先輩、それ絶対わざとじゃないですよね!?

naomikoryo

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番外編⑥社会人編・第3話 「風間晴翔、サプライズプロポーズで地元局を巻き込む!?」

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正直に言う。
私は、一生忘れないと思う。

地元局のスタジオで、番組収録中に彼氏が花束持って登場して、プロポーズしてきたあの日のことを。
忘れられるわけがない。

しかも。
全国ネットに生放送で乗っていたなんて、もっと忘れられない。

 

さかのぼること、2週間前。

私――高梨柚葉(25)は、地元テレビ局のスポーツ中継班に所属し、日々ロケと編集に追われていた。
もちろん、担当はいつもの人。

 

風間晴翔(26)、J3プロサッカーチーム「ヴァルテック岬」のフォワード。
そして、人生でいちばん苦労させられてるけど、いちばん好きな人である。

 

最近は、もっぱら“天然枠”でバラエティにも出演しはじめ、
先日は某グルメ番組で「わさびが緑色なのに甘いと思って口に入れて涙目になる事件」も発生した。

そのせいで、またもやトレンド入り。

「風間選手=もはや地元のバラエティ要員」
という意味不明なポジションまで築いていた。

 

……で。
事件は、金曜の夕方に放送された地域情報番組で起きた。

私はその日もMC席で原稿を読み、
「今週のヴァルテック特集!」という、晴翔のミニコーナーを進行していた。
彼は、練習後にスタジオ出演する予定だったが……。

 

柚葉「では本日は、風間晴翔選手にスタジオに来ていただいております!
   晴翔さん、どうぞー!」

 

拍手とともにスタジオの扉が開く――が。
入ってきた晴翔は、ユニフォーム姿ではなかった。

 

なぜかスーツ姿。

しかも、両手にバカでかい花束。

 

柚葉「……え?」

 

晴翔「こんばんは!今日も元気に、ととのってます!」

 

柚葉「いや、ととのってるとかどうでもいいんで、なんでその格好なんですか……!?
   え、スーツ?花束!?ここ、情報番組なんですけど!?どこ向けのテンション!?」

 

観覧席もザワザワ。
スタッフも目を見開いてる。
カメラマンはピースしてる(なぜ)。

私はオンエア中だというのに、口を開けたままフリーズしていた。
すると、晴翔が私の正面に立って、カメラの真ん前で、にこにこしながら言った。

 

「高梨柚葉さん。」

 

「は、はい……?」

 

「今まで、たくさん迷惑かけてきました。
 洗濯物干してもらって、料理作ってもらって、台本読んでもらって、
 サウナで迷子になっても迎えに来てもらって、靴下を毎週揃えてもらって……」

 

「そこまで言わなくていい!!!」

 

「でも、そんな柚葉さんと過ごす毎日が、本当に幸せです。
 これからも、毎日、もっともっと迷惑かけたいです。
 そして……その分、全力で感謝したいです。」

 

しゃがみこむ彼。
ポケットから、小さな箱。

パカッ。

中には、銀色のリング。
今度ばかりは、本物だった。

 

「高梨柚葉さん。
 僕と結婚してください。」

 

 

……本気、だった。

 

私は、番組中であることも、観客がいることも、カメラが回ってることも忘れていた。

 

(ああもう……
 どこまで人の人生、テレビで流す気なのよ、この男は……)

 

でも。
言葉が出なかったのは、嬉しかったから。
恥ずかしくて、愛しくて、こんなのあり得ないって思ったけど、
でも、彼らしい、最高にバカで、最高に本気なやり方だった。

 

「……はい。
 ……お願いします。」

 

拍手と歓声。
照明がちょっと眩しい。
スタッフが泣いてる(なぜ!?)。

 

私の隣で、満面の笑みの晴翔が言った。

 

「よかったー、断られたら、家帰れないところだった……」

 

「いや、むしろ家、追い出す予定でしたよ。」

 

「怖っ。でもそれも幸せかも……」

 

「ちょっと黙ってろ、未来の夫。」

 

ナレーションの音楽が流れる中で、
テロップが出た。

 

「地元プロ選手、まさかの生放送プロポーズ成功!」
「スタジオのスタッフ全員涙(なぜ)」
「“靴下揃える彼女”がついに嫁に!」

 

……こうして、またもや私の人生は全国に公開された。

だけど、まぁ、いいか。
この人とだったら、
笑われても、驚かれても、
一緒に歩いていける気がするから。



「あれ?何で今日プロポーズしようって思ったの?」
私は恐る恐る晴翔に小声で聞いてみた。



「えっ?だって日記に書いてあったから…」
晴翔は満面の笑みで答えた。



「……私の部屋の押し入れの?」



「うん。まだ半分ぐらいまでだけどね。」



私は小学生になった頃からずっと日記を付けている。
もう、30冊以上にはなると思う。


確かに中学生ぐらいの頃に、”25歳に結婚したい”的なことを書いた記憶はあった。

大方、うちに遊びに来た時に見つけて読んでいたのだろう…


………


まぁ、いいよ。
それを叶えてくれようと覚えていてくれたんなら……


「そっか、ありがとう!」

小声で言った。



「うん。昨日、ちょっと内容を忘れてたからもう一回読み直してみたけど…」

「昨日、内緒で出掛けてたのはそれか~!!」



まだカメラが回っている中、私の怒声が全校放送で流された。



 

あ。
ちなみにこのプロポーズ、局内的には未申請の“ドッキリ演出”だったため、
後日、制作部と報道部と編成部と法務部に呼び出されたのは言うまでもない。

 

晴翔?
「本当にやってよかったと思ってます」って超笑顔で言ってた。
(……こいつ、ほんとに“一生面倒見てください”って意味だったんだな……)

 

まぁ、私もそれ、悪くないって思ってるんですけどね。
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