオタク趣味や夢、そして「もっと魅力的になりたい」という心の叫びを隠してきたのだ。
しかし、あの小さな命を救った瞬間、そして今、ミラの手紙に触れたことで、彼の内側に眠っていた切実な望みが、静かに、しかし確かに鼓動を始めたのを感じた。

「本当に……これで、願いが叶うのだろうか?」
琢磨は独り言のようにつぶやきながら、封筒をそっと握りしめた。
まるで、未来への扉が今、彼の前に開かれたかのような、そんな不思議な感覚が胸を突いた。
病室の窓から差し込む月明かりが、彼の手元を淡く照らし、時間が一瞬静止したかのような錯覚を覚えさせた。

その夜、琢磨はベッドに横たわりながら、何度も手紙の内容を噛み締めた。
ミラの言葉に込められた魔法――
それは、彼が密かに抱いていた「変わりたい」という切実な願望への応答のように感じられた。
自分が本当に望むのは、ただ見た目を整えるだけのものではなく、内面の輝きを取り戻し、これまで隠してきた自分自身を解放することなのかもしれない。
静かな夜の中、琢磨は自問自答する。
もし、今この瞬間、どんな願いでも一つだけ叶うとしたら――
果たして彼は、どんな自分になりたいのだろうか。

ミラの不思議な手紙は、ただの偶然の産物ではなかった。
あの日、交差点で交わされた一瞬の奇跡と、そこに宿る運命の糸は、今、彼に新たな可能性を示している。
胸中に小さな炎がともるのを感じながら、琢磨は次第に、これから始まる自分自身の変革に思いを馳せるのだった。
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