私の部下 ~マザコンでしたが、今では恋人で、夫です。

naomikoryo

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第11話 「社長との関係が発覚!?ギャルママ、社内をかき回す」

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 金曜日、昼下がりの社内。

 いつも通りのフロア……のはずだった。

 だが、なぜか空気がおかしい。何人かのOLがパソコン画面から目を離し、スマホをこそこそ覗いては小声で話している。男たちは気づかないふりをして、雑談に逃げている。

「……あの写真、マジで社長じゃない?」
「横の女、めっちゃ派手なんだけど……ギャル? あれが恋人?」
「しかも、あれ、夜の六本木でしょ?」「週刊誌に出るやつやん……」

 

 私の背中に、嫌な予感の針が突き刺さった。

 こそっとスマホを開き、社内チャットの女子グループで共有されていた画像を開く。

 五十嵐鷹人社長(45)、銀座の高級レストラン前で、ギャル系美魔女と腕を組んで歩いている。
 ふたりともカメラ目線ではないが、明らかにツーショット。
 その女の顔にモザイクが入っていない。

 ――真木玲奈。陽翔のママ。

 

「…………うわ」

 スマホを閉じたその瞬間、社内チャットにさらにメッセージが飛び込んできた。

🧑‍💼【総務・田中】

社長の件で広報に問い合わせが殺到している模様。
“女性はプライベートな知人”とのコメントを準備中。
※本件に関する社内コメントは一切控えるようにとのこと

 

(プライベートな知人って……いやいや、彼女でしょアレ)

 

***

 

 午後一番。会議のために社長室へ呼ばれた私は、資料を手に硬直していた。

 五十嵐社長は、いつものように淡々とした表情だったが、デスクの上に置かれたスポーツ紙が全てを物語っていた。

「……見たか?」

「はい。見ました。見ないようにしても、全社で拡散されてますし」

「……あいつな、“カメラには気をつけて”って言ったのに、“逆光だったから大丈夫~☆”って……」

「……ギャルすぎます」

 

 社長はコーヒーを一口飲み、低い声で言った。

「すまんが、黒瀬くん。真木にはまだ言ってない」

「え、なんでですか? 本人のお母さんのことですよ?」

「いや、実は、あいつ……玲奈さんとのこと、まだちゃんと気づいてないらしくてな」

「……どゆこと?」

「“ママが最近機嫌良くて、俺のためにパック増やしてくれた”くらいにしか思ってない」

「……平和すぎる」

 

 社長はしばらく黙ったあと、ぽつりと呟いた。

「……だが、俺は後悔してない。玲奈さんは、俺の人生で初めて“向き合う覚悟を持たせてくれた女”だ」

「社長……」

「だからこそ、真木にもその覚悟を持ってほしい。母を“偶像”じゃなくて、“人間”として見ることを覚えてほしいんだ」

「それって……私と同居する意味にもつながるってことですか?」

「そうだ」

 

 社長の真顔に、私は言葉を詰まらせた。

 今の陽翔は、**“母親=完璧な存在”**という幻想の中で生きている。
 その幻想が崩れた時、彼はどうするのか。壊れるのか、立ち上がるのか。

 そのターニングポイントに、私は立ち会うことになる。
 いや、巻き込まれる、というほうが近いかもしれない。

 

***

 

 夕方。

 社内の空気は、まるで**“文化祭前の謎テンション”**みたいに騒がしく、ザワザワと落ち着かない。女子たちは社長の恋バナで盛り上がり、男子は腫れ物扱いして距離を取っている。

 そんな中、陽翔は――

「主任、今日って、帰りどこか寄ります?」

 ……いつも通りすぎる!!!

「……あのさ、真木くん。あんたさ、何か変わったこと聞いてない?」

「変わったこと? ……あ、ママが最近、“彼氏の愚痴が減った”って言ってました」

「……うん、まぁ、そうだろうね。てか、愚痴言ってたんだ、前は」

「めっちゃ言ってました。“ほんとに男って馬鹿。もっとママを崇拝してほしい”って」

「うん、それはそれで面倒くさいな」

 

 私は頭を抱えた。
 ――この子、本当に何も気づいてない。

 それでも。
 来週から始まる同居生活。私は全ての真実を彼にぶつける覚悟を決めていた。

 

 玲奈さんは“ママ”である前に、ひとりの女性。
 社長の恋人であり、自立した存在。
 そして陽翔は、もうママの“延長線”だけでは生きていけない。

 

 ——その夜。

 帰り際、陽翔がポケットから取り出したチョコを私に渡した。

「これ、主任に。ママが、“甘えすぎたらちゃんと礼を言え”って」

「……それ、ママの教えか。本人からじゃないんだね」

「いや……本当は、僕の気持ちでもあります。
 主任、いつもありがとうございます」

 その笑顔は、どこまでも無邪気で。

 けれど、私は思っていた。

 (君が、“本当の大人”になった時……その笑顔は、もう少し変わるはずだから)

 

(つづく)
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